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「長き文歌とは別に切り離し噛み砕きては読んでみんかな
(吉田連宜ヨシダノムラジヨロシが答ふる文、また歌四首)」
「1.ありがたくあなたの手紙開ければ陽を懐に入れた思いに
(心神の開朗たること、泰初が月を懐ウダきしに似たり。鄙懐の除こること、
樂廣が天を披ヒラきしが若し。)」
「2.太宰府に行きて都を懐かしみ無常を思い涙落ちると
(年矢停まらず、平生を憶ひて涙を落ナガす()」
「3.達人の境地で時に身を委ね君子のごとく愁うるなかれ()」
「4.できるなら徳・仁もちて名を残し千歳の寿残してほしい
(ねがわくば伏して冀コヒネガハくは、朝に雉キギシを懐ナツくる化を宣べ、
暮に亀を放つ術を存タモち、張趙を百代に架し、松喬を千齢に追はむのみ。)」
「5.梅を愛で仙媛等と歌かわすまるで故事なり繰り返し読む
(兼ねて垂示を奉はる、梅苑の芳席、群英藻をのべ、松浦の玉潭、仙媛の贈答、
杏壇各言の作に類タグへ、衡皐税駕の篇に疑ナゾラふ。耽読吟諷し、
感謝歓怡す。)」
「6.あなたへの心は犬馬のごとくあり人徳みるは向日葵のよう
(宜ヨロシ主を恋シヌふ誠、誠に犬馬に逾ゆ。徳を仰ぐ心、心葵キツカクに
同じ)」
「7.太宰府は遠く離れてやるせない来るべき節自愛されたし
(而るに碧海地を分ち、白雲天を隔て、徒に傾延を積む。何ナゾも労緒を慰めむ。
孟秋膺節、伏して願はくは万祐日新たむことを。)」
「8.相撲部の下向の領使に託したり一片の文謹み啓す、不次
(今相撲部領使スマヒコトリツカヒに因りて、謹みて片紙を付く。
宜謹みて啓す。不次。)」
「以下なるは宜ヨロシ啓マヲせる挨拶を全文あげる声出して読め
(宜ヨロシ啓マヲす。伏して四月の六日の賜書を奉ウケタマハり、跪きて封函を
開き、芳藻を拝読するに、心神の開朗たること、泰初が月を懐ウダきしに
似たり。鄙懐の除こること、樂廣が天を披ヒラきしが若し。至若シカノミニ
アラズ、辺域に羇旅し、古旧を懐ひて志を傷ましむ。年矢停まらず、平生を
憶ひて涙を落ナガす。但達人は排に安みし、君子は悶り無し。伏して冀コヒ
ネガハくは、朝に雉キギシを懐ナツくる化を宣べ、暮に亀を放つ術を
存タモち、張趙を百代に架し、松喬を千齢に追はむのみ。兼ねて垂示を
奉はる、梅苑の芳席、群英藻をのべ、松浦の玉潭、仙媛の贈答、杏壇各言の
作に類タグへ、衡皐税駕の篇に疑ナゾラふ。耽読吟諷し、感謝歓怡す。
宜ヨロシ主を恋シヌふ誠、誠に犬馬に逾ゆ。徳を仰ぐ心、心葵キツカクに
同じ。而るに碧海地を分ち、白雲天を隔て、徒に傾延を積む。何ナゾも労緒を
慰めむ。孟秋膺節、伏して願はくは万祐日新たむことを。今相撲部
領使スマヒコトリツカヒに因りて、謹みて片紙を付く。
宜謹みて啓す。不次。)」