一刻も早く・・・・。再度、日出新聞のマイクロフィルムをかり出し、リーダーでみる。昭和16年2月9日(日)からはじまっていた。「両刃斬撃」の枕には、執筆は「青年教員戸村逸二」とある。
「とむらいつじ」だと! 「たむらいちじ」の姓の一文字、名前の一文字をかえた筆名である。その紹介文は次のようなものだ。
“固く温和しいばかりが能ぢゃない、時代の潮流は今や激しい奔流となって、表面平静かに見えた教育界にも物凄い渦を巻き起し、底に沈殿せる雑殻、老廃物を押し流して、生氣に満ちた新しい教育が国民錬成の名において確立されんとしてゐる。殊に小学校教育は国民学校に生まれ替わり教育新体制の第一歩を踏みださんとしてゐる時-初等教育界に渦巻く暖流と寒流の交流は世人の関心を高めずにはおかない。“両刃斬撃”文字通り教育界に容赦なき一刀を浴びせかけたのは現在市内某小学校に奉職する一青年教員戸村逸二氏である。公正な筆先は両刃の如く縦横に払はれ必ずや教育刷新途上の教育界に大きな示唆を与へるであらう。”
筆名「戸村逸二」に、血が頭に上って、一本とられたという気持ちとこのやろうという気持ちが交差して、読み進めることが出来ない。もちろん、マイクロフィルムの精度の問題、旧字体の漢字、複写の問題などがあり、判読不能の文字がたくさん出てくる。それを一つ一つ吟味しながら、フリーズしがちなところを、他の人たちも巻き込みながら翻刻を進めていった。