団塊世代(1947~49年生まれを中心とした世代)は、ちょっと周り同世代を見回せば、孫がいない家が多いと分かる。理由はそれぞれ色々だろうが、共通して流れる特大理由が一つ、団塊2世が同時に就職氷河世代に当たるのだ。この就職氷河時代とは、1990~1年から尾を引いた日本住宅バブル破裂、1997年のアジア通貨危機から生み出されたものである。住宅バブル破裂は、ここまでの狂乱地価をあおった政策の結末。アジア通貨危機はグローバル金融資本が人為的に起こした国際的搾取。後にサブプライムバブル破裂を総括した国連委員会総括書の長だったノーベル賞経済学者スティグリッツがそう述べている。ちなみに、サブプライムバブル破裂・リーマンショックの国連総括書については、その委員会出発から最後まで、これにアメリカが猛烈に反対してきたという事実を付け加えておく。今のアメリカは、国連無視がとても多いのだ。
山田昌弘・中央大学文学部教授(家族社会学)の光文社2020年刊行著作の問題意識は、こういうものだ。合計特殊出生率1・6以下の状況が30年、1・5以下が25年続いているその原因を考えようと。そして、少子化の初期10年の段階において政府が採った欧米風対策が全くピント外れだったうえに、今はもう取り返しがつかなくなっていると証明した。
ちなみに、合計特殊出生率とは、女性1人当たりが一生に産む平均子ども数。2・07人を上回れば人口が増加し、下回れば減る数字。1・5とか1・6とかが長く続いては・・というわけである。
71~74年の第2次ベビーブームでちょっと持ち直したかという以外は戦後一貫して下がり続けてきたのがこの数字と示されている。90年代に入って「1・57ショック」とか「少子化社会の到来」とかの標語で国家の重大問題としてきた議論が何の役にも立たなかったという現状なのである。政府対策がどうピントが狂っていたのか。
この少子化の最大原因として、何よりも若者の大変な貧困化から来た「未婚化」等の経済問題があるという正しい見方を、国家が少子化対策の審議会などでタブー視してきたと、この本は語っている。政府が代わりに鳴り物入りで対策を出した若者の西欧風現状分析が、①若者は1人で暮らし、②愛情があれば結婚するはずで、③相手を見つけるのは簡単であるというもの。この三つが全く現状に合っていなかったという説明が、以下である。
①日本の若者は西欧と違って、親元で暮らすパラサイトシングルが多い。地方などは特にそうだ。
②③については、何よりもこんなことを言う。男女とも、育った家庭並みの生活を望むのだが、1人の収入で子どもを大学にやれるような男性は非常に少なくなった。次いで、仕事による自己実現を求める西欧女性と違って「日本女性は仕事よりも(育った親の家庭並みの)消費生活を求めている」という現実があるなどなどと、この本は現状分析するのである。
僕、文科系は、このブログでこう述べてきたが、それを肯定してくれるのがこの本であった。日本では今、50歳まで一度も結婚したことがない男性が4人に1人に近づいている。それは、結婚相手に選んでもらえない低収入男性が増えたからだ。
こうなった原因はこの30年近くの日本の貧困化にあって、国民1人当たりの購買力平価GDPがわずか25年ほどで世界5位あたりから21年度世界銀行ランキングでは38位(お隣の韓国は31位である)にまで落ちたことによってもたらされた。そして、このことを原因と見ないような少子化対策ばかりを政府がやって来たとこの本も述べているのである。該当箇所に、こんな文章があった。長い引用になるが・・・・。
『私は1996年に出版した「結婚の社会学」(丸善ライブラリー)の中で「収入の低い男性は結婚相手として選ばれにくい」という現実を指摘している。・・・・・
当時、これほど評判の悪かった指摘はなかった・・・1990年代後半のマスメディアや政府は、この事実への言及を避けていた。
政府関係の研究会で、私がこの指摘をしたところ、政府のある高官から、「私の立場で、山田君が言ったことを言ったら、首が飛んでしまう」と言われたことがある。
当時、大手の新聞では、私の発言の該当部分は記事にならなかった。
ある地方公共団体に依頼され執筆したエッセーに関しては、担当課長が、削除を依頼しにわざわざ大学までやって来て、頭を下げられたこともある。
その理由は、「収入の低い男性は結婚相手として選ばれにくい」という指摘は事実であっても差別的発言だから(たとえ報告書であっても)公で発表することはできない、それだけではなく、それを前提とした政策をとることはできない、というものである』(48~49ページ)
少子化対策がこのようにピントがずれていては、どれだけ年月をかけても何の効果もなかったということなのである。真実の原因を国民から隠している間は、無策は当たり前だろう。
山上徹也の安倍晋三射殺事件は、非常によく計画されていたという意味で犯意も十分すぎるほどの確信犯殺人事件である。他方、どんな残酷な殺人事件の判決にも、背景などを考察した情状酌量というものが考慮される。安倍晋三の国葬賛否論議が続く間はずっと、この重大事件の背景をわかっている限りにおいて描き出していきたい。
この殺人事件が起こって、山上徹也の「統一教会への恨み」が報道されたとき、ほとんどのマスコミが「某宗教団体」という書き方をした。それも、「無関係なことで逆恨みして」という描き方がほとんどだったと記憶する。この報道姿勢はいまから思えば、「事実上、政権党に洗脳されてきたに等しく、政権、安倍を忖度、擁護するに等しいマスコミ論調」だったと言えるほどだ。山上徹也の生い立ちをば統一教会が残酷すぎるほどに破壊したのだし、その統一教会の改名や、安倍を中心として保守党選挙への大々的活用などは、「無関係な逆恨み」という当初のマスコミ報道をば唾棄しつつ笑い飛ばすものにしてしまった。
たとえば、デイリー新潮8月3日は、こんなことを伝えている。
『 安倍元総理と統一教会の“ズブズブ癒着”に新証言 「誰が統一教会の支援を受けるかは安倍さんの一存」2022/08/03 05:57
(前略)
安倍氏が選挙応援を教団に依頼
そうした安倍氏肝いりの候補の一人だったのが、元産経新聞記者で、2013年の参院選全国比例で初当選した安倍派の北村経夫参院議員だ。カルト宗教に詳しいジャーナリストの鈴木エイト氏によれば、「初当選時、当時首相だった安倍氏が北村氏の選挙応援を教団に依頼しているのです」
教団の内部文書にはこう書かれていた。「〈首相からじきじきこの方(北村氏)を後援してほしいとの依頼〉〈まだCランクで当選には遠い状況です〉〈今選挙で北村候補を当選させることができるかどうか、組織の『死活問題』です〉と。19年の参院選でも統一教会内部で北村氏を応援するビラが出回っていました。当時、大宮で行われた演説会では国際勝共連合の関係者が仕切っており、300人以上が入れる会場に半分から3分の2くらいは信者が動員されていました」
自民党山口県連の関係者が後を受ける。「北村さんはいずれの選挙も盤石な地盤を築いていたとは言い難く、安倍さんが選挙直前になって慌てて、統一教会に支援を依頼したといわれています。“統一教会のおかげで当選できた”と地元ではまことしやかにささやかれているのです」
北村事務所は、「旧統一教会から支援を受けたことも、見返りを求められたこともありません」と回答するも実際、統一教会の推薦が決まると手厚い支援が受けられるようで、
「一般的に統一教会サイドから20〜30人程度のボランティアが連日手伝いに来てくれます。電話作戦やチラシ配り、ポスター張りなどの機動部隊となってくれるので、貴重な戦力です。15〜20人くらいの人員で選対事務所を切り盛りしているところもありますから、本当に助かります」(県連関係者) (後略)
(デイリー新潮8月3日) 』
さて、2015年に、今の安倍派会長代理で、当時の下村博文文科相が統一教会の改名を認めて以来、安倍派を中心にこのカルト信者を自分らの選挙にフルに活用してきたと、次々と明らかになっている。洗脳カルトの世界基準に当てはまる被害者を無数に生み出してきた団体を改名再出発させた見返りに、「税金で雇われて国民のために働け」とされた公僕たちが狂信者らを選挙に活用、動員してきたのである。そんな議員が特に安倍派に集中しているのである。
山上徹也の安倍晋三に対する犯意の背景には、十分すぎるほどの情状酌量要件が存在していた。ちなみに、政府主催の桜を見る会には、山口県人(安倍会員)がやたらに多く、統一教会関連の参加者らもいたのだ。安倍時代になってから、佐川や黒川ら官僚たちを(保守党選挙)忖度行政に走らせた罪もこの上なく大きい。選挙に強い安倍晋三とは、「こういうことであった?!」という思いになるのである。選挙のためにこんなことを重ね広めて来た安倍晋三を国葬にする? 「自民党葬」ならば分かりすぎるほどに分かるのだが、国民の苦労に思いをはせることができぬこういう「公僕」を国葬なんかには出来ない。
今話題の統一教会名称変更、自民党議員らによる教会狂信者の選挙への活用とは、2015年、下村博文大臣時代の文科省が認めたもの。これを批判され始めた今、下村氏はこう言い逃れていると報道されている。
『 下村氏は「(15年より)前から名称変更については相談があったが、(教会が)正式に申請を出したのは私が大臣の時が初めてだ」と強調。認証についても事務的に進められた結果だと説明した上で、「(私は)全く関わっていない」と反論した』
下村に尋ねよう。傘下省庁の官僚たちが勝手にやったのか。実際は下村も知っていないわけはないと文部官僚だった前川喜平も証言しているが、こんな答弁が、そもそも一般社会で通用すると下村は考えているのである。ずっと長く叶えられなかったこのカルト団体を「統一教会」という悪名から己の大臣時代に解放、再興・復活、自民党選挙に動員などとしておいて、「全く関わっていない」?? 人間のそれとは思えないほどで呆れて笑えるほどの言動、態度ではないか。
政治家とは、国民の生活をよくするために税金の使い方を決め、実行すべく税金で雇われた公僕である。こんな無責任で、人間性にかけた人物が務めてよい仕事ではないはずだ。しかも、こういう人間が安倍派の会長代理? 安倍派って、どこまで恥知らずな人間達の巣窟なのか。この同じ問題での、同じ安倍派の岸防衛相、福田総務会長らの対応、発言も、僕ら国民はわすれてはならないもの。このような団体を活用した選挙をやって来た安倍派議員など、全員辞職すべきであるが、下村氏はさしずめ、その筆頭の人物だと言いたい。
なお、この自民党の重大な腐敗現象報道を、マスコミは一昨日あたりから随分トーンダウンさせ始めていないか。特に、ネットマスコミにそんな気配があるような。今からもう、安倍国葬によって安倍派を筆頭とするこの議員腐敗現象を浄化、帳消ししてやる構えでもあるのだろうか?
今問題になっている「自民党による、統一教会名称変更。一宗教団体として、再出発させたこと」「統一教会による自民党選挙への全面的協力」は、日本の政治劣化、議員らの人間性劣化として、すさまじい問題を含んでいると考える。このように、
カルト教団による家族も含んだ被害について考えもせず、あるいはこれを無視したからこそ、自民党が名称変更を認められたのである。そのうえで彼らを自分らの選挙に大々的に活用してきた。洗脳者の「熱意」を自分らの選挙に利用するために認めた?? とそんな議員たちが一体まともな政治家、というよりもまともな人間であると言えるのか。
政治家って国民に奉仕するために税金を支払われている仕事だろうに、山上被害者のような人々をあらたに無数に生み出させておいて、「俺は知らん事。あの一宗教団体の問題というだけだ」?? 対して、「一宗教団体ではない。山上のような被害者がいっぱい出ている、洗脳カルト教団を復活、再出発させたのだぞ!」と批判されて初めて、「悪かったかな??」??。一体、どういう人間性の持ち主たちなのか。
後からの追加記事
日刊ゲンダイ・デジタル本日の記事に、全国霊感商法対策弁護士連絡会の代表世話人、山口弁護士の談話が載っている。そのほんの一部を、紹介したい。
『 ──銃撃犯の山上徹也容疑者は動機のひとつとして、教団のフロント団体「天宙平和連合」(UPF)のイベント(21年9月12日開催)に元首相が寄せたビデオメッセージを挙げています。教祖の妻である韓鶴子総裁に元首相が「敬意を表します」などと基調演説する衝撃的な内容でした。
全国弁連は抗議文とともに、メッセージ提供の経緯について説明を求める内容証明郵便を安倍さん宛てに送付しました。しかし、衆院議員会館の安倍事務所は受け取り拒否。地元事務所は受け取ったものの、回答はありません。第2次安倍政権以降、自民党が統一教会との関わりを隠さなくなったことに強い懸念を抱いていました。自民党の変化には2つの理由がある。安倍さん自身が統一教会との親和性に気づき、統一教会とつながりのある議員を積極的に登用するようになったことです。
──教団は関連団体などを通じて憲法改正を求め、同性婚や夫婦別姓に反対すると主張しています。
若手議員は統一教会のイベントに参加したり、祝電を送ったり、それらをホームページなどで発信するようになった。ひと昔前は統一教会の求めには応じるものの、議員たちには問題がある教団だという意識があり、「顔は出すけど、名前は出さないで」と言っていたものです。それがガラッと変わったのは、統一教会と関わりを持てば安倍さんの覚えがめでたくなり、政府の一員になるチャンスになったから。政務官や副大臣、場合によっては大臣に取り立てられることもあった。統一教会が刑事摘発されるケースが少なくなり、マスコミ報道が減り、教団の実態を知らない議員が増えたことも背景にあります。』
ちなみに、今日掲載されたこの長い記事の題名は、こうなっていました。『山口弁護士が明かす旧統一教会と政治の闇「警察庁出身の政治家の横やりで撃ち方やめ」』