能率技師のメモ帳 経済産業大臣登録中小企業診断士・特定社会保険労務士の備忘録

マネジメント理論、経営理論を世のため人のために役立てるために

「働くは、これから 成熟社会の労働を考える」 日本を代表する6名の労働学者が働くことについて語る

2014年08月30日 | 本と雑誌

久々に岩波書店の本を買いました。


岩波書店は、神田神保町にある老舗の出版社。

岩波新書、岩波ホールも有名です。

ただ、単行本などは少し格調、格式が高く、そのブランド力はなかなかのものです。


今回取り上げる書は、日本の労働、労働経済を専門とする6名の学者による共著。

日本の労働をアカデミックな視点からとらえるとどうなるか?をテーマとしています。

「成熟社会の労働哲学研究会」の中でそれぞれの学者の専門分野からのアプローチを面白く読むことが出来ます。

 

「<働く>は、これから 成熟社会の労働を考える」

猪木武徳編 岩波書店 1900円+税

 

いまや、

「終身雇用、年功序列、企業内組合」といった高度経済成長期に威力を発揮した3種の神器も、その効果性が薄らいでいる状況・・・。

さらには、プラック企業、非正規社員、ホワイトカラーエグゼンプション、メンタルヘルス、高齢者再雇用などなど課題が山積しているのが現代の労働事情のように思います。

同書では、最新トピックではなく、その前提となる日本の労働者・・・働く意義、働く意味といった観点からのアプローチをとります。


目次

1.成熟社会で働くこと 杉村芳美(甲南大学長)

2.地に足の着いた雇用改革を 清家篤(慶応義塾長)

3.多様化するライフコースとその課題 岩井八郎(京大教授)

4.日本人の、なぜ65歳を超えても就労意欲が高いのか 藤村博之(法政大学教授)

5.地域において働くこと 宇野重規(東大教授)

6.中間的な組織での自由な労働 猪木武徳(大阪大学名誉教授) 


興味深かったのが、第4章の高齢者労働者についての言説。

65歳を超えて働き続けるには50歳代の能力開発が重要と指摘、そのためには、1.新しいものに挑戦し続けること、2.頼まれたことは何でも引き受けること・・・。

高齢労働者のマネジメント、労務管理において最も難しいとされる2つのテーマです。


「働く意味」本は、書店でも多数あります。

ハウツー的なもの、スピリチュアルなもの、キャリア的なもの・・・と様々ですが、

日本を代表する労働学者の書いた同書もぜひ一読されるといいと思います。


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リーン・アントレプレナー ビジョナリーに学ぶ事業開発、イノベーション、市場破壊 実にアメリカ的競争社会

2014年08月30日 | 本と雑誌

シリコンバレーやボストンをはじめとする米国産業の底力・・・。

起業、開業、スタートアップ・・・実にさまざまな人たちが新規事業、イノベーションに関与している層の厚い産業界には脱帽です。


いっぽう日本は、失われた20年・・・廃業率が開業率を上回るという状況・・・法人数の減少が続いています。


その対比の中、米国の勢い、フロンティアスピリットをまとめたのが同書。

それにしてもアメリカ人はとても楽観的で、やってみなければ分からないけど、まず「やる」・・・。

そのチャレンジスピリット、フロンティアスピリットは羨ましい限りです。

数年前に出たリーンスタートアップというコンセプト、日本的に言うと「小商い」ということでしょうか・・・よりスマートな起業がトレンドのようです。

中小企業診断士的に言うと、「必要最小限のスタートアップ資金・固定費のミニマム化・在庫の絞り込み」が起業成功のコツといったことになるのでしょうが、起点となるビジョンやイノベーションの部分がどうも弱いように思います。

また、日本の起業事情では、PLANはスゴイけどDOがない、さらにはSEEがないのでスピーディに変化対応できない軌道修正できないといった弱さがあるようにも思います。

日本のMBAやビジネススクールでやっているのも多くが机上での空想が中心・・・美しいチャートやパワポが書けても、ビジネスサクセスには程遠い感じがします。


同書は、全ページカラーで写真や図、チャートで美しく構成されています。

A4サイズヨコの同書、表紙はサーファー・・・とてもファッショナブル・・・見ているだけで爽快です。


さらに・・・

巻頭には、アーリーアダプター・・・初期採用者の名前が数ページにわたって掲載されています。

また、最後には正誤表などはwebサイトへといった表記も・・・。

そう、同書は、時代のスピードの中で進化している動態的な一冊ということが出来るでしょう。

クラウドファンディングやwebを活用すると、こうした本が出来上がるのです。

 

「リーン・アントレプレナー ビジョナリーに学ぶ事業開発、イノベーション、市場破壊」

ブラント・クーパー、パトリック・ヴラスコヴィッツ著 千葉敏生訳

翔泳社刊 2480円+税

 

同書の内容、切り口は、現在の米国の起業家理論を、事例・ケースを交えて集大成したもの。

それほど、新規性の高いセオリーやフレームワークが出ているわけではありません。

が、二人のコンサルタントによって書かれた同書の随所には、経営の現場感が散りばめられているように思います。


目次

1.スタートアップ革命

2.ビジョン・価値観・企業文化

3.海には色んな魚がいる

4.価値が流れをうむ

5.流れに飛び込む

6.事業の実現性をテストする

7.データはもろ刃の剣

8.死の谷を乗り越えて

9.顧客ファネルを見据えるのが真のビジョナリー

10.最後に


面白かったのが、事業実現性のテスト。

ランディングページテスト、コンシェルジェテスト、オズの魔法使いテスト、クラウドファンディングテスト、プロトタイピングテストなどが解説されています。

楽観的に発散し、悲観的に収束する・・・ビジネススタートアップでの重要ポイントも丁寧に解説されています。

また、ファネルといった、自分自身今までよく分からなかったタームも分かりやすく解説されていました。


顧客獲得チャネル  認知

ファネル  信用 興味

コンバージョン  確信

MVP(実用最小限の製品)  満足 期待

成長エンジン 熱狂


各セッションには、ワークシートもついており、ウイスキー片手に落書きしていくことも一興だと思います。

久々に爽快感のあるビジュアル本を読むことができました。

手元に置いておきたい一冊です。


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