
長旅から帰宅早々、図書館に予約してあった本の順番が続けざまに回ってきて、
慌ただしく二冊読み終えました。まずは「鬼神の檻(きじんのおり)/西式 豊著」、
朝日新聞で紹介されていた長編ミステリーです。
第一章は大正時代、大量殺戮事件が勃発しますが犯人は人知を超えた存在で、
この本はミステリーの分野としては限りなく怪奇ホラーに近い作品だと悟り、
私向けではなさそうだと思っていると、第二章は50年後の昭和48年へ飛び、
数え歌見立て連続殺人が発生、マスク姿の麗人の登場など横溝作品を彷彿させる
趣向も手伝い、一気に伝奇的要素を加味した本格推理ものへと変貌を遂げ、魅力
を増します。さらに50年経過して、第三章の舞台は令和5年、物語はSF風に
発展、飛躍し、決着を迎えます。
章ごとに時代が変わり、テイストが微妙に異なるので、正直戸惑いはあります。
しかし、常に怪奇ロマン的なエッセンスがベースにはあふれ出ているなどして、
一貫性、整合性はブレずに貫かれており、違和感は最小限度、読み進められます。
広げた風呂敷を仕舞うために、SF的な解釈をくわえることで伏線をすべて
きれいに回収する展開にはまずもって納得できるし、三種類の違う分野を一冊で
楽しめると考えると、お得感もあります。
全般主役は女性。一章でヒーロー然としたカッコいい軍人が登場し、ヒロイン=
姫を助け出そうとするものの、あっけなく敗れ、殺害されて以降は、もっぱら敵
に抵抗し、活躍するのはほとんどが女性陣(姫と呼ばれ、鬼神への貢物とされる
宿命の女たち)です。三世代に渡り敵を追い詰め、謎に迫り、事件を解決へ
と導く、女性たちの活躍をハラハラしながら見守りましょう。