礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

宗教団体法及び関係法規の廃止はかなり遅れた

2019-07-16 05:22:00 | コラムと名言

◎宗教団体法及び関係法規の廃止はかなり遅れた

 吉田孝一・井上恵行・荒川正三郎共著の『宗教法人令の解説と運営』(新教出版社、一九四七)を紹介している。本日は、その第一編「宗教法人概説」の第一章を紹介してみたい。なお、第一編の執筆は、「文部書記官 吉田孝一」である。

   第一章 宗教団体法廃止と宗教法人令制定の経過

「ポツダム」宣言に宗教自由の確立が明示されてゐることは、連合国がこの点に関して何等かの措置にでるであらうことを予感せしめたが、果して昭和二十年〔一九四五〕十月四日附の連合国最高司令部の日本政府宛覚書「政治的、社会的及宗教的理由ニ対スル制限除去ノ件」は政治的、社会的及び宗教的自由の束縛を解放するため、治安維持法その他の法令と共に宗教団体法並びに関係法規の廃止を指令してきたのである。
 そもをも、宗教団体法は昭和十四年〔一九三九〕第七十四議会の協賛を得て、同年四月八日に公布せられ、翌十五年〔一九四〇〕四月一日から施行されたのであるが、実施後僅か数年で廃止されるにいたつたことは、その制定が実に明治三十二年〔一八八九〕以来の懸安であり、幾多の迂余曲折を経過してゐるだけに、何んとなくあつけなく感ずるものも尠くないであらう。宗教団体法の功罪については種々論議の存するところと思はれるが、それがわが国宗教団体の組織機構の整備の上に貢献し健全な宗教の保護助長に寄与した功績はこれを認めねばならぬ。しかしながら、宗教団体法は一面、その規定するところが宗教団体にとつては甚だしく煩瑣であつたばかりでなく、これが運営の如何によつては宗教の自由を阻害する虞れ〈オソレ〉なしとしなかつたのであつて、こゝに廃止せらるべき運命が潜んでゐたといはざるを得ない。
 廃止の指令を受けた法令の処置は大部分十月半頃迄になされたが、たゞ宗教団体法及び関係法規の廃止はかなり遅れたのである。蓋し〈ケダシ〉宗教団体法による法人が、寺院その他宗教団体を合して凡そ〈オヨソ〉八万あるが、これらの法人は宗教団体法が廃止されると当然に解散し、清算といふ煩雑厄介な手続をとらねばならず、また残余財産の帰趨を繞つて〈メグッテ〉好ましからぬ問題が起らぬとも限らず、更に従来享有してゐた各種の免税その他の保護を喪失するこどどなるのであつて、かくの如きは法人たる宗教団体にとつてゆゝしき問題なので、たゞ単純に廃止するわけにゆかず、宗教団体法廃止の善後策として相当の法的措置を講ずること、つまり宗教団体の財産保全等のため、宗教団体法に代るべき何等かの法令即ち宗教法人令の制定を必要としたからゼある。そして宗教法人令の制定はたゞ単に従来の法人たる宗教団体を救済敕濟するために必要であるばかりでなく、あらたに法人たらんとするものに対してその途を拓くためにも必要である。よつてその間の事情をとくと説明して連合国側の諒解を求め、本令の作成に着手したかである。【以下、次回】

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