原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

企業から「ブラックバイト」を課せられる学生の実情

2015年02月14日 | 時事論評
 昨年末のことだが、私は某ピザ宅配店へ直接ピザを買い求めに行った。
 そのピザ屋が「店舗にて直接ピザを買うと1枚の料金で2枚のピザゲット!」」を売りにしているためだ。
 ただ実際に行ってみると宅配が主たる営業手段であるため、店舗までわざわざ来店する顧客はごく少数の様子である。 
 そんな中(意地汚くも)2枚のピザをゲットしに行った私に、店員氏は快く対応してくれる。 「10分程で焼き上げますので、こちらの席でお待ち下さい。」と待ち席まで案内された。

 その席に座った私は、(見て見ぬふりをしつつも)いつもの習慣でピザ店内にて働く人達の観察を開始した。
 どうやら店長と思しき人物を筆頭として、店内の皆がアルバイト(学生か否かは不明だが)の若者達である事実をすぐに嗅ぎ取った。 それにしても手際が良い。 マニュアル通りの声掛けを全員が店内に響かせつつ、個々に与えられた職種業務をテンポよくこなしていく。 一切の無駄口がない。  バイクで配達に出る若者達も、必ずや「今から出発します!」「ただいま帰りました!」と大きな声で店内に伝え、これに対する「行ってらっしゃい!」「お帰りなさい!」との店内担当者達の反応も小気味良い。

 我が店内での10分の待ち時間内に、アルバイト店員氏達がこなしたピザ販売枚数とは一体何枚に達しただろうか?!  この多額の売上高がアルバイト店員により支えられていることを実感させられる思いだった。

 そして私が注文したピザが出来上がった。 私の時計によると“ピッタリ”10分だ!
 「底が熱いのでお気を付けてお持ち帰り下さい。またのお越しをお待ちしております!」 それに合わせて店内従業員一同が「ありがとうございました!」の大合唱だ。
 この天邪鬼の私にして、“また店舗まで買いに来ようかな~~”と思わせられる程に店員氏達の対応は完璧だった。


 話題を変えよう。
 皆さんは「ブラックバイト」なる用語をご存じであろうか?

 おそらく「ブラック企業」をご存知の方は多いことであろう。 私の認識によると、労働基準法に準拠せずして従業員に過酷な労働条件を課した挙句、「嫌ならとっとと辞めろ」と退職を迫るか、もっと劣悪な場合は従業員が過労死しても“自己責任”として片付ける企業を「ブラック企業」と呼ぶようだ。

 「ブラックバイト」もこれに準じているのだが、手早く説明するならば「(学生バイトとして雇っているにもかかわらず)学生であることを尊重しないアルバイト」と定義されているらしい。

 朝日新聞2月10日付夕刊記事によれば、大学生対象とする調査で最も多かった労働時間は週当たり「15時間以上20時間未満」だったらしい。 「20時間以上」と回答した学生も28%いたとのことだ。
 この背景には、アルバイトを職場の重要な戦力とする「基幹化」の流れがあり、若者に「自分が辞めたら職場が回らなくなる」と思わせる構造があるとのことだ。 加えて親の収入が下がり続けていることも影響しているという。
 更には、店舗運営の契約を切られたら次の仕事がない」との恐怖心から不本意でも「本部の方針」を受け入れてしまう店舗オーナーの実情もあるようだ。
 (以上、朝日新聞記事より一部を要約引用。) 


 なるほどねえ…  などと思いつつ、ここで原左都子の過去の私事を語らせて頂こう。

 私が30代初頭にして2度目に入学した大学では、まさに「勤労学生」を貫いた。
 既に自己所有マンションも買い求めそのローンを返済しながら、自力一本で学費全額を支払いつつの学生生活だった。
 当然ながら労働せねば我が暮らしが成り立つはずもない。 だが、それ以前の課題として是が非でも我が学問を貫き通したい。 
 そこで選択したのが“労働時間対報酬”が高い仕事である。 幸いな事に、私は既に医学分野にて専門力を培ってきていた。 それを“食い扶持”として大いに利用し「人材派遣会社登録」の上、高い時給で専門力を活かせる仕事先への派遣が叶った。 大学の長期休暇中には必ずやこの人材派遣にてまとまった収入を得たものだ。
 加えて昼間大学へ通った平日の夜も、短時間で高額収入を得られる仕事を探した。 これぞ「コンパニオン」であるが、私は高身長スリム体型を活かす事により大学4年間、丸の内(旧丸ビル)にてこのコンパニオンの仕事を全うすることが叶った。 一日わずか2時間労働で高収入を得た後に夜帰宅した暁には、必ずや我が学問に励んだものだ。 大学では成績優秀・真面目学生で通っていた私が、夜間コンパニオンをしていた事実を学内では誰一人にも気付かせないまま学業を全うした! (「原左都子エッセイ集」初期のバックナンバー 「丸の内でのお仕事」及び「パーコン」にて当時の様子を公開しておりますため、ご興味がありましたらご検索下さい。 参考のため、左上欄の「原左都子エッセイ集」プロフィール写真は当時撮影したものです。)


 最後に原左都子の私論で締めくくろう。

 このテーマに関しては、20代初頭で上京し民間企業での経験を積んだ後30代に達し既に海千山千で世を渡っていた原左都子の2度目の学生時代と、現在の若き学生達を同列で考察して済む訳がないことは理解出来ている。 
 一方で時代が大きく変革し、現在の経済社会とは名目「アベノミクス経済政策」により活況しているとの歪んだ国民心理操作にもかかわらず、底辺部に於いては大した変化がないものとも捉えている。

 そんな経済環境下で実親からの学費資金援助も受けられず、ただただ「ブラックバイト」に走らざるを得ない若者群像…

 ただ逆転発想に過ぎない事は承知だが、たかが若きアルバイト大学生の身にしてそれ程までに企業側から期待される労働人材であり得るならば、ここはそれを逆利用して、その組織にのさばってみてはどうかとアドバイスしたくなる。
 私のように一生に渡り学問に燃えるならいざ知らず、そうではなく中途半端に「学歴」にこだわり大学に籍を置いているだけの学生ならば、「逆転発想」で今後の人生の過渡期として現在のアルバイト身分を前向きに捉えてよいのではないかとも思える。

 要するに今のアルバイト先で職業人としての先々を有望視されているのならば、それを全うするとの手もあるかと考えるのだ。
 それをしばらく貫いて職業専門力を培い自己資金を拡大した後に、どうしても今一度本気で学問に励みたいのなら、やり直せる手だてなど幾らでもあるのではないかと、私自身の経験からアドバイスしたい思いだ。