「マスコミに載らない海外記事」のサイトに12日、標記のことが報道された。2019年に「不正選挙大統領」としてクーデターを起こされて亡命したモラレス大統領派が、昨年10月、大統領選挙、国会選挙いずれも大勝利したその前後の様子である。長い記事だが、全文をご紹介する。
『2021年2月12日 (金) 協調的な政治と経済に向かって進むボリビア
ロン・ライデナー 2021年2月8日 Strategic Culture Foundation
ボリビアの収入の半分は、依然天然ガスと石油だ。農産物は二位だ。アルセは経済多角化を望んでいるとロン・ライデナーが書いている。
2020年10月18日、共同体主義で先住民が基盤の社会主義運動 (Movimiento al Socialismo MAS 下記メモ参照)が、アメリカに支援される右翼クーデター政府を破り政府支配を取り戻した。エボ・モラレス大統領(2006-2019)の経済・財務相ルイス・アルセと、外務相デビッド・チョケファンカが、55%の得票(340万)で、大統領と副大統領の座を勝ち取った。最も近い競争相手は、28%の保守的なカルロス・メサ元大統領(2003-5)、14%の右翼でクーデター画策者ルイス・フェルナンド・カマチョだった。世論調査で、8%による可能性が判明して、クーデター独裁者、ヘアニネ・アニェスは選挙選を降りた。
MASは議会両院の過半数も奪回した。下院議席130のうち、75議席、上院議席36のうち21議席。上院は今女性が過半数だ。だがMASは、モラレス在任期間に起きたような、3分の2の大多数は実現できなかった。
2019年11月、軍指導部が、武力でエボ・モラレスを排除すると脅した際、右翼上院議員アニェスがクーデター指導者の地位に就いた。モラレスは、留まれば起こるだろうと予知した大規模流血を避けるため亡命(最初はメキシコ、次にアルゼンチン)した。
このアメリカに支援されたクーデターから数日後、モラレス支持の抗議参加者が軍兵士やヘリコプター射撃手に射殺された。少なくとも3ダースの反クーデター活動家、主に先住民が、一年にわたる独裁中に殺された。
11月8日、新政府が就任した翌日、エボは帰国した。彼は「多国籍企業は我々が自身の天然資源を国有化したことを許さない、リチウムが、アメリカがクーデターを支持した理由だ。」と国民にコチャバンバ州で語った。
モラレスはMAS議長に復帰したが、新政府の一員ではない。
初期改革進行中
ヘアニネ・アニェスの支配は、ボリビア先住民に対する権威主義的攻撃と侮辱のパターンが特徴だった。彼女はアイマラ族の儀式を「悪魔のようだ」と呼び、それは人種差別主義者を元気づけ、彼らはアイマラ先住民のウィファラ旗を燃やした。
ボリビアのクーデター政府は、国民に、49億ドルの外国、国内負債を残した。コロナ・ウイルス流行と、退行的な経済政策や富裕層減税が特徴の独裁支配で、2021年、世界銀行は、6%の景気後退を予測している。
ルイス・アルセは中産階級の教師家族出身だ。彼は大学で経済学位を得ている。最初の10年間、モラレスの経済相として、アルセの計画には、天然ガスと石油の国有化があり、極端な貧困を人口の38%から、17%に減らした。 Quién es Luis Arce, el presidente electo de Bolivia – Noticias económicas, financieras y de negocios – El Cronista
アルセは先住民とは見なされておらず、穏健マルクス主義者と見なされている。
「14歳の時から、私の考えがあって、カール・マルクスを読み始めた。その時以来、私のイデオロギー的立場は変わっておらず、私は他のものに変わるつもりはない」と10月、アルセはロイター・インタビューで述べた。In Evo’s shadow, Bolivia’s new president Luis Arce promises moderate socialism (msn.com) (エボの影の中、ボリビアのルイス・アルセ新大統領は穏健社会主義を約束(msn.com))
経済相として、アルセは多くの部門の国有化を推進し、ボリビアを4.6%の年平均成長率に進め、中南米で最高の一つにした。妊婦、学童、高齢者に、特別手当を支払い、天然ガスと、電池用リチウムの工業化と、原子物理学に投資した。
アルセは400万人以上を救う新たな「飢えに対する特別手当」を再開した。受益者は公共・民間団体から収入を得ない18歳以上の人々、障害者、母親とユニバーサル・ボーナスを受ける人々だ。Bolivia: President Arce Approves Bonus Against Hunger | News | teleSUR English. (ボリビア:アルセ大統領は飢えに対する特別手当を認可|News | teleSUR English)
多少の緊縮策が必要だと認めているが、アルセは公共支出は削減しないと約束した。彼は「MASとして、憎悪なしに、我々の過ちを学習し克服する変化プロセス[再開]」を宣言した。
全収入の半分は、依然天然ガスと石油だ。農業生産は第二位だ。アルセは経済多角化を望んでいる。彼はボリビア人全員が十分に食べられるよう保証するため、食料輸出を止めた。彼はインフレを抑制するため、為替レートを固定した。
「新[アメリカ]政権と、我々の国民の福祉を意味する、より良い関係を予想している」とアルセは、ツイッター・アカウントで書いた。オバマ政権は2008年に大統領に就任するや否や大使交換を止めた。
ボリビア統一農民労連Confederacion Sindical Unica de Campesinos de Boliviaと、先住民農民運動Movimiento Campesino Indigena指導者のデビッド・チョケファンカ副大統領は、1961年に、ラパスのアイマラ族社会で生まれた。前外務大臣は7歳の時にスペイン語を話すことを学んだ。モラレス閣僚時代に、彼は米州ボリバル同盟(ALBA)の議長になった。中南米八カ国の協力志向の同盟からアニェスが離脱した後、ボリビアはALBAに復帰した。ボリビアは、イラン、ベネズエラ、キューバとニカラグアの左翼政府との外交、友好関係を回復した。アニェスは700人のキューバ人医師と医療労働者を追放していた。
人口の半分は先住民だ(一部の情報源は、この比率をより多くしている)。モラレス大統領の初期、草の根の参加で新憲法が作成された。それは36の民族を先住民として認め、スペイン語とならんで、彼らの言語の三つを国の公用語にした。ケチュア族が先住民の半分を占める。アイマラ族は41%だ。
とはいえ、17人の大臣のうち、先住民は一人だけで、女性は四人だ。ケチュア組合活動家サビナ・オレジャナは、文化・非植民地化・脱家父長化大臣に任命された。
大統領就任10日後、アルセはクーデター画策者やアメリカに忠実な軍の右翼を解雇した。彼は国民と憲法に忠実だとされる士官で、彼らを置き換えた。
完全回復を阻止するコロナ
欧米の主流メディア(MSM)は、コロナと洪水に関する多少の報道以外、選挙以来のボリビアにおける大半の進展を無視している。この安価なワクチンを購入する50カ国の一つ、ボリビアに、ロシアがSputnik Vワクチンを供給しているので、MSMはロシアとボリビアを一緒くたにしている。Russia to supply Algeria, Bolivia with Sputnik V vaccine | Coronavirus pandemic News | Al Jazeera (ロシアはSputnik Vワクチンをアルジェリア、ボリビアに供給 |コロナウイルス流行ニュース|アルジャジーラ)
ボリビア政府はアストラゼネカのような欧米製ワクチンも注文しているが、ロシア・ワクチンより三倍も高い。
2月始め、218,000人が検査結果で陽性だった。人口は1150万だ。およそ50人が毎日亡くなっている。エボ・モラレスの姉で、70歳のエステルは、ウイルスで亡くなった。
経済崩壊を恐れて、アルセは多くの人々が切望するほど多数の企業を閉鎖していない。医療労働者は気が動転している。病院は一杯で、満員に近い。最も保守的なサンタクルス地域の医療労働者が、ウイルス蔓延と、突然変異を防ぐため、社会のより広範な一時封鎖を要求して、部分的な24時間ストライキ(2月2日)を行った。Médicos bolivianos hacen paro en región golpeada por COVID – Infobae.
多くの人々は、3月7日に予定されている地域と地方議会選挙延期を望んでいる。政府は多数のコロナ感染不安にもかかわらず、日程を維持するつもりだ。
裁かれるクーデター画策者
選挙勝利の10日後、議会上院と下院が「センカタとサカバ大虐殺」最終の報告を承認した。報告書はアニェスを大量虐殺のかどで起訴することを勧め、彼女の大臣11人の犯罪起訴を提案した。エバ・コパ上院議長は訴訟のため報告書を検察官に提出するよう指示した。
新しい反汚職検察官ルイス・アタナシオが告訴を準備する中、独裁者アニェスや重要閣僚や軍幹部を含む何人かのクーデター画策者が一時拘留され、出国を阻止された。訴訟は、ようやく始まったが、主にコロナ流行のため延期された。President Luis Arce Appoints New Military Leadership in Bolivia | News | teleSUR English. (ルイス・アルセ大統領はボリビア軍の新指導体制を任命| News | teleSUR English)
メモ:
MAS(社会主義運動)は、1998年に、刺激物として、特に運転手が使う(コカインではなく)コカの葉をかむ土着の伝統を持続しようとするコカ農民の苦闘の産物として、エボ・モラレスが設立した。MASの戦いには、水を自由に使う権利や、資本主義の極端に強欲な競争を変えさせるものがある。共同体主義は、個人を共同体と結び付け、自由競争主義政策を拒絶し、共同の意志決定と協調的経済を目指している。この未来社会構想を「ユートピア社会主義」や「21世紀の社会主義」と見るむきもある。この考えは、18世紀、19世紀、20世紀の激しい革命の回避が狙いだ。労働者階級による支配は、資本/企業の支配のない、全ての市民による支配で置き換えられるのだ。集会での直接投票は、永久支配者にならない指導者を選ぶのに望ましい方法だ。
共同体主義は、ベネズエラ人の軍事・政治指導者シモン・ボリバル(1783-1830)が率いた汎ヒスパニック解放運動の派生物だ。この反乱は、ベネズエラ、ボリビア、ペルー、エクアドルとコロンビア(パナマ)で、スペインの植民地支配を追放した。大コロンビアGran Colombiaはボリバル指導下で1821年に作られた。この連盟は、現在のベネズエラ、コロンビア、パナマやエクアドルの多くを含んでいた。彼は1824年に、ペルーの支配者に指命され、1825年に、ボリビアが成立した。』