能率技師のメモ帳 経済産業大臣登録中小企業診断士・特定社会保険労務士の備忘録

マネジメント理論、経営理論を世のため人のために役立てるために

ハーバードが教える10年後に生き残る会社、消える会社 資本主義はどこに向かって進むのでしょうか?

2013年10月06日 | 本と雑誌

「ハーバードが教える10年後に生き残る会社、消える会社」

ジョセフ・バウアー、ハーマン・レオナード、リン、ペイン著 峰村利哉著

徳間書店 1700円+税


HBS(ハーバードビジネススクール)の3名の経営学教授による著作。

1908年に創設されたHBSの100周年記念行事をきっかけにまとめられたとのことです。

経営本というよりは、経済学本のテイストの方が強いように思いました。


原題は、「CAPITALISM  AT RISK」。


危機のある資本主義・・・といったところでしょうか?

(それにしても、すごい意訳です)。

同書は、2008年のリーマンショックを受けて、資本主義の限界が見えてきたことを受けて、その将来を予測します。

が、そのメインストリームは、かなりポジィティブ。

先進国のソーシャルのトレンドやナショナリズムの課題があまり取り上げられていなかったのは少し不思議でした。


第1部 資本主義の未来に待ち受けるもの

第2部 資本主義の危機に企業はどう対応すべきか

第3部 新たな資本主義の時代に求められる企業の役割


全体的な提言としては、資本主義社会における企業は、政治とも繋がり、倫理を守り、業界を再編しつつ、ビッグチャンスに賭ける・・・といったところでしょうか?


今から躍進するのは、医療業界、環境関連業界…当たり前と言えば当たり前という着地点でした。


興味深かったのが、第2章の「2030年までに世界で起こる14の現象」。

なかなか興味深い点もありましたので、一部を紹介させていただきます。


・さらなる成長 そして、途上諸国の成長加速

・世界全体の富に占める途上諸国の所得分の増加と所得格差の縮小

・中産階級の世界的な拡大と貧困層の減少

・国による成長度合いのバラツキとサハラ以南のアフリカの停滞

・国内における所得格差の拡大

・人口統計上の変化による不平等拡大

・教育格差の解消とその限界

・途上国から高所得国への移民の増加

・途上国で大量の非熟練労働者が失業

・温室効果ガスによる気候変動の増幅

・深刻な淡水不足と品質の悪化


「サハラ以南」問題、「移民」問題、「淡水」問題といった切り口は、ちょっとグローバルな感じで納得です。


また、「2025年までに起こる最悪のシナリオ」という章では、ドーハラウンドの失敗、保護主義台頭、京都議定書から中国・インド脱退、エイズ蔓延、大型サイクロンによる大被害、中国の内部不正で政治問題化・・・といった事項が予測されていました。


この最後にあったのが、以下の一文。


北極地域で領土紛争が勃発する。また、日本と中国の海軍が南沙諸島で発砲し合い、東京でも北京でも、暴徒が大使館を焼き討ちする。」・・・66ページ


日本がフィリピンに沿岸警備隊用の艦船を送るという話もあったと思うのですが、ここで言っているのは、尖閣諸島の話だとは思います。

尖閣を巡って発生した中国における日本企業の商業施設、工場などへの破壊行為、略奪行為はハーバードビジネススクールの教授陣にとってもかなりインパクトを与えたものと思います。


先の大戦のように、些細なきっかけから暴走する国家間の対立。

話し合いだけで終わるとは思っていませんが、それでも双方の良識(コモンセンス)を信じたいと思います。


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