▼<平和>それは、諦めや無力感との間断なき戦いだ。
対話が何よりも期待される。
▼<米同時多発テロ>から20年。
分断から協調へ―人間の心を結ぶ連帯が今こそ求められる。
▼困ったとき「助けて」と言える社会、生きることが、無条件に肯定される社会へ。
▼人はつらいことを経験して、心が強くなっていくのだ。
▼人間は、世間を離れては生きていけない。
しかし、世間に振り回され、翻弄される人生は不幸だ。
絶対に強く賢くなければならない。
▼今、どのような団体や組織でも<継承>は大事なキーワードになっている。
人と人とのつながりが大切。
▼何かで、人に喜んでもらってこそ、自身の人生も充実する。
そこに<人生の目的>もある。
▼社会貢献の活動は<手段>ではなく<目的>に変えたい。
▼雄大な自然の流れに身を置くと、<自分の悩み>がちっぱけに感じるものだ。
しなやかな緑の風と連れ立って、散策の道を進む。
▼人生を振り返った時、悔いを残す選択はしたくない。
ゆへに自分の<好き>を貫くと苦境さえも<自分がやりたいことだ>と楽しく頑張れるものだ。
▼コロナ禍、考えて不安になるくらいなら、数年先の実となる努力に時間を使いたいものだ。
▼未来の結果は、現在の努力次第。
▼大自然には、知れば知るほど、無限の学びがある。
最初は目に見える美しさを追っていたが、自然には歴史の営みがあり、表面では見えない輝きが心に届くものだ。
思えば、彼の人生は失敗の連続とも言えた。
学生時代は、中山競馬場で2年余ガードマンをしていた。
それなのに、こっそりと馬券を購入したことが見咎められ解雇された。
また、上野の居酒屋でアルバイトをしていた時には、常磐線のホームで
電車を降りる客と乗る彼との肩がぶっかったことで殴り合いになる。
相手が先に顔面を殴ってきたので、彼は相手の鼻にパンチを見舞う。
相手は偉丈夫な70代の老人だった。
後で知ったのだが相手は、元日本陸軍の大佐であったのだ。
たまたま近くに私服の鉄道警察官が居合わせ、彼は上野警察署に連行され、犯罪者扱いの屈辱を味あうはめになる。
取り調べで彼が学生と分かり、千葉県の我孫子から母親が呼ばれた。
血相を変える母親の姿を見て、彼は滅入るばかりだった。
青山治先生にもご迷惑をかけている。
先生の紹介で最初に勤めた日比谷図書館を半年で辞めてしまった。
「そうか。辞めたのか」先生は咎めることはなかった。
創作 恩師との追憶の続き
トイレから居間に戻った先生は、長い袖の丸首シャツで、ステテコ姿であった。
「おい正孝、くつろげ」と浴衣を持参して勧める。
清水正孝は先生の奥さんが来る前にと、急いでそれに着替えた。
15分ほどして奥さんが日本酒と魚の干物をお盆に乗せて運んで来た。
座って襖を開ける姿は、良家の育ちの所業と想われた。
奥さんは、「どうぞ、召し上がってください」と最初にい正孝の盃に酒を注いだ。
重厚な二合の唐津徳利である。
両手で酒を注ぐ仕草に気品があった。
先生は、それを満足そうに見詰めていた。
「絹江、お前も飲め」
先生は、自分の盃を飲み干すと、それを奥さんの口元に突き出す。
奥さんがためらっていると「遠慮するな」と酒もなみなみと注ぐ。
酒が和風高級座卓にしたたり落ちた。
「飲め、その調子だ。もっと飲め」奥さんは先生に逆らえないのだろう、盃を2度、3度飲み干した。
「酔いが回ったしまいますわ」奥さんは傍で見詰める正孝の視線を意識して、肩をすぼめた。
「お前も、女なんだな。今日は嬉しいか?」と先生は上機嫌となる。
奥さんは40代であろうか、26歳の正孝から見て、母親に近い世代だろうと、年齢差を感じた。
「お前、この正孝に抱かれたいか。お前がよければ、わしはかまないぞ」先生は冗談とも想われない表情のまま言い放つ。
「あなた、人様の前で何をおっしゃるのですか」奥さんは上目遣いに先生をたしなめた。
「わしは、男として正孝に惚れている、粗忽な面もあるが、良い人間だ」
先生は、身を乗り出し正孝に握手を求めた。
正孝はためらいながら手を出した。
先生は正孝の右手を両手で抱えるように、何度も握り返す。
「正孝、今夜、絹江を抱け、こいつは可愛そうな奴なんだ」先生の目が潤んでいた。
正孝は戸惑って、奥さんから目を背けた。
「あなた、あまりも失礼です」奥さんは鋭い声で言い放つ。
「まあ、今夜は長い、じつく飲もう」
先生の酒のピッチが早くなる。
「絹江、もう1本酒を持って来い。冷酒でいこう」先生は何故か段々と快活な表情となっていく。
「正孝、今夜は愉快な酒としよう」
先生は張りのある声で、「人生劇場」を歌った。
「お前も歌え」と促すので正孝も唱和する。