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「
(老身重病年を経て辛苦クルしみ、また児等を思ふ歌五首 長一首、短四首)」
「玉きはる現ウチの限りは平らけく安くもあらむを事もなく喪なくもあらむを
世間ヨノナカの憂けく辛けくいとのきて痛き瘡キズには辛塩を灌ぐちふごとく
ますますも重き馬荷に表荷ウハニ打つといふことのごと老いにてある
吾アが身の上に病をら加へてしあれば昼はも嘆かひ暮らし夜はも息づき明かし
年長く病みしわたれば月重ね憂へさまよひことことは死ななと思モへど
五月蝿サバヘなす騒く子どもを棄ウツてては死には知らず見つつあれば心は燃えぬ
かにかくに思ひ煩ひ音のみし泣かゆ(#5.0897)」
「慰むる心は無しに雲隠れ鳴きゆく鳥の音のみし泣かゆ(反し歌#5.0898)」
「すべもなく苦しくあれば出で走り去イななと思モへど子等に障サヤりぬ(#5.0899)」
「富人の家の子どもの着る身なみ腐クタし捨つらむ絹綿らはも(#5.0900)」
「荒布アニタヘの布衣をだに着せかてにかくや嘆かむ為むすべを無み(#5.0901)」
「水沫ミナワなす脆き命も栲縄タクナハの千尋にもがと願ひ暮らしつ(#5.0902)」
「しづたまき数にもあらぬ身にはあれど千年にもがと思ほゆるかも(#5.0903)」
「
(去ル神亀二年ニ作メリ。但類ヲ以テノ故ニ更ニ茲ニ載ス天平五年六月の丙申ヒノエサルの朔ツキタチ三日戊戌ツチマエイヌ作めり。)」
「
(老身重病年を経て辛苦クルしみ、また児等を思ふ歌五首 長一首、短四首)」
「玉きはる現ウチの限りは平らけく安くもあらむを事もなく喪なくもあらむを
世間ヨノナカの憂けく辛けくいとのきて痛き瘡キズには辛塩を灌ぐちふごとく
ますますも重き馬荷に表荷ウハニ打つといふことのごと老いにてある
吾アが身の上に病をら加へてしあれば昼はも嘆かひ暮らし夜はも息づき明かし
年長く病みしわたれば月重ね憂へさまよひことことは死ななと思モへど
五月蝿サバヘなす騒く子どもを棄ウツてては死には知らず見つつあれば心は燃えぬ
かにかくに思ひ煩ひ音のみし泣かゆ(#5.0897)」
「慰むる心は無しに雲隠れ鳴きゆく鳥の音のみし泣かゆ(反し歌#5.0898)」
「すべもなく苦しくあれば出で走り去イななと思モへど子等に障サヤりぬ(#5.0899)」
「富人の家の子どもの着る身なみ腐クタし捨つらむ絹綿らはも(#5.0900)」
「荒布アニタヘの布衣をだに着せかてにかくや嘆かむ為むすべを無み(#5.0901)」
「水沫ミナワなす脆き命も栲縄タクナハの千尋にもがと願ひ暮らしつ(#5.0902)」
「しづたまき数にもあらぬ身にはあれど千年にもがと思ほゆるかも(#5.0903)」
「
(去ル神亀二年ニ作メリ。但類ヲ以テノ故ニ更ニ茲ニ載ス天平五年六月の丙申ヒノエサルの朔ツキタチ三日戊戌ツチマエイヌ作めり。)」