夏休みに長期縦走しないなんて⋯
今年は我慢の年ですね。
でも有名な山に行かなくたって、僕には里歩きがありますから。
そう、かねてから歩き繋いできた「関東ふれあいの道(首都圏自然歩道)」です。それもいよいよ栃木県を踏破する時が来ました。
群馬も大変だったけど、栃木は「東北自然歩道」と接続するために茂木から白河までコースが延長されたので歩く距離もぐっと増え、けっこう長くかかりました。
現在も整備は続いており、日本全土の自然歩道はなんと27,000kmにも及ぶ距離となりました。
あまりにも広大すぎるプロジェクト、環境省が母体となりそれぞれの自治体が整備するのです。
整備するって言ったって、これだけの道を常に快適にしておくなんて無理です。
草刈りが間に合わず薮になっているなんてことは普通にあります。
歩きながら感じたことは『それにしても、ここに道標をつけるのは大変だっただろうな』ということです。
まあ、それが仕事って言っちゃえばそれまでなんですが。
何時間も歩かなきゃならないこの場所に、この重量の道標⋯。
もちろんヘリで運んで近くに降ろしたりするんでしょうが、それぞれのポイントまでは人間が運ぶんです。
それこそ道標一つに丸一日かかるなんて事も普通にあったでしょうね。
だとすれば、もっともっと多くの人に歩いてもらいたいですね。
整備お疲れ様、そしてありがとうございます。
今日のスタートはここ。
「舟石峠」
先週歩いた銀山平から接続したコース上にあるところで「備前楯山」の登山口でもあります。
今回のコースはなかなか難しく、どうやって攻略するか何度も計画を練り直し変更してきたところです。
錨形にレイアウトされたコース、なるべく同じ道を歩かずに踏破する方法なんてあるのか⋯。
自宅を出たのが21時30分、現地到着は0時30分でした。
舟石峠の駐車場には先客が一台。
人が乗っているかどうかは分かりませんでした。
駐車場には鹿が群れていて、その中で寝るのはあまり気持ちの良いものではありません。
そういえばここに来る途中、道路に鹿が倒れていました。
身体があらぬ方向に曲がっていて、角を支えに顔だけが夜空を見つめていました。
鹿は動き出しがゆっくりなので、気をつけて運転しなければなりません。
山に夜入ると必ずと言っていいほど鹿に会います。安全運転手でいきましょうね。
まず積んできた自転車を降ろします。
そう、今日はこれを駆使して効率よく動くつもりです。
降ろしながら見上げた満天の星空はあまりにも美しく、その中に一筋の流れ星が現れました。
鹿たちのことは忘れ、しばし星空を見上げていました。
とりあえず寝るか。
長座布団の二枚重ね、これが僕の寝床です。
車内はちょっとした蒸し暑さを感じるので、今年から導入の小さな扇風機を回して寝ることにしました。
起床は4時40分、ゆっくり支度して自転車を組み上げます。
それに乗って坂道を下り、銀山平まで降りていきました。
まず「銀山平展望台」に自転車を置いて取り付きます。
展望台って言っても普通に登山でした。
5時20分、古い鉄階段を登って落ち葉で分かりにくくなった道を進むと道標がありました。
それにしたがって行った先にはこのような展望台がありました。
ただ銀山平が見えるというだけでしたが、それでも森は綺麗でした。
往復20分ののち、来た道を歩いて舟石峠まで戻ります。
作ってきたおにぎりは炊飯ジャーの中で乾燥し、ところどころ焼きおにぎりのような食感を伴っていましたが、それを食べながら登っていきます。
食べるものが無くなったら、こんなものでも美味しく感じるんだろうなと思うと我慢できます。
舟石峠に着くと「備前楯山」に登ります。
登山口はここから出ているので、そのままピストンします。
ススキのような植物が登山道を覆っており、掻き分けながら進みます。
朝露が僕のズボンをビショビショに濡らしていきます。
こんなことだろうなと思っていたので、朝は長ズボンにしました。
40分ほどで山頂に到着です。
途中、麦わら帽子のおじさんとすれ違いました。この方が昨夜駐車場で寝ていた先客です。
山頂からは日光の山々が丸見えでした。
右手奥に霞んで見えるのが「日光男体山」です。
ここでしばらく休憩しました。
持ってきたプチトマトを食べて口の中がさっぱりしました。
すぐに下山します。
車に戻って濡れたズボンを脱ぎ、ショートパンツに履き替えます。
今日も暑くなりそうだぞ。
まず「銀山平展望台」に置いた自転車を回収し、再び折り畳んで荷台に放り込みます。
舟石峠に戻り、自転車を組み上げます。
車はこのままここに駐車しておきます。
施錠を確認して、自転車にまたがって長い長い坂道を下っていきました。
ブレーキをキーキーいわせて降りていきます。
やがて「通洞駅」に到着し、ここの自転車置き場に置きました。
自転車置き場といっても屋根が吹き飛んだ鉄骨だけの駐輪場ですが。
ブレーキから焼けたブレーキシューの臭いがしました。
通洞駅は以前別コースを踏破したときに、わたらせ渓谷鐵道を使って利用した駅です。
この時間は無人になっていました。
コーラを一本買ってスタートします。
ダムが見えてきました。
天気が良いので水がより青緑色に見えます。
青緑に見えるのは光の屈折が影響しているらしく「チンダル現象」と言います。
ちなみにチンダルは人の名前です。
不純物を含まない綺麗な水はこうして青緑に見えます。
足尾銅山精錬所跡です。
かつてのゴールドラッシュ的な採掘現場だった足尾銅山、そのの勢いを想像させる建物にしばらく足が動きませんでした。
さらに登っていきます。
暑くなってきました。
足尾ダム(足尾砂防堰堤)が見えてきました。
すごい規模です。
銅山による精錬所の煙害により、はげ山と化したこの地域は台風などが来る度土砂が下流域に甚大な被害をもたらしていました。
一度は計画が頓挫したもの、その必要性から建造されたのもです。
このダムの上流に「銅(あかがね)親水公園」があります。
「銅橋」という吊り橋がかかっていました。
渡ってみると広い公園になっていました。
そこのテーブル付きのベンチに座って、ザックを降ろしました。
作ってきたサンドイッチを取り出して半分食べることにしました。
エリンギピーマン黒瀬のスパイス炒め、マーガリン&焼きマヨネーズサンドです。
かじりかけで申し訳ありません。
爽やかな風に吹かれながらのランチは美味しいことこの上ないです。
それとオレンジの砂糖がけをジップロックに詰めて、氷水に貼り付けてきました。
それを半分食べました。
冷え冷えで甘くて美味しかったです。
今はこうしてなるべく家のものを持って来るようにしています。外では飲み物ぐらいしか買わないようにしています。
でも、関東ふれあいの道は僕にこんな事の楽しさをたくさん教えてくれました。
銅親水公園の北側はこうなっていて、松木川や仁田元川など複数の河川が合流しています。
戻ります。
親水公園がコース終点なのです。
今日の行程で唯一の下りになりました。
何故かとても気持ちよくなって少しだけ走ってみました。
身体が軽くなったような気がしました。
途中には「水力発電所跡」や「足尾銅山社宅跡」があります。
そんなに大昔ではない文明の進化を見ると、現在の環境問題なども未来にはこうした史跡として保存され未来人がそれを見物するのかなと思うと不思議な気持ちになります。
どうか夢と希望に溢れる未来でありますように。
さすがに下りは早い。
あっという間に精錬所の煙突が見えてきました。
「古河橋」。
貴重な産業遺産だそうです。
建立には様々な出来事があったので興味のある方は画像を拡大して説明文を読んでみてください。
今日最大の試練の始まりです。
焼けたアスファルト、ミミズが何匹も這い出してはカラカラに乾燥し、風は緩い追い風にて歩くと無風状態、太陽の位置も上がり日陰は少なくなっています。
何台かの車に追い越されますが、みんな僕を見て哀れんだ顔をしていきます。
あの空と山の境目までこれが続くかと思うと毎度のことながらキツいです。
たまらなくなって座り込んだところを渾身の自撮りして見出し画像にしました。
一台の車が背後から降りてきました。
僕を見つけると心配そうにゆっくりと降りていきます。
そりゃそうだ、いきなりこんな所で座り込んだ人間見つけたら何だと思いますって。
やがて目の前にいきなり現れた舟石峠駐車場。
木陰に停めた車はすでに炎天下にさらされ燃えるようになっていました。
しばらく休んで、ビショビショになったウェアを着替えました。
さて、通洞駅まで自転車を回収に行きますか。
ここまでのデータ
歩行距離 16.6km
累計標高差 +1,040m
所要時間 6時間20分
29,000歩
自転車を回収した僕は次の地点をナビに入力します。
栃木県コースラストは茨城県との接点「アユおどる清流のみち」です。
ただ、コース上一番のポイント「鎌倉山」は以前歩いた際に登頂済なので、今日は下山口から歩くだけです。
鎌倉山を歩く多くの人が駐車場として利用する「大瀬園地」、去年の台風19号によりこのあたりは浸水し被害は甚大でした。
隣にある「ふるさとセンター茂木」は今も修復中です。
川を渡るコースを歩いた時に橋の上から見た光景は悲惨でした。
残念ながら景勝地である「鷹ノ巣」周辺は倒木などにより通行止めとなっています。
コースは迂回するよう指示されていて、そのルートを示す看板も設置されていました。
昭和63年に全線開通してから今の今までこうして手を加えながら整備し続けられています。
コース終点になる茨城県との境に自転車をデポしました。
ここから車まで歩きます。
さすがに平地になると物凄く暑いです。
陽が傾く時間帯にスタートしました。
また登り基調です。
自転車で登るのは歩く筋肉を残せなくなるので、どうしても下りに使いますから仕方がないですね。
正面から太陽が僕を照らしてきます。
下を向いて帽子のつばを下げてこれを拒みます。
木陰に入るとちょっとホッとしますが、また丸焼きになります。
何度も繰り返しながらなんとか車に戻りました。
栃木県踏破はセミのような大きさのウシアブたちが迎えてくれました。
通りかかる車からの視線も気にせず、パンツ一丁になって着替えます。
温泉にも入りたかったけど、着替えたらさっぱりして我が家温泉でもいいかなと思えてきました。
女房にLINEします。
『終わりましたー、我が家温泉にしまーす』
『はーいお疲れ様ー』
帰り道に車を洗車機に入れてこびり付いた虫を洗い流し、スーパーに寄って食べたいものを買います。
結局自分が普段から好きな「餃子と焼きそば」になりました。
他にも食べたいものはあるけれど、今はこれかな。
子供たちのおやつも買って、家に着くと女房が裸で迎えてくれました。
(笑)
風呂上がりだそうです。
下の子が風呂を洗って我が家温泉を準備してくれていたらしいです。
女房は先に入ってお湯の温度を確かめておいた⋯ ってところですね。
ま、普段からこんな調子です。
歩行距離24.5km
累計標高 +1204m
所要時間 12時間(移動含む)
41,200歩