◎光文社版、椋鳩十『山窩小説 鷲の唄』(1947)
昨日の続きである。インターネットで、椋鳩十を検索していたところ、大藤幹夫氏の「椋鳩十論―初期作品を中心に―」にヒットした。大阪教育大学の『学大国文』の第二六号(一九八三)に掲載されたものである。これは、周到な論文であって、非常に勉強になった。
上記論文によれば、椋鳩十の発禁本『鷲の唄』(春秋社、一九三三)には、その前後に、次のような関係書があるようだ。
1・『山窩調』私家版、一九三三年
2・『鷲の唄』春秋社、一九三三年一〇月一五日
3・『鷲の唄』改定版、春秋社、一九三三年一一月一五日
4・『山窩小説 鷲の唄』光文社、一九四七年二月一〇日初版
5・『山窩小説 鷲の唄』光文社、一九四八年一一月二〇日再版
6・『山窩小説 若い女』光文社、一九四七年二月一〇日初版
このうち、2・4・5は、大藤論文の四三ページに、写真が載っている。
大藤論文を読んで、二〇年以上前に、光文社版の『山窩小説 鷲の唄』と『山窩小説 若い女』を入手したことを思い出した。当時、サンカについて調べていて、何かの参考になるかと思って購入したものである。しかし、一読して、フィクションであることが明白だったので、資料としては使わなかった。
大藤論文によれば、この光文社版は、過去に伏字にしたり、削除したりした部分をすべて起こして出版されたものだという。サンカ研究の資料としては使えないが、椋鳩十の文学を研究する上では、重要な資料ということになろう。
なお、光文社版は、『山窩小説 鷲の唄』と『山窩小説 若い女』に分かれているが、これは、何かの都合で、『鷲の唄』を二分冊にしたものである。【この話、続く】
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