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カンヌ映画祭バルムドール大賞受賞の「ツリー・オブ・ライフ」を観た。
40年で5作目という伝説の監督、テレンス・マリックの話題作。後ろで見ていたおばさんの二人ずれが終わって出るときに「もひとつスカッとしない映画ね、疲れちゃったわね」。確かにね・・かくいう自分も印象に残ってるのは地球誕生のビッグバンの映像、モルダウなど全編に流れる音楽、厳しく子供たちをしつけてきた父親の会社がつぶれ、家を売って出るときに私の宝はお前たちだとつぶやくシーン。時代をこえてどこにでもあるような親子像。とくに父親と息子の関係は親子というより男同士のライバル関係にあるようなそんなもろもろのことは大宇宙の長い歴史からみればほんの瞬きの瞬間のできごと。これを映像美と音楽で哲学的に表現しているのか。まあ、人生のなんたるか考えてみなさいとなげかけている映画なのかね。単純に楽しむ映画ではない。
ワーナーマイカル筑紫野の「映画5回で1回無料券」をつかい久しぶりの映画だったが12時45分スタートで20人ばかりの観客であった。ぼーっとしていたせいかいつ始まったのかはっきりせず、地球の誕生、生命の発生的なジオグラフィカルな映像が続き、うとっと眠気を催した時、出産の場面がでて、子供がうまれ、二男、三男とつづき5人家族の姿が映し出され、モルダウがバックにながれ、楽しげな家族の生活が展開される。
画面が宗教の世界にかわる。聖書に人間は俗に生きるか、神に従って生きるかの二つしかないとでてくる。俗に生きる父親は子供たちに「成功には力が必要」と厳しく躾け絶対服従を強いる。喧嘩の仕方まで教える。父親自身は音楽家に成りたかったが実現せず悔いている。母親は神にしたがって生きるタイプでやさしく子供と接し、父親には不本意ながらもしたがっている。やがて長男は父親に反感をもち殺意までいだく。盲従する母親をも軽蔑する。
この映画はやがて成功した長男がなにかむなしく、幼いころを回想することから始まる。「小さい頃は父親が嫌いだった・・・だが」
65歳までのビジネスマン人生でいろいろあったが、食わんがためとか、家族を養うとか、どう出世するとか、もろもろ考える必要がなくなった今、神にゆだねる生き方というか、さしずめ毎朝、読経している般若心経の「空」、くうの心境かもね。とらわれず、ありのままに・・・