◎眠ってる時間分だけ長生きする(水木しげる)
昨日に続き、水木しげるさんの言葉を紹介する。昨日と同じく、京極夏彦さんの『対談集 妖怪大談議』(角川文庫、二〇〇八)から。本日は、同書の最後のほうにある、「睡眠力こそすべての源」と題する鼎談(一九九九年五月)の一部を紹介したい。出席者は、水木しげるさん、博物学者の荒俣博さん、京極夏彦さん、そして雑誌『怪』の編集者である。
水木流「生きるヒント」
水木 それはそうと、最近気がついたんですが、コナン・ドイルってのは変な男だね。
荒俣 ロンドンにシャーロキアン協会っていうのがあって、ドイルの資料をいっぱい持ってて面白いですよ。
水木 彼は晩年もっと健康だったらさらに面白かったね。だから晩年の健康は大事ですよ。
京極 『怪』立ち上げの鼎談の時は、「半死人」がテーマだったのに、今回は晩年の健康(笑)。
荒俣 あれは『葉隠』〈ハガクレ〉のような話でしたね。山本常朝〈ジョウチョウ〉の世界に入ったかと思ったけど、戻りましたね。
京極 あの時の水木流「生きるヒント」は、〝死ぬことと見つけたり〟だったんですけど(笑)。先生、健康に気を使われるようになったのはいつ頃からですか。
水木 五十前後は考えてなかったね。やっぱり六十くらいからかな。子供の頃から重視してたっていえば重視してましたよ。眠ることが大好きだった。学校遅れても寝てたから。
荒俣 それ私もおんなじです(笑)。
水木 だから昔に返ってるわけです。この前の休みに娘と熱川〈アタガワ〉にいったけども、よくこれだけ寝れるっていうぐらい寝てましたね。あくる日はもう寝れんだろうと思ってたんですが、また寝てましたよ。
荒俣 生きながら眠っている(笑)。
編集 先生、一日何時間くらい寝るんですか?
水木 十五、六時間。
一同 (爆笑)
編集 コアラじゃないですか。
水木 水木さん〔一人称〕の信念は〝眠ってる時間分だけ長生きする〟なんです。
(一同うなずく)
京極 なる程、寝てる間、半死人状態なんだ。つまり「半死人」は長寿の秘訣だと(笑)。
編集 起きてると寿命が縮む。
京極 僕の寿命はとうに尽きてると。
水木 寝てる間は寿命に関係ないわけです。寝てる間はその分時間が延びると思うんです。私はそれに加えて、異常に胃がいいんです。だから水木さんに食べ物すすめちゃいかん。なんぼでも食うから(笑)。
【以下略】