
内容紹介
「南北の分断は決して他人事ではありえない時代に、東アジアの平和に向けて私たちはどのような道を見出すことができるのだろうか。
たったひとりの在日コリアン二世の歌が、分断を越える世界を思い描くための道標になると願うのは、無邪気な空想かもしれない。だが、願いなくして未来は描けない。
歌で人々をつなぐためにどんなに困難な状況でも与えられた役割に向き合い、分断の苦しみに寄り添いたいと願い続けてきた在日女性の生き様を見つめた。」
——本書より
「歌で〝故郷〞を届けたいと願っています」
大阪生まれの在日コリアン二世のソプラノ歌手として、朝鮮半島や日本に伝わる曲を歌い続ける金桂仙(キム・ケソン)。
妻として、母として、嫁としての役割を生き、若き日に歌の道を諦め、48歳で音楽大学に入学し、歌手として再生した。元毎日放送ディレクターである著者がロングインタビューに基づく取材をおこない、そのライフヒストリーをはじめてまとめた。
朝鮮半島と日本、韓国と北朝鮮の「分断」。歴史の痛みに、歌で寄り添うことはできるのか。
ひとりの在日女性の波乱万丈の生涯を通じて、多文化共生のあり方を問う。
著者について
坪井 兵輔(ツボイ・ヒョウスケ)
1971年大阪府生まれ。阪南大学国際コミュニケーション学部准教授(ジャーナリズム論)。
慶応義塾大学経済学部卒業後、MBS毎日放送に入社。記者およびディレクターとして、テレビ・ラジオで報道番組の制作を担当。同社ベルリン支局特派員、TV報道局ドキュメンタリー専属ディレクター等を務め、2017年より現職。
主なTVドキュメンタリー作品に『家族づくり——子どもたちと里親の一年』(毎日放送、地方の時代映像祭優秀賞)、『知られざる最前線——神戸が担ってきた〝日米同盟〞』(毎日放送、坂田記念ジャーナリズム賞特別賞)、『見えない基地——京丹後・米軍レーダー基地計画を追う』(毎日放送、ギャラクシー賞奨励賞)ほか。
ラジオドキュメンタリー作品に『故郷の歌』『獄中13年——独裁政権に立ち向かった留学生の青春』(毎日放送)ほか。
共著に『日本のジャーナリズムはどう生きているか』(八巻和彦編著、成文堂)。