「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

2006・04・11

2006-04-11 06:30:00 | Weblog
 今日の「お気に入り」は、和漢朗詠集から。

 「年々歳々花あひ似たり
  歳々年々人同じからず  宋之問」
       〔現代語訳〕毎年毎年花は色香もかわらず同じように咲きます。
         けれども人はそうではありません。
         去年いた人はもう今年はなく、毎年毎年同じだというわけにはいかないのです。


 「蝸牛の角の上に何事をか争ふ
  石火の光の中に此の身を寄せたり  白」
       〔現代語訳〕かたつむりの角の上で戦争をするといいます。
         彼らはいったい何をなんのために争うのでしょうか。
         ――人間の争いとはつまりはそうしたものに過ぎないのです。
         石を打った時に一瞬の火花の光に身を寄せるといいます。
         ――人生とはつまりそうした短い時間の中に生きているのです。


  「朝に紅顔あつて世路に誇れども
  暮に白骨となつて郊原に朽ちぬ  義孝少将」

       〔現代語訳〕朝には少年の紅顔もはなやかに、浮き世を我がものがおに誇らしげでありましても、夕には白骨となって、野外の塚に埋もれ朽ちるかもしれません。
人生はつねに無常(mortal)であることです。


  (川口久雄全訳註「和漢朗詠集」講談社学術文庫 所収) 
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