ちゃ~すが・タマ(冷や汗日記)

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鈴木耕『私説 集英社放浪記』河出書房新社、2018年10月

2018年12月16日 17時13分13秒 | 

鈴木耕『私説 集英社放浪記』:本屋にあったので、買って読んでみた。出版不況であるが、本の編集の側から、世界を見てみたいと思ったからだ。いまの、出版社のあり方に対して、批判的だからか・・・。とはいえ、集英社などと言う大手とはおつきあいがないし、弱小出版社しか知らない。売れないとしかたがないので、冒険的なものは考えないことになっているし、学術書なので出版しようと思えばお金がかかるのだ。しかし、本に対して、あるいは活字に対して、尊敬がない風潮がそうさせているのかもしれない。大学生は本は読まないようだし・・・ぼやいても仕方がないが。

著者は、戦後、1945年生まれ、早稲田大学卒業後、1970年、集英社に入社。アイドル誌「月刊明星」からはじまって、「月刊PLAYBOY」、「週刊プレーボーイ」、集英社文庫や「イミダス」の編集を経て、集英社新書の創刊に携わる。36年間の編集者生活。その中でも、原発、阪神大震災からオウム真理教事件、権力にあらがう社会批判の目を常に保持してきた。そして、退職後の東日本大震災、沖縄と・・・。「週刊プレイボーイ」には、社会批判の特集や記事が継続して掲載されていたことは、三井に入っていたが、そこにこの鈴木氏の存在もあったのであろう。ちょっと、集英社が好きになった。

同時に、1週間、1ヶ月、旬報もの、1年間といった時間的なスパンの各種の編集に携わっていて、その時間感覚の違いも興味深い。また、雑誌から文庫、新書など様々な形態の出版物の編集を手がけていることもおもしろい。そして、その人のつながりも・・・。退職後の、太田元沖縄知事、愛川欽也のことなどなど。時間と空間、そして人とのつながりを活字として、書物としてどのように結晶させているか考えてみた。

「沖縄スパイ戦史」の監督とも飲み友達とのこと。いま、風邪を引いているので、「沖縄フリーク」と自称している著者に触発されて、温かい沖縄で、ゆっきりしてみたい。著者と同じように、その暖かさを凍り付かせているいまの辺野古に象徴される沖縄の抱える問題、これは尊厳を傷つける政府のパワハラでもあるが、それらを沖縄の歴史とともに感じることになることを自覚しながら・・・。