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ウクライナで米ロ手打ち   文科系

2015年07月31日 11時33分32秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
 田中宇の国際ニュースに、耳よりな記事が載っていた。ウクライナがクリミアの独立を認める憲法改正案を国会可決したという。これはロシアの望んできた着地点だが、アメリカが陰で動いてロシアと手打ちをしたという。田中宇のニュースの考え方には必ずしも賛成する僕ではないが、こういう世界史的事実関係については、いつも見る事にしてきたので、ここに紹介したい。
 でもこの事実、米ロは本当に密かに、かつ遠慮がちに進めているらしい。ウクライナ問題は元々アメリカが火を付けたもの。このマッチによる火事に対して、今アメリカがロシアと一緒になって火消ししているのだから、不思議な光景である。アメリカがマッチを付けて、米ロでポンプを押すという、結果的にはマッチポンプということになった。ロシアの「決断+粘り」勝ちをアメリカが認めたということだろう。
 かくして日本は又、蚊帳の外。マッチで付けられた大火事だけ日本には残って、ロシアとは制裁など冷えたままである。政界だけではなく、(「ロシア悪」とだけ騙された)マスコミまでがそうなっている。アメリカのやり方はいつもこうだ。日中対立を散々煽っておいて日本の頭越しに中国と手打ちとか、「分割して統治せよ」とか「合従連衡」とかは昔からある作戦だが、それにしても・・・・。
 このニュースを紹介してみよう。 


【(前略) 今年初め、露独仏の努力でウクライナ東部の停戦協定(ミンスク2)が締結された後も、米国は、停戦違反を繰り返すウクライナの反露的なポロシェンコ政権を支援し続けている。米国は、NATOや、欧州の対米従属状態など、自国の覇権体制を守るため、ウクライナの内戦を起こしてロシア敵視を強化し、米国が欧州を引き連れてロシアと恒久対立する新冷戦体制を作ろうとしており、危機はまだまだ続くというのが、これまで多い分析だった。

 ところが今、米国は突然、ウクライナの内戦を急いで終わらせようとする動きを始めている。7月16日、米国の圧力を受けて、ウクライナのポロシェンコ大統領が、東部地域に自治を与える憲法改定の法案を議会に提出した。同日、米国からヌーランド国務次官補がウクライナ議会に乗り込み、議会の3分の2の賛成が必要な憲法改定の法案が間違いなく可決されるよう、圧力をかけた。

 これまでウクライナ危機をさんざん扇動してきたヌーランドが(おそらくオバマの命を受け)危機を沈静化する憲法改定をしろとウクライナに圧力をかけるのは皮肉だ。圧力の効果で、東部の親露派を敵視して自治付与の憲法改定に反対してきた議員たちもしぶしぶ賛成し、法案は288対57で可決され、憲法裁判所の判断を経て正式決定することになった。

 東部に自治を与える憲法改定は、ミンスク2の停戦協定に盛り込まれた、ウクライナにとっての義務だった。ロシアは以前からウクライナに憲法改定を求めてきたが、ウクライナは拒否していた。憲法で東部に自治が与えられれば、内戦は終結し、ロシアとウクライナの対立も下火になり、ウクライナ危機が解決に向けて大きく動く。これは、ロシアが切望し、米ウクライナが拒否してきた展開だ。

 米国がウクライナ問題で急にロシアに譲歩するようになったのは、米国がイラン核問題やシリア内戦、ISISなどの中東の諸問題でロシアに頼らねばならなくなったため、中東諸問題の解決の主導役をロシアにやってもらう代わりに、ウクライナ問題で米国がロシアに譲歩することにしたからだ、と解説されている。だからイラン核問題が解決された直後のタイミングで、米国がウクライナに自治付与の憲法改定をやらせたのだという。米欧は、中東の問題解決をロシアにお願いするため、ウクライナを見捨てたとも評されている。

 しかし、イランやシリアの問題解決との交換という筋書きは、よく考えるとおかしい。ロシアは、米国が何も譲歩しなくても、独自の国益に沿ってイランやシリアの問題解決を進めていたからだ。米国はロシアに譲歩する必要などなかった。

 米国がウクライナ問題でロシアに譲歩した理由の一つは、イラン核合意の締結にロシアの協力が必要で、イランと核協約を結ぶ前に、米露が交換条件について談合していたと報じられている。しかし、イラン核合意は少し前まで、米国よりロシアが推進を希望し、米国はむしろ推進を邪魔する方だった。ロシアは、米欧に制裁されたイランが最も頼りにしてきた国だ。米国がロシアに譲歩したのは、ロシアがイランをけしかけてISISを潰す戦いをやらせてほしいから、とも言われているが、ロシアは米国に頼まれなくても、ISISと戦うイランを支援してきた。

 米国は、ロシアがシリアのアサド政権と反政府派を交渉させ、シリア内戦を終わらせてほしい。その際、アサド大統領をやめさせてほしいので、米国はウクライナ問題で譲歩したという説もある。ロシアはずっとアサドを支援してきたが、最近、米国に頼まれ、プーチンらロシア高官がアサドを見放すような言動をしているとも報じられている。

 しかし、今のシリアには、アサド政権以外に、シリアの国家としての統合を維持できる勢力がない。アサドを辞めさせたら、シリアはリビアのように国家崩壊し恒久内戦化する。サウジやトルコは「(親イランである)アサドを辞めさせるなら、ロシアと一緒にシリア内戦終結に協力しても良い」と言っているので、ロシアはアサドを見放すかのようなそぶりを見せているが、実のところロシアはアサドを辞めさせるつもりなどない。

 米国はまた、ロシアがシリア内戦の終結を主導する際、サウジアラビアなどアラブ諸国とイランの間を取り持ってほしい、とも要請している。これまた米国に頼まれなくてもロシアがやろうとしてきたことだ。米国のロシア敵視は、今や「ふりだけ」だ。米国は、中東とウクライナの両方で、ロシアを有利にし、強化している。米国によって強化されたロシアやイランは、米国の単独覇権体制を崩し、多極型の覇権構造に転換する動きを強めている。

 今思うと、米国の隠然としたロシア強化策の始まりは今年5月、ケリー国務長官が2年ぶりにロシアを訪問してプーチンに会った時からだった。この時、ウクライナ問題で米国とロシアが直接交渉する連絡ルートが初めて作られた。ウクライナ危機の当初から、ロシアは危機の黒幕である米国と直接交渉することを切望したが、米国はずっと拒否してきた。

それが5月に大転換し、米露が直接ウクライナ危機について話し始めた。米国のヌーランド国務次官補と、ロシアのカラシン外務次官が双方の交渉担当となった。ウクライナ危機を起こした張本人であるヌーランドが、危機を収拾する担当者もやるという皮肉な事態の始まりだった。これ以来、中東とウクライナの両方の問題について、米露間の連絡が密になった。最近では6月25日と7月15日に、オバマとプーチンが長時間、電話で話をしている。

 7月のイラン協約後、米国が中東の諸問題でロシアに頼る傾向がさらに強まっているが、米露双方は「新世界秩序」とも言うべきこの新たな事態を、なるべく目立たないよう運営している。たとえば、米国がウクライナに圧力をかけて東部に自治を認める憲法改定をやらせたことは、ロシアにとって大喜びのはずだが、ロシア側は「東部の勢力と相談して自治を与えるのがミンスク2の合意だったが、ウクライナ政府は東部に相談せず憲法を改定しており、合意違反でけしからん」と怒る演技をしている。

 米国中枢で軍産複合体がクーデター的な戦略乗っ取りをやらない限り、ウクライナ危機は今後もう再燃せず、下火になるだろう(報道だけで、対立が激化しているかのような幻影が流布し続けるかもしれないが)。911やイラク侵攻あたりから続いてきた多極化のプロセスは、山場を迎えつつある感じだ。】


 なおこの急転直下には、次の諸事実も間違いなく絡んでいる。独仏一定の対米自主路線、AIIB等に示され露中欧の接近とBRICS発言権の増大、相対的なアメリカの力の低下、などである。もっと過去に遡れば、嘘の理由イラク開戦、それでユーロをも騙して大きな犠牲を払わせた事、リーマンショックの大被害、などなどもアメリカの力の低下に繋がっている事は確かだろう。
 いつまでたっても日本だけがアメリカの言うがままと見えるのは、僕だけだろうか。世界3位の経済大国で、これほどアメリカ株価などを支えているというのに。今度は安保法制、若者の命という犠牲まで押しつけらつつあるのだ。
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「従米か愛国か」、孫崎享書評(2) 文科系

2015年07月31日 09時59分43秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
5 対米自主派の消滅

①歴代首相のこと

 孫崎享「戦後史の正体」は端的に言えば、歴代首相を従米と自主派に分けて見せる作業と言って良い。同「アメリカに潰された政治家たち」は、題名の通りに潰された自主派を描き、併せて「戦後最大の対米追随政権」として野田内閣を描くことで終わっている。こういう書の中から僕は、自分の最大関心事項「冷戦以降」90年代からの米世界戦略転換をここまで読み込んできたと言える。
 さて、このアメリカ半世紀ぶりのこれほど不自然な世界戦略転換は、日本政財官マスコミ界などとも軋みを起こして、当然これを引きずり回すことになっていく。首相で言えば以降は、たった4人の自主派(側面)が出たというのがその軋みに当たるのだろう。クリントンと1対1を含めて何時間も『対等以上の態度で交渉』と書かれた宮沢喜一。『「日米同盟」よりも「多角的安全保障」を重視』したがゆえに『つぶすための工作』を仕掛けられたと、細川護煕。この細川は、佐川急便の借入金返済疑惑で辞任したのだった。ついで、福田康夫への表現はちょっと長くて、複雑なものだ。こんなふうに。なお彼の辞任も急すぎて何か不可解なものだったことは、僕もよく覚えている。
『福田康夫首相時代、米国はアフガニスタン戦争への自衛隊ヘリコプターの派遣を強行に要求しました。さらにその後、破綻することが確実な金融機関への巨額な融資を求めました。福田首相は辞任することによって、この要求を拒否したようです』
 この金融機関とはリーマンショック後のファニーメイのことなのであって、認めていれば数兆円の金をどぶに捨てることになっていたはずだと、孫崎は書いている。
 そして最後の自主派が、言わずと知れた普天間の鳩山由紀夫だが、これ以外、特に小泉前後からはもう、「従米」のオンパレードとされている。小渕、森、小泉、安倍、麻生、菅、野田。

②官僚

 細川、福田、鳩山らの上記のように不思議な辞任には当然アメリカが関わっていよう。なんせ、90年代以降にCIAが扱う仕事の4割が国際経済問題なのであって、当時のその最大ターゲットが、以上に見てきたように日本だったのであるからだ。
 さて、政治家の次には、日本政治のシンクタンクと孫崎も呼ぶ官僚が狙われることになったということだ。強面の元駐日大使アマコストが90年代半ばにこう語っていると、孫崎は書く。
『「政治環境から見て、これまでより規制緩和がしやすくなったのに、現実の前進はまことに微々たるものである。その理由を求めるのはむずかしくない。最も巧妙かつ執拗な抵抗は、他ならぬ官僚機構によるものである。日本の経済と政治を牛耳ることを許している規制緩和制度を抜本的に変えようという動機は、官僚側にはほとんどない」』
 ここに1998年官僚制度の牙城大蔵省で有名な「ノーパンしゃぶしゃぶ事件」が摘発され、官僚たたきの声がかってなく激しくなっていった。
『わずかに残っていたシンクタンクとしての官僚機構を崩壊させられた日本からは、国家戦略を考える組織が完全に消滅してしまったのです』

③マスコミ

 こういう官僚から日々レクチャーを受けているに等しいマスコミ政治記者などの自主派も、落日を迎えることになった。孫崎は自分自身の中央公論との関わりを一例に取って、これを説明するのだ。
『私は2003年、「中央公論」5月号に「『情報小国』脱出の道筋」と題した評論を書き、間接的な形でイラク戦争を批判しました』
『私は中公新書『日本外交 現場からの証言』で山本七平賞をいただいてから、中央公論社から毎年2~3本の論評を掲載しますといわれていたのです。しかし2003年5月の間接的な批判ですら受け入れられなかったのでしょう。このあと中央公論から論評の依頼はなくなりました』
 「アメリカに潰された政治家たち」に3人の座談会が収められていて、そのうちのひとり高橋洋一は、こう語っている。大蔵官僚出身で、内閣参事官(総理補佐官補)をやった人物だ。
『政治家の対米追従路線の中で、霞ヶ関ではアメリカのいうことを聞く官僚グループが出世していく。彼らは自分たちの立場、利権を守るために、アメリカは何もいっていないのに「アメリカの意向」を持ち出す。とくに財政や金融に限っていうと、そうしたケースが非常に多い。霞ヶ関では財務省のポチができるとそれが増殖する。メディアもポチになって、ポチ体制が確立すればその中から出世する確率が高くなる。そうするとさらにポチ集団が膨らんでいくという構図です』

 なんのことはない。従米派増殖は出世が動機なのだ。そして、在任期間が長かった首相、吉田茂、池田勇人、小泉などを見ると、アメリカの支持がその最大要件であったように、アメリカこそ今の日本の権力者たちを作っていると、孫崎は述べているのである。

(続く)
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「従米か愛国か」 孫崎享書評 (1)  文科系

2015年07月30日 13時58分27秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
 訳あって、13年1月に5回連載でここに掲載した孫崎享の2冊の著作書評を3回ぐらいに編集し直して、再掲させていただく。その後の政治推移を見ると格別にますます必要なものになったと愚考するので。
 日本外務省の国際情報局長でもイラン大使でもあった人がこういう著作を出しているというのは、今ますます聞くべきであると思う。確か、イラク戦争でアメリカに愛想を尽かした人だったのではなかったか。そこが僕にとっては特に、面白いのだが。


【「従米か愛国か」(1) 文科系 2013年01月03日 | 歴史・戦争責任・戦争体験など

1 前置き

 このブログをやり出してから7年間ずっと、一つの疑問があった。近年の世界史認識において誰が考えても最大の問題のはずだが、50年ぶりの冷戦終結後もアメリカの軍事力はなぜ減っていかなかったのかという問いだ。なんせ、リーマンショク以降も、世界の恐慌状態やますます深刻になる貧困層対策を尻目に、冷戦時以上の軍事充実ぶりである。世界の不幸の大本のひとつと述べても良いのではないか。これは日本にとっても最大の政治情勢問題なのであって、ここの正しい認識を抜きにしては日本のどんな政治・経済、社会問題も何一つ正確には分析できないという性格を有していると考えていた。そこへ格好の著者の好著が出て来たから、去年すぐに買って、読み始めていた。孫崎享の「戦後史の正体」と「アメリカに潰された政治家たち」である。前者は昨年8月、後者は9月の第一版第一刷発行である。悪書を読むのは人生最大の浪費と言うが、この著者と著作が僕の問題意識から言ってその正反対のものではないかと、まず示しておきたい。
 
 孫崎享はこういう人物だ。43年生まれで外務省に入省し、ウズベキスタンやイランの大使を歴任し、国際情報局長から、最後は防衛大学教授を務めていた。日本最高レベルの外交情報掌握者であって、かつ冷戦直後の93~96年にウズベキ大使を務めていたとなれば、冷戦後のアメリカ、その恥部などを最もよく知っている人物と言えるだろう。そういう人物が退職後の晩年に近くなって反米物を書くとすれば、これは一読の価値ありというものである。この2冊の本をしばらく紹介していきたい。

2 冷戦後の米最大課題二つ

 はじめに、冷戦後のアメリカと、その対日政策の始まりの部分を見てみる。以下『 』は、僕のエントリーでいつものように著作の抜粋だ。「戦後史の正体」第6章「冷戦終結と米国の変容」からとったものである。

 孫崎はこの章の書き出し近くで、こんな文章を引用している。後のアメリカ統合参謀本部議長コリン・パウエルが、議長就任の前年1988年春にソ連のゴルバチョフから打ち明けられた話なのである。
『「1988年春、ゴルバチョフは私に『将来私は冷戦を終わらせるつもりだ。あなたは新しい敵を探さなければならない』と述べた。『信じられない。しかし彼は本気だ』私は口にこそ出さなかったがこう思ったものである」(中略)
 米軍がこれまで維持してきた膨大な兵士や兵器は不要になります。ソ連を仮想敵国として作られてきた軍事戦略も意味のないものになります』
『こうした状況のなかで米国が考えるべきことは次のふたつです。ひとつは「ソ連が崩壊したあとも、われわれは強大な軍事力を維持する必要があるだろうか。もし維持しようとした場合、国民の支持が得られるだろうか」という問題です。もうひとつは「日本の経済力にどうやって対抗するか」という問題です』

 終戦直後の日本の戦後方向を、アメリカ、占領軍が途中から転換させ始めたというのは有名な話である。足腰立たぬように押さえつける方向から、冷戦に対して活用していこうと。そのためにこそ、天皇を中心とした戦前からの種々の体質なども、一定温存し始めたのであった。これは、戦後史の定説になっているはずだ。その時以来の、日本の方向転換が冷戦終結によってなされ始めたと、そういうことなのである。どんなふうにして?

3 冷戦直後、日本こそアメリカの最大脅威だった

 このことについて孫崎は以下のような象徴的例などを挙げていく。今から見れば、当時の日本経済力は恐ろしく強かったということであろう。
 一つは、ニューヨークのロックフェラーセンタービルが89年に三菱地所に買収されたこと。そして、コロンビア・ピクチャーズがソニーに買収されたこと。当時のコロンビアは米国文化の華である映画会社において、ロックフェラーセンターと同様に名門中の名門であった。また米国産業の中心である自動車と鉄工業も日本に追い抜かれていたのだと、孫崎は解説を加えていく。

 併せて、孫崎のこの書にはこんな1991年の世論調査結果が記載されている。シカゴ外交評議会の「米国にとっての死活的脅威は何か」という以下四項目の選択調査である。「日本の経済力」、「中国の大国化」、「ソ連の軍事力」、「欧州の経済力」。この四つの順位が、一般人では多い方からこの通りで、60,40,33,30%となっているが、指導者層はちょっと違って、こうである。63,16,20,42%。つまり指導者層内部では、こんな結論になったと言えるのだ。これからのアメリカ、怖いのは他国の軍事力などではなく、その経済力の方がよほど怖い、と。軍事スパイ機関のはずのCIAが、以降経済スパイ機関の様相を強めていく背景はこんな所に求められると、孫崎は述べている。
 さて、こういう情勢認識からこそ、冷戦後の本音の方針が出てくるのである。

4 アメリカの本音シフトと陽動作戦

 こうして、冷戦後のアメリカには、軍事力を半減したその力を経済に回し日本に対抗せよという意見も多かったということだ。が、結局は軍事力を維持増強し、世界の覇者となる道を選んだと、孫崎は述べていく。ちなみに孫崎は、当時検討されていたもう一方の別の道として、マクナマラ元国防長官のこんな上院予算委員会発言を紹介している。
『ソ連の脅威が減少したいま、3000億ドルの国防予算は半分に減らせる。この資金は経済の再構築に回せる』

 さて、軍事力維持強化の道を選んだとすると、経済的脅威・日本にはどう対していったのか。アメリカの片棒を担がせ、そこに金も使わせることによって日本経済を発展させないようにするという道なのである。「ならず者国家」と呼ばれたイラク、イラン、北朝鮮などと戦うべく、応分の負担をせよということなのであった。最初の例がこれ、91年に始まった湾岸戦争で日本が130億ドル負担してもなお「あまりにも遅すぎ、少なすぎ。人も血も、出せ」というようなものだ。この道は次いで、イラク戦争への協力、参戦へと繋がっていく。
 この後の20年、日本が先進国では唯一名目経済成長率がゼロとなった原因がここにあったのかと、僕などは改めて振り返っていた次第だ。

 なお、90年当時の日本の経済力をアメリカにとってこれほどの脅威と捉えていれば、今の中国はアメリカにとってもう怖くて堪らないはずだ。軍事増強の根拠として最大限に利用しつつあるのだろう。そしてその論理が、日本にも押しつけられることになる。日中間に波風が立つわけだ。アジア友好外交を進めた民主党政権や、新政権発足直後の小沢訪中団が憎まれたわけもここにあったのだろう。膨大な相対的貧困家庭数を抱えて、何とも不条理なアメリカだななどと、腹立ちを伴って思わざるを得ないのである。 (続く)】
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「よたよたランナーの手記」(128) 活動年齢や寿命を左右する脚力   文科系

2015年07月29日 13時36分16秒 | スポーツ
 前回書いた21日まで以降は、24日、26日しか走らず、ちょっと間遠になっている。今のところ小さなものだと思っているが、トラブルがあったからだ。24日に30分走った後、右足首の下外側に軽いものだがシカッとした痛みが走った。それで40分ほどで止めて帰ってきた。26日は何ともないまま65分で9.1キロほど走ったのだが、事後にはやはり同じ部分に24日よりも軽い痛みと、そこを中心にちょっと広範囲の右足首周辺後方全体に違和感があった。とっさに思い出したのが、疲労骨折(その前兆を含む)である。明らかに右足の踵骨が絡んでいるらしいからだ。いろいろ調べてみたが、ちょっと安静にした方がよいようだ。慢性的疲労による怪我ならば、軽い内に先手を打つに限る。ネットで調べてみたら、軽いうちなら運動しながらでも10日ほど安静にすれば良いようだし。僕の場合は24日から26日にかけてかなり軽くなっているわけだし。21日の90分12キロという長距離走と、靴を新調したことも絡んでいるのかも知れないのである。


 さて今日は、活動年齢とか寿命とかへのランニング(もしくは、ウオーキング)の効果について、今までここに書いてきたことをもう一度まとめてみたい。まず、医者たちが言う言葉から。
①歯医者がよくいう8020運動とは、80才で自分の歯が20本以上ある人は長生きするということ。

②プラスして、ランナーは8020に自然となりやすい。これは、血流の良さによる歯周辺の免疫力の高さによるところだそうだ。突き出た心臓と言われる下半身が強い人は①になりやすいのだろう。

③そこで下半身つまり、脚力のことだが、我が家の体組成計は「アクティブ度」という数値も計れるようになっている。「体重に占める脚筋量の割合を指標化したもの」という定義である。これのライフサイクル推移のグラフが添付されていたのだが、これによれば今の日本の男女活動年齢、寿命の差がどこでできるかは、以下のように一目瞭然。

④女はこう推移している。30才辺りから緩く長く落ちていき、60才過ぎにこの下降が止まる。そして65才以降はほとんど横ばいで変化なし。家事がこの横ばいを作っているから、長生きするのだとも見える。

⑤対する男はどうか。まず、20~45才に女よりもはるかに急激に落ちていく。45過ぎにこれが止まり始めて、70まではほぼ横ばい。ところが、70才過ぎにはもう、死に向かって急激な落下という感じになっている。この男性のアクティブド変遷曲線全体が何を意味するかは説明の必要もないだろう。

⑥脚力に関わってはこんなことも言われている。時速7キロ以上で一定時間歩ける人は長生きする。つまり、③~⑤をまとめるとこうなるということだろう。脚力のある人は活動年齢が長いと。これとよく似たもう一つが「握力も活動年齢を延ばす」。この二つはつまり、端的に言ってしまえばこういうことではないか。血流が活動年齢維持や寿命の基礎であると。

 男性諸氏に言いたい。45才ほどまでにどこかで一度昔の体力をなにがしかでも復活させようではないかと。ジムやランニング大会などを見ているとそんなことをつくづく思うのである。75才になってもアクティブ度30才という人もかなりいると捉えるれる。若さの特権・無酸素筋は弱くなっても、活動年齢を延ばす有酸素筋はそれほどの可能性を持っているのだと思う。原始時代にグレートジャーニーを南米地の果てまでやり切った人類という生き物は本来、持ち前の好奇心に駆られてかどこまでも歩き、走り続けられる動物に出来ているのだ。何歳になっても、生きている間は。逆に言えば、走れなくなった時は死に向かっていく時、とか?


 なお、時速6・5キロ以上で30分歩ける男性ならば65才以上でも走れるようになると僕は確信している。ただ、その方法が非常に難しいので、諦めてしまうだけだとも。僕は59才からランニング入門をし、68才後半から病気の為に3年間完全ブランクがあったが、以前と同じように走れるようになった。
 僕の体験によるラン復活の方法がここに書いてあるので参考にしていただければ嬉しい。14年12月30日のこのシリーズ第95回である。なお、たとえ走れるようにならなくとも、歩くスピードが0.2キロ時上がるだけでもその分若い身体になって、活動年齢が長くなったと言えると思う。これもよく言われることだが、癌でさえ部分的老化によるものだとも、聞いたことがある。これとの対比で言えば、血流こそ全体的若さの根源?
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新聞の片隅に載ったニュースから(206)    大西五郎

2015年07月27日 19時33分54秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
心からの反省が友好の礎 市民有志が「宣言」首相に提出へ(15.7.27 朝日新聞)

「加害の歴史に向き合う勇気を」。愛知県内で平和運動を続けてきた市民有志が「戦後70年市民宣言」をまとめた。安倍晋三首相の談話を前に、30日、全国の市民団体と連携して首相に提出する。
宣言を作ったのは「戦後70年市民宣言・あいち」。戦没者遺族や被爆者、戦後補償裁判に携わってきた弁護士など44人が呼びかけ人となり、4月から議論を重ねてきた。賛同者は千人を超えた。
「正しい歴史認識に基いた心からの反省、謝罪、賠償が和解と友好の礎」と宣言。安倍首相への緊急要請として、植民地支配と侵略を認めて「痛切な反省」と「心からのおわび」を表明した村山談話を継承するよう求めている。
共同代表の元立教大学特任教授、池住義憲さん(71)は、歴史認識について自らの言葉で語ろうとしない安倍首相の姿勢への「危機感に動かされた」という。「率直に謝罪できない政権が、違憲の指摘がある安保法制に突き進む状況に恐怖を覚えた」
池住さんは、村山談話が出た20年前にも市民による声明に関わった。その時の原動力も危機感だった。1995年6月、衆院で採決された「戦後50年国会決議」は侵略や反省の表現があいまいだった。
「戦後の節目をこんな形で終わらせたくない」。全国の仲間に呼び掛け、侵略を認め、謝罪することを政府に求める声明をまとめ、8月1日、首相官邸に届けた。対応した五十嵐公三官房長官が「限界はあるが、要望は尊重したい」と応じたのを覚えている。
「村山談話にアジアとの和解の可能性を実感し、勇気づけられた。どうしてまた、私たちが宣言を出さなければならなくなったのか。歴史を前に進めたい」
30日、北海道から広島まで同じ問題意識で宣言を出す7団体と共同で首相に提出する。20年前と同じように、官邸への訪問を求めている。

宣言の全文は「市民宣言・あいち」のホームページ(http;//70senngenn.iinna.net)に掲載している。

□――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――□

市民宣言あいちは村山談話を継承することを求めていますが、安倍首相は戦後70年の総理大臣談話で村山談話の「植民地支配と侵略に痛切な反省とお詫び」を引き継ぐのかどうか明らかにしていません。「戦争の反省」は口にしますが、侵略戦争を行ったことの反省なのか、戦争の仕方が拙くて敗戦に至ったことを反省しているのかわかりません。
そこで市民宣言をまとめた人たちは宣言に付帯して、加害の歴史を正しく認識することや、アジア・太平洋戦争が侵略戦争であったと表明すること。軍事力によらない近隣諸国との友好関係を築く努力をすることなどを安倍首相に緊急要請もしています。そしてホームページを通じて市民宣言と安倍首相への緊急要請への賛同者を募っています。                                               大西 五郎
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国政を世界(史)の中で観る   文科系

2015年07月27日 19時22分27秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
 以下は、1970さんとの最新論争の連続した拙コメント群である。表題の事を二人の違いとして最も強く感じたから、再掲する事にした。
 グローバル政治・経済下では、日本のどんな小さな事も世界との関係なしにはもう語れなくなっている。G7がG20になって、そのG20も中国のAIIBが密かに分裂工作を実現したように。が、日本の為政者はずっとアメリカの世界観と国策、それも今ではアメリカ共和党のそれらで動かされてきただけだと痛感する。このブログを始めて十年、表題の事はこの十年間あれこれ学んだ末の最も大切な視点だと考えてきた。
 日本は長く、世界第2位の経済大国であり続け、今でも3位の大国。もっともっと国際的な責任も、貢献も果たせるはずだ。今新たに激動している世界の中では特に。日本の貢献によって、世界の未来到来の早い遅いが決まるかというほどに。


『  一言 (文科系)2015-07-26 10:39:03
 反論というのじゃないけど、70さんの最後のコメントに一言。
『(イギリスが)経済、軍事共にアメリカとは兄弟分』
 これって、昔はともかく、今はちょっと変わってきた気もしますが。AIIBで西欧総崩れの戦犯、原因になって、アメリカはカンカンのはずだ。マネーゲーム世界の最先端を連んで踏み出した90年頃とか、ブレアがイラク戦争賛成に回った時とかは、本当に驚きましたけどね。

 イギリスのAIIB加入決定でも、英国外務省は猛烈反対しました。ここの外務省も、日本と同じようにアメリカに完全懐柔されているのでしょう。でも、財務省が外務省に激しく抗論して、最後は首相が財務相に軍配をあげたとか。
 日本でも、こういうことが起こらないかなー? 親米外務省に親中国財務省とか。中米と等距離外交の方が、余程中国を制止できて世界が平和になり、経済的にも良いはずだ。また、日本の技術提供で地球環境にもよくなる。


追加 (文科系)2015-07-26 11:31:11
 世界2,3番目の経済大国が、加えて隣同士にいる。しかも、中国のここまでの発展には日本企業の貢献も大きかったはずだ。それがせめて米国と等距離外交になれば、経済協力などももっと進む。観光客流入も含めて、TPPや安保法制でアメリカの世界犯罪共犯者になる道よりも、日本経済にもどれほどよいことか。
 そして、このことは何よりも次の「副産物」を産む。リーマンショック大恐慌によって米銀行全てが世界の銀行ベスト10から外れたなど経済大国を滑り落ちる事確実で焦って乱暴狼藉をなし、じたばたしている米国を多少なりとも大人しくできるだろうと。

 思えば、小沢一郎が民主党政権の幹事長だった時、いかに先見の明があったか。中国に大代表団を送り、当時の習副主席と天皇との会見を成功させている。同じく思えばこの時のこの会見には、猛烈な抵抗があったな。当時の宮内庁(ハゲタ?)長官がこの会見に最後まで抵抗したのだった。マスコミにリーク情報を流して。この動きと、その後の小沢追い落としとには、同じような力が働いたのも明白。こういう陰謀の背後にはいつも、アメリカが居ることも含めて。


長い歴史の中で観る (文科系)2015-07-27 15:28:49
 長い人類史の中で、戦争違法化の国際法はやっと、20世紀になって始まったばかりだ。第一次世界大戦という総力戦の悲劇を体験した人類が、「せめて世界戦争だけはもう止めよう」という話になって、国際組織(国際連盟)を初めて創ってのことだった。ちなみに、この時に世界平和に向けて主導権を発揮したアメリカの今の体たらくはなんということだろう。当時の米国大統領ウィルソンは、草葉の陰でさぞ泣いていることだろうな。
 それで世界大戦こそ70年間無くなって、かの世界冷戦体制も乗り越えたが、超大国の横暴、アフリカの戦争などは、内乱工作も含めればむしろ増えている勢いだ。

 グローバル世界に呼応すべき国連常設警察軍というのは、こういう視野で観なければならないはずだ。旧超大国アメリカは当面飛び抜けたその暴力の発動と戦争政策を経済的にも止められそうもないのだし。せめて20~30年単位の問題とは観るべきだ。
 もっともそのころは、今のマネーゲームに新境地が開けないならば、あるいは第3次世界大戦のようなものでも起こさないならば、アメリカは大軍事疲弊もあってかなり没落しているはずだ。いくら移民(の頭脳など)を入れても、あの超格差社会では国が持つはずがない。

 もっとも戦後20世紀初めからあるとも言える世界冷戦体制が終わってからは、まだ25年しか経っていない。その意味では今は、既成社会主義社会が失敗に終わってから次の時代への過渡期の狭間の時代とも言えるだろう。つまり、何が出てくるかまだまだ分からないが、従来思考で測れない事だけは確かだろう。


観てましょう (文科系)2015-07-27 16:10:41
 70さん、「従来思考で測れない時代」も「従来思考を下敷きにして」も、実質変わりはないことをすることになる。前者も後者も、現実を踏まえての事だろうし、また、それぞれが世界の根本欠陥と見る所に目を付ける事も同じだろう。
 問題はこの後者、世界の課題として目をどこに付けるかの違いにあるだけだ。僕は、アメリカの世界的横暴にまず目を付け、これへの3番目の大国日本の従属に次いで目を付ける。なんせ、大国で最も国連を無視してきたのが20世紀中以降のアメリカなのだから。

 このブログが始まってもう10年。あと10年したら、アメリカの没落ももっと見えてくる。その時にBRICSが今のアメリカを反面教師にして国連に従っていくかどうかも見えてくる。スプラトリーやパラセル諸島問題も含めてね。そういうことでしょ?

 僕はEUには相対的にかなり信頼を置いている。その信頼は、以下の拙エントリーに詳しい。14年4月14日と5月8日とに書いた『書評「アジア力の世紀」』。


さらに一言 (文科系)2015-07-27 18:43:41 さらに一言。
 これからの日本を見る場合には、「世界」を見ながらと、その「歴史」(世界史)を自らの目で見ながらでないと正しい道は何も分からないと思う。その意味では東西南北どこの国にもいる右翼というのはまず問題外だ。なんせ、基本的・原理的に自分の国しか観ていないのだから。

 戦後日本は長い占領下の習慣から引き続いて、常にアメリカ(発の利権)の指示について来ただけ。アメリカに「世界史」を観て貰って、その指示に従ってきただけ。つまり、独創性は何もなかった。だが、世界2位、やがて3位の経済大国になった時には、もっともっと発言権も、良い意味での世界貢献責任も生じたはずだ。そこにこそ日本の若者の未来への真の夢も産まれるというように。ところが、長くアメリカ利権にどっぷりと浸かった官僚・自民党周辺は何の世界貢献も果たさずに過ごしてきたのだと思う。だからこそ、ちょっと「独創性」に傾くと、角栄、小沢のように暴力でアメリカに排斥されるか、アベ路線のようなトロイことになった。アメリカの陰の力のゆえなのだろうが短期政権ばかりの中で、ちょっと長く続いたアベなどは時代錯誤の馬脚が現れすぎて、あっという間に沈没という所。

 EU、BRICS、中国。これらとも独自の独創的方針で付き合っていく必要が生じているはずだ。その重大な証拠の一つが、ここで僕が再三書いてきた「谷内正太郎発言」なのだと思う。人として、あんな不細工な発言もちょっと珍しいという、そういうことを証明したつもりだ。あれが、アベ政権の目玉政策の安保局長!!』


 こういう全ての意味でも、らくせきさんが韓国誌、中国誌をここに紹介して下さるというのは、このブログの最大長所の一つ。やはり、ただ日本の政治を観るのではなく、これからも日「中」との関係だけでなく「世界史の中の日本」を見ていこうと愚考している。
 なお、上の最後二つのコメントは、このエントリーに再掲してから、コメント欄掲載自身の方は消去した。少しでも他の人のコメントが画面に残るように。
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僕が政治論以外も書くわけ   文科系

2015年07月27日 13時03分20秒 | 文化一般、書評・マスコミ評など
このブログは、この秋で発足十年になる。発足時に、古くからの友人である管理人さんに「参加してくれ」と頼まれて、僕が提案して飲んでもらった条件があった。それが、このブログの表題をこう謳った理由である。『九条バトル !!(憲法問題のみならず、人間的なテーマならなんでも大歓迎!!)』。これが、ここがこれだけ続き、ささやかだが成功してきたやの原因になったと、僕は観ている。この25日までの週累計でも、アクセス1,023人、閲覧数12,821人となっているが、こんな長い文章を1人10面も読んでいただけるというのが、ここの最大の特長だと言えるだろう。単なる政治ブログは普通の人には面白いはずもないのだし、そんなものだけを毎日書けるというのも僕にはちょっと変人とも思える。政治に文化の仮面を被せても事は同じだろう。
 さて、僕は「こういう立ち位置」を説明すべく、時々以下のような文章をここに載せてきた。改めて「こういう哲学」を再掲させていただくので、お読み願えれば幸いである。


『 改めて「僕が政治論以外も書くわけ」  文科系 2012年01月15日 | 文化一般

 表記のことを、改めてまとめてみたい。随筆、サッカー評論などなど一見関係ないようなことを僕はなぜここに書いてきたか。ここが始まった6年前からしばらくはかなり気にしていたことだが、最近はあまりこれを書いたことがなかったと思いついて。

 僕がまだ若い頃から、こんなことが当時の大学で当たり前であった左翼の世界の常識のように広く語られていた。「外では『民主的な夫』、家での実質は関白亭主。そんなのがごろごろ」。そういう男たちの政治論に接する機会があると、正直どこか斜めに構えてこれを聞いていたものだ。どんな偉い左翼人士に対しても。レーニンの著作にたびたび出てくるこういった内容の言葉も、そんなわけでなぜか身に染みて受け取れたものだった。
「どんな有力な反動政治家の気の利いた名演説や、そういう反動政治方針よりも、恐るべきものは人々の生活習慣である」
 こういう僕の身についた感覚から僕の左翼隣人、いや人間一般を観る目も、いつしかこうなっていた。その人の言葉を聞いていてもそれをそのままには信じず、実は、言葉をも参考にしつつその人の実生活がどうかといつも観察していた。誤解されては困るが、これは人間不信というのではなくって、自分をも含んだ以下のような人間認識と言ってよい。人は一般に自分自身を知っているわけではなくって、自分の行為と言葉が知らずに自分にとって重大な矛盾をはらんでいることなどはいっぱいあるものだ、と。こういう人間観は実は、哲学をちょっとでもまじめに学んだことがある者の宿命でもあろう。哲学史では、自覚が最も難しくって大切なことだと語ってきたのだから。ソクラテスの「汝自身を知れ」、近代以降でもデカルトの「私は、思う(疑う)。そういう私も含めてすべてを疑う私こそ、まず第一に存在すると言えるものだ」などは、みなこれと同じことを述べているものだ。

 さて、だとしたら政治論だけやっていても何か広く本質的なことを語っているなんてことはないだろう。そんなのはリアリティーに欠けるからナンセンスということもあるし、「非現実的話」「非現実的世界」もはなはだしいことさえもあるわけである。それでこうなる。生活も語ってほしい。その人の最も生活らしい生活と言える、好きなこと、文化活動なんかも知りたい。どういう人がその論を語っているかということもなければ、説得力不十分なのではないか、などなどと。もちろん、何を書いてもそれが文章である限りは嘘も書けるのだけれど、その人の実際や自覚のにおいのしない政治論だけの話よりはまだはるかにましだろうし、随筆なんかでもリアリティーのない文章は結構馬脚が顕れているものだと、などなど、そういうことである。
 やがて、こんな風にも考えるようになった。幸せな活動が自分自身に実質希薄な人が人を幸せにするなんて?とか、人の困難を除くことだけが幸せと語っているに等しい人の言葉なんて?とか。そういう人を見ると今の僕は、まずこう言いたくなる。人の困難を除くよりもまず、自分、人生にはこれだけ楽しいことがあると子孫に実際に示して見せてみろよ、と。人生が生きるに値すると自ら示せなくって、どんな政治が語れるというのか、と。

 なお、以上は政治論だけをやっているのだと、人生の一断面の話だけしているという自覚がある誠実な論じ方ならばそれはそれでよく、五月蠅いことは言わない。だが、当時の左翼政治論壇では、こんなことさえ語られたのである。「歴史進歩の方向に沿って進むのが、人間のあるべき道である」と。つまり、政治と哲学が結びついていたのだ。それどころか、戦前から政治が文学や哲学や政治学、そういう学者たちの上位に君臨していたと言える現象のなんと多かったことか。
 そんなわけで僕は、当時では当たり前であった大学学生自治会には近づいたことがなかった。そして、左翼になってからもこの「政治優位哲学」には常に距離を置いていたものだった。これはなぜか僕の宿痾のようなものになっていた。かと言って、文化を重視しているかに見えたいわゆる新左翼には、僕は近づいた事はない。

 なお、こういう「公的な場所」に「私的な文章」を載せるなんて?という感覚も日本には非常に多いはずだ。こういう「公私の峻別」がまた、日本の公的なもののリアリティーをなくしてはいなかったか。公的発言に私的な事を入れると、まるで何か邪な意図があるに違いないとでも言うような。逆に日本ではもっともっとこんな事が必要なのだろう。政治をもっと私的な事に引きつけて、随筆風に語ること。正真正銘の公私混同はいけないが、私の実際に裏付けられないような公(の言葉)は日本という国においてはそのままでは、こういったものと同等扱いされることも多いはずだ。自分の子供をエリートにするためだけに高給をもらっているに等しい文科省官僚の公的発言、「貴男が男女平等を語っているの?」と連れ合いに冷笑される亭主。

 ややこしい内容を、舌足らずに書いたなと、自分でも隔靴掻痒。最近のここをお読み頂いている皆様にはどうか、意のある所をお酌み取り頂きたい。なお僕の文章はブログも同人誌随筆も、ほぼすべて連れ合いや同居に等しい娘にもしょっちゅう読んでもらっている。例えば、ハーちゃん随筆などは、彼らとの対話、共同生活の場所にもなっている。』
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中央日報より    らくせき

2015年07月26日 09時18分53秒 | Weblog
日本の三菱マテリアル(旧三菱鉱業)が第2次世界大戦当時に強制徴用された中国人労働者に謝罪し、補償金を支払うことにした。日本の大企業が中国人強制労働被害者に謝罪し、補償金を支払うことにしたのは今回が初めて。しかし韓国人被害者に対しては謝罪と補償を拒否しているため、批判が強まる見込みだ。

日本の共同通信と中国の新華社通信は24日、三菱マテリアルが自社の強制労働に動員された中国人3765人に対して謝罪し、基金形式で被害者1人あたり10万元(約200万円)の補償金を支払うと報じた。三菱側と中国側の交渉チームは近く北京で会い、合意文に署名する予定だ。

昨年3月、中国人強制労働者のうち生存者約40人は三菱マテリアルと日本コークス工業(旧三井鉱山)を相手に、1人あたり100万元の賠償金とともに日中両国の主要日刊紙に謝罪声明を掲載することを求める内容の訴訟を北京第一中級裁判所に起こした。実際の賠償額は要求額の10%にすぎないが、今回、日本側が誠意を見せたことで訴訟が取り下げられる可能性もある。

中国新聞網によると、三菱は日本政府が第2次世界大戦中に強制的に3万9000人の中国人を徴用し、うち3765人が三菱鉱業で強制労働をしたという点を認めた。また、労働者のうち720人が死亡し、人権が侵害されたと確認した。

三菱マテリアルは20日、米ロサンゼルスを訪問し、ジェームズ・マーフィーさん(94)など強制労働に徴用された米軍戦争捕虜にも公式的に謝罪した。当時、三菱マテリアルの岡本行夫社外取締役は「英国とオランダ、豪州の戦争捕虜への謝罪も希望している」と述べた。その間、三菱は1972年の日中共同声明に基づき、中国政府はもちろん個人の賠償請求権は存在しないという日本政府の立場に基づき、中国人被害者の要求に応じなかった。今回立場を変えたのは「戦犯企業」というイメージを払拭し、中国市場に本格的に進出するための布石と分析される。安倍首相が来月発表する終戦70年談話を控え、日本政府が中国に対して友好ジェスチャーを見せたという分析が多い。さらに9月の安倍首相の中国訪問など日中関係の改善を念頭に置いた政治的な布石の可能性もある。

しかし三菱側は韓国の被害者については「法的な状況が違う」という立場だ。岡本氏は最近、「植民地時代の朝鮮人強制徴用は国際労働機構が禁止した強制労働に該当せず、韓国人個人の賠償請求権は65年の韓日協定で終結した」と主張した。現在、韓日政府が強制徴用、旧日本軍慰安婦などの問題をめぐり対立している状況であるため、民間企業が先に補償をする可能性は低い。しかし中国人被害者への補償が進行される場合、韓国国内で日本に対する批判が強まると予想され、今回の三菱の決定は今後の韓日関係改善に障害になると分析される。
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ハリルジャパン(12) プレミア岡崎の周囲  文科系

2015年07月26日 08時23分24秒 | スポーツ
 08年以来ここで僕が最も熱心に追ってきた岡崎慎司がプレミアのレスターへ行くことになったとは、6月27日のこのシリーズ第11回に書いた。その後、この11日に入団会見、13日にはチームのオーストリア合宿に合流。そして21日には、練習マッチにツートップ一角で先発の初出場を果たして得点にも絡み、23日には新監督、イタリア人のラニエリが記者会見で彼への大きい期待を語るなど、いろんな話題が聞こえてくる。

 ラニエリ監督による評価
 ラニエリ監督は、ドイツ時代の岡崎を追っていたと語っており、岡崎の特徴を実によく掴んでいる。こんな談話を語っている。
『ブンデスリーガでもシンジのプレーを何度か見ている。ブンデスリーガも非常に厳しいリーグ。もちろん、プレミアリーグの方が少しだけ強さが求められるが、シンジは非常に知性のある男だ。2カ月もしたら、プレミアリーグのすべてを理解するようになるだろう。他国リーグからの移籍は簡単なことではない。時には6カ月必要になることもあるが、シンジは非常に賢い』
『シンジは非常にスピードがあり、得点力もある。ペナルティーエリア内では常にチャンスをうかがっている。ボールを持っていなくても、突然パスを受けてゴールを決める。GKが前にいても冷静にゴールを決めてしまう。わたしは彼のことを非常に気に入っている。素晴らしいチームプレーヤーでもある』

 練習マッチで得点に絡む
『泥くさく岡崎がゴール前に突っ込んだ。PKで先制を許して0―1で迎えた前半33分。FWウジョアがヘディングでペナルティーエリア内に落としたボールに反応した。胸トラップでコントロールして相手DF2人と交錯。豪快に転倒した直後、そのこぼれ球から同点弾が生まれた。新天地での実戦デビュー。前半に出場して存在感を示し「ぼちぼち」と笑顔で振り返った』

 「ストライカー期待で、皆が僕を見てくれる!」
『 質問 ドイツで欧州CLに出場するようなチームからオファーがあったという報道があった。それでもあえてプレミアに来た。選手として新体験をしたいという思い? 怖さはなかったか?
 岡崎 プレミアリーグは誰しもが行ける場所じゃない。一度その機会を逃すと、行けない可能性が高くなる。それが自分にとっては鍵。プレミアリーグに行くチャンスは、誰もがつかめない。ブンデスリーガから行った選手も苦労している。そこには何か難しい事があるんじゃないか。もしそれをクリアしたら、自分の可能性が広がるんじゃないかなと。単純に考え抜いて決めたわけじゃなく、本当に感覚ですね。チャレンジしたいなという自分の欲望で決めました』

『 質問 レスターは、ストライカーの人数は結構そろっていて、チーム内争いも厳しいと思うが、他の選手と持ち味が違うとアピールしたいところは?
 岡崎 ポジショニングとかその前の動きは、常に準備ができていると思います。それがすべてじゃなくて、外してシュートを打っても体を張ってくるディフェンスも多いわけじゃないですか。足に当てたりとか、練習もするわけですよ。そういうところで結果を出さないといけないと思います。ただチャンスを多く作り出せる可能性はすごくあると思います。マインツで成功した通り、1トップが成功するかっていったら、2トップだったり、トップ下だったりとかになるかもしれないけど、逆にシャドーストライカーっていう自分がエスパルス時代にやってたヨンセンの近くで動き回ってたっていうのを、もう一度ヨーロッパで覚醒させられるチャンスがあるんじゃないかなと。1トップだったら味方を生かしたりとか、自分が先に動いてっていうのがあるけど、例えば、2トップだったら、相手の動きを見て、自分が連動するっていうのは、自分の方ができると思う。でもそれは結果を出さないと何も評価されないっていうのは、ヨーロッパでは当たり前のこと。飛び抜けた選手っていうのは、(チーム内に)いるとは思わないし、みんな高いレベルのいろんな特徴を持ってて、誰が結果を出すかっていのが、勝負になってくると思う。だからこそ、自分にはチャンスがあるのかなと。

 質問 シュツットガルトの最後の方は悩みもあったようだが、今はその悩みも解消してストライカーとして勝負できるという感覚?
 岡崎 あの時はプレーの悩みではなかった。どう監督に見られているかという、そういうところを気にしていた。今はもうとにかく、自分がこのチームで、やれることをやって、(自分の最高の形を)見つけ出す作業をしなければならない。このチームに来て良かったなと思うのは、雰囲気も良くて、回りも自分を見てくれるし、探してくれるし、コーチもスタッフも、自分がストライカーという部分を見いだしてここに呼んでくれてる。自分も意見が言えるし、ストライカーでやりたいといえる。そういうところが最初から違うのかなと思います』

『 質問 4年という長い契約期間があるが、この4年での目標は?
 岡崎 さっきはゴールの数にこだわらないと言ったが、やっぱりこの4年のシーズンの中で、2桁いく年は作りたい。それがいつになるかは、もちろん早ければ早いほどいいが、そんなに簡単にはいかないだろうし、ただ2桁はいきたい。やっぱりここ(プレミア)で残したい。そういうのはありますね。』
(以上のインタビューは、日刊スポーツより)

 こんな言葉を聞いていると、いつも思う事だが、周囲と自分とをよく見つめられる実に賢い選手だと思うばかりだ。ここまで這い上がってきた彼だし、選手生活の集大成を成し遂げて欲しい。同じチームに去年11得点を挙げた191センチの選手が居るのだが。それにしてもかれがまさか、18億円の選手になるとは!

 全く別の話だが、このブログが2週連続で週累計アクセス1000人、同閲覧数累計1万を越えた。かなりの努力もし、資料にも当たって書いてきた者としては、とても嬉しい。特に今週の閲覧数は12,821面。ツイッター流行の今時、こんな長文をよく読んでくれるものだ。「内容があるから」というのなら、尚嬉しい気持ちになる。
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今の日本は独立した国家なのか?    らくせき

2015年07月25日 19時21分36秒 | Weblog
安保法制に関する議論になにか欠けているような気がしてきました。
その一つに、これで日本は独立国といえるのだろうか?という疑問です。
日米同盟に賛成か反対か?どちらでも良いのですが・・・

結果的にアメリカにますます従属していく可能性が高いのでは?という心配も。
戦後70年。少なくとも独立国に半歩でも近づいてほしいな、と。

それでないと戦後は終わらないのでは?
なぜ、こうした思考上の補助線が引かれないのか?
どこかが病んでいるのかも・・・



コメント (29)
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僕の九条堅持論   文科系

2015年07月25日 00時34分06秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
 以下は、11年3月9日にここに載せた拙稿である。ざくろさんという右の人物と論争した直後に書いたものだ。ここの過去で最も勉強し、自分でもあれこれとよく考えて来られたと僕には思われた右の人物だったから、こんなことを改めてまとめてみて、応える気になったのだろう。興味のあられる方は、ご笑覧、よろしく。


【 僕の九条堅持論 2011年03月09日

 ざくろさんという方が、ここでおかしな事を述べられた。
『原理原則から述べれば当然現行憲法は破棄されるべきものなんですけどね。』
 自衛隊という陸海空軍と憲法との矛盾について、これが、原理原則を本末転倒させた論議であるのは明らかだ。なし崩しに軍隊を作って、世界有数の規模と成し、強引に解釈改憲を通してきたやり方こそ、憲法という原理原則を踏みにじったと語るべきである。こんなことは、小学生でも分かる理屈だ。1国の憲法というものは本来、そういうものだと日々教えているはずだからである。
 あまつさえこの間に、この憲法を守ることが出来る世界作りを大国日本が率先して呼びかけ直す道も、「以下のように」あり得たのである。自衛隊を作る背景、原因にもなった冷戦体制が終わった時とか、サブプライムバブル弾けに端を発して100年単位ほどの世界大恐慌状態に落ち込んだ時とかに。そういう絶好の機会において、日本が国連でアメリカの投票機の役割しか果たしてこなかったのは、実に情けないことだ。なお、この恐慌は持ち直したという声があるがとんでもない暴論だと思う。世界にこれだけ失業者がいては、株が少々上がったところで、健全な経済状況などと言えるわけがないではないか。それが民主主義の観点というものであろう。
 

1 さて、古今東西、戦争の原因はどんどん変ってきて色々あり、一様ではない。よって「戦争を必然とする人間の本性」のようなものがあるとは、僕は考えない。これが存在するから今後も戦争は永遠に少なくならないというようなことを語るとしたら、その論の正しさを先ず証明してからにして欲しい。こんな証明は論理的にも、現実的にも不可能なはずだから「攻めてくる国があるから対応を考えなければならない」という立論だけでは、全く不十分な議論である。特に長期スパンで戦争をなくしていく視点が欠けたそういう論議は、万人に対して説得力のあるものではないだろう。
 20世紀になって、第一次世界大戦の世界的惨状から以降、そして第二次世界大戦以降はもっと、戦争違法化の流れが急速に進んできた。この流れは、18世紀西欧に起こった「自由、平等、博愛」の声に示されるような「人の命は権利としては平等に大切である」という考え方が定着してきた結果でもあろう。つまり、民族平等や国家自決権なども含んだこういう流れが、後退や紆余曲折はあっても近現代史に確固として存在するのである。
 世界史のこんな流れの中からこそ、長年の努力でEUもできた。EUの形成は、それまでの世界的戦争の先頭に立ってきたような国々が、互いへの戦争などを放棄したということを示している。
 20世紀後半になって、大きな戦争は朝鮮、ベトナムなどで起こったが、あれは東西世界体制の冷戦に関わったもので、その対立はもう存在しない。それどころか、中国も資本主義体制に組み込まれた現在では、日本のような先進大国を攻めるというような行為は、中国も含めた世界経済をがたがたにするという世界史的汚名を被る覚悟が必要になったとも言える。今時の大国の誰が、こんなヒットラーのような無謀行為を敢えて犯すだろうか。

2 さて、こういう世界の流れを観るならば当然、自国への戦争に関わっても二つのスパンで物事を考えなければならないと思う。一つが、「当面、日本に攻めてくる国があるか。それに対してどうするのか」と言うスパン。今一つが、「戦争違法化の流れを全人類、子々孫々のために推し進めるべき各国の責任」というスパンであって、これは、近年新たに目立ってきた世界の貧困問題や食糧問題などを解決するためにも世界万民が望んでいることだろう。なお、この二つで前者しか論じない方々は、論証抜きの「戦争は永遠の現実」という独断のみに頑強に固執して、数々の人類の不幸を全く顧みないニヒリズムだと、断定したい。
 以上のことは、世界の大国アメリカを観れば容易に分かることだ。アメリカは相対的貧困者や満足に医者にかかれない人々やが非常に多い「先進国」である。高校を卒業できない人が白人でも4人に1人であり、黒人やヒスパニックでは半分だ。現在の軍事費を何割かでも減らせれば、これらが救われる財政的条件が生まれる理屈だが、こんな当たり前のことが何故出来ないのか。ここの軍事費が何割か減ったら、攻めてくる国が出るというものでもなかろうに。だからこそ、今軍事費を減らそうとの視点を持たない「現実論」は、ニヒリズムだと呼ぶのである。 

3 まず上記の長期スパンであるが、こういう立場に日本が立ちたいと思う。
 先ず、国連には9条堅持と日本軍隊縮小方向を、代わりに『平和と貧困撲滅基金』というような形で毎年かなりのお金を国連に出していく方向を、改めて表明する。合わせて、こう表明する。
「軍隊を持たない方向を目指す代わりに、世界の『平和と貧困撲滅』に貢献したい。そういう大国が存在するのは世界と国連、人類の未来にとってこの上なく大きい意義があると考える。ついては代わりに以下の要求を万国、国連にさせて頂く。日本国憲法にある通りに、世界各国の平和を目指し貧困をなくすという希望と善意に信頼を置いてこういう決断を成すわけだから、以下の要求を国連に出す資格も当然あると考えている。
『日本に他国が攻めてくるということがないようにする努力を万国にもお願いしたい。また万万が一攻められるようなことがあった場合には、国連軍、国際的常設軍隊で即座に支援して頂くというそういう体制を至急お作り願いたい。国連をそうしたものにするべく、日本はその先頭に立ちたい』」 

4 九条堅持と、その実現のために、いやそれ以上に、世界の平和と貧困撲滅のために、3の遂行度合いに合わせて、自衛隊は縮小、廃止方向を取る。そのスパンも30年などと遠いものではなくしたい。
 なお、こういう構想は民主党小沢派、鳩山派などが持っている構想に近いものだと、僕は見ている。小沢派の「国連警察軍」などの構想は、これに近い発想、あるいはそうなっていかざるをえない発想なのではないかということだ。むしろ、親中国路線とともに国連常設的軍隊重視こそ、小沢がアメリカと親米派勢力に憎まれている理由だろうと考えてきた。また、このような案が大きく世に出てきた時には、共産党、社民党もこれに賛成せざるを得なくなるであろうとも予測する。つまり、以上の構想の現実的政治勢力、潜在勢力が現に大きく存在するということだ。
 ちなみに、国連自身の指揮下にある常設軍というならば、それに日本が参加してさえ、「国権の発動たる戦争」に関わる「陸海空軍その他の戦力」とは言えないだろう。また、フセインのクゥエート侵略があったり、アフリカのいくつかの国に同類のことが起こっている以上、かなり強力な国連常設軍が当面は必要だと思う。】
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「世界激動」、その背景  文科系

2015年07月24日 13時12分03秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
 世界が画期的かつ質的に激動する時期が訪れたようだ。いや、イラク戦争、シリア「内乱」、アラブの「春」、ウクライナ情勢などなど、もう激動の時期に入っているのだろう。まだまだこんなことが続くはずだ。その背景は・・・・

 GDPで見て、アメリカの6割、日本の倍以上にと、近年の中国急成長が驚異的だ。この3月31日で初発国を締め切った中国主導のアジアインフラ開発銀行に、参加国57。イギリスを初めとした西欧諸国、韓国、オーストラリアまでが手を上げて、G20諸国も総崩れである。
 高をくくっていた日米が大慌て。世界中が膨大な失業者、半失業者を抱えて、仕事、有効需要に困っている窮状を見誤ったのである。どこも、習政権が打ち出した「海と陸のシルクロード構想」など急成長中の中国周辺から仕事を貰いたいのだろう。所詮、物作り国にマネーゲーム国は勝てないということ。マネーゲームというだけでは、低賃金サービス業以外の職業が創り出せないのであるから、仕方ない。

 70~80年代に製造業が衰微した米英は、やがて金融立国への道を歩き始めて、「金融規制の自由化」を世界に要求してきた。これに独日なども加わって、世界金融戦争、通貨戦争などが始まった。これら諸国に対してはしかしながら、物作り国もそうそう自国企業の株支配を自由にはさせなくなってくる。為替、国債の空売りなどに対しても、BRICS諸国などは大きな防衛協力体制を作り上げてきた。他人の労働の産物、成果を掠め取ろうというマネーゲーム立国なんてものは、人間の本性に合わないということだろう。弱肉強食のマネーゲーム業を除いて利潤率、利子率は下がるばかりだから給料は増えず、失業者が増えて、地上の有効需要はますます減少していくばかりである。こんな世界でどうやって景気を良くできるというのだろうか。
 安倍さん、麻生さんでさえ、「内部留保ばかり貯めて、給料を上げない企業は守銭奴だ!」と連呼することを景気対策(ポーズ)の一つにしている時代なのである。
 これと同じ理屈から、こんなことも言えるだろう。
「世界中で短期金転がしをやるマネーゲームで儲け、金だけ肥大させても、仕事を作らない金融業は守銭奴そのものだ。未来の仕事作りには、そもそも長期投資が必要なのだから」

 マネー立国の鬼子・リーマンショックが産んだ不良債権はその膨大な金額さえはっきりしないという形で米国を苦しめているはずだ。そのせいかどうか、世界の銀行資産ランキング・ベスト10にも、米国は一行も入っていない。米国トップのJPモルガンが11位なのだ。日本は三菱東京が10位、郵貯が8位に入っているというのに(14年12月調べ)。長く続いた金融緩和こそ止めたけれど、利上げをどんどん先延ばしにしてきて米が日本とつるんで無理無理作ってきた官製バブルなども、米国の窮状の流れと言える。日本の、住宅バブル以降の長い実体経済停滞と同じ理屈が今現在の米国に働いているのは、明らかである。
 考えてもみよう。今米国が軍需産業と軍隊との縮小を敢行したら、どんな景気になることか。他の全ての国の軍隊を併せたよりも大きい米国の大軍事は、米国最大の景気対策に成り果てているとは言えまいか。冷戦時代の戦争理由が無くなっても軍事肥大を止めるに止められなかったというのは、ヒットラ-のナチス帝国と同じではないか。アメリカの大軍事はこうして、歴史の過渡期のあだ花となっていく運命にあるのだと言いたい。

 そしてさて、世界史を観れば、経済大国はやがて政治大国になる。するとこんな時の世界には、傾き始めた旧大国の足掻きとの間に、常に世界的軋みが起こってきた。旧大国は常に、黙っては退かないからである。ただし、軍事超大国アメリカも、新興物作り国に対して今時まさか第三次世界大戦は起こせないだろう。こうして、これから十年、世界はどのように見ても激動していくはずである。この激動の諸側面について、米国にはこう願うばかりだ。その原子力空母で地球の裏側まで出かけていき爆弾をばかばか落とす「嘘の理由イラク戦争」のような乱暴狼藉というハードランディングで臨むことがないようにと。今こそ、国連規模で米国を規制するべき時だと思う。20世紀前半から世界が築き始めて来た戦争違法化、国連法遵守を世界的に大声で叫ぶべき時なのだと思う。
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随筆紹介 「落とし物」    文科系

2015年07月23日 10時40分53秒 | 文芸作品
 落とし物    K.K さんの作品

 チューリップが赤白黄と華やかに咲く花壇の中に、負けるものかと花よりも大きくなり、小さな白い花びらを付けた見慣れないのがあった。これは何? 花が終わると、エンドウの実を付けたので、やっと分かった。でも、なぜここにあるの?

 そういえば、コスモス畑を見に、孫娘と散歩に出かけた時。道に小指ぐらいの苗が、一つだけポツンと落ちていた。まだ根の土が湿っている。誰かの落とし物? 周りを見渡すが居ない。このままでは車か自転車に潰されてしまう。そっと拾い、大切に持ち帰り、ツルが少しあったのでスイートピーかもと花壇に植えて、すっかり忘れていたのだった。
 半年後、わずか三センチの苗が一メートルにもなり、白い花を次々に咲かせ、実を付けた。マンション暮らしの孫娘には珍しいらしく、「見つけた」と嬉しそうに取っていた。自分で取ったのは格別、野菜は苦手なのに食べたのにも驚いた。
それにしても、みるみる大きく育つ勢いに生命力を感じ、童話の「ジャックと豆の木」を想い出した。この豆は天まで届いて、宝物を持ち帰らせてくれた。私も小さな苗から両手一杯のエンドウをもらった。

 よく見ると、下の方に一つだけ取り忘れ、茶色く固くなったサヤがあった。もしかして種になるかな。また、植えてみよう。
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「よたよたランナーの手記」(127) 食事や脂肪と、ラン   文科系

2015年07月22日 22時34分53秒 | スポーツ
 いろいろ所用があって、16日に走り、次は21日になった。こんな間をおいたという意味で変則日程をやってみると、日頃気づかないことを発見する。

 16日は1時間8.8キロ、21日は90分で12キロを走ったのだが、この12キロが全く疲れなかったのである。4日ほど間があくという悪条件をものともしない好調な走りの要件が別にあると分かった。
 そこで振り返っていろいろあれこれと考えてみたのだが、思いついたのが栄養と睡眠である。僕の弱点だったかも知れない。

 1時間走ると500キロカロリーを軽く超えるが、こんな運動は特に栄養が必須要件になるようだ。朝昼をしっかり食べて走る。それでよほど疲れが違うということに、遅まきながら気づいた。特にランナーがよく語るように、エネルギーの素・グリコーゲンを作る炭水化物や糖分の摂取が大事なのだろう。
 睡眠も大事だ。この年になるとそもそも、睡眠による頭のしっかり度が全く違うとも身にしみてきたのだし。ワインがやや過ぎた夜などは真夜中に目が覚め、以降は嫌な夢を見ているなど眠りが浅くなって、睡眠が足らなくなるようだ。するとやはり頭もぼける上に、走りにも疲労感が出る。
 この二つ、ちょっと前に注意し始めたのだが、改めて気づき直したというわけだった。

 ついでに体脂肪のことだが、最近こんなことに気づいた。走った後の体脂肪率に、日によって凄く差があるのである。ある日は13%台、別の日は10%台、別の計りでは9%台というように。こんなふうに、それこそ日によってくるくる変わるのである。よく走っているしっかりしたボディビルダーに尋ねてみたら、彼も実際にそうなのだと言う。そこで気づいたことが、これ。身体を絞り尽くしている人は、食事と運動とのバランスを脂肪で調節している割合が凄く大きいのではないだろうか。脂肪3%って、僕で言えば1.5キロを優に超える。この1.5キロの脂肪が、消えたり生じたりと、そういうことなのであろう。特に、僕みたいに食事がいい加減で、週3日ほどを不定期に走る人間は、脂肪で調節する割合がとても大きいのかも知れない。以上、この脂肪論は全く自信がない僕の仮説に過ぎない。いずれにしても、ランナーにも食事は極めて大事なようだ。

 さらにまたいずれにしても、人の身体って、面白いなー! 
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僕の米日世界戦略仮説  文科系

2015年07月21日 02時22分13秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
 僕が谷内正太郎批判を行ってきたその論理というものを、今一度箇条書きにしてみたい。

①アメリカは嘘の理由をでっち上げて世論を盛り上げ、煽って、イラク戦争を行った。国連の制止があってもこれを無視して、有志国を募って出撃した。その結果として、数々の悲惨な後遺症に今世界の人々が苦しんでいる。関連死含めて50万人以上のイラク人が亡くなられたという国際調査結果がある。さらに、イスラム国というこの戦争の鬼子が生まれて、これが現在引き起こしている周辺悲劇。他にも、アメリカを初めとした参戦国若者の戦死者家族に、精神を病んだ人々とその家族になどなどのことである。

②日本は、そんな戦争に騙されて?、戦後初めての形の戦争後方支援を行った。

③①のアメリカも、②の日本も、以上のことを以降一度も、何も、謝罪していない。主権者である国民にも、国連にも、その他どこにも。このことは、その「国防」概念にも、「世界の平和」概念にも、日米の国旗や国家にさえ、真っ黒な泥を塗りつけたに等しい行為と言える。こんな連中のどこが、口で常々言い続けている愛国者であると言えるのか。

④こんなことをしでかしておいて、②の最も主体的推進者の一人が(元外務次官である)、アメリカとの戦争協力を現在質的に前進させようとしているのだ。そしてこのことについて、「国家の品格、品性の問題である」などと美化しているということだ。これを、嘘、ごまかしの「自画自賛」「羊頭狗肉」以外の何と呼べば良いのか。こんなのがトップになる外務官僚って、その全体が腐っているとしか僕には考えられないのである。いや、谷内氏のこの「羊頭狗肉」こそ、外務官僚全体が腐っているという証拠と言うべきだろう。以下のように。

⑤しかも、以上の「羊頭狗肉」を当事者として百も承知の上で語っているのであるから、自己反省が全くないどころか、悪に悪を重ね、「毒を喰らわば皿まで」という、不誠実極まりない人物であると言える。


 さてそして、なぜこれほどに日本外務省が骨抜きになっているかというと、次のような背景しか僕には思い浮かばないのである。
①外務省高官って、みんなアメリカに弱みを握られてきたんじゃないか。それで脅されて、良いように操られてきた。現に、ドイツの歴代首相でさえ私的な電話までが盗聴されていたのだから、昔占領下にあった日本外務省の高官らの「身元調査」など楽なものだろう。そしてアメリカが何のために盗聴、『身元調査』を繰り返してきたかも、もう分かりきっている。以下のように。

②国家の累積借金は日本より酷く、物作りが駄目になって金融利益しか無くなって、加えてアメリカ銀行筆頭のモルガンも2番目のバンクオブアメリカも資産が世界銀行ランクの10位以下の乏しさと来れば、もうシャドーバンクに外貨を稼がせるしか国家が生き残る道はないという、そういう窮地に立たされているのではないか。つまり、なりふり構わず何でもやってドル基軸通貨を死守し、大国の座を守り続けたい。ドルは既に、世界貿易決済通貨の5割を切ったのではないだろうか。
 上の世界的盗聴は全部そういう内実にちがいないと推察するのである。また、そういう横暴を力尽くでも押し通すと言う覚悟からこそ、世界の原子力空母11艘のうち10艘をアメリカが所有するという現在の世界パワーバランスを確信犯的に築き上げてきたのではないか。

③かくして、日本外務省高官などは全部弱みを握られていて、これをちらつかせれば、否、ちらつかせる必要もないほどに、アメリカの言うがままと。そう考えれば谷内氏の実に胡散臭い言動も、内閣法制局長官を初めて外務省から持って来て集団的自衛権を合憲と語らせたことなども、すべて辻褄が合うのである。

④谷内氏のこの言葉は、破廉恥と言っても良いほどにそれほどにふざけたものだと総合判断できる。「集団的自衛権による相互支援は、国家の品格、品性の問題」が聞いて呆れるのである。上に述べたイラク戦争への関わり、その事後処理(国家自身に大泥を塗って置いて、その後が何も、全く、きれいにされていない)こそ、まさにそういう証拠と言えるだろう。こうして日本は、今後に望みのあるごく少数の輸出産業を除いては、アメリカと協同する金融立国の道、つまりマネーゲーム立国の道を歩むつもりなのだと、僕は観ている。
 だからこそ、物作り立国のBRICS諸国をその金融世界支配下に置くべく、米日一体で今後あらゆることをしていく覚悟なのだ、とも。集団安保法制とは、「こういう日本」への道なのだと、僕は観てきた。
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