
朝4時前に目が覚めてしまい、枕元のラジオのスイッチをひねるとNHKラジオ深夜便、明日への言葉でエッセイストの岡田芳郎さんがでていて、定年後の生きざまについて語っていた。著書に「楽隠居のすすめ・・鶉衣のこころ」があり「虚実自由自在」の生き方を勧めている。器というのは形が決まっており、水も自由が利かない。これが袋であれば自由に形がかえられる。ビジネスマンは挨拶のしかた、お辞儀まで型にはめられる。
「鶉衣」というのは江戸中期の尾張藩重臣、かつ儒学者、俳人であった横井也有(やゆう)の残した俳文を後の天明の狂歌師、大田蜀山人が感銘し、「鶉衣(うずらごろも)」として世にだしたもので、永井荷風が日本に漢字があるかぎり日本文のもはんとなる絶賛したものである。
横井也有は53歳で役を辞し、隠棲生活にはいるが物事にとらわれない自由な精神で余生を生き、人間味あふれる俳句を残した。
・蝶ちょうや 花盗人を つけてゆく
・しからるる 子の手に光る 蛍かな
・柿一つ 落ちてつぶれて 秋の暮れ
「化け物の正体見たり枯れ尾花」も也有の句である。
岡田芳郎さんは前述の著書のなかで、哲学者で精神分析家のユングの幸福の5大条件も紹介している。
(1)心身が健康であること
(2)朝起きて今日やることがあること
(3)美しいものを見て、美しいと思えること
(4)楽しい対人関係が保てること
(5)ほどほどにお金があること
思うに対人関係の処し方が大事だね。先日、写真グループの例会があったが60代が4割、70代以上が6割の人員構成になっている。
還暦を過ぎた人間に性格や価値観をかえろと言っても無理だから、人に変われという前に自分が変わるのが早い。
リタイアして世間のしがらみから脱却して自由に生きたいと思っても、年にふさわしい服装や世間体を守ってほしいと妻が願うなら、あえて反発すると軋轢がおこる。あの爺さん、一体何を考えているんだとむきになってはだめで、ああそう思っているんだとやわらかく受け止める。我を通しても大した差はないのである。
柔軟に、器でなく、袋で受け止める。これが大事だね

せっかく早く目がさめたので、日の出を見ようと散歩にでかける。カメラと三脚をかついで歩きはじめる。あいにく曇って日の出は期待できない。いつもの橋のたもとにくると雀が数十羽、ススキと田んぼを集団でいったりきたり。はじめて見るシーンにシャッターをきる。

まことになじみ深いすずめであるが群れをなして飛ぶ様や、自宅庭のえさ台にくる姿はなかなかにして「いとおかし」被写体であることを再発見した。
ゆるゆると生きるスローライフがよさそうだが、感性だけはさびないようにいつも磨くことにしよう。