のりぞうのほほんのんびりバンザイ

あわてない、あわてない。ひとやすみ、ひとやすみ。

てるてるあした

2006年07月02日 19時28分18秒 | テレビ鑑賞
■のりぞう的2006年春クール2位
■木曜深夜放送
■出演:黒川智花、木村多江、草笛光子
    荻野目慶子、ブラザートム
■脚本:成井豊、真柴あずさ(キャラメルボックス)

■ストーリ
 架空の町「佐々良」を舞台とした加納朋子の「ささらさや」と
 「てるてるあした」が原作。「てるてるあした」のヒロイン
 照代(黒川智花)の物語を縦軸に「ささらさや」の主人公
 サヤ(木村多江)のエピソードを織り込んでいる。
 照代は裕福で順風満帆な人生を送っていたが、両親の倒産を機に
 「親も友だちもお金もない」生活に落ち込む。遠い親戚である
 久代(草笛光子)を頼って「佐々の館」という下宿やに
 住むことになった照代。そこには“少女の幽霊”がいる上
 照代には“奇妙なメール”が届く。

■感想
 大好きな小説のドラマ化ということもあって、楽しみにしてました。
 小説の感想はこちら。

 しかも脚本は大好きな劇団キャラメルボックスの脚本家さんコンビ。
 成井さんが描く作品には共通して、現実世界で出逢うのは
 難しいぐらいの人の「優しさ」や「真心」が描かれていて、
 その世界観が見事に加納さんの原作と融合されてました。

 黒川智花さん、木村多江さん、ブラザートムさんと
 昨年同じ時間帯で放映されていた「雨と夢の後に」で
 出会ったことのあるメンバーで安心して見れたし。
 (こちらの作品の感想はコチラ

 もっとも黒川さんに関しては、当初、照代を演じるには
 かわいすぎるのでは?と違和感を感じていましたが。
 それでも、愛情に飢えている女の子を繊細に演じていて、
 憎まれ口を叩かずにいられないところとか
 気が強そうなところまで原作どおり。
 最後には思いっきり照代をサヤさん目線で見守ってました。

 エピソードひとつひとつが「人の優しさ」とか
 「親子の絆」をテーマにしていて、見終わった後
 ほんの少し優しい気持ちになれました。
 架空の町「ささら」での人と人との触れ合い方も好きでした。

 みんながおせっかいでぶっきらぼうで、
 自分の生活を大事にしていて、でも、よそ者の照代のことも
 ちゃんと面倒を見てくれて。
 その面倒も「自分にできないことはしない」という
 潔い親切でとても心地よいもので。
 久代さんの教え子が照代を自分の職場で働かせてあげるけど
 決して照代を甘やかさない。人手が足りてきたら、きちんと
 解雇もする。そういうべたべたに甘えてないけれど
 思い合っている町の人々が素敵でした。

 最終回、久代さんがなくなったとき、その知らせを聞いた
 教え子たちが自分たちの職場で、家で、久代さんの家の方角を
 向いて深々とお辞儀をする場面はもっとも涙がこみあげてきた
 よい場面でした。
 そして、ラスト。ドラマの世界観が見事に描かれていた
 主題歌で更に泣かされました。
 
 「人はもっと優しくなれるでしょう?
  大切な人 大事にしようか
  口に出して言えないことでも
  触れるだけで運命超える
  明日を生きよう どんな明日でも」
               BY平川地一丁目「運命のむこう」

 おそらくこのドラマを見たことがない人でも
 この曲のメロディラインと歌詞で切ない気持ちになれるはず。

 とにかく登場人物がみんな優しいファンタジーでした。
 「その優しさこそがファンタジーなのかも」と思ってしまう
 現代ってせちがらいなー。

ラヴレターの研究/渡辺淳一

2006年07月02日 19時27分33秒 | 読書歴
■内容
 文豪、才人たちが綴ったラブレター19通。
 竹久夢二、太宰治、芥川龍之介、谷崎潤一郎、山本五十六
 明治、昭和の文豪、才人たちのラブレター19通。
 その生々しい心情あふれる恋文をとりあげ、時代と恋の背景を
 解き明かす。

■感想 ☆☆☆☆☆
 ラブレターを書いたことはない。
 手紙を書くのは好きだけれど、好きだからこそ、
 手紙の危険性はよく分かっている。メールや電話とは
 まったく違う危険性。だからラブレターは書かない。

 自分の思いを文章にするということは、
 自分の感情と向き合うということ。
 文字にするために、自分の中の思いを適切に表現する言葉を探す。
 この行為によって、自分の感情をより強固にしてしまう。
 自分で自分の思いを再確認してしまう。
 本や映画の感想や日常生活を綴るときには
 文字にすることで物事を客観的に見ることができる。
 けれど、自分の感情を書き綴り始めると、俄然、逆の作用が
 働き始める。思いは高まり、感情がより豊かになってしまう。
 後から考えると、なぜあんなことを、あんなに熱心に
 語ってしまったのだろう、と恥かしくなってしまうような作用。
 それが手紙であり、ラブレターだと思う。

 けれど、そういうラブレターに対する私の「マイナスイメージ」は
 この本を読み終わる頃には覆された。
 恋文をいただくのもいいかもしれない、と思った。
 訂正。
 知性を感じさせる恋文や、誠実さにあふれる恋文は素敵だな、
 と思った。どんなラブレターでももらって嬉しいのかというと、
 それはやはり違うような気がする。
 たとえば気障な文章やどこかで聞いたことがあるような
 個性の感じられない言葉が綴られていたら、やはり赤面のあまり
 読み進めることができないようと思う。

 この本に収録されているのは「文豪」と呼ばれる人のものが多い。
 文章を書くのが仕事の人。けれど、「文章」のうまさではなく
 彼らの言葉との付き合い方に感動した。
 思いの丈を感情のままに文字にして、それでも素敵な文章で
 あり続ける能力。それは、「文章のテクニック」ではなく、
 当時の人々が現代に生きる私たちより、言葉と真摯に
 付き合っていたからだと思う。手紙にはメールほどの手軽さがない。
 だからこそ、その言葉に託した「思い」はより誠実なのだと思う。

 時にラブレターは読み手に恥かしい思いを抱かせる。
 けれど、この作品に収録されている手紙のほとんどは
 「好き」という感情をいとおしく思わせてくれる。

間宮兄弟/2006年日本

2006年07月02日 18時49分26秒 | 映画鑑賞
■ストーリ
 ビール会社の商品開発をしている兄・明信(佐々木蔵之介)と、
 小学校の公務員の弟・徹信(塚地武雄)の間宮兄弟は、
 マンションでふたり暮らし。一緒にご飯を食べ、野球観戦で
 熱くなり、ビデオを観ては涙する。もういい大人のふたりだけど、
 仲の良さは子供の頃と全く同じ。いや、むしろさらに仲良く
 なっている。ある日、彼らは行きつけのレンタル屋の
 店員、直美ちゃん(沢尻エリカ)と、徹信の務める小学校の
 依子先生(常盤貴子)を誘ってカレーパーティーを開くことを
 決意。頑張って彼女たちに声をかけるのだった。

■感想 ☆☆☆*
 森田監督が苦手だ。森田監督の作品「模倣犯」を見て以来
 その思いは更に深まった。だから、今回の作品も正直、
 鑑賞を迷っていた。それでも、最終日直前に、鑑賞。

 面白かった。ほのぼのとした。ふたりの兄弟には親しみを感じたし
 この映画に好感を抱いた人たちの気持ちもよく分かった。
 森田監督の作品の中では最も楽しんだし、好きな作品となった。

 けれど、「絶賛」はできない。
 それはきっと私自身が「間宮兄弟」側で生きてるからだと思う。
 作中、私がもっとも共感し、心に残った科白は
 同僚の不倫話に落ち込んだお兄ちゃんが酔っ払って発する
 次の言葉だった。

 「人間は複雑だなぁ。男がいて、女がいて、さらに男がいて。
  なのに、僕には何にもない。」

 いちいち、メモにとっていない上に、記憶力にまったくもって
 自信がないので、本来の科白とは違うと思うけれど、
 こんなニュアンスの言葉だった。
 明信は同僚の不倫話に落ち込んでいるのではない。
 同僚は不倫までして、人間関係が複雑になっているのに
 自分には弟の幸せで穏やかな日常しかない。そのことに
 落ち込んでいるのだ。

 ごく平凡な日常。小さな幸せ。陽だまりのような弟の存在。
 それらすべてが幸せだと分かっている。現状に不満はない。
 それでも、自分の幸せを分かった上で、ふと孤独を感じる。
 不安になる。自分には何かが足りないのではないかと。
 穏やかな幸せはあるけれど、「わくわく」や「どきどき」はない。
 周囲の人たちは泣いたり怒ったり、人を好きになって
 嫉妬したりしているというのに。

 そういう穏やかな日常に対する不安がすごく分かってしまった。
 だから私は終始、笑いながら、それでも笑えなかった。

 彼らは日常生活の中から幸せを、楽しみを見つける能力に
 長けている。それはきっと幸せなことだ。
 けれど、彼らが自分の気持ちをぶつける相手は、常に自分の兄弟なのだ。
 大好きな相手。自分のすべてをさらけだせる相手。
 負の感情を見せられる相手。
 そういう相手がいるという幸福。
 そういう相手を兄弟以外に見つけられない不幸。
 この幸福と不幸の絶妙なバランスは、たぶん当事者しか分からない。

 「間宮兄弟を見て癒された。」
 「日常生活を楽しむことの幸せが伝わってきた」
 なんていう感想を見ると、この人たちはまっとうに
 恋愛感情もフルに稼動させて生きてるんだろうな、と
 少し寂しくなってしまう私は、少々、物語の中に入り込みすぎて
 しまったのかもしれない。

 とはいえ、佐々木さんと塚地さん演じる間宮兄弟の会話には
 思いっきり笑ったし、ほほえましく見守った。
 間宮兄弟が仲良くなる女性を演じた女優さんたちの美しさに
 幸せ気分にもなれた。沢尻さんは今回も大変キュート。
 ちょっぴり計算高い女の子なのに、その役を
 「でも好きな相手には一途」と思わせてくれる。
 嫌味なくかわいらしく演じられるってすごいと思う。
 そして何より沢尻さんの妹を演じた北川景子さん。
 彼女の「愛じゃないよ。友情だよ。」の抱擁とそのささやきは
 この作品で一番の盛り上がりどころだったのではないかと思う。