お前とは暑かった夏の間しばらく無沙汰していた。今日は昼から予定もなく、天気も良かったので久しぶりに俺に付き合わせた。
山沿いの道をしばらく走った。今年は秋になってからも夏日が続いたせいか、多くの木々の紅葉はまだまだという感じだ。川沿いの道に出たら西からの冷たい風がススキの穂を揺らしていた。今日は気持ちがいいだろう。
他人様の物置からお前が初めて俺の家に来た時は、大型ゴミにでも出そうかと思ったくらい埃だらけ錆びだらけだった。あまりにも可哀想だったので、俺が少しばかり手を掛けてメンテナンスをしてやった。あれから俺とお前の付き合いが始まったのだ。
あれからもう10年近くなる。酷暑の時も雪がちらつく時でも文句ひとついわず本当によく走ってくれたが、最近お前もだいぶガタが来たようだ。もう少し付き合ってもらいたいと思っていたが、メンテナンスをするにも年代物でもう部品がなかなか手に入らなくなってきたのだ。
残念だがそろそろお前とサヨナラする時が来たようだ。今日は記念にお前の最後の雄姿を写真に撮ってやろう。
長く俺を楽しませてくれてありがとうよ。