風・感じるままに

身の回りの出来事と生いたちを綴っています。

生い立ちの景色(32) 入社試験

2012-02-27 | 生い立ちの景色
1960年12月 14歳の冬

二週間前に入社試験があり、きょう学校から帰ったら受験したM電器から少し大きめの封筒が届いていた。表面の下の方に「入社試験結果通知書」と書いてある。
ハサミで中身を切らないように上の方だけ細く切ろうとしたが、手が震えてなかなか上手く切れない。中には紙が2枚入っていた。

ドキドキしながら取り出した。「この度は、弊社への入社を希望し…」との書き出しで始まった文書の少し下の方に、「筆記試験結果『合格』」と少し大き目の字で書いてあった。やったー!合格や。そして、もう一枚の紙には1月になってからの面接日が書いてあった。
試験問題はそんなに難しくなかったので、たぶん大丈夫だと思ってはいたがやっぱりうれしい。

夕方、畑から帰ってきた親父とおっ母ァに、「合格や、通知来たで」というと、おっ母ァは「よかったのー」といった。親父は、「ちょっと、見せてみろ」といって、通知書を見ながらニヤッとしていた。
晩飯の時に俺がみんなに言うつもりやったのに、姉ちゃんや兄ちゃんが帰ってきたときにおっ母ァが先にいうてしもうた。

合格やいうても、まだ筆記試験だけ。来月の「面接」とその後の「家庭訪問」を通過しなかったらほんまの「合格」やない。まだまだ安心はでけへん。
3年前からM電器系のM電子工業に勤めてるキョウ子姉ちゃんが言うた。「この頃は、面接と家庭訪問が厳しくなって、それで落とされる人が多いんやから」と。

今日の晩飯のおかずは、いつもとあんまり変わらなかった。肉が多めに入ったすき焼きは、全部合格して入社が決まるまでお預けや。


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1 コメント

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Unknown (中国迷爺爺)
2012-02-28 21:42:11
ほのぼのとした情景です。読んでいてご両親はどんなにお喜びになっただろうと思いました。続編も楽しみにしています。
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