四半世紀前にベストセラーとなったアゴタ・クリストフの原作は,出版直後にすべて読んでいたのだが,細かなエピソードはほとんど忘れていた。おかげで三部作の第一作を原作者の母国であるハンガリーのヤーノシュ・サースが監督した「悪童日記」は,まったくのオリジナルな物語として楽しむことが出来たのだが,これも今はなき赤瀬川原平翁曰くの「老人力」がついてきた証拠なのだろう。
ほとんど忘れていた原作の中でも,辛うじ . . . 本文を読む
数多いジョン・ル=カレの小説の映画化作品の中でも,トーマス・アルフレッドソンの「裏切りのサーカス」はとりわけ高い世評を得たようだが,個人的には台詞の一つも疎かに出来ない,あまりにも複雑巧緻な作りに疲れてしまい,裏切り者が判明した後の余韻にひたることが叶わなかったという記憶の方が強い。
その点,ロックミュージシャンのポートレイトの第一人者だったアントン・コービンが「ラスト・ターゲット」に続いてミステ . . . 本文を読む