岩山が続いたので、緊張をほぐせる山に行こうと思いました。
ところが、なかなか決めることが出来ずにお休みの日が来てしまいました。
やりたい事、やらなきゃならない事が目白押しで、ついでに仕事も忙しくそれどころじゃなかったっていうのもあります。
いろいろ考えたけどGPSにルートを落としてある山の中から日光の「大真名子山」に白羽の矢が立ちました。
そしてどうせなら「小真名子山」にも足を延ばしてみようと思います。
もう紅葉も終わったし、静かに登れそうだな。
ところが、自宅に帰ってGPSデータを確認すると小真名子山へのルートが保存されていませんでした。
急いで入力の作業をし、登山計画書を作成。
あ、山地図も店から持って来てないや。
地図もダウロードしなきゃ。
荷物をパッキングして家を出たのが23時でした。
『いつもこれだよ···』
日光は何故か自分にとってはあまり好きな山域ではなく、ちょっとばかり緊張します。
そして大真名子山は急登だと分かっているので、心なしか気分はいまいちでした。
それでも一度は登ってみたい。
以前は車で行けた志津乗越も今では行けるけど駐車場禁止となっています。
途中やその先に駐車できそうな所はあるものの、やはりダメだという以上それは仕方がないことだと思いました。
山の向こうから朝日が登ってきました。
登るのはあれかな?
午前2時30分に梵字飯場跡駐車場に着き、起床は6時20分にしました。
予定では6時30分にスタートしたかったのですが、睡眠時間が短すぎるので少し遅らせました。
数年前でしたら何のためらいもなく6時には目覚ましをセットしたと思います。
年齢に合わせて楽しむしかなくなりました。
志津乗越です。
ここまで1時間45分、途中太郎山に登るという男性に追い越されました。
彼は走って来ました。
『熊出ないといいですね』
そう言ってあっという間に見えなくなりました。
そんなに若い人じゃないのに凄いな。
僕には無いものだけに羨ましいです。
登っても登っても強くならないこの実力は何なんだろう···。
登山口はこんな感じ、青空だけが僕を励ましてくれました。
今朝の気温は0度、薄めのグローブは手を温めてはくれませんでした。
久しぶりにサポートタイツを履いて下半身を保護してみます。
パンツは中厚手にしました。
上半身は撥水下着に汗を吸うタイプのフリースっぽいジップアップウエア、もう古くてクタクタしてるけどこれがこの時期手放せなく、同じようなものが見つけられないので大切にしています。
それに超薄手で透湿性のあるウインドブレーカーを重ねてのスタートです。
間違いなく登れば暑くなるのでこれで行きました。
この界隈は「二荒山神社」の敷地になるのかな?
なんてったって華厳の滝やいろは坂も境内だと言うじゃないですか。
男体山は入山料取るし、入山期も限られています。志津乗越にある「駐車禁止」の看板も二荒山神社の名前が明記されていました。
そしてこの特徴のある御神体がいつもどこからともなく現れてくる山域なのです。
ちなみに男体山と女峰山は夫婦という位置づけで、その愛子となる大真名子、小真名子、さらに北側に太郎山があり太郎は長男とされています。
つまり山岳信仰の上で火山一家を形成しているのです。
急だ。
なんていう急登なんだ。
それとも自分が弱すぎるのか。
誰も来ないのがせめてもの救いで、こんなザマを誰にも見られたくないと思うのです。
シャクナゲが葉を丸めて冬の準備をしていました。
『そうか、この山も春にはシャクナゲの宝庫になるんだな』
ほら居た。
また居た。
僕を嘲笑うように上から見つめる肉感的な像は芸術的過ぎて怖いぐらいなのです。
梯子もあるけどいらないレベルです。
でもここは日光三嶮のひとつらしいです。
「千鳥返し」と呼ばれています。
鎖の形に特徴がありますね。
とても握りにくいです。
鎖場というレベルに値しない程度でした。
フラフラですよもう。
やっと大真名子山山頂到着です。
1時間13分しかかかってないのにこの疲労感はなんなんだ。
速い人はここを1時間かからず登るのでしょうね。
僕の足はまるでナメクジのようでした。
居た。また居た。
『よう来たなワレ』とでも言わんばかりのお姿に僕は目を合わせる事が出来ませんでした。
ここでしばらく休憩と食事をします。
なんせ朝ごはんを用意するのを忘れたもんで、ベビーサイズのドーナツを3個食べただけでスタートしたため腹へりへりはらになりました。
今日はカップラーメンにしました。
用意する暇なしだったもんでね。
腰を上げて小真名子山に向かって歩き出しました。
「栃木百名山」の標識がありました。
『そうか、ここもそうなのね。ところで僕は栃木百名山をどのぐらい登ったのかな?』
こんどチェックしてみようって思いながらもう何年経つだろう。
北斜面には雪が残っていました。
想像がついていたのでチェーンアイゼンを持ってきています。
使わないとは思いますが、あると安心ですしね。
手前の崩落地は大規模に崩れています。
その奥に女峰山が見えています。
まえに霧降高原から登った事を思い出しました。
「タカノ巣」です。
ちょいと平らになっていて倒木が「ここに座りなさい」と言っているので言う事をききました。
それにしても今日は誰にも会わない僕の大好きな状況です。
普段は一日中おしゃべりしているのでこんな日もあるといいですね。
山頂に着いてから1時間07分経過しました。
ラーメン食べたりしてたので、たぶん3~40分でここに着いたと思います。
下りもスピード控えめにしないとならないほど急坂でした。
登り返します。
小真名子山に向かって行きますが、またまた急登です。
ここはもうゆっくりと登るしかないです。
赤と黄色の真四角のプレートが着いています。
登山道には赤テープを含め明確にルートを案内してくれました。
タカノ巣から50分、わりとすんなり来れました。
下から見ると『キツいなぁ』と、思っても登り始めるとそうでもないとと思えるようになりました。
時々南アルプスの山塊を思い出しますが、あの質感の大きさに比べると子供どころか孫みたいなもんです。
でも僕にはキツいですけど。
そういえば「栃木の山紀行」というカテゴリーもあります。
調べたことはないけれどどんな山が選ばれているのかな?
その先には電波反射板がありました。
地方整備局が15年前に作った反射板だそうで現在は機能していないようです。また雪が出始めました。
急坂のガレに雪、嫌な状況なのでかなり慎重に下りました。
足を
滑らせたらタダじゃ済まないぞ。ゆっくりね、ゆっくりね。
下が見えないぐらいの角度とザレた斜面。
ここにはしつこいほどのペンキマークが着いていました。 前後に誰かいたら落石にも注意しなければなりませんね。
約1時間かけて富士見峠に着きました。
下りなのにこのタイムとは。
あとはひたすら林道を志津乗越に向かって歩くだけです。
歩くだけなんですけど、ガレ続きの林道でとても苦痛です。
大崩落地を通過します。
林道を寸断するほどの土石流の痕らしく、マグマが山肌を伝った地面が露になっていました。
横たわる硬そうな木の枝。
左足が跨ぐ。
右足のつま先が枝をすくう。
枝は硬くて左右に長い。
枝が回転せず右足がロックされる。
身体がゆっくりと重力がかかる方向から外れていく。
でーん。
転倒しました。
幸い石から外れて膝や手は無事でした。
起き上がるのももどかしいぐらいショックでした。
以前木の根がループ状になったところに足をはめてしまい、思いっきり大勢を連れた登山ガイドツアー客の列の目の前ですっ転んだ時があります。
それ以来の前からデーンでした。
あの時は『ほら、急ぐとろくなことないですよ』と後から言われたんじゃないかな。
それからもずっとこんなガレ林道を歩きました。
富士見峠から2時間10分、やっと志津乗越までやって来ました。
志津乗越の先には程よい広さのスペースがあり、ここに駐車出来そうだなと思いました。
でも、梵字飯場跡の駐車場にある看板には「ここから先駐車出来ません」とあります。
何台かの車がありましたが、登山者ではないようです。
志津乗越でパンを食べました。
女房が出しなに『これ持っていく?』とくれたものです。
結局10時間をカップラーメンひとつ、パン2個、ベビードーナツ4個で乗り切ってしまいました。
あんなに暑く感じた林道でしたが、ちょいと座っているだけで冷えきってしまいました。
また長い林道を戻ります。
硬い登山靴が歩きにくくてたまりませんでしたが、予定通り16時に駐車場に戻ってきました。
駐車場には2台の車が停められていました。登山者とはちょっと違う面持ちでした。
もう時間も時間だし、誰にも会わなかったし、何のためにここに停めているんだろう···。
こんな奥地に···。
ほんとに疲れた山となってしまいましたが、無事に下山できて一応満足です。
帰り道の土産物店で見つけた60本限定のここでしか買えない日本酒を女房へのお土産として買いました。
何故か温泉も食事もする気になれず、そのまま帰って我が家温泉に入ることにしました。
いうまでもなく我が家温泉は最高でした。
歩行距離 22.1km
累計登坂標高差 +1,376m
所要時間 10時間15分
33,800歩