誇りをもって仕事を行う

新米弁護士は、殺人事件の国選弁護人を担当する。
ドイツで30年以上にわたり模範的市民として働いてきた初老のイタリア人が、ベルリンのホテルで経済界の大物実業家を殺害する。
被害者は国選弁護人の少年時代の恩人。
まったく口を開かなく完全黙秘を貫く被告人調査の中で、自身の過去やドイツ史上最大の司法スキャンダル、そして驚くべき真実と向き合うことになる。
法律を真面目に守るドイツ人が前例主義でない、忖度しない、権威や権力に怖じ気づかない国民性が描かれている。
若い人をからかいながらも、正確なロジックやエビデンスをリスペクトし、励まし育てる社会。「正義」の前で謙虚になり、一度決めたことでも、頑なに守り続けることなく、法律ではない、人の良識によって方向に変える勇気もある人たちであること。
その昔(紀元前1776年)、ハンムラビ法典では「社会秩序が神々によって定められた普遍的で永遠の正義に根差している」とし「この地に正義を行きわたらせ、悪しき者や邪なる者を廃し、強者が弱者を迫害するのを防ぐ」とありバビロニアの社会秩序が保たれた。
アメリカ合衆国の独立宣言には「万人は平等に作られており、奪うことのできない特定の権利を造物主によって与えられており、その権利には、生命、自由、幸福の追求が含まれる」とある。
しかし「想像上の秩序」であり、昨今のアメリカ国内の事情を鑑みると理想でしかない。
人として生きること、トルコ人の苦しみ、イタリア人の悲しみ、ドイツに生きるものとしての幸せの共有。
ドイツのダークサイドは存じ上げないが、戦争犯罪を反省し禁忌とまでされている仕草等、恥ずべき事は恥として認知し、再度、不幸な行いを許さない風潮でもあるところが、現代に生きている我々にも一途の安堵が有る。