三途の川から舞い戻ってきて、今日でまる五年。
東京転勤の前日だった。
激痛に襲われるわ、心臓は止まるわ、当時はそりゃもう大騒ぎ。
職場の机には、今も大量の薬を常備しているのだ。
病床で、「五年後生存率なんてどうですかねえ」とギャグをかました私に対し、
主治医は「まあ、前向きにいきましょうよ」と言葉少な。
さすがの私も心が揺れた「夏」であった。
ほぼ三カ月の療養後、予定通り東京へ転勤。
年末、思いついたのが「五年日記」の購入である。
まだ年少さんだったチビの寝顔を見ながら、
「これを最後までつけたいものだ」なぞと、最初に記した。
日記などつけるような野郎ではなかったのだが、人間、弱いモノである。
この五年間、何が変わったのだろう。
まず野菜を食べるようになった。
強迫神経症気味にスポーツクラブに通い、物欲に拍車が掛かった。
何より、「軍人」から「遊び人」に転じたことは劇的変化ではある。
いずれも健康不安から来るものであろうし、生き急いでいるような気もする。
自分に折り合いをつける作業は難しかったが、ソルジャーには戻る気はない。
少し淋しいが、まあしょうがない。
生きてるだけで丸儲けである。
ただ、無駄に鍛えているせいか、見た目は健康そのもの。
もともと「やんちゃ系」の人間、重いモノを上げたり下げたりする行動が好きなのだ。
ホントは有酸素運動だけしてたらいいのに、ついついウエートもやっちゃう。
人事の季節、お約束のように健康不安を言い募る私に対し、
「仮病」「詐病」の眼を向ける上司は後を絶たない。