◎渋谷で『にっぽん泥棒物語』(1965)を観る
昨日、渋谷シネマヴェーラで、山本薩夫監督の『にっぽん泥棒物語』(東映、一九六五)を観た。たいへん楽しめた。傑作だと思った。
開演前、「お待たせしました。これから『にっぽん動物物語』を上映します」という劇場側のアナウンスがあり、観客がざわめいた。細かいことだが、今回の企画「快優対決」のパンフレットにある上映予定表にも、『にっぽん泥棒日記』という誤記があった。
冒頭は、大量の盗品をトラックに載せて逃走するシーン。検問も無事、突破する。このとき、検問をおこなう巡査のひとりに扮しているのが、杉狂児である。そのあとに、タイトルとクレジット。
ストーリーを追うことはしないが、同じく山本薩夫が監督した『松川事件』(松川事件映画製作委員会、一九六一)を踏まえている。ただし、「松川事件」は、本作では、「杉山事件」とされており、人名・地名・組織名なども替えられている。なお、『松川事件』で赤間被告を演じた小沢弘治(劇団民藝)が、相当する役柄で出演している。
キャストが豪華でクセ者揃い。三國連太郎(怪演)・北林谷栄・緑魔子・佐久間良子(好演)・江原真二郎(好演)・市原悦子・伊藤雄之助(怪演)・花澤徳衛・鈴木瑞穂・加藤嘉・千葉真一・室田日出男・永井智雄・加藤武・西村晃・潮健児(好演)などなど。
『松川事件』で赤間被告の祖母を演じた五月藤江が、本作では、主人公・林田義助の義母を演じている。このとき、すでに七二歳だったはずである。また、子役として金子吉延が出演している。「杉山事件」の被告・木村(鈴木瑞穂)の息子という役柄で、このとき、一〇歳だったはずである。ちなみに、木村(鈴木瑞穂)は、獄中で顔に「白なまず」ができてしまう。息子は、「白なまず」には「赤とんぼ」が効くというので、けなげにも、赤とんぼを採集しては獄中の父親に送っているという話になっている。
ラストは法廷シーンである。これほど笑える法廷シーンは、そうあるものではない。特に証人・林田(三國連太郎)の演技が出色だった。傍聴席にいる妻・はな(佐久間良子)の表情だけによる演技もよかった。山本薩夫監督の演出にも、もちろん拍手したのであった。