原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

五輪に於ける “引分け戦法” は姑息か、正当か!?

2012年08月06日 | 時事論評
 現在開催中のロンドンオリンピックに於いては、今までの大会では経験していないようなマイナス面でのトラブルが浮き彫りになっている印象がある。

 
 その一つは、試合の「判定」に際して審判団(及びその補助委員達)が右往左往し過ぎる失態だ。

 まずは柔道においてその失態が露出した。 柔道男子試合の判定に際し当初「青旗3本」がクレームにより、いとも簡単に「白旗3本」判定に翻ったのには驚いた。
 体操競技においても点数加点ミスを日本男子チームコーチ陣が指摘したところ、その加点が容易に認められ4位が突然“銀メダル”へ昇格になった。 
 昨夜(8月5日)テレビ観戦していた男子フェンシングに関しては、私はそのルールや判定方法を全く心得ないため論評不能である事は承知の上だが、選手側よりのクレームに対していちいち長時間試合が中断する事態にまず首を傾げた。 そしてその都度審判団が“雁首並べて”パソコン画面を見入る有様にもっと仰天させらる思いだった。

 ここで一旦原左都子の私論に入ろう。

 試合判定を画像分析に頼る方が、生身の人間の判断よりも精密であろう事は理解可能である。 それにしてもアスリート達の研ぎ澄まされた技と力を競う世界の五輪祭典において、これ程までに情報処理技術に翻弄され右往左往している審判団の姿が私の目には何とも滑稽にすら映るのだ。
 今後の五輪に於いても判定を情報処理技術に依存せねば五輪開催が立ち行かないのであれば、例えば裏方要員として情報処理のエキスパート人材を導入する等の手法を投入するなど、審判作業自体をもう少しソフィスティケイトして速やかに行っては如何なものか? 


 さて、今回のエッセイテーマである本題に移ろう。

 ロンドン五輪の観戦を楽しみにされている皆さんが一番驚かれたのは、何と言っても「バドミントン女子ダブルス」1次リーグに於いて、中韓等強豪4ペアが醜態を晒した“あの信じ難い事件”だったのではなかろうか。
 当初ニュース影像でその場面を一見した私の脳裏には、「あれ? 五輪まで来てサーブが決められない選手がいるのかな??」 などとのド素人考えが本気で浮かんだ。 と言うのも、恥ずかしながら若き日の私は高校体育時間のバトミントン授業において、サーブすら決められずあの影像のごとくシャトルコック(羽球)を床に落とし続けたからである……  競技エキスパート達にしてそんな訳があるはずもなく、この強豪4チームは直ぐに失格処分を突きつけられる結末となった。
 ここで一旦余談になるが、幸いこのトラブルに巻き込まれる事なく堂々たる試合展開の末に銀メダルを獲得した日本女子の“フジカキ”ペアを私も賞賛したい。 素晴らしき若きアスリートが育っている事実を、このペアから十分実感させてもらえた。
 話を戻して、要するに中韓等強豪ペア達は準決勝以上の試合に於いて自らが優位となるべく巧みに裏計算をした結果、1次リーグで“無気力試合”を展開する方策を採ったとの事だ。
 この事例においては、まさか強豪4チームのあからさまな“無気力試合戦略”に賛同する人民は世界中に存在しないであろうと信じたい。


 それでは、いよいよ表題に掲げた“引分け戦法が姑息か、正当か?”の議論を展開しよう。

 読者の皆さんには、この表題から日本女子サッカーチーム「なでしこジャパン」の予選リーグ最終戦に際して佐々木監督が執った戦略を、原左都子が評論しようとしている事を既にご理解いただいていると察する。

 申し訳ないが元々サッカーファンではない私は、サッカーという競技自体に関する知識がまったくない。 それ故に、如何なる戦法を取りつつ試合を勝ち進み優勝をゲットするのかも知らない。
 少し見聞したところによると、ワールドカップサッカー大会に於いては1次予選のリーグ戦で上記のような戦略が採られる事は日常茶飯事であるとの事だ。

 それでは、五輪サッカーはどうなのであろう?

 それを心得ない私であるが、今回の五輪女子サッカー予選試合に於いて、佐々木監督の口からあからさまに「引分け戦略」を採ることにしたとのニュース報道を受け、私は大いなる違和感を抱かされた。
 私が見聞したNHKニュース報道によると、予選リーグを1位通過すれば決勝リーグの1回戦がグラスゴーでの闘いとなる。 ロンドンよりグラスゴーまでの移動に8時間もの時間を要するがこれでは選手たちが疲労する。できればロンドンに留まり決勝1回戦を迎えたい。 それ故出場選手達に“引分け”を指導した……
 それに先立ち、私は新聞紙上で“裏情報”も仕入れていた。 なでしこジャパンが予選1位通過するよりも2位通過した方が決勝戦に於いて勝ち進める確率が高い、等々…

 上記佐々木監督発言が、やはりメディア上で波紋を呼んだようだ。 
それを吹き飛ばすごとく、その後のなでしこジャパンの活躍によりベスト4まで勝ち進んでいる現状ではあるが…

 それにしても素直かつ健気な“なでしこジャパン”メンバー達の活躍をもって、この問題がうやむやにされて許されるのであろうか??
 現在“なでしこジャパン”が闘っている場とは、天下の「五輪」である。 紀元前の時代より何千年の人類の歴史と進化を刻みつつ時代を創造して来ているオリンピックの会場である。

 もちろん、なでしこジャパンの五輪での今後の活躍を応援したい私であるが、“引分け戦法”を公にしてしまった佐々木監督はこの五輪を元々如何に位置付けていたのであろうか?  少なくとも監督の“内心の自由”は法的にも保障されようが、メディアに面と向かって上記のごとくの公言は慎むべきだったであろう。

 なでしこジャパンが過去に於いて国民栄誉賞を受賞するに至った過程で、私はそれを応援している。 (「なでしこジャパンは国民栄誉賞を貰ってよい!」と題する本エッセイ集2011年7月 時事論評バックナンバーをご参照下さい。)
 そんな栄誉あるチームの監督として、五輪の場でその過去の受賞に泥を塗るような言及は是が非でも避けるべきだったと残念な思いの私である。