◎軍ノ統制、秩序ノ維持ニ努メ時局ノ収拾ニ努力セヨ(昭和天皇)
朝日新聞社編『終戦記録』(朝日新聞社、一九四五年一一月)から、「帝国議会における東久邇首相宮殿下の御演説」の部を紹介している。本日は、その七回目。
組閣の大命を拝するに当つて畏くも 天皇陛下に於かせられては、私に対し、
「特ニ憲法ヲ尊重シ詔書ヲ基トシ、軍ノ統制、秩序ノ維持ニ努メ時局ノ収拾ニ努力セヨ」
との有難き御言葉を賜はつた、時局に対する御軫念〈ゴシンネン〉の程拝察するだに畏き極みであつて、私はこの有難き大御心に副ひ奉ることを唯一の念願とし、これを施政の根本基調として、粉骨砕身の努力を致し、国民諸君の先頭に立ち平和的新日本の建設の礎たらんことを期してをる。国民諸君もまた畏き聖慮の存する所を再思三省し心機一転潑刺清新の意気を以て新なる御代の隆昌に向つて勇往邁進して頂きたいのである。これがためには特に活潑なる言論と公正なる輿論とによつて、同胞の間に潑刺たる建設の機運の湧き上ることが、まづ以て最も必要なりと信ずるのであつて、私は組閣の始に当り建設的なる言論の洞開〈ドウカイ〉を促し、健全なる結社の自由を認めたき旨、意見を表明する所があったのであるが、政府としては、言論の尊重、結社の自由については、最近の機会において言論出版集会結社等臨時取締法を撤廃致したき意向であり、すでにそれ等の取締を緩和したことはさき発表した通りであって、苟くも国民の能動的なる意欲を冷却せしむるが如きことなきやう、今後共十分留意して参る所存である。【以下、次回】