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「もみち葉の過ぎにし子らと携はり遊びし磯を見れば悲しも(紀伊国にてよめる歌1/4首 #9.1796)」
「黄葉葉のように散り逝く子供らと遊んだ磯を見れば悲しい()」
「潮気立つ荒磯アリソにはあれど行く水の過ぎにし妹が形見とぞ来し(紀伊国にてよめる歌2/4首 #9.1797)」
「波が立つ荒磯だけど水のごと逝きにし妻の形見とて来る()」
「古に妹と吾が見しぬば玉の黒牛潟クロウシガタを見れば寂サブしも(紀伊国にてよめる歌3/4首 #9.1798)」
「その昔妻とわれとが見た黒き黒牛湾をを見れば寂しい()」
「玉津島磯の浦廻の真砂マナゴにもにほひて行かな妹が触フイけむ(紀伊国にてよめる歌4/4首 #9.1799」
「玉津島磯の向こうの真砂にも臭いつくかな妻が触らん()」
「人麻呂のらしさは歌のどこにある情緒の起伏激しいとこか(右ノ四首、柿本朝臣人麿ノ歌集ニ出ヅ。)」