旅にしあれば

人生の長い旅、お気に入りの歌でも口ずさみながら、
気ままに歩くとしましょうか…

手塚治虫さんの火の鳥を読み返す

2023-03-13 19:08:00 | 図書館はどこですか



手塚治虫さんの「火の鳥」を読み返しました。使用本は、「手塚治虫文庫全集」収録の
計11巻です。上記写真には第12巻にあたる「少女クラブ版」も合わせて写っていますが、
図書館で借りた本を優先して読む必要に駆られ、今回の再読はひとまず見送られました。

読み直すきっかけは、桜庭一樹さんの小説版「火の鳥 大地編」を読んで触発されたのと、
先日Eテレの番組「浦沢直樹の漫勉neo」で手塚さんが取り上げられていて(わけても
火の鳥の話題が多く出てきたので)、その機運が高まっていたのです。


    

火の鳥一連の作品群は手塚さんのライフワークとされていて、長きに渡り書き続けられ、
過去と未来の交互に行き来し物語は進行し、最後は本人が死の直前に『現代編』を
書き記し(←よ~く考えると、とんでもなく破天荒な企画だったんですよねえ)、帰結
させるとの構想だったようです。手塚さんの早すぎる死去により頓挫し、完結すること
なく物語は永遠に未完のままです。ただし、それぞれの編ごと、その都度ストーリーは
一応ケリをつけられているので、独立した作品として十分楽しめる構成なのです。

掲載誌が幾度か変わるなど、そもそも火の鳥自体さまざまな編纂を経る流動的な作品の
ようで、そのため書かれた時期などにより作風にバラツキがあるため、悪く言えば
一貫性がないとなるし、それぞれが非常に個性的で特色ある作品に仕上がっているとも
言えるでしょう。なので、必然読者の好みが分かれまして、私個人的なお気に入りは
『鳳凰編』『異形編』『太陽編』などですかね。異形&太陽編は、シリーズの一番
最後に書かれたことになり、そうすると手塚さんの最晩年の作品となるわけでして、
長い物語を書き連ねながら、アイデア、画力が枯渇することなく(一度衰えかけ、
不調に陥った時期を乗り越え、不死鳥のごとく蘇り)、経歴最終盤にこうした
魅力的な作品を残されていることに今更ながら舌を巻く次第です。手塚さんの存在
そのものが、まさに火の鳥だったということなのでしょう。

構想はすでにできていた『大地編』が描かれていたら、どんな作品になっていたのか
興味は尽きません。直前の太陽編の完成度が高かっただけに、大いに期待して
良かったのではないですかね。もし今ひょっこりと、実は秘かに完成していた
大地編が倉庫から発掘され発表されるなんてことがあったなら、センセーショナルを
巻き起こすと同時に、桜庭さんの小説版と読み比べが楽しめるのにねえ。
    

コメント
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