読む前から期待していた一冊。
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ぼくが愛したゴウスト (中公文庫) |
打海 文三 | |
中央公論新社 |
あとがきを伊坂幸太郎が書いていて、彼のエッセイ『3652』にも収録されていました。
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3652―伊坂幸太郎エッセイ集 |
伊坂 幸太郎 | |
新潮社 |
11歳の何の変哲もない男児が、初めて一人で遠出をしたコンサートの帰りに駅で人身事故に遭遇し、そこから周囲に違和感を感じ始める。
何故周囲が変わっているのか、自分に何が起こったのか、訳の分からないまま、彼は謎の組織に追われることになる・・・。
子どもが心の中で抱えきれない問題を抱きつつ、自ら考え、生き抜いていく様を追っています。
子どもの可能性、「弱い」と思われている者の「強さ」を描写しています。
『裸者と裸者』のように、血生臭さはないものの、子どもには残酷な現実を突きつけ、どう乗り越えるのか、登場人物に試しているところは共通するテーマです。
伊坂幸太郎もあとがきで言うように、安易なエンディングではなく、後に余韻が残ります。
いや、打海作品に飲み込まれています。