原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

“ブラック企業” は所詮崩壊する運命にあろう

2015年12月13日 | 時事論評
 私が義母の介護旅行に出かけている間の12月8日に、ワタミグループ居酒屋が2008年に起こした過労死事件の決着がようやくついたようだ。

 偶然だが、我が義母が現在入居している高齢者有料介護施設も実は元々ワタミグループ経営だった。 
 つい最近、損保ジャパングループがワタミより介護部門全般を経営買収する事となり、先だっての施設保証人懇親会にてその事実が発表されたばかりだ。
 我々保証人としては、これぞ吉報だ。 “ブラック企業”として悪名高いワタミが経営主であるより、大規模企業組織の損保ジャパンの傘下になった方が、今後の経営が格段に安定するに決まっている。

 ただ、ワタミの経営下にある高齢者施設運営の実態を既に3年間に渡り保証人の立場で観察してきた感想を述べるならば、こと「介護部門」に関しては“ブラック色”はなかったと判断する。 入居一時金や入居後の諸費用が高額であるのは何処の民間有料施設も同様で致し方ないとして、介護職員の質も高く、それに見合う介護実績を挙げていたと我が家は判断している。
 周囲の反応も同様の様子だ。  要するに今回の損保ジャパンへの経営売却劇は、ワタミグループが上記過労死事件を起こした事による“ブラック色”「風評」の影響を受け、経営トップである渡辺美樹氏が英断を下したものと察する。
 それにしても、当該高齢者施設に義母を入居させている身内の立場として、早期に介護部門を大手企業団体へ売却してくれた渡辺氏の判断に安堵している現在だ。


 早速、ネット情報より 「ワタミグループ過労自殺訴訟が和解 会社側が責任を認める」と題する報道の一部を以下に紹介しよう。
 
 ワタミグループの居酒屋「和民」で起きた過労自殺の遺族が、ワタミや創業者で当時代表取締役だった渡辺美樹参院議員(自民党)らを訴えていた訴訟が8日、東京地裁で和解した。 渡辺氏らは法的責任(安全配慮義務違反など)を認め謝罪し、1億3千万円超を連帯して支払う。 若者を酷使する「ブラック企業」批判にさらされたワタミの責任を問う裁判は、今の働く場が抱える問題を浮き彫りにした。
 過労自殺被害者である美菜さんは、2008年4月、ワタミ子会社のワタミフードサービスに入社し店に配属された。 同年6月に社宅近くで自殺。 月141時間の残業があったとして12年2月に労働災害に認定された。  遺族は、渡辺氏の経営理念が過酷な長時間労働を強いるワタミの体制をつくったとして、渡辺氏個人の責任を追及。 裁判で渡辺氏は「道義的責任はあるが、法的責任はない」と争う姿勢を示していた。 和解で渡辺氏は「自らの経営理念が過重労働を強いた」「最も重大な損害賠償責任がある」と認めた。
 ワタミ側は、労働時間を正確に記録することなどの過重労働対策にも同意。 これらの内容をワタミと渡辺氏のホームページに1年間掲載する。
 和解内容には、研修会への参加や課題リポート作成に必要だった時間を労働時間と認めて残業代を支払う、給与から天引きしていた書籍代や服代を返金する――などの内容も盛り込まれた。 美菜さんと同時期の新入社員にも、未払い残業代として1人につき2万4714円(08~12年度入社、約800人分)、天引き分として1人につき2万4675円(08~15年度入社、約1千人分)を支払う。
 遺族は、逸失利益などに過酷な労働を強いたことに対する約7千万円の「懲罰的慰謝料」を加えた約1億5300万円を求めていた。 遺族代理人の玉木一成弁護士は「広範な過重労働対策を認めさせた。判決を得る以上の成果があった」と述べた。
 (以上、ネット報道より一部を要約引用したもの。)


 原左都子エッセイ集  2013.8.3 バックナンバー 「やはり“ブラック色”が強い渡辺美樹氏創業のワタミ」 に於いて、当該事件に関する私論を述べている。 以下に要約引用させて頂こう。

 2013年7月21日に実施された参議院選挙に自民党より立候補し、“辛くも”当選を果した渡辺美樹氏は、言わずと知れた「外食チェーン ワタミ」の創業者である。  2011年の東京都知事選では都議会民主党の支援を受けたものの落選。 そして今回は自民党より出馬要請を受け、ワタミの役職をすべて退いての渡辺氏の参院選立候補だったらしい。
 それにしても、短期間で民主党から自民党へ鞍替え?? 企業創業者としての渡辺氏の手腕の程はともかく、政治家としての氏のポリシーの程が何とも理解し辛い…。
 さて、今回の参院選は想像を超える逆風だった。 それもそのはず、マスコミや一部の政党からワタミが「ブラック企業」批判の標的となった故だ。  5年前に一人のワタミ新入社員が労災により自殺したことは事実だ。  労災での過労自殺の原因とは、なぜ(そんな事で自殺する奴を)採用したのか、なぜ入社1ヶ月の研修中に適正、不適正を見極められなかったのか、なぜ寄り添えなかったのかであり、本当に命がけの反省をしている。    
 最後に「国会議員は365日24時間死ぬまで働かないといけないのか?」との朝日新聞の質問に渡辺美樹氏答えて曰く、「その通り、国民のために。」
 (以上、朝日新聞8月2日渡辺美樹氏インタビュー記事より一部を要約引用)
 私論を述べる前に、現在ネット上で非難囂囂(ごうごう)との部分を上記インタビュー記事内から紹介しよう。
 それは、ワタミ社員労災での過労自殺の原因を問われての渡辺氏の言及箇所である。 <なぜ(そんな事で自殺する奴を)採用したのか、なぜ入社1ヶ月の研修中に適正、不適正を見極められなかったのか。>
 この渡辺氏の言及が元社員に適性がなかったために自殺に追い込まれたとも読める内容だったことから、「命を軽く扱うな!」「苦しい言い訳がたくさん」との厳しい意見・反感がネット上で飛び交っているようだ。
 原左都子もネットの意見・反感にまったく同感である。
 加えて渡辺美樹氏とは参院議員と成り果てたこの期に及んで尚、ワタミ創業者・経営者としての独裁的体質から脱出し切れず、あくまでも自分こそが“創業者”との立場にすがり、この世を生き延びようとしている事を垣間見るような気もする。
 もしも渡辺氏がワタミを創業して一企業のトップとなった時点で、入社してくる社員の力を結集して真に強い企業を創設していこうと志したのならば、社員の労災自殺者など一人として出していないはずだ。 
 一下っ端社員の心情に一切向き合えていない創業者など、企業のトップであり得ない! 民間営利企業とは「ヒト」「モノ」「カネ」の総合力で成り立っている集合体である事を、渡辺氏はどれだけ認識出来ていたのであろうか?
 それよりも私にとって上記渡辺美樹氏の朝日新聞インタビュー言及内でもっと辛いのは、以下の箇所である。
 <ワタミ社内冊子に「365日24時間死ぬまで働け」と書いているのも事実だが、その前後を読んで欲しい。 仕事というのは時間とお金のやりとりをしちゃダメ。 仕事は生き様であり仕事を通して生きがいとか成長がある。だから365日24時間という気構えでやろうという事だ。 その時に大切なのは、みんなで助け合いながら一人ひとりの成長に寄り添っていこう、という話だ。>
 これ、明らかに労働基準法違反だよ。
 しかも渡辺氏の理論によると、「仕事とは時間とお金のやり取りをしちゃダメ」??
 う~~ん、確かにワタミなる企業は“飲食業”であるが故に、創業者がそう言ってそれになびく人種が社員になりたいとワタミに集結するのであろうか??   ところがこれが専門職となると事情が一変するのだ。 自分が提供する仕事能力とそれに対する報酬を計りにかけてこそ成り立つ経営者と労働者の契約締結なのである。 私に言わせてもらうと、その“天秤能力”無くして、イッパシの人間として経営者側と対等な立場で世を渡っていける訳がないのだ。
 <仕事は生き様であり仕事を通して生きがいとか成長がある> との渡辺氏の言及部分は私も理解可能として、その後の、<だからこそ365日24時間という気構えでやろう> との論理が、やはり原左都子には絶対的に理解不能だ。 馬鹿な事言ってくれるなよ。 人とは自分のプライベート時間を充実して紡げてこそ、仕事に我が命が吹き込めるというものだよ。
 加えて、<その時に大切なのは、みんなで助け合いながら一人ひとりの成長に寄り添っていく事>、との渡辺氏の“嘘臭い”言葉こそに、“一匹狼”タイプで生き抜いている原左都子は反吐が出そうな嫌悪感を抱かされ、何が何でも拒絶したい部分である。
 原左都子の私論としては、“経営者側等トップに立つ者こそが365日24時間働くべき”との渡辺氏のご持論には賛同する。 渡辺美樹氏ご本人が好きなだけ働けば良いだろう。
 (以上、長過ぎたことをお詫びするが、「原左都子エッセイ集」バックナンバーより引用。)


 最後に、原左都子の私論で締めくくろう。
 
 ワタミ創業者の渡辺美樹さん、よくぞまあ今回の訴訟に於いて自身が創設者として君臨している企業の“ブラック色”、要するに「過失(or重過失?)責任」を認めてくれたものだ。
 我が国の新鋭企業(いやいや、東芝や旭化成等々の“巨大老舗企業”も含め)他にも数多くの“ブラック企業”が恥ずかしくも先進国(??)と銘打つこの国に存在する実態だ。

 とにかく法治国家である我が国に於いて事業を展開せんとするに際しては、ひとまず法制度に従おうではないか。 その前提として最低限それしきの学問をわきまえて後に創業して欲しいものだ。

 私事に入るが、生まれ持って“出来の悪い”我が娘なりにも来春には某民間企業に就職出来る段取りとなっている。
 私の目が届く範囲で確認・分析するに、おそらく娘の就職先は“ブラック企業”ではないと判断している。  ただ、もしも親の私の判断が誤っていたとして…。
 そこまで親の憶測・苦労を煽るのも、法制度や世の常識をわきまえず人の上に立つべく創業者かつ経営者である貴方達が羞恥心なく“ブラック企業”をこの世に展開してしまったのが元凶だ!
  
 “ブラック企業”ごときに、娘の命を奪われてなるものか!!