1枚のシートで経営を動かす 財務分析で成長エンジンを見つける経営指導の新手法
宮田矢八郎著 ダイヤモンド社 1800円+税
著者の宮田さんは、産業能率大学経営学部教授。
中小企業金融公庫を経て1999年から同大学の教員をされています。
1948年長崎のお生まれです。
同書は、TKC、電通国際情報サービス、宮田教授によって開発された「コンサルティングシート」というデジタルツールをベースとして書かれたマネジメント本。
と言っても、巻頭と巻末には金融の話が出てきたり、宗教と経営といったユニークな視点・論点も登場してきます。
宮田さんの経営研究の集大成といった位置づけとなる書籍です。
同書で赤線を入れたところをピックアップさせていただきます。
1. 永続する企業の3要素・・・経営理念・経営戦略・経営管理
2. 業績管理の手法・・・中長期経営計画・限界利益と労働分配率・部門別業績管理・プロジェクトチームとプロジェクトマネジメント・MBO+マネジメントサイクル
3. 付加価値=人件費(賃金水準・従業員数・採用)+固定経費(経費削減)+利息(金融向け配分)+税金(税率は所与)+配当(株主満足度)+自己資本(企業安定度)
4. 経営者のタイプと利益
タイプ 構成比 平均経常利益 宗教・信条の保有
技術者型 25% 3000万円 42%
バランス型 22% 4300万円 47%
ワンマンリーダー型 19% 3900万円 47%
営業マン型 15% 3600万円 46%
戦略策定型 14% 5900万円 59%
財務管理者型 5% 3400万円 48%
平均 4200万円 45%
5. 経営理念のある企業の経常利益は、ない企業の1.7倍。4900万円/2900万円
6. 事業の苗床的性質・業績への貢献度
・経営理念12.2% 経営者8.3% 人事教育7.1% 計27.6%
・製品開発33.9% マーケティング18.8% 計52.7%
・財務管理13.1% 管理組織6.5% 計19.6%
目次
序章 企業の成長を促すコンサルティングこそ戦略領域
第1章 企業の成長を支援するコンサルティングの要件
第2章 黒字化支援のための経営理解
第3章 経営と人間学
第4章 原因と結果を結ぶ究極の経営分析
第5章 コンサルティングシートで企業の成長を支援する
終章 金融の本道とは何か 経営と金融と財務の視点から
著者は、経営と人間学という文脈の中で、マズローの欲求段階説を同書の中で繰り返し登場させます。
自己実現欲求のさらに上にある自己超越欲求について解説を加えていくのです。
そして、そこから、超越世界について、聖書や禅などの精神世界、宗教世界について言及していきます。
そういえば、松下幸之助さんや稲盛和夫さんも、ある意味、宗教的なところがありますし、また、経営コンサルタントの船井幸雄さんもエヴァやサムシンググレートの存在をたくさんの書物に書かれています。
長年、経営について研究された方々が到達する一つのゴールであるのかもしれません。
マネジメントはサイエンスだという信念を持たれている方からは奇異に映るかもしれませんが・・・。
巻末には、付録として折りたたまれた「コンサルティングシート」がついています。
この2枚のシートは、実戦で使える実務資料として活用できると思います。