近年、里山の荒廃が言われ、里山再生が様々な視点から取り組まれている。京都でも山が荒れ、マツタケが採れなくなって久しい。今や高級ブランドの丹波マツタケは1kgが10万円もするそうだ。
下図は京都の年間マツタケ生産量の変遷であるが、1955年(昭和30年)から激減しているのが分かる(著者の吉村先生ご提供)。
マツタケの人工栽培はいまだに実現していない。
著者は岩手県岩泉マツタケ研究所で15年間マツタケの林地栽培に取り組み、みごと生産量を3倍にまで増やした。岩泉マツタケはマツタケとしてのブランド価値を確立し販売価額では4倍にまでなったという。本書は著者のマツタケ研究の到達点と林地栽培のノウハウをまとめたものだが、その言わんとするところはそれだけにとどまらない。
まつたけは日本独自の食文化、里山文化と里山の多様な生態系に密接に結びついており、まつたけ生産がそれらの盛衰の指標にもなりうることを、歴史をひも解きながら語る日本文化の書でもある。著者はまつたけ増産を通してその文化や生物多様性を守り再生しようと訴え、「まつたけ十字軍運動」を立ち上げた。2年を経た今その運動は京都から全国へも広がりを見せようとしている。