少しの間、積読になっていた一冊。
夏休み、ごろ寝読書を楽しみました。
ITCやビッグデータに苦手な自分にとって、人はサイエンスできないよなあ~と考えている文系思考は変わりません(笑)。
原題は、「ピープル・アナリティクス」。人間を統計的に分析するといった意味でしょうか。
著者は、ソーシャルセンサー技術を用いた経営コンサルティング会社のCEO。
MIT博士。
日立やリコーに勤務したキャリアを持たれいます。
ソーシャルセンサーとは、ウェアラブルな「ソシオメーター」を組織構成員が着用し、そのコミュニケーション、組み合わせ等を測定する装置。
いまや胸に着用するバッヂ状になっています。
たばこ部屋やコーヒースペース、ランチの時間等でホンネトークが飛び交い、活き活きしたコミュニケーションが出来るというのは体感的、経験的にわかるのですが、それをソシオメーターを使って測定、分析しようというピープルアナリティクス。
とてもアメリカ的な研究だと思います。
プライバシーの問題や社員の抵抗、拒否等も当然に出てくるとは思うのですが、いずれICカードやスマホ等の解析により、知らず知らずのうちにビッグデータの把握が行われることになると思います。
恐ろしや、恐ろしや。
腰巻には、MITメディアラボ副所長の石井裕さんが注目する新技術として紹介されています。
顕微鏡が生物学・医学に、望遠鏡が天文学に革命を起こしたように、今私たちは、人間の行動を測定し科学的に分析する、新しいレンズを手に入れようとしている。
本書が紹介する人間社会レンズは、私たちの視界を拡張し、コミュニケーションの質を飛躍的に向上させてくれるだろう。
「職場の人間科学 ビックデータで考える理想の働き方」
ベン・ウェイバー著
千葉敏生訳 早川書房 1900円+税
早川書房さんは、たまに経営、マネジメントの書籍を翻訳出版されています。
これが意外に面白く、ついつい手に取ってしまいます。
引き続き最新のマネジメント本の翻訳出版を続けていただければと思います。
経営史の本で必ず取り上げられるホーソン実験。
ハーバードのレスリスバーガー博士を中心に進められた人間研究は、行動科学の先駆けとして知られています。
この研究の中で、工場で働く人々は、研究者からの注目に反応し効率性の高い仕事を進めました。
今回のソシオメーターが全員着用ということになれば、最初のうちは、この「注目効果」で生産性が上がるとは思います。
が、いつも監視されているような感じは、そこで働く人々にかなりのプレッシャーをかけるものと思います。
今までは「観察」。
それが、デジタルデータによる統計的分析になる・・・。
これは、石井さんの言われるように、マネジメント研究におけるエポックメーキングな出来事だと思います。
目次
1.ワカらない組織からワカる組織へ
2.組織の誕生
3.ウォーターサーバーの誕生 バンカメの事例
4.距離なんて関係ない
5.ボクは専門家
6.あなたはクリエイティブ系?
7.無理して出勤するか、家で休むか
8.年間1兆2000億円がムダに?
9.複雑化する世界
10.組織の未来
11.私たちの向かう先
和の精神、阿吽の呼吸、背中を見る、職人技、年功序列、終身雇用、無礼講などなど、
日本的な職場風土は、1980年代のある時期、最先端のマネジメントであったことがありました。
ソシオメーターの導入が進むと、グルーバルスタンダード(アメリカンスタンダード)を導入し、見事失速した日本企業の再来があるようにも思えます。
パンドラの箱を開けるのか、開けないのか・・・。
その意思決定は10年以内には行わなければならない時期に来ているように思います。