今日の「お気に入り」は、中原中也(1907-1937)の詩一篇。
月夜の浜辺
月夜の晩に、ボタンが一つ
波打際に、落ちてゐた。
それを拾って、役立てようと
僕は思つたわけでもないが
なぜだかそれを捨てるに忍びず
僕はそれを、袂(たもと)に入れた。
月夜の晩に、ボタンが一つ
波打際に、落ちてゐた。
それを拾って、役立てようと
僕は思つたわけでもないが
月に向かつてそれは抛(はふ)れず
波に向かつてそれは抛れず
僕はそれを、袂に入れた。
月夜の晩に、拾つたボタンは
指先に沁み、心に沁みた。
月夜の晩に、拾つたボタンは
どうしてそれが、捨てられようか?
(角川春樹事務所刊「中原中也詩集」所収)
月夜の浜辺
月夜の晩に、ボタンが一つ
波打際に、落ちてゐた。
それを拾って、役立てようと
僕は思つたわけでもないが
なぜだかそれを捨てるに忍びず
僕はそれを、袂(たもと)に入れた。
月夜の晩に、ボタンが一つ
波打際に、落ちてゐた。
それを拾って、役立てようと
僕は思つたわけでもないが
月に向かつてそれは抛(はふ)れず
波に向かつてそれは抛れず
僕はそれを、袂に入れた。
月夜の晩に、拾つたボタンは
指先に沁み、心に沁みた。
月夜の晩に、拾つたボタンは
どうしてそれが、捨てられようか?
(角川春樹事務所刊「中原中也詩集」所収)