
いや~、この歳になって、まさかゲッターロボの新作アニメをリアルタイムで見ることが
できるなんてまったく想像していなかったですねえ。現在放映中の「ゲッターロボアーク」、
ご同輩、ご覧になっているでしょうか?
それで今回、いい機会だと思い、手持ちのゲッターロボ・漫画版を読み返すことにしました。
今回読んだのは、双葉社から2002年に文庫本化して発売されたシリーズ計9冊です。
主に再読したゲッターロボ・サーガとしての一連の漫画版を中心にここでのお話は進行させるとして、
元々昭和期にテレビ放映されたアニメ版も大好きだった(マジンガーZと同じくらい)だけに、
話があちらこちらに飛んで支離滅裂になるのは目に見えており、その点ご容赦のほどを。
まずは、ゲッターロボ(正編)2巻とゲッターロボG1巻からですね。ゲッターロボは、
テレビシリーズのGが終了してから、再放送などを見た記憶がまったくなくて、もしかしたら、
一般地上波などでは一度も再放映したことないのかも。大昔毎日放送で深夜に企画された
「ヒーローは眠らない」シリーズでマジンガーZが放映されたのに対し、ゲッターは
取り上げられなかったこともあり、もうずいぶん長くオリジナルのアニメ版は見てなくて、
細かな記憶はどんどん失われつつあります。
それに比べ、漫画版の正編とG編は繰り返し読んで長く親しんできましたが、この文庫本版は
購入後20年ぶりくらいを経て初めて読み返すことになったかもしれません。この頃は、新作の
マンガやアニメをほとんど見なくなっていた時期でしたが、当時は、旧作品が文庫本化され
次々復刻刊行されていた頃で、それに乗じて私も、懐かしい作品や発売時買い損ねたものを
いくつか買い集めていて、このゲッターロボ・シリーズもそのひとつでした。
私としてはゲッターはG編で完結していて、それからずいぶんあとになってOVA作品が発表される
などしていたことは知ってはいたものの手を出すこともなく、G編以降の漫画版も、このとき初めて
触れるものばかりでした。
こちらは当時「てんとう虫コミック」として発売されたオリジナルのゲッターロボ・漫画版ですね。
全4巻を文庫本では2巻にまとめられ、原則このコミック版を底本としてはいるようですが、
一部削除されたり、逆に書き足されるなどもしています。書き足しは、デビルマンの愛蔵版で
永井豪さんがされたように、発表当時描ききれなかった、表現できなかった部分の補完が主目的なようで、
時を経て作者の絵柄がずいぶん変わってしまっているので多少違和感を覚えることがあるのは致し方なく、
その点目をつぶれば、まあそれなりに納得できる措置だとは思います。
しかし、削除されたページがあるのは理由がよくわからず、たとえば正編のラスト1ページが
カットされ、また、G編の『ブライ帝王怒る!』の回では、やはりラストの数ページがそっくり
省略されています。正編のラストはムサシが壮絶な最後を迎える重大な場面で、その最後の最後を
削るのはまったく納得できず、G編でカットされた数ページでは、ブライが怒りまくる理由などが
説明されている箇所で、そのシーンが丸々なくなったため、エピソードタイトルがまるで意味不明と
なってしまっています。
反して、補完されたことで溜飲が下がったこともあります。これはゲッターファンには有名な話でしょうけど、
なんと、オリジナルの漫画版では、ムサシが操縦するゲッター3が一度も登場せずじまいだったのです!
これは、アニメ放映の進行速度に合わせて連載スピードを上げなければならなかったのが最大要因と
思われ、物語中たった一回だけ登場する3は、まだムサシがゲッターチーム操縦者に選ばれる前で、
そのときには早乙女博士(!)が操っていたし、ケガをおしてゲットマシンに搭乗したムサシが3への
チェンジを試みたときには意識朦朧で合体がうまくいかず、結局そのあとは3の登場機会がまったくないまま
正編は終わってしまいました。最終局面でムサシひとりが操縦したゲッターが恐竜帝国の総攻撃に
立ち向かいますが、その際合体変形したのはゲッター1で、1は主役メカだから仕方ないとはいえ、
3での活躍なく玉砕したムサシは死んでも死にきれなかったはずで(そのせいなのかどうか、アーク編で
ムサシのクローンのような人物が再登場するのですが…)、文庫版では短いエピソードながら後付でムサシが
操るゲッター3が登場する回が付け加えられたことで、本人やファンの積年の願いが叶うことになったのです。
また、アニメ版しか見たことない方がご存じないのは、漫画版のゲッター1のフェイス・デザインが
もっと複雑なこと。作画者の石川賢さんは、亀甲から発想を得たこのデザインにこだわり続け、
オリジナル版ではすべてこの複雑なほうのフェイスで登場させたゲッター1でしたが、のちに
発表された作品で描かれる1は、テレビ版と同じく簡素化されたすっきり顔であることがほとんどなので、
一般になじみのある簡略版に右へ倣えしたのかもしれません。コミックスの表紙は、子供向けを
意識したアニメ形式の簡素顔ばかりなので、漫画版の1の容姿がわかる表紙絵も掲載しておきます。
ゲッターロボのフォルムだけでなく、漫画版はテレビとはかなり異なった設定やストーリー展開で、
このあたりは同じ永井豪さん原作の「デビルマン」や「マジンガーZ」などに倣っているとも
言えます。ジャンル的には「バイオレンス・アクション+ロボットもの」という感じでして、
少年サンデー連載時のままでは過激すぎると判断され、一部の暴力的な描写が(小中学生対象の)
てんとう虫コミック版ではカットされた経緯があります。それでも十分激しい暴力シーンが随所に
挿入されてはいるのですが…
そのカットされた部分を復活させた完全版が近年発売され、私のわかる範囲では阿蘇町の図書館で
まだ所蔵されているはずですので、興味ある方は訪れ、ご覧になってください。
正編では恐竜帝国(ハチュウ人類)、G編では百鬼帝国(鬼)と戦ったゲッターチーム。炭次郎たち
より先に鬼を敵に回していたことになりますが、たしか大正時代を舞台に活躍していたはずの鬼殺隊、
時系列的には、炭次郎たちのほうが先に鬼と戦っていたことになるのでしょうかね。そこで取り逃がした
鬼が、のちに百鬼帝国として蘇り、再び人類に挑戦してきたと考えるのもありじゃないですか。