原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

城戸真亜子氏が描く「水」の躍動感 vol.2

2012年05月03日 | 芸術
 (写真は、画家であり女優・タレントでもあられる 城戸真亜子氏 が描かれた油絵作品 “escape” の アートフェア東京2012 限定品として制作されたジグレー版画。  いつもながら原左都子の安カメラと撮影能力の低さ故に、城戸氏のせっかくの大作を歪めて撮影している点をお詫び申し上げます。


 冒頭から話題が大幅にズレるが、本日昼のNHKニュースによるとノルウェーの画家ムンク氏の大作「叫び」が96億円で落札されたとの報道である。 今回落札された作品は、4作ある「叫び」の中でも非公開度が一番高い貴重なバージョンであるらしい。

 美術素人の原左都子としては絵画の値打ちなど到底分かるはずもないのだが、このムンクの「叫び」に関しては“ある私的事情”により少し思い入れがあるのだ。
 その“私的事情”を、我が娘が美大受験を目指して頑張っていた頃である高2の国語の時間に書いた 「ムンクの“叫び”と私の表情」 と題する作文を要約引用することにより以下に紹介しよう。

 私は時々母(原左都子)から、画家ムンクの代表作“叫び”に似た表情になることがあると言われます。 決していつもその表情をしている訳ではなく、家にいる時や親しい人と一緒の場面などではムンクの表情にはなりません。 学校などの集団の中にいる時に“ムンク顔”に変身するようです。 例えば学校参観の時に集団の中にいる私を見た母が、「また“ムンク顔”になっていたね」などと言ってからかうのです。
 中学生になった頃から、自分でも“ムンク顔”になっていることに気付くようになりました。 集団内で緊張したり困惑している時に「あっ、今の私は“ムンク顔”に変身しているぞ」と自覚できるのです。
 話が変わりますが、画家ムンクは存在の不安や恐怖を描いたノルウェーの代表的画家です。 強烈な色彩と流動する曲線がムンクの絵画の特徴ですが、そのムンク独特の筆のタッチが代表作“叫び”の作品においても強烈に表現されています。 登場人物の表情や周囲の風景に不安感や恐怖感が醸し出されていて見応えがあります。
 私の“ムンク顔”の場合、ムンクの作品程の強烈さはなく弱々しいのですが、やはり不安感や若干の恐怖心が私の内面から出てこの顔の表情を創り上げてしまうのだと思います。
 ただ、私はムンクの“叫び”をはじめムンクの作品が嫌いではありません。 自分が“ムンク顔”になるせいかもしれませんが、ムンクの作品にはユーモラスな雰囲気も感じられて親しみを抱きます。 美術館でムンクの作品を発見すると何だかうれしくなるような気さえします。
 なるべく“ムンク顔”にならないようにしたいですが、“ムンク顔”になる部分も私の個性の一つであると思います。 今後もっと成長できたら、私の表情から“ムンク顔”が減ってゆくのかもしれません。 ですが、今は“ムンク顔”を否定せずにこれも自分の個性の一部であることを受け入れつつ、私らしく自然体でいたいと思います。
 (以上、我が娘の作文より要約引用。 母である原左都子の“子どもの個性を肯定する”との教育ポリシーを、何ともよく理解しつつ育っている我が娘の一面を披露させていただいた。)

 本日もNHKのニュースを見つつ、「ムンクの“叫び”は96億円で落札されたらしいよ! あなたの将来の価値もそれくらいに評価されるといいね!」などといい加減なコメントをした私に対し、後ろで半ばまんざらでもなさそうに笑っていた我が娘である…


 さてさてムンク「叫び」に関する私事の引用が長引いてしまったが、いよいよ表題に掲げた 城戸真亜子氏の作品について語ろう。

 去る3月29日に私が 「アートフェア東京2012」を訪れたことに関しては、3月末の本エッセイ集に於いて既に綴った。  当該アートフェアを訪問するきっかけをいただけたのは、美術家及びギャラリー主宰者としてご活躍の 長はるこ氏 よりその招待状を頂戴したことによる。(長はるこ氏のHPへは左欄ブックマークの“B-gallery"よりお入り下さい。)
 3月のアートフェア東京に於いて、長はるこ氏は「城戸真亜子氏、瓜生剛氏、長はるこ氏の3人展」とのテーマでご自身が主宰する“B-gallery"を出展されていた。 その中でも、長はるこ氏が今回ギャラリー出展のメインに位置付けられていた 城戸真亜子氏の “YUKA-③” と題する油絵大作が展示室に燦然と輝いている風景は、我が目にも壮絶な印象だった。 
 その大作に見とれている私に「こんばんは」と優しくお声を掛けて下さる城戸真亜子氏である。 私は恐れ多くも「事前にパンフレットでも拝見していましたが、この(正面の)作品は素晴らしいですね!」などと切り出した。 その後も次々と(ヘボい)質問を繰り返す私に対して、城戸真亜子氏は画家の立場としてきちんと返答を重ねて下さるのだ。  城戸真亜子氏のご返答の一部を紹介するならば、「この作品は私が“水”の躍動感を描いた作品です。」 「絵のモデルとしては19歳の女性を描いています。」 「まさに19歳の彼女には若き力があるが故にその前進力を水の躍動感に転化して描きたかった作品です。」等々… (記憶のみに頼っているため、不正確な部分がありましたらお詫び申し上げます。)
 芸術素人の原左都子の視線からしても、城戸真亜子氏の作品に於いて描かれている「SWINNING POOL」の中で19歳の少女(女性)の動きに応じて波立つ水面の“躍動感”の描写の程は素晴らしいと感じさせていただけた。
 我が娘が出生以来苦難の歴史を超えて現在18歳となり、来週4月には大学へ入学可能とまでに躍進を続けている事実が我が脳裏に重複するからであろうか??
 (以上は3月に綴った本エッセイ集バックナンバーよりアレンジしつつ引用。)


 上記 アートフェア東京 会場で、(冒頭掲載写真の解説通り)城戸真亜子氏制作油絵“escape”の“ジグレー版画”版を購入させていただいた我が親子である。
 受注制作であるその絵画の仕上がりを心待ちにさせて頂いていたにもかかわらず、こちらのプライベート上の混乱により、長はるこ先生のギャラリーにしばらくお預かり願う手立てとなっていた。
 今に至って尚、諸事情による心身的打撃によりいつもの健全状態が完全復活したとは言えない原左都子であるが、娘が楽しみに待っている城戸真亜子氏の“escape”の作品をGW休暇に入る前に是非共自宅に飾りたいと志したのだ。
 そして一昨日、その作品を自宅に持ち帰らせていただくことと相成った。
 
 やはり素晴らしい! 
 19歳の女性がプールで水をかき分けるその躍動感が、波立つプールの青く美しい水面の動きと共に力強く表現されている作品であると改めて感じさせていただいた。

 ムンク作“叫び”の表情が大学生になった今尚完全には消え去らない我が娘であるが、この城戸氏による“escape”の作品を真っ先に好んだのも我が娘である。
 おそらく我が子も今後共にプールの水をかき分けるがごとく娘なりの“躍動感”を水面下に秘めながら、少しずつ前進してゆくことであろう。