ワラビを青く茹でるために
出雲地方では銅板を一緒に入れるという噂。
料理研究家の中村成子さんが、著書に書かれているのを今日発見。
10円玉でもいいのかしら……
中村さんは東京のほうで生まれ育った方だが、
出雲に魅せられ、現在は出雲にも家を持って活動されている。
わたしはこの人の本を信用している。
なぜなら、実際にお目にかかって、お料理を食べさせていただいたことがあるからだ。
確かきんぴらごぼうだったと思うけど
食べた瞬間、きんぴらに頭張り倒されたかと思うほど、衝撃を受けた。
涙まで出てしまった。
決してそのとき精神不安定だったとか、神がかり状態だったとか
宗教的な心境だったとかいうわけでもなく、断食して飢えていたわけでもない。
おいしいということを最初から知っていて期待していたわけでもない。
でも、寝ぼけた頭のまま、なにげなく一口口にしたら
「何、これ?」と絶句してしまうようなおいしさだったのだ。
特に変わった味付けをしているわけでもない、何に凝っているわけでもない
普通のきんぴらごぼう。
それがとんでもなくおいしくて力強かった。
どう筆を尽くしても大げさだと思われてしまうだろう。
珍しい香辛料を使ったり
材料をふんだんに使って色とりどりにしたり、上手に味をつけたりして
おいしく作るレシピはいくらでもある。
パッと見おいしそうなお料理、そこそこおいしいお料理は
○レン○ページとか料理ブログでもいっぱい見かける。
でも、「ただのきんぴらごぼう」をここまでおいしくできるなんて、
ということに驚いたのだ。
甘いとか辛いとかを超えた、「力」「気」「神」とでもいいたくなるものだった。
ちょっとお料理上手な主婦か、あるいはセレブな奥様が誰かのコネで運よくテレビに出ちゃったというのではない。本物ってこういうことなんだと思った。
しかしその本物の味はテレビでは絶対伝わらない。
あ、いや、中村さんはものすごい名家の娘さんらしいのだけど、その肩書きで生きているのではなく、料理の腕が絶対本物なのだ。
料理ブログの流行によって
お料理もビジュアル化が進んでいると思う。
きんぴらごぼうなんて、きわめて地味で、ブログ向きではない。
あれから2年経った今も、あの体験は薄れない。
というか、あの体験をしたかどうかで、わたしの人生はものすごく違っているだろうと思う。
本当においしいってどういうことなのか、本当の料理ってどういうことなのか、知ったのだ。
とうていその域に達することはできないけど、何を目指せばいいかは分かるようになった。
その機会を作ってくれた野田さんにも感謝。総理の野田さんじゃないですよ。
マーマレードも、ほかの本では何度も水を変えてあく抜きすると書いてあって
今年はそれも試したけれど
結局中村さんの本の通りに作った、一晩水にさらすだけのやり方が
わたしには今のところ一番おいしいことが分かった。
もっともマーマレードの場合はみかんによりけりだと思うから、
一概にはいえないけど。
ちなみに、中村さんに、「どうしてこんなにおいしくできるのですか」とお聞きしたら
「命を大切にし心を込めるということです」という意味のことを言われていた。
とにかく、ワラビには銅板だって。
ほんとに、緑じゃなくて青っぽく仕上がってるのを見かけるもの。
そこまで青くなくてもいい気がするけど、出雲の人のこだわり&食卓のお洒落なんですね。
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