礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

宗教問題は対日政策の最も重要なものの一つである(ダイク代将)

2019-07-17 08:10:44 | コラムと名言

◎宗教問題は対日政策の最も重要なものの一つである(ダイク代将)

 吉田孝一・井上恵行・荒川正三郎共著『宗教法人令の解説と運営』(新教出版社、一九四七)から、その第一編「宗教法人概説」の第一章「宗教団体法廃止と宗教法人令制定の経過」を紹介している。本日は、その二回目。なお、本書第一編の執筆は、「文部書記官 吉田孝一」である。

 ひきつゞき連合国総司令部民間情報教育部との間に本令の内容その他につき種々討議懇談が重ねられたが、その間、宗教家の意見をもきくことゝなつた。これがため在京の神道、仏教及び基督教関係の数氏に交渉し、神道修成派管長新田邦達氏、神習教総務菅野正照氏、浅草寺貫主大森亮順氏、浄土宗宗務長里見達雄氏、日本天主公教教団統理者土井辰雄氏、日本基督教教団統理者富田満氏等の参集を求め、〔一九四五年〕十一月五日民間情報教育部長ダイク代将の許〈モト〉において、ヘンダーソン大佐、バーンス少佐、チヨイ大尉その他の関係官、日本側からは関口〔泰〕文部省社会教育局長、吉田〔孝一〕宗務課長、井上〔恵行〕宗務官、連合国顧問東京帝国大学助教授岸本英夫氏等がこれに参列し懇談会が開催せられた。ダイク代将は日本における宗教の諸々の問題の推移は世界の注視するところであり、かつ宗教の問題こそは連合国の対日政策の少くとも最も重要なものゝ一つであると前置きして、宗教団体法に代るべき何等かの法令を必要とするか、若しそれを必要とするならばその内容は如何なるものであるべきか、また民法法人と別個に宗教法人を認むる必要があるか等につき意見の開陳を求め、隔意なき懇談がなされたのである。
 かやうにして宗教法人令草案の作成が進めらて行つたが、つひに十一月末連合国と日本側との意見がほゞ一致するにいたつた。こゝにおいて草案の仕上げをなすために、教派、宗派、教団その他の宗教団体の代表者約七十名にその草案を送り、宗教団体法に代るべき新法令を必要とするか、もし必要とするならば右の草案の如きものでよいか、これに対する意見、希望をきいたところ、六十に近い回答を得た。その回答の中には、宗教法人を簡単に設立できることになれば所謂淫祠邪教が跋扈〈バッコ〉する虞れがないか等二三注目すべき意見等も出てゐたが、大多数は宗教団体法に代るベき新法令の制定を希望し、且つ文部省の原案に賛意を寄せられたのである。
 よつて、十二月二十日大村文部次官はダイク代将と会見、バーンス少佐、ウオーブ大尉、岸本顧問及び吉田宗務課長も列席し、席上ダイク代将は「宗教法人令並びに関係法規の原案作成は仲々困難な事案であつたが、諸氏の努力によつて遂にその目的は達成される運びとなつた。宗教団体法の廃止と宗教法人令の制定とによつて、去る十月四日の指令の消極的並びに積極的の両方面が実現されることになつたことは真に慶賀にたへない。この上は速かに宗教団体法を廃止すると共に宗教法人令公布の手続を進められんことを切望する」旨を述べ、かくして十二月二十八日宗教団体法は廃止せられ、宗教法人令が公布されたのである。【以下、次回】

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