連休です。
となれば岩手遠征です。
天気もまずまずだし、ここは思い切ってロングコースに挑戦することにしました。
YAMAPで記録を探してみても、ほとんど僕が歩こうとしている行程にぴったりの記録はなく、これが何を意味するのか分からないまま実行に移すことになりました。
自宅からのスタートはかなり順調に事が運び、午後8時前には出発出来ました。なんってったって片道510kmですから、運転だけでも気合いがいります。
起床4時30分。
到着が午前1時過ぎでしたので、3時間は寝れます。
駐車したのは「陸中山田駅西口駐車場」です。
みちのく潮風トレイルのコミュニティで、陸中山田駅に駐車できるかお伺いを立てました。
すると、有益な情報を教えて下さる方が現れ、やっぱり聞いてみるものだなぁと心底思いました。
そればかりか、激励のコメントやイイネいただける方の多いこと多いこと。
このコミュニティの皆さんは本当に素晴らしいです。
なんせ遠いので(分かっていたことですが、すべて歩ききれるか心配でした)覚悟を決めるまで少し時間がかかりました。
最後は青森県に入るこのトレイルは1,000kmを超えるため、セクションハイク(自分で決めたコースを繋いでいって踏破を狙う)だと、ラストは新幹線か夜行バスかなと思っていました。
が、時間的に効率が悪く、長い休みがない僕は結局マイカーでやり通すことにしました。
既に青森区間は終えているので、残すは「海のアルプス」と言われる区間が主になります。
今回歩くのは「船越半島」です。
波打ち際ギリギリを歩ける区間(後に画像で説明します)があって、潮が上げていたり波が高いと歩けません。
でもこのコースの大事なポイントの一つです。
さらに、給水ポイントがない。
となれば、二日分を担ぐしかないのです。
火を使うような食事は用具が増えるため諦めて、おにぎりやパンなどで凌ぐことにしました。
ただ、冷たい飲み物はどうしても欲しい。
暑い季節なので、ザックの半分以上のスペースは冷えた飲み物を持ち運ぶことにしました。
ザックは50+15リットルのサスフェーになりました。
テントを持ちます。
きのこの家を利用するので、フライはなし。
トイレに寄って自撮りして、三陸鉄道で二駅南下します。
テントは無くても室内なので雨風はしのげますが、いろんな虫が出ます。それらから身を守るためにもテントはあった方がいいと思いました。
ホームから駐車場が見えます。
ここに2日間停めさせていただきます。
乗り方を復習しておきます。
小銭も用意してきました。
始発は5時36分ですが、岩手船越駅で待ち時間が15分あります。
でも、この次の列車になると1時間遅くなってしまいます。
岩手船越駅で15分待ちます。
なんと本州最東端の駅でした。
みちのく潮風トレイルを歩かなかったら知らない事だらけだし、福島、宮城、岩手の土地についても知識はゼロだったと思います。
前回の到達地点「浪板海岸駅」を出た列車を見送って、
6時15分スタートしました。斜面にある居住地を抜けると「鯨山」の登山口に出ます。
いきなり600mの標高差を登ります。
普段なら別にですけど、今日の僕の背中には20kgほどのおもりが張り付いていますから、やっぱり辛かったです。
けっこう時間かかってしまいました。
天候は晴れ時々曇り、森は爽やかな感じです。
僕? 僕は全然爽やかじゃないですよ。したたる汗に不安感がつのります。歩ききれるだろうか⋯。
何回もザックを降ろして休憩しながら、ようやく山頂です。
ゆっくり休んだあと、下山していきます。
登った方の反対側へ降りますが、鎖場や岩の斜面は背中の重みと大きさが足かせとなってスピードが上がりませんでした。
こんなところに出てきました。
下山時の脚の負担は激しく、小刻みに震えるぼどでした。
再び時間をかけて休みました。
「青少年の家」に出てきます。
脇のグラウンドではゲートボールを楽しむ方々の姿がたくさん。
しばらく舗装路を下ります。
そして三陸自動車道に沿って山道を歩く⋯ はずでしたが、この道は初期の地図では未舗装の表記ですが、現在は舗装路に変わっていました。
三陸自動車道をくぐるトンネルでタイムを見ると予定通りでした。
『えっ、そうなのこのペースで大丈夫なの?』っていう感じでした。
ちなみに僕が自分に当てはめた今日のタイムは11時間。
日没間近のゴールになるはずです。
船越湾をぐるっとまわるようになります。
それにしても水がものすごくきれい。
三陸に来て何が良かったかと聞かれたら、まず最初に海がきれいだって答えると思います。なんかハワイよりも全然きれいかなって。
「弁天島」ここで車両は行き止まりです。
一度山側に登ってから磯に降りていきます。
浜の方へ降りていきます。
ここが例の「高波時、満潮時、強風は迂回」しなければならない場所です。
今日の干潮は午前5時過ぎ、満潮は夜10時頃の若潮です。
正面の岸壁を行きます。
良かった、潮は上げ基調ですが波が静かです。
実はここを通過するのがこのコースの醍醐味ですが、もし通過出来なかったら「きのこの家」までは到達できないと思います。
延々と来た道を戻って迂回するしかないのです。
ここで「きのこの家」について簡単に説明しておきます。
船越半島は広大なため一日で回るのは困難です。もちろん一日で回れる猛者もいますが、普通の人間はやめておいた方がいいです。
「漉磯(すくいそ)の椎茸生産組合」の倉庫を、みちのく潮風トレイルのために解放して下さっているのです。
本当に助かります。ありがとうございます。
きのこの家についてはまた後ほど画像とともにお話ししましょう。
通過してきたところを振り返っています。
右手の岩の部分、色が変わっているところまで波しぶきが上がることを示しています。
今日がどれほど穏やかだったか分かりますね。
その後金属ラダーを登り、ルートは上へと続きます。
この辺りからスマホの電波が無くなります。
YAMAPの見守り機能も働かず、この先も一切通じることはありませんでした。
疲労感が増し、歩みは遅くなるばかりです。
ザックのショルダーが肩に食い込み、激しく痛みが出ました。
タオルを当てたりしますが効果は感じられず、何度も腰掛けられそうなところでザックを降ろしました。
降ろしたら背負うしかないのですが、非常に重く、とても辛かったです。
大きなキノコを見つけました。
僕のシューズよりデカい。
牛転峠(うしころばしとうげ)の手前のピークです。
もはやどうでも良いです。
峠がどこだったのかも分からないままルートは下り基調に変わります。
こんなだったり。
こんなだったりしました。
とにかく、誰もおらず電波も無いので怪我で行動不能にならないように最大限注意をはらいました。
小谷鳥(こやどり)海岸だろうか。
再び海まで下ろされます。
何度も地図を見ては「これはきのこの家まで届かないんじゃないか」と思うようになりました。
何度も何度も休憩し、そのたびにザックを降ろして飲み物を水筒に追加していきます。
背中の凍った飲み物達はいまだに凍りついていて、ずっと冷たいまま飲めたことが唯一の救いでした。
一旦舗装路になったかもしれませんが、よく覚えていません。
たぶんだいぶ荒れた道だったと思います。
ついに日没を迎えました。
目で見えるうちはヘッドライトは点けず、バッテリーを節約します。
動物には鹿に一頭会っただけで、熊の匂いはしませんでした。痕跡も無し。
夜のとばりに蠢く虫たちが僕にまとわりつきます。
ボーッとしているとやられます。
ビバークも考えましたが、フライが無いので雨に降られたらそれこそ終わりです。
それにテントを出せる場所なんて全く無いです。
足元に注意し、滑落という最悪の事態を避けつつ、時間を気にせずにひたすら無心で歩くことにしました。
いくつかの真っ暗になった沢を渡り、ルートを間違えないようにGPSをたどります。
GARMINとYAMAPのアプリの二刀流で行きました。
悩んだ時は見比べて判断します。
それでも二回ほどルートを外しました。
そんな時はとにかく戻ることです。それが一番早い。
地図によると今歩いている「大釜崎自然歩道」は漉磯(すくいそ)で舗装路に上がるようです。
無理だと思っていた到着も舗装路に出た瞬間に安心感に変わるはずだと思って、ひたすら自分のペースを崩さずにゆっくり進みました。
あ、出た。
ここを右に下って行きますが、何故か左へ登ってしまいました。
途中で気がついて戻りました。
考えてみたら、注意力に欠けていたと思います。
この時点で既に14時間が経ちました。
でもあとはひたすら舗装路を行くだけだと思うと、ものすごい達成感が湧いてきました。
あった! きのこの家だ。
着いたよ着いた。
長かった。本当に長かった。
ここまで来ればもう大丈夫。
女房に連絡しようと思いましたが、相変わらず電波は無し。心配しているだろうな。
中には誰もおらず、今夜は自由気ままに過ごせることになりました。
きのこの家は浄土ヶ浜ビジターセンターに利用する旨を伝えます。
使用申請などは必要なく、注意点などを教えてもらいます。入口はシャッター脇の扉で、鍵は閉まっていません。
必ず閉めておくようにと言われました。
あと、蛍光灯などは付いていますが、勝手にブレーカーを上げたりしない方が良いと思います。
トイレは建物左手の奥に扉があります。
ひとまずザックを降ろし、食事をします。
飲み物の残量を確認し、食料の配分を考えます。
今夜は冷やし中華のミニ。
セブンイレブンのやつです。
そしてデザートにチョコバナナのクレープ、アイスコーヒー。
桃とフルーツミックスのオリゴ糖入りシロップ漬けも食べました。冷えていてすごく美味しかったですよ。
シロップも全部飲んでしまいました。
消化不良と筋肉のダメージを鎮痛させるため、胃薬とロキソニンを服用しておきました。
何だかんだで寝たのは0時になりそうなところでした。
テーブルと椅子もあるので、荷物は出しっぱなしで、自分はテントの中で寝ました。
汗で汚れた身体のまま寝るのはだいぶ慣れが必要です。
密閉された室内なので、少し暑いですがシュラフの首と足元を開けておきました。
目覚まし時計を午前4時にセットして、もう一度テントに潜り込みます。
4時間後、アラームと雨の音で目が覚めました。
その2へ続きます。
歩行距離 34.4km
所要時間 14時間30分
累計登坂標高差 +2,140m
70,300歩
本日のAudible/はらだみずき 海が見える家