◎美濃部達吉博士の妄論僻説を弁駁す(神作浜吉)
簑田胸喜著『美濃部博士の大権蹂躪』(原理日本社、一九三五)を紹介している。本日は、その四回目。本日は、本書の「位置づけ」について見てみたい。
同書の表紙および扉によれば、本書は、「我等は如何にこの凶逆思想を処置すべきか?」というシリーズの「第三」にあたるという。
では、「第一」、「第二」の内容は、というと、本書の三九~四〇ページで紹介されている。本日は、これをそのまま、紹介してよう。旧漢字(正字)は、現行のものに直したが、「國體」の二字のみは、そのままとした。
●本書は昭和五年〔一九三〇〕五月並に同九年〔一九三四〕七月発行の第一、第二『我等は如何にこの凶逆思想を処置すべきか?』の続編なることは本書副題の明示するところ、今左に主要項目を掲げて読者の参看照応を期待する。
第一 我等は如何にこの凶逆思想を処置すべきか? 三井 甲之著
著者宣言・序論=金融資本主義社会及共産主義を矯正すべき国民全体主義綱領・本論=吉野〔作造〕博士の君主制対デモクラシイ國體冒涜論・末弘〔厳太郎〕博士の土地無償没収共産主義宣伝に就いて政府及大学当局者の正当処置を期待す・末弘博士への公開返書・末弘博士の凶逆思想剖検・牧野英一氏生存権論批判・結論=東京帝国大学々風赤化の総括的原因と『しきしまのみち』・余論=無政府主義者美濃部〔達吉〕博士(蓑田胸喜)・跋=しきしまのみち叢書第一編の発刊に当りて(松田福松)
第二 我等は如何にこの凶逆思想を処置すべきか? 三井甲之・蓑田胸喜著
聖喩記・序=神明に祈誓し同胞に切願す・末弘法学部長の無条件『暴力』思想を摘発して小野塚〔喜平次〕総長の学術的良心と司法検察当局の『血涙護法』精神との健在を問ふ(松田)・学術、國體、人道の廃欠者――美濃部博士を筆誅す(同)、帝大憲法学説の誤謬に基く凶逆性(三井)・美濃部達吉氏の『憲法学説弁妄』の虚妄理論と悖逆意志を剖析す(松田)・美濃部達吉博士の帝国憲法に対する妄論僻説を弁駁す(神作浜吉)・美濃部博士に対する学術的処置完結の宣言(簑田)・神意の因果と国防の任務・治安維持法の解釈適用に就いて(三井)・末弘博士告発状(簑田)
これによれば、三井甲之著の『我等は如何にこの凶逆思想を処置すべきか?』は、「我等は如何にこの凶逆思想を処置すべきか?」シリーズの「第一」にあたり、かつ、「しきしまのみち叢書」の第一編にあたるようだ。発行年の記載はないが、国立国会図書館のデータによれば、一九二九年(昭和四)刊。
また、三井甲之・蓑田胸喜共著の『我等は如何にこの凶逆思想を処置すべきか?』は、このシリーズの「第二」にあたる。国立国会図書館のデータによれば、「しきしまのみち叢書」の第四編にあたり、一九三四年(昭和九)刊。
文中、「剖検」は、「ぼうけん」と読み、死体を解剖・検査すること。「悖逆」は、「はいぎゃく」と読み、正しい道にそむくこと。「剖析」は、「ぼうせき」と読み、分解・分析すること。