軍学研究助成100億円に自民国防部会、防衛相へ提言(16.5.31 中日新聞)
自民党国防部会は三十日、軍事に応用可能な大学などの基礎研究の費用を助成する防衛省の「安全保障技術研究推進制度」について、総額の大幅な引き上げを求める提言を中谷元・防衛相に届けた。中谷氏は「趣旨を重く受け止め、全力で取り組む」と述べた。
国防部会は研究推進制度に、設立当初(二〇一五年度)の助成金総額三億円の三十倍以上に当たる百億円規模への増額を一七年度予算概算要求に盛り込むよう求めている。同制度にたいしては、研究者団体から「戦前に回帰する動き」と批判が出ている。
大塚拓国防部会長は記者団に、中国が無人機などの新兵器開発に多額の資金を投入していると指摘し「ある日突然、日本の持つ武器が力を発揮できなくなる恐れがある」と、対策の必要性を強調した。
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安倍内閣はわが国が長年に亘って(1967年以来)平和国家の証明であるとして堅持してきた「武器輸出三原則」を2014年4月に「防衛装備移転三原則」に変更しました。さらにその年10月には「防衛装備庁」を発足させ、この「防衛装備庁」が武器の研究開発、技術的動向の分析、先端技術研究を行う機関への資金援助などを行うとしました。
日本は果てしない“死の商人”への道を歩みだそうとしているのでしょうか。
一方、日本の科学者の代表機関である「日本学術会議」は、「安全保障と学術に関する検討委員会」を設け、戦後堅持してきた「軍事目的の研究は行わない」という原則を見直す検討をはじめました。第二次世界大戦で科学者が戦争に協力した反省から導きだした平和のための原則を捨て去ろうとしているのです。
日本学術会議の大西隆・豊橋技術科学大学学長(検討委員会の委員にもなる)は26日、東京都内で記者会見し、「近年、軍事と学術が接近をみせている。軍事に利用される技術・知識と民生に利用される技術・知識との間に明確な線引きは困難になりつつある」と語り、五〇年や六七年と状況が変化しているとの認識を示しました。
状況が変化している時こそ“原則に立ち返る”ことが必要なのではないでしょうか。
それにしても、「安全保障技術研究推進制度」の軍事技術の研究助成費が2017年度には制度創設時(2015年度)の3億円から僅か2年(2017年度)で一挙に100億円の予算要求に膨れ上がることは、戦前のわが国でそうであったように、軍事研究の“果てしなさ”を証明しています。また軍事研究の場合、外国、特に敵対する恐れのある国(勢力)に研究の内容、成果を知られるとまずいということから、国民に対する説明もおろそかになり、“機密”とされたものに近付こうとしたものが“犯罪者”の扱いを受けた経験を私たち持っています。
平和国家を宣言している我が国においては、学術・研究の公開性という原則を堅く守っていきたいと思います。
大西 五郎