九条バトル !! (憲法問題のみならず、人間的なテーマならなんでも大歓迎!!)

憲法論議はいよいよ本番に。自由な掲示板です。憲法問題以外でも、人間的な話題なら何でも大歓迎。是非ひと言 !!!

随筆紹介 私の生まれたこの街で(二)  文科系

2023年04月30日 06時59分53秒 | 文芸作品
随筆紹介   私の生まれたこの街で(その二)  S・Hさんの作品です
                                   
 ある朝のことである。その公園の清掃ボランティアの女性から興奮した声で電話がかかってきた。
「吉川さんが楠の木のてっぺん辺りで枝を切っている。落ちたら大ごとだから何とか止めないと」
 良平は現地に飛んで行った。二、三人が大きなおおよそ四メートル先の木のてっぺんを見上げて「おりなさーい」などと叫んでいる。本人の吉川さんは上から「大丈夫」などとのんきに答えている。
 彼の様子を見れば腰の安全ロープがしっかりと木の幹にくくられているし、安全なようにも見える。しかしながら八十の半ばの男が木のてっぺんに登っているだけで世間では大ごとである。何かあったら私たちの責任になるという連帯意識が吉川さんの行為を止めさせる。
 良平が大きな声でわざとゆっくり降りるよう説得をした挙句、彼は腰の安全ベルトを外しするすると滑って地面に足をついた。
 しみじみと吉川さんは言った。
「俺は木登りなんか平気なんだけどなあ。それに俺は周りが汚いと思って道端の雑草などをむしっているのに気持ち悪いといわれる。世の中変わったなあ。人情がなくなったわ」
 良平は吉川さんの言っていることは理解できたが、世間の空気を読むことをしない彼、周囲に溶けこもうとしない偏狭な彼を哀れだと思った。

 そういうことがあって、数日後のことである近所の上川さんから電話があった。
「良平さん、きのう救急車があんたの家の横に止まって結構若い人が担架で運ばれていったよ。ちょっと見ただけだったがかなり苦しそうだったよ。あそこの家はあんな若い人いたんだっけ? あんたなら横だから知っていると思って」
 良平の隣家には年老いた父親と確かまだ仕事に行っている独身の長男がいる。長男は勝田正次という。父親は勝という。勝の妻は認知症が激しくなり随分前に施設に入ったと聞いている。
 あそこは男二人で食事などはどうしているのかなと良平も心配はしていたところであった。そこの庭は夏の間草取りをしてなかったので、ミカンなどの果樹に混ざってススキやせいだかあわだち草などが生い茂っていた。冬になって、草が枯れて来る昨今は火でもつけられたら危ないとも感じていた。

 ある日曜日、燐家から草刈り機の騒がしい音がしてきた。
〈まさか正次君が作業をしているのか?〉良平は不審に思い覗いてみた。なんと家の前に正次が立っているではないか。良平は胸が詰まる思いで彼に近づいた。
「いろんなことかありましてね。せめて庭だけでも整理整頓しておきたくて。僕は今氏子の役員をしていますが出来なくなりました。宮司に話してきます」
 顔面蒼白な正次は良平の目の中をのぞくような真剣な表情で言った。良平は今のこの状況を悟った。
 死ぬ前に一度家に帰ったのだ。
 そういう状況の中で友人に家の庭をきれいにしてもらい、身辺整理をしているのだ。
 しばらくして勝田家の前に数台の車が停まり、黒いスーツの人だかりができていた。
 良平が歩いていると、民生委員をしている幼馴染に出くわした。
「あそこ、息子さんが亡くなったのよ。若いのに気の毒だけれど。お父さんはどのくらい理解しているのかしら」
 彼女は勝田家を顎でしゃくって指しながら気になることを言った。父親の勝はああ見えても相当の認知症を罹っているという。良平は毎日のように路傍であって時の挨拶をしているというのにである。
「ああん、ダメダメ。ぱっと見は普通のように見えるけれど家の中はゴミ屋敷だわ。火事の心配がある。でも幸い近くの娘の芳江ちゃんが毎日食事を持って面倒を見てるからなんとかなっているのよ。あんたも隣なんだから時々のぞいてあげてね」
「おい、俺だって七十五の独居老人だぜ。お前たまには俺の介抱くらいしてくれんかねえ」
 良平が冗談を言うと
「ふふん、何を言ってんの。あんたなんかにゃ構っちゃあおれんわ。世の中、超高齢化社会だから毎日ハラハラドキドキ。何が起きるかわからん。この前も家の中で死んでいたんだよ。あーあ、早くこの役を卒業したいわ」
 寒いというのに、額の汗を拭きながら豊満な体躯を揺らせつつ消えて行った。

 良平はそこまで一気に様々な最近の経験を思い浮かべながらひとまず考えるのを止めた。お金を払い、みぞれが落ちる寒空の下を傘もささずに小走りで家に帰った。

三、世間を見渡して
 ソファーに寝ころびながら、良平は相変わらず降り続ける外の風景を眺めた。先ほど考えていた記憶の断片が浮かんでは消えた。
 高齢者はみんなそれぞれの固有の成育歴の中でそれぞれに生きてきた。そして今人生の終末に向かっている。人生に正解がないように、各自が好きなように自由に生を全うすればよいのだ。周りの人々や環境が、それぞれの人生に寄り添うような世間であってほしい。
 あの古びた近所の喫茶店でコーヒーを飲みながらお年寄りの群像の中の一人でいたい。あの公園の落ち葉を自分よりずっと人生の先輩だちと掃除することの落ち着くことよ。
〈この土地で生まれ育ってきた。だからこの土地で死にたい〉
 あの喫茶店のママだってきっと死ぬまでその仕事を続けていたいに違いない。仕事を続けることがボケずに長く生きることだと信じているのだろう。喫茶店に集まってくる人々もいつもコーヒーを黙って飲みながら、みんな心で繋がっていたいと思っていることだろう。だから毎日三百五十円を握りしめて通ってくる。
 かつてあったことのない超高齢者社会の中を私たちは生きている。私たちは毎日手探りで老いをより安楽に楽しく生きてゆく実験をしているのだ。
 この先は誰にも分からない。ドクターだって老いをどう生きるべきかを教えてはくれない。ならば老いの私たち自身が日々生活する中でまさぐるように生きてゆかねばならないのだ。
 したがって、今私たちの生きているこの社会は(施設のようにコンクリートで取り囲まれているわけではないが)高齢化社会の実験施設と見立ててよいのではないか。喫茶店にしたって、この地域だって。
 この世間という世界の中で、物忘れに戸惑ったり、暇を持て余したり、孤独にさいなまれたりしながらも何処かで誰かと繋がって生きてゆく。
〈ここで最後まで生きる〉
 雨の中、蜜柑の木の下で、水仙の群生が天に向かって一斉に伸びていた。




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

随筆紹介  私の生まれたこの街で   文科系

2023年04月29日 06時29分57秒 | 文芸作品
随筆紹介  「私の生まれたこの街で」  S・Hさんの作品です                 
                                 
一、近所の喫茶店にて
 横になったままカーテンをめくると、外は雨だった。今年で後期高齢者となる良平は近年妻を亡くし独り者であった。二月の中旬になるというのにこのように寒い日が続くのは起きるのがちょっと億劫だった。
 床に敷かれた布団からすっぽり抜けてすぐ近くの喫茶店に出かけた。モーニングが朝食代わりのつもりで行った。
 店に入るとよく知った少々赤ら顔の女性が度の深い眼鏡で新聞を読んでいた。この店のママさんである。髪は白髪になっている。すでに八十歳を超えている筈だ。この店はもうかれこれ三十年以上になるだろうか。彼女の夫が定年退職してから家を改築してこの店を開いたのだ。その亭主もとっくに亡くなってそれからも女手一つで開いている。
 開店当時、ママさんはまだまだ若かった。小柄ではあったが理知的で色白な美人だった。おまけに気遣いのできる女性であった。夫もスリムで彫りの深い紳士であった。何となく優雅な夫婦にみえた。
 開店当時は近くに出来た物珍しさもありよく出向いたものだった。コーヒー券も買い、しばらくは通った。それも続かずについに行くこともなく記憶にも止まらない存在になっていた。
 ところが近くの、これまた独り者の良平より十歳ほど年上の男性と親しくなって時々通い始めた。その男性は吉川という。
 心境の変化というやつだろうか。若い頃はしゃれた喫茶店の方が良かった。わざわざ、ひなびた狭いその店などに行こうとは思わなかった。それがどうしたことだろう、良平はこの店にまた来るようになった。
 良平が朝の挨拶をすると、そのママが少し曲がった腰をかがめてゆっくりと席を立ち準備に取り掛かった。
 良平は空いている席に腰かけて店内を見渡した。ほとんどが常連客らしい。といっても居るのは四~五人で店内ががらんとした様子である。
 良平の少し前にもうとっくに九十を超えている女性がそれでも裸眼でしっかりとした目つきで雑誌を読んでいる。良平は生まれも育ちもこの地なのでそのご婦人が何処に住んでいてどういう人か分かっている。 
 もともと裕福な家の娘で夫はかつて市会議員をしていた。とうに亡くなっている。アパートなどの資産を沢山持ち、彼女が死んだら相続税はどのくらい払うのだろう。この地に住むものなら一度くらいはそう思うに違いない。しっかりお金を貯めているので相続税などはどうってことはないとも噂されている。
 ところで、彼女は一人っ子で夫は養子になって家に入ってきたのだ。彼女は生まれつき鷹揚で優しかったので、夫は内でも外でも随分威勢がよかった。みんなから親分と呼ばれ親しまれてきた。二人の子供たちはそれぞれに家庭を持ち外に出てしまったので、今は少し淋しそうだ。良平も少しはそういう興味で彼女を見ていた。彼女は良平を見てちらっと目礼をした。
 他にも二、三の人が決まった席でそれぞれのスタイルでくつろいでいた。良平と同じくらいの女性はいつものようにどこかのマガジンのクイズを解いていた。
 この女性は夫の浮気ですったもんだの騒動の挙句、いつの間にか独り者となっていた。子どもはいない。
 良平はそういうことをみんな知っていた。ここにいる誰もがそういう一人ひとりの過去を知っていた。みんながみんなそういうような過去の記憶を共有しながら、今は今の状態で何事もなかったかのよう知らん顔でここに居る。
 コロナが蔓延しているせいもあろうが誰もがしゃべらない。静かな時間が止まってしまった空間にいるようだ。そのことがかえって良平をくつろがせた。
 店内の奥の壁の棚の古いテレビから低い音量の声が聞こえてくる。韓国ドラマをやっているらしい。テレビの音だけが目立った。
 良平のテーブルの上にコーヒーとサラダと焼いた食パンセットを置くと、ママは何事もなかったようにテレビを観た。
 良平は野菜サラダを食べコーヒーをすすりながら、この地の生い立ちや自身の小さいころのことや最近の出来事を思い浮かべた。
 ふと最近のあることが思い出された。


二、回想(地域の生きる高齢者たちー)
 この店の前の道路の真向かいに住む吉川さんのことである。ある日良平が散歩をしていて、近所の話好きのご婦人とすれ違い近所の噂話を聴いた。
「あんたんとこの近くの吉川さん最近ちょっとおかしいんじゃないの。みんなが気持ち悪いと言っているよ」
 吉川さんは、最近あちらこちらの草むしりをしている。それもたった一人で薄暗い公園や人家で座り込むような格好で。手元が分からなくなる夜まで延々と草を引き抜いているという。その様が少し気違いじみているというのである。夫人は別れ際に自分の頭を指さして、言った。
「少し認知が入ってきたのかもね」
 彼女にそういわれると良平の心に反発心が湧いた。同じ伴侶を亡くした身、とことん付き合ってやろうではないか。
 そのことがあって、良平はしばしば吉川さんをこの店に誘った。コーヒー代金は無論割り勘であったが、良平は吉川さんの財布具合に思い当たるとコーヒーの付き合いは彼にとっては負担なのかもしれないと思い、やがて遠のいた。
 今度は吉川さんを公園の落ち葉掃除に誘った。良平は公園清掃のボランティアの人々に誘われるままその作業を手伝っていたが、吉川さんも誘ったのだ。彼は、昔は寿司屋の包丁人をしたり大工をしたりパチンコ台の釘師をしたり職を転々としながらいわゆる器用貧乏であった。だから落ち葉拾いよりも、その公園の立木の剪定を好んだ。彼の表情は得意げであった。


(つづく、2回連載です)



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

八十路ストーマランナーの手記(458)7キロ時が見えた  文科系

2023年04月27日 12時37分12秒 | Weblog
 26日のジムで、退院後一番良い地点まで行けた。30分2回が3.2、3.4キロの1時間合計6.6ロを走れたから、退院後復活の当面目標としてきた1時間7キロがやっとなんとか見えてきた思いだ。4月3日の6.4キロ、23日の6.3キロなどと苦労してきて、昨日やっと後半30分を3.4キロまで来たのである。その昨日夜はとても疲れていたなーという感じで、当初考えていたよりもこの1か月は予定よりもずっと苦労して来たのである。こんな昨日は、現状についていろんな事が分かった。


①先ず、正しく走るフォームも昨日まで忘れていた。19年から苦労して身につけ、22年の手術前には月間180キロまで走れるようになって、1時間10キロが再び復活かというあの走り方を。膝をあまり前に出さず、膝下も振り込まず、前に出つつある腰の下に来た脚を伸ばして腰以下全体で地面をつつく省力推進フォームという最重要点を忘れていた。だから、両脚の運びが不均等になって、ばらつき、安定しなかった。これって、惚けの始まりかも知れない、本当に。

②この「膝、足出しフォーム」だと、上半身のあちこちにも余分な力が入り、疲れること甚だしいとも再認識。特に、腰が前に出にくくなるから、前傾姿勢も不安定に、左右にもふらつくことになる。この不安定のままに両腕を振れば、さらにおかしなことになるという悪循環の有様。19日の左腰外側を痛めたのも、この悪循環が原因だったと今分かるのである。

③よって同じ速度でも心拍数に非常なばらつきが出ていた。①がその原因になっていたと、昨日分かった。①は、それほどに大きいことなのだ。後半30分で初めて3.4キロ走れたのは、①に気づいてこれを修正できたからだと、分かった。


 以上はそれほどに大きいことだが、もう一つ。昨日の事後の疲労があれだけあったのに、今日はこの疲労が去っている。これは、身体がちょっとは強くなったということで、大きな希望になる。①の気づきなど努力が報われた思いになってはいるが、これが今後大きな成果となって現れるかどうか。ちょっとミモノだという場面に差し掛かった。この5月24日で82歳になる間際のこの見物は、ことさら嬉しい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

野党が弱い理由  文科系

2023年04月25日 00時16分58秒 | 国内政治・経済・社会問題
 一昨日の選挙で野党が弱い理由がよく分かった思いだ。まず、千葉でも、大分でも、国民民主が立憲とともに名を連ねていれば勝てていたからである。二つが勝っていたら一昨日は自民の二勝三敗。そしてさてさて、その民主を支えているのが、連合。こうして今やこの連合は、野党分裂・弱化の元凶である。ここ数十年の日本の平均給料を先進国ダントツで下げてきた張本人でもあり、こうして「五〇歳になるまで結婚相手に選ばれなかった男性」を多く生み出して「未婚者多数社会」「少子化国」を作ったのも彼らだと言える。こんな労働組合って笑えるだけというもの。これに支えられた国民民主がいて、維新が伸びてくれば、公明とがっちり組んできた自民が強くて当たり前だ。

 ただし、維新は僕にとって敵ながらあっぱれと言いたい。関西を中心によくここまで延びてきたものだ。この躍進は現在の政治学上の研究対象とするに値するはずだ。中部圏は名古屋の「河村たかし政党」とは大違いである。

 小選挙区制の元では、野党支持勢力は、立憲に票を集めるべし。共産党ももはや駄目だとここ20年ほどで証明されたようなものだ。かなり広く存在する党内反対意見が「分派禁止規定」とやらで内部にさえ秘密にされて知らされない政党って、指導部に真の反省がなく、何回選挙に負けても替わらないという指導部を守るだけの政党になってしまった。これはやはり、民主集中制が時代に合った政策作りや党改革を遅らせて、「真の政治的能動性のない政党」にしているということだろう。旧態依然の「政策」も指導部の客観主義で凝り固まった古い頭脳の産物というしかないと思う。
 よく言われる解党的な出直しが必要なのだろう。一例、公明党を見習えば良いのだ。現国会議員がいる選挙区以外では全て立憲を自党以上ぐらいに押し上げる。政策協定などと言わず、勝手連的にでもそうする。そうして、共産がつけば立憲が当選できるという選挙区をどんどん作っていく。その暁になってやっと、立憲と一致できそうな己の政策をほんの少しずつ提起する。そんな時代に入ったらもう、自民党も連合も今のようなことは言っていられないはずなのだから、自民が政策的に立憲に近づいてくることも起こりうるだろう。
 政治とは、政治の力とは、選挙で示す力がないものは発言力もないものと、こう立憲も共産も覚悟すべきなのだと、これは政治の真理である。そして、弱者の戦略にこそ適したものとして合従連衡というのがあるが、同盟や連衡を通して弱者がその力を現実に伸ばしていくやり方なのだと言える。


コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

八十路ストーマランナーの手記(457)前進  文科系

2023年04月24日 00時45分45秒 | スポーツ
  19日水曜日のジムで生じた故障は、痛みが生じて即いち早く撤退したことが良かったようで、ごく軽く済んだ。それで、22日には家の階段60往復、23日にはジムへ行き、4月3日と同じ程度の退院以来最高調まで戻ったと判明した。そのことを4日に書いた453回目では、こうなっていたのだが。
『2月には20分程度を6キロ時ほどでしか走れなかったという覚えだったが、この前半終わりまで走った30分は3・2キロ近くになった。そして後半の30分は、最初から最後まで走って、3・26キロになった。その平均心拍数はムラがあったが、145bpmほど。最高心拍数は昔と変わらず165ほどにはなっていた。こうして、2月と最も違ったのは、走るスピードの方が歩行よりも速くなったことである』


 これに対して、23日はこんな結果だ。30分2回にプラス15分で、各3.1キロ、3.2キロ、1.5キロと走り、合計75分で7.8キロ。脈拍は140bpmを切っているから、これは4月3日より前進している。
 今の常用最高速度は6.5キロ時ほどで、3分ほどまでと短時間なら7.5キロ時も可能になった。常用速度を上げると翌日まで疲労感が残るから、今日のこの6.5キロ時が去年手術前往年の9.5キロ時ほどに当たるようだ。ちなみに、このスピード差は歩幅の減少から出るもの。以前の90㎝弱が、今は65センチほどになっている。筋力、心肺機能を上げて、これをどれだけ戻し、伸ばすことができるか? こういう時に生じる故障を警戒しつつのことだから、全く無理はできないのだが、努力してみたい。この努力の日々の跡を手帳に書き込めるのがとてもうれしい今である。


 ところで、22日には母校である中高一貫校の友人と長年続いてきた飲み会が開かれた。2009年の秋から8人で続いてきたものだが、82歳ともなるともう3人が故人だ。それぞれ、胃がん、肺がん、リンパ腫なのだが、僕だけが前立腺、胃、膀胱と3回も癌をやって生還し、なおランナー復活に努めているとあって、皆にからかわれたものだ。「俺らよりもずっと元気で、どうなっとるんだ?」と僕の足取り軽さなどもからかわれた。同じことを、ギター仲間やランニング仲間からも言われるのだが、病気を早期に察知し、治った直後の体育的な過ごし方など、生活習慣の違いなのだろう。このこと自身に僕がスポーツマンであり続けてきたことが深くかかわっていると確信するのである。
 前立腺はPSA値が多いと分かってから気をつけていたし、胃は(胃癌の元)ピロリ菌を駆除したあと毎年内視鏡検査をして来たし、膀胱は尿検査を定期的に行っていたもの。そう言えば、癌ではないがもう一つ重大病があったな。慢性心房細動。これは59歳のランナー入門間もなく不整脈が出始めて、これが慢性細動になったら即カテーテル・アブレーションという根治療法があると知っていたから気をつけながら走ってきて、2010年に細動即手術と2度やってその後ずっと完治。これもやはり、知識に基づく早期発見ということなのだ。




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

随筆紹介  法事パン   文科系

2023年04月22日 00時33分40秒 | 文芸作品
    随筆紹介 法事パン  K.Kさんの作品です


「法事パン」って何? 思われるかもしれない。法事の時、参列者にあんパン、クリームパンなどを手渡す風習である。実家のある刈谷市では十五年前の父の葬儀の時も、参列者にアンパンとクリームパンのセットを八〇袋用意した。
 田舎の風習で葬儀はお寺か自宅で行なっていた。九十二歳で旅立った父の時は葬儀ホールで行なったが、その前に自宅に近所の人たちがお悔みに続々と来てくれた。狭い自宅でのことである、家の中に入らず、外から手を合わせていく。こんなにたくさんの人が何処からと思う。皆で見送る習慣があったのだ。その後の葬儀ホールには地元の人たちは来なかった。

 何故アンパンなどを配るのか法事パンのことが気になったので調べてみた。ルーツは島根県。小豆の産地で出雲善哉発祥の地。饅頭や和菓子が一般的だったが、戦後間もなく欧米文化で、昭和三〇年~四〇年、高度経済成長期、見栄えがする上に、当時は目新しい「アンパン」が選ばれた。時代的にはハイカラな洋物だったのだろう。お決まりの饅頭に飽きていたので「アンパン」の登場に人々は喜んだのかもしれない。
 山陰地方では当たり前で誰ひとり不思議に思う人はいないらしい。今ではアンパンの他にもメロンパン、ジャムパン、なども入れるそうだ。
 どうして刈谷市まで風習が伝わったのかは調べきれなかった。もしかして近くにはS社のパン工場があるのが関係しているのかもしれない・・・。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

随筆紹介 イノチ   文科系

2023年04月21日 09時22分04秒 | 文芸作品
 随筆紹介 イノチ  S.Yさんの作品です


「風が吹いて、時間によって明るさも変わり、小鳥がさえずる。みんな意味なんてない。意味がないものを、自然というんです」。
 養老孟司氏のこの言葉にハッ! とした。まさに自然は意味のないものに満ちている。
 現代は、特に都会は意味のあるものだけに取り囲まれて暮らしている。そしていつのまにか意味のないものの存在を許せなくなってきている。
 数年前に相模原市の障害者施設で起きた十九人殺害事件。
「人の手を借りないと生きられない人生にどういう意味があるのか」犯人が言ったそうだ。つまり、すべてのものには意味がなければならない。その意味は自分にはわかるという思い込み。だから自分がわからないことは意味がないと決めつける。
 それらのことにドキリとしたのは、私も似た感覚を持っていたからだった。

 十年以上、現在も植物状態の義理の叔父がいる。連れ合いである叔母が叔父の病院近くに家を借りて看病を続けていた。その叔母が晩年認知症を患い、昨年九十五歳で亡くなった。むろん叔父は知る由もなく今も眠り続けている。
 私は当時から叔父夫婦を見ていて、生きる意味があるのだろうか。生きるってなんだろうと思っていた。私も遠からず歳老いて、人の手を借りて生活しなければならなくなるかもしれない。ましてや自分で何ひとつできずに寝たきりになった場合、私は生きているのが辛いと思う。そうまでして生きる意味があるのかと、自問自答する日々になるだろう。
 これはあくまでも今現在そう思うのであって、その時にならなければわからないこともあるのかもしれないが。
 その亡くなった叔母の姉である私の母親は、九十八歳で元気だ。相変わらず便せん二枚にぎっしりと達者な文字で書かれた手紙が来る。その手紙で母の様子がわかり、私も安心できて嬉しくなる。母の寿命がいつ尽きるのか、誰にもわからない。

 作家の佐野洋子氏が言っていた。「老人になってわかったことがある。何しにこの世に来たか。さしたる用もないのである。用はないが死ぬまで生きなければならないのである」
死ぬまで生きる。至極当然ながら、私は妙に納得できた。生きる道は選べるが、死にゆく道のりは選べないのだから。

 生命に人間がわかる「意味」なんてありません。養老氏もそう言い切っている。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

八十路ストーマ・ランナーの手記(456) 軽い故障だったけど・・ 文科系

2023年04月20日 16時42分49秒 | #ランナー
 19日にジムへ行っていつものように30分2回目を走り始めて20分近いころ、かつて未経験のことが突然訪れた。左モモの付け根外側縦ににぶく重い痛みが発生した。まだ走れる状況とは感じたが、すぐに歩きに替えたら、張りは感じても痛みはない。走行で一番力を入れるべき瞬間、脚全体で地面をつつく時に働く筋肉の痛みらしい。

 退院以来最高スピードで長く走っていたと言っても、時速6.6キロ程度のもの。前半30分には、短い時間だが時速7・5キロまでもいろいろやっていたのに、どうも、脚の持久的筋肉が思ったよりも衰えていると思い知らされた。これぐらいのスピードなら、まだ筋肉補強運動は不要と考えていたのに。ラン翌日の今日になって、当該の痛みは減っていても、両ふくらはぎの筋肉が最近に珍しいほどに張っているから、余計にそう思ったところだ。
 慎重に対処したのがとても良かったが、これから先は筋肉強化もかなり並行しないといけないようだ。つまり、当然のことだが、身体の弱り方が、今までの病気明けとはかなり違う。

 慌てて今日20日は、ストレッチと片足つま先立ちを、後者は特に病気前に近い強度でやってみたが、出来ないことはなかった。明日か明後日にはまた走れるだろう。
 ストライドが、病気前には90センチ近く、現在は60センチほどにまで自然に落として走っているのだから、大丈夫と思っていたのだけれど。やはり筋力低下が予想以上にやっかいな状態らしい。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「G7」は、世界を滅ぼす  文科系

2023年04月19日 11時01分10秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
 G7外相会議が軽井沢で開かれ、いろんなことが学べたし、分かった。そして、5月にはG7首脳会議が広島であるのだそうだ。ところで、G7っていまや世界や日本にとって「おかしな存在」になってしまったのではないかという素朴な疑問を呈してみたい。

 今日の朝日新聞が外務省幹部の発言として、こんなことを伝えている。
「西側の価値観を押しつければ、グローバルサウスは後ずさりする」
「世界の国々の数がおおむね『西側90、中間60、中ロ側40という状況』に分かれてしまっている」
 そして外務省の21年度の海外対日世論調査によると、東南アジア諸国連合(ASEAN)の人々が考える『重要なパートナー』は、中国が日本を上回って1位となっている」

 そしてまた、岸田首相自身が訪米時講演でこう語ったのだそうだ。
「いかに我々が正しいと信じる道を歩んでいても、国際社会の重要なポジションを占めるグローバルサウスから背を向けられるようでは、我々自身がマイノリティーとなる


 ところで今の世界は、気候正義、SDG'Sのほかにも、「世界の国々の政府債務180兆ドル」(2018年度)という地球の将来が懸かっているような大問題を新興国中心に抱えている。「南が食えなければ、北も結局食えていかない」というグローバルサウス問題としても、IMF最大の課題になっている。これを放置しては、世界の人々の命がどんどん失われていくばかりである。
 そして、これらの問題も現在のウクライナ戦争も、世界が2ブロック2陣営に別れていては、とうてい解決など覚束ないはずだ。


 率直に思うのだが、なぜG7が存在するのか。なぜBRICSがさらに堅く、膨らみ続けているのか。その結果として国連がないがしろにされているのは、地球、人類に良いことなど何ももたらさないどころか、地球の破滅さえ招きかねない状況ではないのか?
 せめて、G7もBRICSも参加しているG20で話し合い、国連中心に世界を見ていく時なのではないか。世界の軍事・経済ブロック化は地球に破滅を思わせてならないのである。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

八十路ストーマ・ランナーの手記(455)  LSD   文科系

2023年04月17日 05時53分39秒 | Weblog
 4日に書いた453回目から、しつこい風邪もあって10日ほどラン休止、代わりに階段往復や、春らしく庭仕事をやって、14,16日と走った。すでにラン復活は見えたので、4日に書いたような「息切れがする」ほどの無理はせず、LSDに徹する構えをとっている。現在のゆっくりは、30分2回が14日は5.9キロ、16日は6.1キロだ。この2日は、2月と違ってほとんど走っているという特徴がある。もっとも、2月は半分近くが歩行で、走行の方が歩行よりも遅かった。この二日のような走行調子で、1回に0.1キロか0.2キロずつ上げていけば良いと決め込んでいる。

 走るのは、たまに訪れる鬱をすっ飛ばしてくれる。前向きな気分になり、ギター練習も好調になるし、食も進むもの。今日17日はギター教室の先生夫妻とギター友達のK君とで、4人のランチ会だ。馴染みのビストロで「ワイン持ち込み可」と許可を取ってあるから、イタリアのバローロを持って行くつもりでいる。手元にあるネッビオーロというブドウで作るワインを選んだが、大好きなのだ。


 ところで、ブラジルのルーラ大統領が中国を訪問して、BRICS諸国内部の貿易ではドルを排除しようと提案したようだ。フランスのマクロンも「脱ドル化」と気勢を上げ、中国との資源取引を人民元でやろうと決めたようだ。ただ、最近のマクロンのこの動きについては、アメリカ(や日本)を筆頭に当然のことながら悪評紛々である。
 それにしても、ウクライナ戦争にあれだけ兵器などを入れ込んでいるアメリカは大丈夫か? アフガン戦争、イラク戦争と戦争のたびに落ち込んできたアメリカが、今はウクライナを代理として対ロ戦争をやっている感がある中で、「世界基軸通貨ドル」が弱まっていくとしたら、この先のアメリカはどうなってしまうのか。今回のシリコンバレー銀行倒産についても、GAFAMがあらかじめすでに大量解雇に走っていたことが示すように、スタグフレーションという怪物に蝕まれ始めているのである。
 40年も続いた金融立国資本主義は、それが支配できない現物経済圏が世界に広がって来た場合には、意外に脆いと示されたのである。アメリカに忠実な国は今やファイブアイズだけになった。日本でさえ、面従腹背の側面を隠しているはずだ。G7広島会議はその良いお顔だけを見せるのだろうが。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

夕刊フジの「EUの中国接近」解説  文科系

2023年04月15日 07時37分42秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
 昨日掲載した「どうなる、EU首脳らの親中国論」のエントリー内容は、日本も世界もむしろ保守マスコミの方が重く見ているようだ。例えば、トランプがマクロンをあざ笑ったように。この一例、夕刊フジの以下のニュースを見ても分かることだろう。


『(前略)ドイツの自動車産業にとって、中国市場は欠かせない。スペインは、新型コロナウイルス禍後の中国人観光客の復活に期待を寄せる。今回のマクロン氏訪中には、航空大手エアバス、フランス電力など仏企業トップらが同行した。
国際政治に詳しい福井県立大学の島田洋一名誉教授は(中略)
「フランスなどの動きが対中包囲網の抜け穴になる可能性があり、日米としてはしっかりと不快感を示すことが必要だ」と話す。
日本では来月19~21日、広島市でG7首脳会議が開かれる。議長国の首脳として迎える岸田首相は、G7の結束が乱れつつあるなかで、どう対応すべきか。
島田氏は「中国やロシアとの取引に頼らなくても、G7で埋め合わせる経済協力ができるという方向に持っていくことが大事だ。中国との関係が切れたとしても、G7を中心とした自由主義圏で、市場やサプライチェーンを確保できる態勢をつくれるよう、岸田首相がリーダーシップを取る必要がある」と話した。』


島田氏のこの論議を世界的に実行するには、すでにもう大きい無理があって、手遅れである。今の世界経済ブロック体制はアメリカが作ったもの。最初はコロナ、次いでロシアのウクライナ侵攻以降を通じて。特に、「市場」についてそうだからこそ、IMF委員会議長であるスペイン経済相が「市場分断の回避を中国に期待する」と表明するに至ったのである。
つまり、島田洋一氏の議論は、現実世界とEU首脳現実世界認識とに全く合致しない夢の話ということにならないか。そんなアメリカに「中国巡って一蓮托生」と、付いていくだけの形を示している外交で、日本は大丈夫なのか? 知らぬ間に数少ない対中国戦争最前衛国に巻き込まれていたというウクライナのようにならないか?


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

どうなる、EU首脳らの親中国論  文科系

2023年04月14日 00時08分18秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
 世界外交、地政学論議にこのところ突如現れたのが、EUの「中国への期待」なるもの。この三日間紹介してきた3人の要人の発言をまとめてみよう。

 まず、分かりやすいスペイン経済相・カルビニョの発言。これが、重要なのは、彼がIMF金融委員会議長であること。三つの点で中国に期待すると述べたのだが、以下がその内容。
・ウクライナ戦争の終結
・世界の市場分断(ブロック経済化)を回避すべし。
・低所得国の債務免除

 フランス大統領・マクロンは、最も過激な「反米発言」をやっているが、その内容にはこんなものがある。
・台湾危機を加速するのはやめよ。
・EUの米ドル依存は減らすべし。「ドルの兵器化」に反対。「中ロがドル離脱をやっているが」とわざわざ形容を付けて、これらを表明。
・EUの兵器、エネルギーの米依存も減らし、EU独自のそれらを大きくすべし。

 そして最後が、EU委員長・フォンディライエンだが、以上を受けるようにこう述べている。
「中国とのデカップリングは実行可能でもなく、欧州の利益にも符合しないと考える」

 
 これらを読んでいるだけだと、まるで世界が3極に分かれていくように見えないか。米英豪加にニュージーランドのファイブ・アイズ(と日本)圏、中ロ圏、そしてEU圏と。すると、中国は別にBRICSを通じてなど中南米やアフリカにも強い影響力を広げて来たのだから(ちなみに、Bはブラジル、Sは南アフリカ。ブラジル大統領が特に熱心に、ウクライナ戦争終結を中国に働きかけている)、また、G20の一つサウジアラビアが中国の仲介でイランと仲直り協定を結んだりしたから、世界は行く末どうなってしまうのかとも考え込んでしまう。

 と見てくるとこのEU動向は極めて重要なものだが、日本のマスコミはこのEUにおける新たな地政学発言をほとんど無視していないか? 日本のマスコミがこんなだからこそまた「米などファイブ・アイズ(と日本)圏」などということになってしまうのか。まー、対中国戦争からEUが抜けたーと声高の声明が出たと見るならばアメリカもこんな戦争は起こせまいと、これは心底ほっとするのだが。また、もし中国がウクライナ戦争を調停できたら、世界が音を立てて変わっていきそうだけど、こんな戦争は終わるのが良いには違いない。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

仏に続きスペインも米に「反旗」  文科系

2023年04月13日 06時04分45秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
 10日には『マクロン訪中は中国包摂、戦争終結努力』、昨日『「台湾情勢で米追随は最悪」とマクロンが主張』というエントリーを書いたが、以下に紹介するスペイン情報もこのマクロン外交方針を意識して西欧前面へと押し出したものであることは明らかだろう。以下は、ロイターの記事だ。

『スペイン経済相「欧州は中国無視できず」、役割重要と指摘 4/12(水) 12:01配信 ロイター

[マドリード 11日 ロイター] - スペインのカルビニョ経済相は11日、欧州は中国の役割を無視できないとの見解を示した。同国は主要な貿易相手国であり、地政学的にはウクライナの戦争終結や、低所得国の債務免除に貢献し得る重要な存在だと指摘した。
同相は米シンクタンク、大西洋評議会のイベントで「中国に背を向け、無視しようとはできない。中国が可能な限り早期のウクライナ戦争終結と、誰にとっても不利益となる市場分断の回避に建設的に取り組むことは、われわれにとって共通の利益になる」と述べた。
カルビニョ氏は、今週ワシントンで行われる世界銀行と国際通貨基金(IMF)の総会で途上国の債務免除加速化に向けた手続きが話し合われることを踏まえ、中国に取り組みの強化を要請している。
イベントでは「最も脆弱な国々を保護する共通の安全策強化に時間を使う必要がある。中国は極めて重要な債権国で、この案件の協議において重要な役割がある。同国が建設的に取り組むよう期待している」と述べた。
カルビニョ氏はIMFの活動方針を決める国際通貨金融委員会(IMFC)議長を務める。


 どうも対中外交の欧・米亀裂は意外に大きいようだ。昨日のエントリーのフランス大統領のこんなきつ過ぎる発言もあるのだし。
『ヨーロッパの一部の国は、ワシントンによるドルの「兵器化」について不満を述べている。モスクワと北京の重要な政策目標である「脱米ドル化」同様に、ヨーロッパも米ドルへの依存を減らすべきだ』
 このドルの「兵器化」という言葉が分かる日本人が、金融や関連政治関係者以外にれだけいることか。フランスはおそらく、クレディ・スイス破綻、ドイツ銀行困窮などでリーマン以来骨身に染みたこの今だからこそとうとうこういう外交を打ち出したのだろう。マクロンのこの発言に、カルビニョ経済相のこの発言を重ねて強調しておきたい。これら加えてこそ、欧州委員長フォンディライエンのこんな講演発言もでてくるのだろう。10日のここで紹介したものだが。
『フォン・デア・ライエン委員長は先月末、ベルギーのブリュッセルで行われたシンクタンクのカンファレンスでも「中国とのデカップリングは実行可能でもなく、欧州の利益にも符合しないと考える」、「中国とのデカップリングではなくリスクの軽減に集中すべきだ」と語った。』

 これらマクロンやカルビニョ、フォンディライエンの中国関連発言は、日本で言えば「朝日新聞」にさえ聞かせてやり、「もっと世界、中国関連をちゃんと描け」と言ってやりたい。ちなみにドイツだが、ノルトストリームが何者かに爆破されたというニュースは、ドイツ銀行困窮とともにこの国を当惑させ尽くしているはずだが、この続報も聞こえてこない日本である。それほどに日本の中国(関連)報道はバイアスが掛かっている。ちなみに、スペイン首相も3月末に中国を訪問しているが、その内容は何も報道されていない。




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「台湾情勢で米追随は最悪」とマクロンが主張  文科系

2023年04月12日 00時00分59秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
 読売新聞オンラインにもこんな見出しで発表されましたが、以下の報道がありました。
『「台湾情勢で米追随は最悪」マクロン氏発言』
 中国訪問のマクロン仏大統領が、フランスとアメリカの2紙の独占取材にこう語ったということです。遠藤誉という中国ウヲッチャーによるアメリカ紙記事をまとめた抜粋でお知らせします。

『 ●ヨーロッパは米国への依存を減らし、台湾をめぐる中国と米国の対立に引きずり込まれないようにしなければならない。
 ●習近平はマクロンの戦略的自治の概念を熱心に支持している。
 ●私たちはヨーロッパがアメリカの追従者であることを認識しなければならない。
 ●台湾「危機」を加速させることは、私たちの利益にはならない。最悪なのは、ヨーロッパがこのトピックにとらわれることだ。米国の議題と中国の過剰反応からヒントを得なければならない。
 ●Gavekal Dragonomicsの地政学アナリストであるYanmei Xieは「ヨーロッパは、中国が地域の覇権国になる世界をより喜んで受け入れる」と述べた。そしてヨーロッパの指導者の何人かは、「そのような世界秩序がヨーロッパにとって、より有利であるかもしれない」とさえ信じている。
 ●ヨーロッパは武器とエネルギーをアメリカに依存しているが、対米依存を減らして、ヨーロッパは自分たちの防衛産業を発展させなければならない。
 ●ヨーロッパの一部の国は、ワシントンによるドルの「兵器化」について不満を述べている。モスクワと北京の重要な政策目標である「脱米ドル化」同様に、ヨーロッパも米ドルへの依存を減らすべきだ。(筆者注:4月6日のコラム<脱ドル加速と中国仲介後の中東和解外交雪崩現象>の図表3にあるように、フランスは中国と人民元決済によるエネルギー資源取引を決定している。)』

 こういう声明、外交方針は、ウクライナ戦争の後だからこそ出てきたものだと、僕、文科系は確信します。日本もウクライナ戦争から同じことを学ぶべきではないでしょうか。
「台湾「危機」を加速させることは、私たちの利益にはならない」


 ちなみに、3月2日の新聞に、米国防総省次官の下院公聴会発言として、こういう記事が載りました。
『中国の台湾侵攻「兆候ない」』

 この記事は、朝日新聞でも13面にあって、実に小さな扱いでした。内容はこういう物なのに。

『米国防総省のカール次官(政策担当)は2月28日、中国が2027年までに台湾に軍事侵攻する可能性をめぐり「中国の習近平国家主席や人民解放軍が『準備ができている』と考えている兆候はない」と述べた』 
『「(侵攻を)すると決めたわけではない」と指摘。「準備を加速させるであろう兆候もない」と述べた』



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

マクロン訪中は「中国包摂、戦争終結」努力?   文科系

2023年04月10日 00時25分04秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
 この5~7日にあったマクロン訪中について、日本国内の報道は実際とはかなり違うようだ。というのは一例、韓国のハンギョレの報道を読んで分かった。アメリカによる世界の経済ブロック化とか、軍事ブロック化に欧州が明確に反対し、中国とも同様に付き合っていく方向が示されている。そして、日本がそういう欧州よりもアメリカに近いのだと見られている。この点については、マクロンに同行したEU委員長の態度でもあるとも報道されている。以下のように。

『 マクロン大統領とは別に2泊3日の日程で5日から中国を訪れているフォン・デア・ライエン委員長は6日、マクロン大統領、習主席と北京で3者会議を行った。 中国官営の新華社通信によると、この席でフォン・デア・ライエン委員長は、中国とのデカップリングは欧州連合(EU)の利益でも戦略的選択肢でもないと語った。 フォン・デア・ライエン委員長は先月末、ベルギーのブリュッセルで行われたシンクタンクのカンファレンスでも「中国とのデカップリングは実行可能でもなく、欧州の利益にも符合しないと考える」、「中国とのデカップリングではなくリスクの軽減に集中すべきだ」と語った。
米国は日本などと共に半導体などの先端技術分野で中国を排除するデカップリング戦略を実行しており、欧州にも参加を求めている。 しかし、欧州委員会の委員長と、ドイツとともにEUを主導するフランスが米国の戦略に対して否定的な発言を行ったことから、米国の対中戦略に亀裂が生じる可能性がうかがえる。
一方、習主席はマクロン大統領、フォン・デア・ライエン委員長との3者会議で、ウクライナ戦争について「時が来ればウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領と電話で話す」との意思を明らかにした。同会議に同席したフランスの外交筋が明らかにした。マクロン大統領とフォン・デア・ライエン委員長は今回の訪中で、習主席にウクライナ戦争の終結に向けて果たす中国の役割の拡大を主に要請している。


 米国が進めつつある対中包囲網、そういう世界の軍事・経済ブロック化に熱心なのは、ファイブアイズ(英語圏の米英豪カにニュージーランド)の次は日本なのか、などとも頭に入れておこうと改めて思ったことだった。欧州委員長が望み、習近平が応えたように、もし中国がウ・ロ戦争を停戦に持ち込んでいくようなことが起こったら、ファイブアイズが決定的に世界から孤立することになるだろう。
 国連採決などを見てきても、アメリカはすでに中南米、アフリカ、中東などの諸国から敬遠されている。これは、世界通貨危機やイラク戦争、リーマンショック、今回の米銀破産に端を発したクレディスイス破綻・ドイツ銀行困窮などなどの結末だと、言いたい。トルコ、サウジ、ブラジル、インドネシア、韓国などのG20諸国でも意外に離米は進んでいるのだ。
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする