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掌編小説 邪宗を撃退した話   文科系

2022年08月24日 16時29分46秒 | 文芸作品
 世界基督教統一神霊教会。政権党国会議員らとの「公僕としては汚すぎる」腐れ縁が世を騒がせている真っ最中のこの名が久々に聞こえ始めて、わが身に起ったある出来事をすぐに思い出した。何年か前、今と同じ夏の終わりに近づいた頃の事。庭のブドウ、巨峰の袋掛けが二〇を超え、珍しい豊作にもなったので、見栄えが良い何房かを選び出して、お隣の柴原さんにお裾分けに行ったのが事の始まりだ。この家は、今は成人になったばかりの二番目のお子さんが生まれた直後からここに住むことになった、我が家の店子に当たる仲良しだったが、お裾分けをめぐる型通りの応答の後で、当時はまだ四〇歳ほどだった奥さんがこんな話を切り出したのである。
「この頃、何か宗教団体みたいな女性が何人か訪ねてくるようになって┉┉┉。実家の母が大腸癌で亡くなったのを知っているその友人なんだけど、┉┉┉ 」
 そういえば僕も車の洗車をしていた日中になど二度ほど見かけたことがある。一台の車から二~三人が降り立ち、柴原宅の呼び鈴を押しているその姿を。しばらく様子を見て居たが、玄関口で何やら話し合い始めたようだった。初めは空いていた扉を間もなく一人が閉めたのでそう思ったのだ。〈あれが始まりだったのか、その後もう一度見た覚えもあるが┉┉┉┉〉
「宗教団体って、どうしてそう思ったの?」
「母が死んだお悔やみとか、『良い人だったからとても仲良くさせていただいてたのに、どうしてこんなに早く┉┉┉』だとか」
「お母さんが亡くなられたその因縁というのかな、そんな話も出て来たの?」
「そうそう、私いま、ほかにもいくつか困ってることがあって、そんなことも色々しゃべってたし┉┉┉、」
「大丈夫だろうけど、何か手伝えることがあったら、言ってね」
 とこんな風でその日は終わったが、気になって注意していたら、その後も何度か同じことが続いていたようだ。彼らの車を覚えたから僕にも分かったことなのであって、その車が帰っていったある夕方、考えていたこんな話を柴原宅の玄関口ですることになった。

「あの宗教団体が今もまた来て帰っていったようだけど、撃退法というのか、ある話をちょっと聞いてくれます?」 
 仏教の一部を除いて、ほとんどの宗教はまず「霊魂不滅」という考え方を持っている。ここから、死後の世界に永遠の命を導き出すものだ。だから、そこを拒めばよい。夫も私も、肉体を離れて霊魂は存在しない、肉体が滅びればその肉体と結びついた魂も滅びると考えていると強く言い続ければよい。とここまで話すと、彼女からいくつかの質問が出て、こんな応答が起こった。
「魂もないという死後って、怖くないですか?」
「怖いから魂があると思おうって、おかしいでしょう。それに、自殺や、最近は死刑覚悟の犯罪もあるようだし、怖すぎたら自死なんて起こらないのとちがうかなー?」
「臨死体験って、どう思われます? 死の床から生き返った人が死後の世界を垣間見ていたという体験談のことらしいですが」
「死にかけた人でも脳が働いてれば夢は見るでしょう。夢って、実体のない漠としたものだから、死後の世界の断片のような映像や内容もあることでしょう。人間ってもともと、肉体が眠っていても夢を見るから、肉体を離れた心つまり霊魂があると考えてしまったんじゃないのかな。という細々とした話には彼らも色々と返してくるはずですから、正体も現していない彼らを拒否するにはとにかく『霊魂はない』と言い続ける。必ずお連れ合いの名前も出してね」
 と強調してその日を終わったが、以降何回か彼らの車を見た後に、柴原奥さんから「もう来なくなった」と告げられたものだった。その時に早速、僕の方からこんな話を出させていただいた。先日の話の続きで、僕の宗教観として。
 宗教にも自然宗教から、多神教、一神教などいろいろだが、すべての宗教が自然科学の発展によってその信仰領域をどんどん狭められてきたという歴史がある。このことが案外まとめては語られていないのだが、どうしてなのか。「それでも地球は回る」と天動説は地動説に取って代わられたのだし、どの宗教にもある創世記はビッグバンに始まる宇宙膨張史に席を譲った。「神の似姿」として造られた人間も、現生人類すべての祖先である一〇数万年前に東アフリカにいた一部族の、一人ないしは数人の女性にまで行きつき、意外に多く存在した他の別系統人類は、数万年前までにすべて死に絶えているという。そんな人類進化史がほぼ究明され尽くしているのである。それでも「信仰と科学とは共存できる」と語られるのだが、狂信カルトの定義もない日本だから、カルトが政権を支えることになってしまった。
コメント (4)
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