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イスラム殺しの米がウイグルに同情?  文科系

2021年03月31日 12時39分36秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)

「マスコミに載らない海外記事」のサイトの本日分に標記の文章が載った。日本人も今考えるべき内容だと思う。


『 中国のイスラム教徒を気にかけるふりをするアメリカを世界は笑いとばすべき
2021年3月26日  ケイトリン・ジョンストン

 昨日、アメリカ帝国の現在の代表が、とうとう最初の本格的記者会見をしたが、世界最強力な政府の作戦に関する重要な政策決定を、実際、考えたり話したりするのもやっとの、この干からびた抜け殻男がしているふりをするため、帝国の忖度速記者の群れが集まった恥ずかしい見苦しい催しだった。
 またしても、我々はバイデンの認知症で混乱した脳から流れ出る言葉で、「少なくとも一人は、そうしたが、アメリカ大統領は誰も、今まで、ウイグル族に起きていることについての発言を撤回しなかったことを明らかにする」とアメリカ帝国が中国のイスラム教徒の苦難について、ぺらぺらしゃべるのを聞いた。
 「ウイグルで起きていること」で、バイデンは新彊ウイグル自治区のウイグル・イスラム教徒の人権への懸念を明瞭に話そうと試みているが、これはアメリカ帝国が中国の勃興を止める試みを急いでエスカレートするにつれ、益々人を惑わすように、不誠実に推進している話題だ。文字通り数秒後、バイデンは、イスラム教徒の生活への、この見せ掛けの懸念が、実際本当であることを明らかにした。

「だから私は中国との厳しい競争を予想している」とバイデンが言った。「中国は全体的目標を持っており、私は彼らの目標を非難しないが、彼らは世界の指導的立場の国、世界中で最も富裕な国、世界中で最も強力な国になる全体的目標を持っている。アメリカ合州国が発展し、拡張し続けているから、私が目を光らせている間は起きないだろう。」

(中略)

ウイグルと香港に関する人道的介入主義の決まり文句と、ほとんど同じ次元で、バイデンは中国に対する彼の目標は、世界の主導的経済大国としてアメリカにとって代わるのを阻止することだと言う。ワシントンが人権につけこむ率直な説明だ。
- マックス・ブルメンソール (@MaxBlumenthal) 2021年3月25日

 外国のイスラム教住民の福祉へのエセ懸念を示すアメリカ帝国に対する唯一健全な対応は、笑い、嘲り、冷笑だ。全世界はこの連中を床で笑い転げるべきだ。この虐殺者連中が、イスラム教徒が大多数の国々広範な地域で、殺人と窃盗の精神病質作戦を行った後「ああ、どうかイスラム教徒について考えて欲しい!」と言っている事実は、我々全員、彼らあざ笑い、彼らを指さし、笑い飛ばし、彼らを部屋から追い出すべきであることを意味する。
 真面目な話、あなたは、これ以上ばかげたことを考えられるだろうか?私は即座にはできない。

 巨大な地球規模の帝国が、イスラム教徒の権利と福祉を気にかけると主張して、中国の勃興を止める能力に、それだけ多くのチップを置いた事実は、これまで文明史上で起きたことの中で最も漫画的にばかばかしい一つだ。我々は、しかるべく対応すべきだ。
(後略)   』

 そう、タリバンやアルカイダを作り上げ、武器・兵器を渡し、育て上げてきたのはアメリカだ。旧ソ連や中東に対する戦略にこれを活用してきたのである。そして、彼らが9・11のように鬼子に育ち上がった時には、アメリカはこれを殺し始めた。今アメリカは中国を押さえるためには何でもするのである。ウイグルも香港も、アメリカにとってはその手段でしかない。それにしても、イラク、シリアなどで何百万という死者、難民を出すまで、アメリカは一体何をしたかったのであろうか?? この疑問を抜きにしては、アメリカとの日米集団安保体制の正体も正しくは考えられぬはずだ。

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14対0から学ぶ  文科系

2021年03月31日 11時51分56秒 | スポーツ

 W杯予選モンゴル戦は14対0。ドン引きで守るアジア相手ではちょっと前の日本は案外点が取れなかったのだから、前例をはるかに超えたこれだけの点を取ったゲームからは、学ぶところも多いと思う。何が良かったのか。一言で言えば、こういうことだと思う。

「引いて守る敵守備陣形を縦横にばらけさせた」

 誰が観ても分かった昨夜の戦術の一つに、右サイド選手伊東の駆け上がりにボールを預けたやり方があるはずだ。何度も何度も、これが起こっていた。持ち前のスピードを活かした駆け込みに相手DF一人では自由にボールが渡り、良いようにクロスを上げられて得点されてしまった。それではと彼の方に向けて2~3人と数かけて押さえようとすれば、空いた逆サイドにボールを回されたり、中央に良い縦パスが入って来たり・・・。サッカーの貴重な点取り術の一つにサイドからのクロスとか崩しや、アーリークロスとかがあるのは、敵の中央守備を薄くして(あるいは、それがまだ薄い内に)、そこにボールを持ち込んでゴールを攻略するという狙いだ。
 この伊東に人数を割けば次はこうなる。左のサイドアタックも上がれるようになって、左右両方からのクロスも出るしで、中央がもっと薄くなる。すると今度は、ど真ん中からの中長距離シュートや中央への縦パス・シュートと。こういう得点も、昨夜は良いように決まり始めた。

 さて、この得点術を巡って思い出すのが、ブラジルW杯の惨敗。本田圭佑が「自分のサッカー観が分からなくなった」と茫然自失したあの大失態であった。あの時のチームでは、監督のザックと、本田・遠藤という中心人物らとの間で、得点戦術に食い違いがあったと後で判明している。「サイド攻撃を中心にやれ」と命じて来たザックに対して、中央攻撃にもずっと拘って来たのが本田らだった。そのサイド攻撃でも、監督「左右どちらかからだけ、同時に両方上がってはいけない」に対して、本田「同時両方も認めてくれ。中央が薄くなって得点しやすくなる」という論争も知られている。
 この論争の結末は、こうである。「両方上がったら守備に穴が空き、そこをつかれて失点ということがないほどには、敵陣でボールキープし続けるほどの力は無かった」と。
 そう、サッカーとはそういうゲームなのだ。攻撃力を過信すると、失点を喰らう。失点防止に拘りすぎると得点できない。サッカーは野球と違って、守備専門の大エースや、1人で平均して1~2点稼ぐ4番バッターなどはいないのである。大エースが攻撃をさぼると「そこから得点できなくなる」し、偉大なバッターが守備をさぼると「そこから失点を喰らう」というゲームなのである。昨夜の大量得点は、両サイドが上がってもよいほどに彼我の力に隔たりがあったから起こった現象だと言える。すると、中央が空いて来て、そこからの大量得点もというケースだったのだと。

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金融世界支配の歴史、現状(4)  文科系

2021年03月30日 06時08分27秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)

 第3章 金融グローバリゼーションの改革

 第1節  国際機関などの対応

 金融グローバリゼーションの主は『アメリカ型の市場経済至上主義に基づく政策体系』で、これが主導する世界的合意がワシントンコンセンサスと呼ばれてきたもの。これにめぐって「100年に1度の危機」直後にはこんな状況があった。
『2009年のロンドンG20で、当時の英首相ブラウンは、「旧来のワシントン・コンセンサスは終わった」と演説しました。多くの論者は、ワシントン・コンセンサスは、1970年代にケインズ主義の退場に代わって登場し、1980年代に広がり、1990年代に最盛期を迎え、2000年代に入って終焉を迎えた、あるいは2008~09年のグローバル金融危機まで生き延びた、と主張しています。IMFの漸進主義と個別対応への舵切りをみると、そうした主張に根拠があるようにもみえます。
 しかし、ことがらはそれほど単純ではありません。1980年代から急速に進行した金融グローバル化の歯車は、リーマンショックによってもその向きを反転させることはありませんでした。脱規制から再規制への転換が実現したとしても、市場経済の世界的浸透と拡大は止まることはないでしょう』(伊藤正直著「金融危機は再びやってくる」)
 ここで言うロンドンG20の後2010年11月のG20ソウル会議では、こんな改革論議があった。①銀行規制。②金融派生商品契約を市場登録すること。③格付け会社の公共性。④新技術、商品の社会的有用性。これらの論議内容を、前掲書「金融が乗っ取る世界経済」から要約してみよう。
  ①の銀行規制に、最も激しい抵抗があったと語られる。国家の「大きすぎて潰せない」とか「外貨を稼いでくれる」、よって「パナマやケイマンの脱税も見逃してくれるだろう」とかの態度を見越しているから、その力がまた絶大なのだとも。この期に及んでもなお、「規制のない自由競争こそ合理的である」という理論を、従来同様に押し通していると語られてあった。
 ②の「金融派生商品登録」問題についてもまた、難航している。債権の持ち主以外もその債権に保険を掛けられるようになっている証券化の登録とか、それが特に為替が絡んでくると、世界の大銀行などがこぞって反対すると述べてあった。ここでも英米などの大国国家が金融に関わる国際競争力強化を望むから、規制を拒むのだ。
 ③格付け会社の公準化がまた至難だ。アメリカ1国の格付け3私企業ランクに過ぎないものが、世界諸国家の経済・財政法制などの中に組み込まれているという問題がある。破綻直前までリーマンをAAAに格付けていたなどという実績が多い私企業に過ぎないのに。この点について、「金融が乗っ取る世界経済」に紹介されたこんなニュースは、日本人には興味深いものだろう。
『大企業の社債、ギリシャの国債など、格下げされると「崖から落ちる」ほどの効果がありうるのだ。いつかトヨタが、人員整理をせず、利益見込みを下方修正した時、当時の奥田碩会長は、格付けを下げたムーディーズに対してひどく怒ったことは理解できる』(P189)
 関連してここで、16年10月15日の新聞にこんな文章が紹介されていた。見出しは、『国際秩序の多極化強調BRICS首脳「ゴア宣言」』。その「ポイント」解説にこんな文章があった。
『独自のBRICS格付け機関を設けることを検討する』
 15日からブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ5カ国の会議がインドのゴアで開かれていて、そこでの出来事なのである。
 ④「金融の新技術、商品の社会的有用性」とは、金融商品、新技術の世界展開を巡る正当性の議論なのである。「イノベーションとして、人類の進歩なのである」と推進派が強調するが、国家の命運を左右する為替(関連金融派生商品)だけでも1日4兆ドル(2010年)などという途方もない取引のほとんどが、世界的(投資)銀行のギャンブル場に供されているというような現状が、どうして「進歩」と言えるのか。これが著者の抑えた立場である。逆に、この現状を正当化するこういう論議も紹介されてあった。
『「金作り=悪、物作り=善」というような考え方が、そもそも誤っているのだ』

 伊藤正直氏が「金融グローバル化の歯車は、リーマンショックによってもその向きを反転させることはありませんでした」と語るように、国際機関の対応の鈍さを観る時、こう思わずには居られない。米英など大国国家が金融に関わって「国際競争力強化」を望むから、規制を拒むのだと。さらには、この「国際競争力強化」願望に関わって、以下のような方向さえ観られるようになった。
 初めは現物輸出入の赤字分を金融収支の黒字分で補ってきたという程度から、この「国際競争力強化」願望はいまや金融でもって世界政治経済を制覇できるのではないか、と。世界の主要企業、穀物・食肉・石油・医療・流通など主要産業分野を金融が独占的に握りたいというだけではない。諸国家(の独立性)を浸食できるという野望さえ今やうかがわれるのである。通貨戦争に破れて破産した国家には通常ではIMF(国際通貨基金)が出動して、その国家財政方針を、つまり税金の使い方を決めてきた。これを国連(経済正規部隊)が破産国家救援に出動したと観て国連正規軍派遣になぞらえるとしたら、経済版の「紛争国家への有志国軍出動」の道もあるという理屈だ。現に、破産国ギリシャがゴールドマンを指南に入れたという、そんなやり方のことである。国家財政やその税金も世界金融に狙われるだけではなく、国家主権そのものが狙われているのだと言いたい。税金がなくなった国家は未来の税金も自由には支出できなくなる。つまり、施政の自由もなくなる。苦し紛れの窮余の一策にせよ税の使い方を金融に任せた国はもはや自立国家ではあり得ないということだ。ちなみに、中東、アフリカから膨大な難民が発生、流出したのは、これと同じ背景があるはずだ。NICSと呼ばれたことがあるタイや韓国の経済・国家規模でもアジア通貨危機で金融戦争に敗れているのだから、これに比べれば中東や北アフリカの中小国家から税金を奪うことなどは、国際金融にとっては朝飯前だろう。
 浜矩子が「国家がなくなる」と語るのは、こういう議論である。あまりにも目に余る紛争国家などには有志国軍出動ではなく国連軍の正規介入をと、またそれに相応しい民主的国連の建設をと、経済戦争についても主張していくしかない。

 第2節 各国などの対応や議論

「金融危機国への外貨融通制度」が各地域で国家連合的に作られた。世界金融資本の各国通貨空売り搾取から、中小国家を守る互助会のような側面も持つものだ。
 アジア通貨危機から学んだASEANプラス日中韓が、日中等の支出でより大きな資金枠を持つことになった例がある。岩波新書「金融権力」(本山美彦京都大学名誉教授著)は、南米7カ国が形成したバンコデルスル(南の銀行)に注目している。
  こういう独自の外貨融資制度が国際通貨基金(IMF)に対抗する側面を持つとすれば、世界銀行に対抗する動きも起こった。最近アジア開発銀行に対抗して創られたアジア・インフラ開発銀行がそれだ。
 前節にも見たように、『独自のBRICS格付け機関を設けることを検討する』とBRICS諸国が最近発表したが、これも同じ一連の趣旨のものと言える。
 IMFや世銀が金融グローバリズム寄りになり過ぎているという非難が中小国家に多いが、以上はそれらを取り込んでいく取り組みと言いうる。南米とアフリカの代表、および大国インドが入っていることが注目だろう。

 世界的不況で日米欧それぞれに内向きの動きが大きくなっているだけに、BRICS諸国などの反ワシントンコンセンサス方向と実体経済重視方向との動きが、その賛否は別問題として、注目される。
 金融中心主義を排して実体経済中心へと回帰せよとの声が強くなっている。まず、「グリーンニューディール」政策などの新実業開発を強調する人々は、そこに新たに雇用を求める。雇用問題・格差の解消一般をなによりも強調する人々は、金融規制、実業開拓の方向と言えよう。なお、「グリーンニューディール」とはこういうものだ。
 『用語の起源は、イギリスを中心とする有識者グループが2008年7月に公表した報告書「グリーン・ニューディール」である。ここでは、気候・金融・エネルギー危機に対応するため、再生可能・省エネルギー技術への投資促進、「グリーン雇用」の創出、国内・国際金融システムの再構築等が提唱されている。
 同年10月には、国連環境計画(UNDP)が「グリーン経済イニシアティブ」を発表し、これを受けて(中略)オバマ大統領は、今後10年間で1500億ドルの再生可能エネルギーへの戦略的投資、500万人のグリーン雇用創出などを政権公約として打ち出した。(中略)』(東洋経済「現代世界経済をとらえる Ver5」、2010年発行) 

 グリーンニューディール政策には雇用対策も含まれているわけだが、雇用対策自身を現世界最大の経済課題と語る人の中には、こんな主張もある。
『私は非自発的雇用の解決には労働時間の大幅な短縮が必要だと考えている。具体的には、週40時間、1日8時間の現行法定労働時間数を、週20時間、1日5時間に短縮するように労働基準法をあらためるべきだと考えている。企業による労働力の買い叩きを抑止するためには、年間実質1~2%の経済成長を目指すよりも、人為的に労働需要の逼迫を創り出すほうが有効だからだ。経済学者は、そんなことをしたら企業が倒産すると大合唱するかも知れない』(高橋伸彰立命館大学教授著「ケインズはこう言った」、NHK出版新書2012年8月刊)
 8時間労働制とは、歴史的には既に19世紀の遺物とも言えて、20世紀の経済学者ケインズが現状を見たら8時間労働制が続きさらに時間外労働までふえていることに驚嘆するはずだ。これだけ豊かになった世界がこれを短縮できない訳がないと。ただ、これを実現するのは、金融グローバリズムの抵抗を排してのこと。国連などがイニシアティブを取って世界一斉実施を目指す方向になろうが、イギリス産業革命後などの10数時間労働時代が世界的に8時間制度になったことを考えれば、空想という事でもあるまい。近年使われる言葉では労働時間短縮はワークシェアとも言えるのである。
 同じ時間短縮、ワークシェアを語るもう1例を挙げる。『こうした格差拡大の処方箋としては、まず生活保護受給者は働く場所がないわけですから、労働時間の規制を強化して、ワークシェアリングの方向に舵を切らなければなりません。
 2012年の年間総労働時間は、一般労働者(フルタイム労働者)では、2030時間となっており、これはOECD加盟国の中でも上位に入る長時間労働です。サービス残業を含めれば、実際はもっと働いています。ここにメスを入れて、過剰労働、超過勤務をなくすように規制を強化すれば、単純にその減少分だけでも相当数の雇用が確保されるはずです。(中略)
 私自身は、非正規という雇用形態に否定的です。なぜなら、二一世紀の資本と労働の力関係は圧倒的に前者が優位であって、こうした状況をそのままにして働く人の多様なニーズに応えるというのは幻想といわざるを得ないからです。』(『資本主義の終焉と歴史の危機』、水野和夫・元三菱UFJモルガン・スタンレー証券チーフエコノミスト著。2014年刊)。


 第3節  平和に生きて行ける世界目指して

 岩波新書、西川潤早稲田大学大学院教授の著「世界経済入門」(07年第5刷版)は、1988年に初版が出て、『大学や高校の国際経済学、国際関係論や政治経済の副読本としても広く使われ』たというベストセラーだった。この第5版はグローバリズム経済への抵抗運動を見る点を終始問題意識の一つとして書き直された『新しい入門書』という重要かつ珍しい側面を持っている。
『経済のグローバル化』は、『人権や環境など、意識のグローバル化』を進展させずにはおかなかったと語る。そして、この書は、この両者の『相関、緊張関係を通じて、新しい世界秩序が生成しているとの視点に立っている』と解説される。これに呼応した回答として述べられているのは、最終章最終節のこんな記述であろう。
『この経済のグローバル化が世界的にもたらす不均衡に際して、ナショナリズム、地域主義、市民社会、テロリズムといくつかのチェック要因が現れている』
『これらの不均衡やそれに根ざす抵抗要因に対して、アメリカはますます軍備を拡大し、他国への軍事介入によって、グローバリゼーションを貫徹しようと試みている』
『(アメリカの)帝国化とそれへの協力、あるいはナショナリズムが、グローバル化への適切な対応でないとしたら、残りの選択肢は何だろうか。それは、テロリズムではありえない』
『これまでの分析を念頭に置けば、市民社会と地域主義が私たちにとってグローバリゼーションから起こる不均衡を是正するための手がかりとなる事情が見えてくる』
 とこう述べて、結論とするところはこうなる。
『1999年にオランダのハーグで、国際連盟成立のきっかけとなったハーグ平和会議1世紀を記念して平和市民会議が100国1万人余の代表を集めて開催された。この宣言では「公正な世界秩序のための10の基本原則」として、その第一に日本の平和憲法第9条にならって、各国政府が戦争の放棄を決議することを勧告している』
『2001年には、多国籍企業や政府の代表がスイスで開くダボス会議に対抗して、ブラジルのポルトアレグレで世界のNGO、NPOの代表6万人が集まり、世界社会フォーラムを開催した。このフォーラムは「巨大多国籍企業とその利益に奉仕する諸国家、国際機関が推進しているグローバリゼーションに反対し、その代案を提起する」ことを目的として開かれたものである。(中略)その後、「もうひとつの世界は可能だ」を合言葉とするこの市民集会は年々拡大し、2004年1月、インドのムンバイで開かれた第4回の世界社会フォーラムでは、参加者が10万人を超えた』

 上記文中の世界社会フォーラムに未来を見るアメリカ人哲学者の言葉も上げておこう。ノーム・チョムスキーの著作「覇権か生存か アメリカの世界戦略と人類の未来」(集英社新書2004年刊)からの抜粋である。
『非常に力強い展開として、一般の人々の間に人権という文化がゆっくりと育っていることが挙げられる。そうした傾向は1960年代に加速し、大衆運動が多くの分野に目覚ましい啓発の効果をもたらし、その後も長期にわたって拡大していった』
『1980年代にアメリカの本流の中で生まれた連帯運動は、特に中米について考える運動であり、帝国主義の歴史に新生面を切り開いた。帝国主義社会の多くの人々が悪質な攻撃の犠牲者のもとで一緒に暮らし、援助や保護の手段を提供することなど、それまでは一度もなかったのである。(中略) そこから正義を求めるグローバルな運動が生まれて、世界社会フォーラムを毎年開催しているが、これは運動の性質、また規模においてもかってない全く新しい現象だ』
『今日の歴史の中に、人は二本の軌道を見出すはずだ。一本は覇権に向かい、狂気の理論の枠内で合理的に行動し、生存を脅かす。もう一本は「世界は変えられる」──世界社会フォーラムを駆り立てる言葉──  という信念に捧げられ、イデオロギー的な支配システムに異議を唱え、思考と行動と制度という建設的な代案を追求する』

 西川、チョムスキー両氏が注目する世界社会フォーラムは現在も続いており、当然国連の役割を重視する。ここには、チョムスキーや、リーマンショックの総括書「国連スティグリッツ報告」を出したジョセフ・スティグリッツ(ノーベル経済学賞受賞者)も一報告者として参加している。彼らは、国連のイニシアティブによる金融(暴力)規制を切望してきた。

 

(終わりです)

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 こんなサッカー代表ゲーム、観たこと無い  文科系

2021年03月30日 06時01分39秒 | スポーツ

  五輪世代代表日本が、アルゼンチンに3対0で勝った。この勝利以上に日本の激しいディフェンスが僕にはとても大きな驚きであった。3日前の同じ相手との闘いとは見違えるような、攻めのディフェンス。球際で、最後の一歩の厳しさが衰えなかったのである。いつも取る、観戦メモの前半にも、後半出だしのアルゼンチン大攻勢にも、「こんな激しいゲームも珍しい」と書いてある。南米一位になったアルゼンチン五輪チームも激しく当たってくるから、こんなゲームはちょっと観たこと無いというボール際の攻防の連続になったのだ。そして、3日前の敗戦時と違って日本の「最後の一歩」が相手を上回っていたから、相手のパスなども余裕がなくなっていたのである。

 前半終わりがけの先取点は、絵に描いたように模範的な抜け出し得点。最後尾の右ディフェンダーの位置に居た瀬古(セレッソ大阪)が、走り出していたFW林(サガン鳥栖)の鼻先へと超ロングパス。これがピタリと合って、2人の敵DFを振り切った林が前を塞いだGKの左手外を抜いてゴール右隅に決めた。FWの走り出しにロングパスがドンピシャという、絵に描いたような抜けだし得点だった。

 こんな得点が決まると、相手のダメージは想像以上に大きくなる。相手DF陣が押し上げにくくなり、コンパクトな布陣が取れなくなってボール奪取争いで後手を踏むことになった。事実、後半すぐに大攻勢に出たアルゼンチンだったが、なかなかシュートまで持ち込めなくなっていた。
 するとどうだ。後半20分台に、日本の左コーナーキックから立て続けに2得点である。コーナーを蹴ったのはいずれも久保建英で、両得点とも板倉だった。 

  南米五輪予選で優勝したこのアルゼンチンチームが、このゲームで何本シュートを打てていたのだろう。多くても3本? とにかく、このゲームで強豪に対する日本の戦い方が見えた。「コンパクト布陣で、目前の相手に詰め切る、走りきる」。

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サッカー世界最優秀FW22歳が、五輪不参加  文科系

2021年03月29日 02時52分08秒 | スポーツ

 五輪サッカーは、若手の祭典。ところが、ロシアW杯最優秀若手に選ばれた選手が、東京五輪には来ないと決まった。

 ロシアW杯で断トツ優勝したフランスの、そのまた大がつく立役者、ムバッペ22歳だが、「ゲームが立て込んでいて、疲労回復のため」と述べているらしい。が、真相はコロナ避難だろうと推察する。なんせ、このキリアン・ムバッペは今や40億円の年俸提示を拒否して、リバプールかレアルかと騒がれている22歳。若く、そのスピードが得点に直結するという意味で飛び抜けた世界最高選手なのである。ちなみに、この40億は契約金ではありません。契約金は250億円などと言われています。さて、今や、イギリス勢に押されているレアルでも出せるかどうか?

 さて、この五輪拒否は、大事をとった周囲が、東京には行かせないのであろう。サッカー界にとってはオリンピックなど目じゃないどころか、こんなコロナ状況下ではという配慮が働いているのも明白。
 残念!
 
 ちなみに、ロシア大会でフランスともっとも良いゲームをしたのが、アルゼンチン。3対4で敗れている。先日、日本の若手がこのアルゼンチンに敗れたのは、無理もないという話。今日は良いゲームをしてほしいものだ。僕は、相馬に期待している。良いクロッサーというのは、守備の発達した現代サッカーではとても貴重な得点力なのである。スタートから出て、これでもかと走って欲しい。そしたら、敵は後半にバテて来るはず。強敵相手には、これがもっとも良い戦略、得点戦術なのである。

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経済論文 金融世界支配の歴史、現状(3)  文科系

2021年03月29日 02時05分01秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)

 第2章  金融グローバリゼーションの破綻

 第1節 金融が世界を乗っ取った

①その一般企業支配
 新自由主義グローバリゼーションが各国通貨から空売り搾取を行ったやり方を、タイ通貨危機からアジア通貨危機を例にとって、前節で見た。世界的な金融競争こそ経済発展の原動力とする米英など先進国の新たな新自由主義経済の主らとは、投資銀行、銀行、ファンドなどである。彼らによる金融中心経済のやり方を眺めておく。
  まず、株の売買については、余剰資産売却・吸い上げ型と、リストラによる収益型とがある。前者は、土地など大きな「余剰」資産を所有する会社の筆頭株主になり、その資産を売り払って株価を大幅に吊り上げてこれを売り抜く。もう一つはやや長期に渡って筆頭株主になり、リストラ・合理化に励んで株価をつり上げて売り抜く。
 こんなやり方で米企業を金融が買い占めていった経過を、ある本から要約してみよう。ロナルド・ドーア著「金融が乗っ取る世界経済 21世紀の憂鬱」(中公新書 2012年6月第5版)
 機関投資家の上場企業株式所有シェアがどんどん増えて、1960年アメリカで12%だったこのシェアが、90年には45%、05年61%と。次いで、企業から「金融市場への支払い」が、その「利益+減価償却」費用とされたキャッシュ・フロー全体に占める割合が急増する。アメリカを例に取ると、1960年代前半がこの平均20%、70年代は30%、1984年以降は特に加速して1990年には75%に至ったとあった。

②デリバティブ、金融派生商品
 次に、種々の金融派生商品の発明、売買というやり方がある。デリバティブという近ごろよく聞く言葉がこれだ。その大元の原理に触れておきたい。
 消費者ローンでも住宅ローンでも、借用証書がある。これは、借りた方が貸した方に出す証明書。これを貸し手が債券として出すのが社債や国債。一定利子が付くのは同じだが、こちらはお金同様の意味を持ち、売買も可能なもの。
 そしてさて、この社債などと同じ考え方で、種々のローンの貸し主が借用証書(債権)を証券化したものが金融派生商品の元である。焦げ付きなどの危険が高い借金から出来た高リスク証券とか、低リスク証券でも元のローン返済が急に怪しげになったりしたら、利子を高くしなければ売れない。そこで最大問題は、このこと。高リスク商品は当然売りにくいが、首尾良く売れるようにできれば、凄い儲けになる。全米抜群の優秀な頭脳を超高級で雇って、高リスク商品を売るために「高リスク高リターン商品」をあれこれと考え出していくことになった。

③サブプライムローン組込証券
 この証券化商品というのはまた、色々に分割して組み合わせることができる。これは、1銘柄の株を売るのではなく、投資信託を売るようなものと言えばよいだろう。とにかく、様々な負債を組み合わせるのだが、そこに高リスク債券を巧みに切り分けてもぐり込ませていく。貯金ゼロの低所得者に売りつけた住宅ローンからできたサブプライム・ローンの債券でも、これに安全な債券を組み合わせれば信用が「保証された」証券ができあがるという理屈だ。「高リスク貸し金を低リスクと混ぜて貸し手を増やし、今まではお金が貸せなかった人にもマイホーム、マイカーを持っていただけるようにした夢の商品!」なのである。リーマンショックの前のサブプライム・バブル期には、これが爆発的に売れた。ネズミ講同様大いに売れている間は自転車操業的資金繰りに困るどころか、大いに儲けも上がったのである。「偽の信用がどんどん膨らんでいった」のだが、その急成長中に偽だとは誰も振る舞っていないから問題なのだ。

④CDS
 こんなサブプライム・ローン組込証券に格付け会社によって破綻直前までトリプルAの信用が付いていた。それにはこんな保険商品も掛けられていて、これが大宣伝されたことも関わっている。クレディット・デフォルト・スワップ(CDS)と呼ばれた保険商品である。
『企業ばかりではない。国家もそうである。ギリシャの金融危機が深刻化したのはギリシャ国債の空売りに加えて、新契約の裸のCDSの掛け金がどんどん上がってギリシャ政府が発行する新国債の利子率が急騰したためである。ドイツなどはその裸のCDSの取引を禁じているのだが、そういう取引を歓迎する金融センターが世界中にたくさん残っている』(前掲書「金融が乗っ取る世界経済」)  
『保険法だったら、隣の家に黙ってその家に火災保険をかけることは禁じられている。全く当然だ。放火罪奨励はとんでもないことだからである。しかし社債のCDSの場合、国によっては、そのとんでもないことがまかり通る』(同上書)
 この「裸のCDS」ゆえにこんなことが起こる。A社の社債を持っていない人がこの社債に莫大な保険を掛け、安い掛け金のA社債を無数に買い集め始める。すると、その会社を潰すことになっていくのである。安い掛け率の保険が買い占められたら、新たな社債を発行しようにも利子率が高くないと誰もこれを買ってくれない。よってこの会社はもう、会社存続のための新たな借金もできなくなる理屈だ。CDSを「大量破壊兵器」と語ったのが有名な投資家ジョージ・ソロスだ。
『ゼネラル・モータースなどの倒産を考えよ。その社債の持ち主の多くにとって、GMの再編より、倒産した場合の儲けの方が大きかった。人の生命がかかった保険の持ち主に、同時にその人を打ちのめす免許を持たせるようなものだ』(前掲書)
「(会社再建よりも)打ちのめした方が儲かる」CDSの実際が、投資銀行リーマン・ブラザースの倒産でも示された。倒産時のリーマン社債発行残高は1559億ドル。その社債へのCDS発行銀行の債務総額は4000億ドルだった。

⑤金融は、国家さえ乗っ取る
 以下長く、岩波新書、進藤榮一著「アジア力の世紀」(2013年6月刊)を引用して、国際金融が諸国家、世界政治を動かすその凄まじいまでの大きさを示す。
 『金融危機が海を越えて伝播する構造は、07年夏にフランス最大手銀行BNPパリバのローン凍結ショックが、米国サブプライム・ローン危機の発端となって、08年9月のリーマン・ショックにつながったことにも象徴される。
 BNPパリバは、傘下のファンドを通じて、米国金融機関の発行する低所得者向けサブプライム・ローンを大量に購入し、そのローンが支払不能に陥り、解約を凍結した。そのニュースが金融市場を駆け巡って市場は混乱し、08年9月15日、全米4位の投資銀行リーマンプラザーズ社が破綻、金融危機が勃発した。(中略)
 その間、欧州の金融機関が、米国製の証券化商品を大量に買い込んでいることが明らかになり、欧州金融機関の信認が揺らぎ始めたのだった。そして09年10月、ギリシャ政府の債務残高隠しの発覚をきっかけに、ユーロの信認が一挙に失われて、危機は欧州の大手金融機関に及んだ。
 EUは03年、ユーロ加盟の条件として、財政赤字がGDP比3%以内、政府債務残高がGDP比60%以内にあることを定めていた。ギリシャは、ユーロ圏に加盟するために、紛飾決算まがいの手法を使って、財政赤字も累積債務も実態より低く報告していたことが判明した。その報告書に、ゴールドマンサックス社が関与していた。かつて87年夏に始まるアジア通貨危機の陰で、米国のヘッジファンドが暗躍していたように、ギリシャ危機の背後に、米国のファンドと財務省が暗躍していると噂された。米国が金融危機回避のため、欧州に仕掛けた危機だとも、時に位置付けられる。 (中略)  
 米国発金融危機が、リーマン・ショックを経て欧州債務危機へと転形し拡大したのである。危機はギリシャからアイルランド、ポルトガル、スペイン、イタリアへ波及した。メディアはそれら諸国の頭文字を取って、豚を連想させる「PIIGS(ビッグス)」と呼び、EUとユーロの脆弱さを侮蔑気味に指摘して、EUの分裂・解体を予測した』
 このギリシャ危機をユーロ瓦解に繋げるべく、ここからさらにドイツマルクの空売りにまで折を見ては度々結びつけてきたゴールドマン、アメリカ財務省などの大仕掛け! その凄まじさには身震いが出る。そして著者は、この100年に1度のリーマンショックが、「1929年世界大恐慌から世界大戦へ」とならなかった今回の事情までをこう説明している。「大欧州」と「新興国市場」がショックアブソーバーとして働いたからだ、と。
 世界の賃金から小金や国家資金までを奪うことによって、世界の有効需要をとことん小さくしてきたのに、その分、物を作る供給の側を金融支配・その巨大化に任せることによって膨大にしたところに、現代世界の諸不幸の源があると言える。金融ギャンブル中心の世界とは、結局そういう暴力的世界なのだと。

 

 第2節 「100年に1度の経済危機」

 サブプライムローン組み込み証券問題が、誰の目にも明らかになったのは08年春のベア・スターンズ破綻だろう。ここが、アメリカ5大投資銀行のひとつだからだ。が、ここに至る徴候は既に1年以上前から現れていた。06年12月にはサブプライムローンを手がけていた米中小ローンの経営破綻が相次いでいたのだし、07年3月13日住宅ローン大手のニューセンチュリー・フィナンシャルが上場廃止になった。6月22日には、ベア・スターンズが傘下ヘッジファンド2社の救済に奔走したが果たせないという事件が起こった。
 そして08年9月15日に、5大投資銀行の第3位リーマン・ブラザースが破綻すると、その同じ日に、第4位のメリル・リンチをバンク・オブ・アメリカが買収すると発表された。翌16日には、AIGの倒産があった。アメリカ最大の保険会社であり、CDSなど金融商品の保険だけを扱ってきた会社であって、政府等が即座に8000億ドルの融資枠を設定したものだ。ただしこの額は1ヶ月で使い切ってしまい、以降も追加支援に走らざるを得なくなる。そして、これらの結末。1、2位の投資銀行も9月21日に銀行持ち株会社に転換するにいたった。ゴールドマンとモルガンがそれぞれの銀行に吸収されたのである。

 東洋経済新報社の「現代世界経済をとらえる VER5」では、5大投資銀行の破綻の後をこう書いている。
『リーマン・ブラザース破綻の翌日、保険最大手のAIGがアメリカ政府管理に置かれ救済されたのは、あまりにも膨大なCDSの破壊的影響への危惧からであった。一世を風靡したアメリカ型投資銀行ビジネスモデルの終焉が語られているが、健全に規制された金融モデルへの移行か、巻き返しのための変身なのか、ウォール街の戦略、西欧金融機関との競争を含めて、注視していく必要がある』
 政府に補償してもらって、「巻き返しのための変身」?新自由主義者たちが非難してきた社会主義政策だ!
 こういうものが爆発して、さて世界はどうなったか。前掲書「金融が乗っ取る世界経済」には、こう描かれている。約1000兆円の資産が世界から消え、どこが負債を抱えているかに相互不信に陥って、大不況が続いてきたと。そして、この後遺症は今はどうなっているのか。こんな重大なものが、数学者・藤原正彦氏も述べてきたように必ず大破綻すると証明されたも同様のそれが現実に破綻した時(第1章第2節の最後の引用を参照)、マスコミで世界的追跡調査や反省などが正しくなされたようには到底見えないのである。ネズミ講的自転車操業が途絶えたことによって世界無数のサブプライム家庭を殺した投資銀行幹部たちは、個人資産を速逃げさせたはず。対するに、たった一軒のローンが払えなくなった人々はその人生を殺されたにも等しいのである。

 

 第3節 破綻の構造  

「100年に1度の危機」という破綻は、10年近く経った今初めて、その性質が一定分かってくるもの。何よりも世界10大銀行の移り変わりにこれが現れる。2010年と今とで、世界の10大銀行国籍がこう入れ替わった。英3米2の合わせて5行から各1の2行へと減った分、中国が0から3・5へと増えた(0・5とは、10大銀行に出たり入ったりしている所の意)。他は、フランス、日本の各2ほどと、ドイツの1行と、ほぼ変わらない。つまり、この数の順番で国に金があるということだ。こういった金がおこなう世界一般企業支配やデリバティブによる世界小金持ちからの搾取も、英米の現状を見れば既に限界と観るべきだろう。没落しつつある大国が金融によって対外収支を強引に改善しようと足掻いて来ただけとも見うるのである。その結末が、世界的な中産階級没落、失業者・不安定労働者の激増というその上に、世界の小金を奪い取って長期デフレを招いたというのでは、世界の人々の幸せを攪乱しただけと言える。現行株価などは、世界的なマイナス金利や公的資金投入で懸命に支え上げているに過ぎず、マネーゲームに費やされる莫大な金融資産に呼応する有効需要など、世界のどこにも見られなくなってしまった。であるならば、今の世界経済体制では、職などは増えようがないということだろう。「資本主義は終わった」というマクロ経済学者が増えているのは、こういう事情からである。

 

(第3章、最終回に続く)

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サッカー「久保、久保」は、(野球中心)マスコミの陰謀  文科系

2021年03月28日 18時39分53秒 | 国内政治・経済・社会問題

 サッカーで、今まではビッグゲームでの活躍など見るべきものの無い久保建英が、どうしてあれだけマスコミ種になって、騒がれているのか。その「止める蹴る」や「柔らかいプレー」など天才は明らかだが、FC東京でもレアルに行っても、U24代表でさえ、まだほとんど実績の無い久保が。これは一時以来の本田と同じ現象。本田の実績は外国2部の年間MVPだけで、他はロシアでその才能を浪費された上に怪我に悩まされて、移籍金無しでミランへ行った時には膝が悪くて昔のようにはもう走れなくなっていた。それで何故今でもまだ「本田、本田」なのか。サッカー自身の内容として中身の薄いこれらは、まるで「久保、本田」バラエティー報道ではないか。これを一言で言えば、マスコミ種として作る一つの虚像なのである。もっと言えば、野球マスコミ界の陰謀。どんな陰謀か、先ずその方針を箇条書きにしてみたい。

・サッカーに興味を持ち始めた人を、外国サッカーに、外国籍の日本人選手に目を向けるようにさせ、Jリーグから切り離すこと。本田や久保にだけ目を向けるような、サッカーファンならぬサッカーバラエティーファンを増やすのも大歓迎する。
・外国サッカーとJリーグとは常に分けて報道してきた結果、同じ日本人サッカーファンでも外国ファンとJファンとにくっきりと分かれるという現象を作り出すこと。
・こうして、日本マスコミは全体として、Jリーグ人気が出ないようにと振る舞ってきた。これはちょうど、野茂英雄がアメリカに渡るのを日本プロ野球界・日本マスコミが猛反対していたころに、大リーグ人気が出ないように振る舞ったのと同じやり方なのである。

 残念なことだが、サッカーファンにはこうお勧めしたい。久保を観るなら、Jを観ましょう。外国サッカーを観るならやはり、Jを観ましょう。(野球中心)マスコミのスポーツ戦略に乗ってはいけません。ただ、サッカーファンなら、Jリーグ百年構想にあるように全てのスポーツを大事にするよう、野球も愛してほしいもの。ただ野球を愛するということと、日本プロ野球を愛するということとは同じではありません。日本プロ野球は、上に観るように非常な「日本プロ野球エゴ」で成り立っています。だからこそ先日あったように、サッカーゲームに元巨人有名選手が顔を出すと、たちまち大騒ぎになるほど。実に奇妙な日本スポーツ界になっています。

 これも多分、電通が方針を作り、音頭を取って進めてきた日本スポーツ報道方針だ。と、これは僕のエビデンスの無い推察にすぎませんが。

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金融世界支配の歴史、現状(2) 文科系

2021年03月28日 00時08分47秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)

  はじめに

 東洋経済新報社の「現代世界経済をとらえる Ver4」と「Ver5」という本が手元にある。03年版と10年版なのだ。A5版びっしりの300頁近いのに、明らかなロングセラー。全国の大学経済学部などの教科書として版を重ねてきた本なのである。全14章に執筆者14人、全国の国公私立大学14校の専門家がそれぞれを執筆している。2つの版の目次の比較をやってみた。この比較から最も分かることがこれだ。この7年間で世界経済がこんなにも変わる時代に生きていると。

   Ver4           Ver5
1章 アメリカ経済  グローバリゼーションをどうとらえるか
2章 中国経済    日本・中国・アジア
3章 EU経済    アメリカ経済
4章 IT革命と現代世界経済  ヨーロッパ経済
5章 国際貿易の構造と理論  国際貿易の構造と基礎理論
6章 多国籍企業とM&A・国際提携  多国籍企業と直接投資
7章 WTOと世界通商システム  金融グローバリゼーション
8章 国際収支の理論と現実  国際収支と国際投資ポジション
9章 金融グローバリゼーション  グローバリゼーションとWTO
10章 現代の国際通貨体制   国際通貨体制
11章 開発と援助   低開発と貧困削減
12章 貧困・飢餓・ジェンダー  一次産品と資源・食糧問題
13章 地球環境と資源問題   国際環境政策
14章 国際政治経済学で解く現代世界経済  人の移動とグローバリゼーション

 これを見ると、世界経済激変の正体が「金融グローバリゼーション」にあることは明らかだ。世界のここに焦点を絞って発生経過、現状、問題点、改革などを探ってみようと思い立ち、いろんな本を読んできた。


 第1章 
 金融グローバリゼーションの生成と発展

 第1節 その生成

 まず、金融グローバリゼーションの誕生経過だが、「ポスト戦後社会」から始めよう。この名称による時代区分は歴史学に基づき、70年代半ばを境とする。岩波新書「日本近現代史10巻シリーズ」の第9「ポスト戦後社会」(09年刊)によれば、こういう特徴で始まるとか、逆にこういう特徴をポスト戦後とするということだ。
「世界秩序」は、冷戦からポスト冷戦へ。「国家体制」は、福祉国家から新自由主義へ。最後に「歴史的潮流」は、高度経済成長からグローバリゼーションへと。以下の拙稿を70年代から始めるのも、そういう歴史学的時代区分を意識してのことだ。さて、そう狙いを定めた上で、以降40年ほどの世界経済の流れを概観しよう。

 71年にいわゆるニクソンショックが起こった。金本位体制を崩して、世界的に変動相場制へと移行した措置である。直後には対円などでドルが世界的に値下がりし、他方、73年原油価格暴騰が起こる。その直後に、戦後世界経済理論を最も騒がせたスタグフレーションという経済現象が強調された。「景気の停滞下で物価上昇が続く」、「物価上昇と失業率の上昇とは併存しない」などという、当時までの世界政治経済理論・ケインズ経済学では説明できない現象と言われたものだ。つまり、ケインズ的経済学、政策の破綻というわけである。ここから、「自由競争に任せるのが最も合理的だ」という新自由主義経済運営として、有名な英国サッチャリズムが79年に、米国レーガノミックスは81年に始まっている。今顧みれば、新自由主義経済その後の隆盛が08年にリーマンショックという形で100年に一度どころではない大破綻を来したその出発点がここにあったわけだ。

 80年代は、「アジアの時代」とかジャパンマネーの時代というのが定説である。79年の経済協力開発機構(OECD)レポートで初めてアジアが注目され、以下10国が新興工業国「NICS」と呼ばれた。韓国、台湾、香港、シンガポール、ブラジル、メキシコ、スペイン、ポルトガル、ギリシャ、ユーゴスラビアである。80年代に入るとこのうち南欧や南米が落ちて、アジアNICSだけが急成長を続ける。上のアジア4国に続いて80年代後半からはタイ、マレーシア、インドネシアが仲間に入った。以上の80年代動向は同時に、アジア唯一の先進国・日本が「アメリカ」をも買いあさった「ジャパン・アズ・ナンバーワン」の時代とも重なる。

 第2節 民間資金の世界席巻と通貨危機

 90年前後に起こった社会主義国崩壊から以降、民間資金が各国に流入して、猛威をふるい始める。これまでの開発途上国などへの資金流入は社会主義国と張り合うように公的資金が主だったが、90年代はそれが急逆転していく。それにともなって各国に通貨危機が連続して発生する。94年メキシコ、97年東アジア、98年ロシア、99年ブラジル、01年にはトルコとアルゼンチンなどだ。いずれの国も、短期資金の突然の流出で資本収支の赤字から困窮しつくすという特徴を示した。ちなみに98年世界決済銀行(BIS)の43カ国調査にこんな数字がある。市場為替取引高は1日平均1・5兆ドルで年間500兆ドル。95~6年の年間世界貿易高5兆ドルの100倍、もの凄い数字だ。マネーゲームとか「カネがモノから離れ始めた」と指摘され始めた。

 1970年代初頭の金本位制、固定相場制崩壊以降、小さなバブルとその破裂は無数に起こっている。IMF(国際通貨基金)の08年調査によればこのように。
『1970年から2007年までの38年間に、208カ国で通貨危機が、124カ国で銀行危機が、63カ国で国家債務危機が発生しています。金融危機は、先進国、新興工業国、開発途上国を問わず、アジア、ヨーロッパ、南北アメリカ、アフリカを問わず起こっていたのです。これに対し、第二次大戦後1970年以前の時期には、国際金融危機や大規模な一国金融危機はほとんど発生していません』(12年刊 伊藤正直・東京大学大学院経済学研究科教授「金融危機は再びやってくる」)
 日本の銀行協会の会長さんが2011年にこんなことを語ったことがある。
「不景気で、どこに投資しても儲からないし、良い貸出先もない。だから必然、国債売買に走ることになる。今はこれで繋いでいくしかない状況である」。
 ギリシャなどの国家財政危機を作っているのは、普通の銀行なのである。こんな状況で円安・金融緩和に走っても実体経済や求人関連には悪影響しかなく、バブル形成に使われるだけなのだ。要は、それ以外の投資先そのものがないのである。

 また、08年のような史上かってなく大きなバブル崩壊について、必ず起こると予言もされてきた。マクロ経済学者からはもちろん、例えば、数学者である藤原正彦・お茶の水女子大学教授は「国家の品格」(06年4月第24刷)でこう予言していた。
『新聞等ではなぜかあまり騒がれておりませんが、このデリバティブ(金融派生商品と訳される。文科系)の残高が、国際決済銀行の発表によると2004年時点で1兆円の二万五千倍と言われています。二万五千兆円ですね。わずか三年前の残高の2・2倍です。ここ10年では25倍という恐るべき急増です。多分、京(きよう)だか京(けい)だか知りませんが、2京五千兆とでも言うのでしょう。(中略) 銀行やヘッジファンドはデリバティブの主役ですから、大規模デリバティブが一つでも破綻すると、その瞬間に資金の流れが止まり、連鎖的に決済不能に陥ります。(中略)いつ世界経済をメチャクチャにするのか、息をひそめて見守らねばならないものになっています。しかもなぜか、これに強力な規制を入れることも出来ない。そもそもマスコミはこれに触れることすら遠慮している』

 第3節 アジア通貨危機の発端、タイの例

『「投機家はタイに自己実現的通貨投機をしかけた。1ドル25バーツに事実上固定していたタイ・バーツが貿易収支の悪化から下落すると予想し、3か月後に25バーツでバーツを売りドルを時価で買う先物予約をすると同時に、直物でバーツを売り浴びせた。タイ中央銀行は外貨準備250億ドルのほとんどすべてを動員して通貨防衛を試みたが力尽きた。」(東洋経済「現代世界経済をとらえる VER5」』
 タイのこの問題に詳しい専門家による解説をご紹介しよう。なんせ通貨危機というのは、「1970年から2007年まで世界208カ国で起こり」(前掲書 伊藤正直「金融危機は再びやってくる」)、中小国家などからは「通貨戦争」とも呼ばれて恐れられてきたもの。中でもこのタイ通貨危機は、97年の東アジア通貨危機の発端・震源地になった事件として重要なものだ。毛利良一著「グローバリゼーションとIMF・世界銀行」(大月書店2002年刊)から抜粋する。
『通貨危機の震源地となったタイについて、背景と投機の仕組みを少しみておこう。タイでは、すでに述べたように経常取引と資本取引の自由化、金融市場の開放が進んでいた。主要産業の参入障壁の撤廃は未曾有の設備投資競争をもたらし、石油化学、鉄鋼、自動車などで日米欧間の企業間競争がタイに持ち込まれた。バンコク・オフショアセンターは、46銀行に営業を認可し、国内金融セクターが外貨建て短期資金を取り入れる重要経路となり、邦銀を中心に銀行間の貸し込み競争を激化させて不動産・株式市場への資金流入を促進し、バブルを醸成した。(中略) 投機筋は、まずタイ・バーツに仕掛け、つぎつぎとアセアン諸国の通貨管理を破綻させ、競争的切り下げに追い込み、巨大な利益を上げたのだが、その手口はこうだ。(中略) 1ドル25バーツから30バーツへの下落というバーツ安のシナリオを予想し、3ヶ月や半年後の決済時点に1ドル25バーツ近傍でバーツを売り、ドルを買う先物予約をする。バーツ売りを開始すると市場は投機家の思惑に左右され、その思惑が新たな市場トレンドを形成していく。決算時点で30バーツに下落したバーツを現物市場で調達し、安いバーツとドルを交換すれば、莫大な為替収益が得られる』
  分かりやすく説明するとこういうことだ。
 1ドルがタイ通貨25バーツの時点で、三か月後に1ドル25バーツでドルを大量に買う先物予約をしておく。その上で、バーツを一挙に、どんどん売り始める。そこには、予め同業者などから大量に借りる契約がしてあったバーツなども大量に含まれている。自分が所有していない債券、商品などを売る行為を空売りと呼ぶが、これらの結果、三か月後1ドル30バーツになって起こることを、例示してみよう。1億ドルで30億と安くなったバーツを普通に買ってから、先述の先物予約を行使してこのバーツでドルを買えば1億2千万ドルに換えられる。また、普通は不安になるこんな「大商いへの確信」も、世界大金融には比較的容易なものだ。動かせるバーツとタイ政府の「防御体制(金額)」とを比較でき、そこから勝利の目処となる投入金額に目算も立つからだ。
 上記毛利良一氏はこう続けている。
『投機で儲けるグループの対極には、損失を被った多数の投資家や通貨当局が存在する。
 投機を仕掛けたのは、ヘッジファンドのほか、日本の銀行を含む世界の主要な金融機関と、・・・・機関投資家であった。また、1999年2月にスイスのジュネーブで開かれたヘッジファンドの世界大会に出席した投資家は、「世界中を見渡せば、過大評価されている市場がどこかにあります。そこが私たちのおもちゃになるのです」と、インタビューで語っている。』

 

(あと、3回ほど続きます)

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サッカー日本代表2ゲームの観戦記  文科系

2021年03月27日 12時24分03秒 | スポーツ

 フル代表は3対0で韓国に勝ったが、アルゼンチンとやったアンダー24は0対1で破れた。こちらは、すぐにもう一度やることになっているが、願わくば0対0であらんことを。このチームがアルゼンチンに勝つのは難しいと思う。

 さて、フル代表の相手韓国はソンフンミンこそ居なかったが、けっして弱いチームなんかではない。むしろ逆に、昨日の3-0は日本がそれだけ強くなったということを示していると言いたい。ザック監督の下のブラジル大会前後から強くなってきて海外日本人選手が急増し、それがロシア大会ベルギー戦に現れたように結実したわけだが、どう強くなったのか。昨日のゲームでは、それが鮮やかに分かるのである。

 勝利の立役者はまず何と言っても、「替えの効かない」大迫。初め2得点はいずれも彼のトリッキーでさえあるアシストによるもの。一本は、相手2名ほどを背負ったままポストとしてボールを受けに走り戻ったその体勢のままからヒールでのスルーパス、もう一点は、一回転のやはり戻りドリブルで背負った相手DFたちを外して振り向きざまのスルーパスからの得点だった。2本とも、凄く難度の高い、ポストプレーの一種。あんなプレーを、警戒されている中で2回もできるのは、日本人FWだからではないかと、しみじみ思っていたところである。
 日本の守備も強くなったものだ。アジア勢相手では、ほぼ0点に抑えられるというほどに。吉田が居るのが大きいのだろうが、その前の遠藤、守田が攻守に凄く効いていたゲームだった。遠藤が、彼の3得点目がなくともこのゲームのMVPなのではないか。

 その点、U-24は見るべきものが少なかった。アルゼンチンはたしかに強豪だったが、攻守とも球際で負け過ぎていたと思う。なんせ、ドリブルでも抜けず、パス先を観る余裕も無かったという感じで、得に相手プレスに後れを取っていたことは明らかだった。強豪国との国際ゲームというものがよく学べたはずだ。これでは、日本の10対アルゼンチン4というシュートも、余裕を持って打てなくなる。
 ただ一つ希望が見いだせたのが、三苫に代わって入った後半21分に入った相馬。彼の緩急つけてかつスピードに乗ったドリブル突破はほとんど成功して、良いクロスになっていたと思う。A代表でも伊東なみのスピードなのではないか。サッカーでスピード、スピードに乗ったクロスが、いつもいつもいかに貴重であるかということを、示してくれたと思う。守備ではアルゼンチンが特に中央を固めていたから、そしてそれが普通だから、優れたクロッサーが大事なのである。ちなみに、史上最強と言われたブラジル大会日本代表が惨敗したのは、ザックの指示に反して中央突破にばかり拘っていたからだ。日本が強豪相手にそんな攻撃を中心にやるのは10年早いと、ザックが本田や遠藤に教えてくれたことになる・・・。

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経済論文 「金融世界支配の歴史、現状」(1)  文科系

2021年03月27日 11時13分32秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)

 以下の経済論文を、改めて連載します。このことが分からないと、世界の現情勢は結局何も分からないに等しいと考えています。例えば、リーマンショックがなぜ「(1929年の世界大恐慌に匹敵するような)100年に一度の経済危機」と呼ばれたのかも分からないし、アベノミクスが何故破れ、日本経済が何故官製バブルのようなことになっているのかも分からないわけです。アメリカが中国を敵視するのも、こういう経済運営が中国の前に破れ始めているからに他なりません。その理由は簡単。金融がさんざん荒らし回った世界の物経済がどんどん中国周辺に移って来たのに、金融で中国を乗っ取ることはできないからです。
 2016年にここに連載し、2017年に同人誌に加筆して掲載したこの論文は、原稿用紙にして50枚。今日はその目次だけを掲載します。

はじめに 

第1章  金融グローバリゼーションの生成と発展
 第1節 その生成
 第2節 民間資金の世界席巻と通貨危機
 第3節 アジア通貨危機の発端、タイの例

第2章 金融グローバリゼーションの破綻
 第1節 金融が世界を乗っ取った 
 (1)その一般企業支配
 (2)デリバティブ、金融派生商品
 (3)サブプライムローン組込証券
 (4)CDS
 (5)金融は、国家さえ乗っ取る
 第2節「100年に一度の経済危機」
 第3節 破綻の構造

第3章 金融グローバリゼーションの改革
 第1節 国際機関などの対応
 第2節 各国などの対応や議論
 第3節 平和に生きて行ける世界目指して 

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同じタイ通貨危機、わかりやすい解説  文科系

2021年03月25日 10時57分04秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
 今また、米一国支配になった世界でアメリカが今日までやり尽くした「戦争」を紹介しておこう。張本人が隠していて、その告発も抑えているから、ほとんどの人が知らない通貨危機の仕組である。以下は、このブログで度々ベスト⑩に入ってくるエントリーの一つなのだが、いわゆるアジア通貨危機の勃発点タイで起こったことの学者による解説である。このタイの通貨空売りから、このタイに投資していて大損したアジア諸国の通貨空売りへと発展し、韓国などがその通貨で大損して儲けたのは誰か。この同じことが、ブラジルに、ロシアに、アルゼンチンに世界中で30年間にわたって何度も何度も起こされたのであった。これこそ、現代の実質的戦争なのだ。帝国主義の植民地戦争は直接暴力に物を言わせるが、通貨危機は現代の目に見えない暴力である。

 

【  「100年に1度の危機」とはなんだったのか(3) 文科系  2016年11月28日

 第3節 アジア通貨危機の発端、タイの例

『「投機家はタイに自己実現的通貨投機をしかけた。1ドル25バーツに事実上固定していたタイ・バーツが貿易収支の悪化から下落すると予想し、3か月後に25バーツでバーツを売りドルを時価で買う先物予約をすると同時に、直物でバーツを売り浴びせた。タイ中央銀行は外貨準備250億ドルのほとんどすべてを動員して通貨防衛を試みたが力尽きた。」(東洋経済「現代世界経済をとらえる VER5」』

 タイのこの問題に詳しい専門家による解説をご紹介しよう。なんせ通貨危機というのは、「1970年から2007年まで世界208カ国で起こり」(前掲書 伊藤正直「金融危機は再びやってくる」)、中小国家などからは「通貨戦争」とも呼ばれて恐れられてきたもの。中でもこのタイ通貨危機は、97年の東アジア通貨危機の発端・震源地になった事件として重要なものだ。毛利良一著「グローバリゼーションとIMF・世界銀行」(大月書店2002年刊)から抜粋する。

『通貨危機の震源地となったタイについて、背景と投機の仕組みを少しみておこう。タイでは、すでに述べたように経常取引と資本取引の自由化、金融市場の開放が進んでいた。主要産業の参入障壁の撤廃は未曾有の設備投資競争をもたらし、石油化学、鉄鋼、自動車などで日米欧間の企業間競争がタイに持ち込まれた。バンコク・オフショアセンターは、46銀行に営業を認可し、国内金融セクターが外貨建て短期資金を取り入れる重要経路となり、邦銀を中心に銀行間の貸し込み競争を激化させて不動産・株式市場への資金流入を促進し、バブルを醸成した。(中略) 投機筋は、まずタイ・バーツに仕掛け、つぎつぎとアセアン諸国の通貨管理を破綻させ、競争的切り下げに追い込み、巨大な利益を上げたのだが、その手口はこうだ。(中略) 1ドル25バーツから30バーツへの下落というバーツ安のシナリオを予想し、3ヶ月や半年後の決済時点に1ドル25バーツ近傍でバーツを売り、ドルを買う先物予約をする。バーツ売りを開始すると市場は投機家の思惑に左右され、その思惑が新たな市場トレンドを形成していく。決算時点で30バーツに下落したバーツを現物市場で調達し、安いバーツとドルを交換すれば、莫大な為替収益が得られる』

 分かりやすく説明するとこういうことだ。
 1ドルがタイ通貨25バーツの時点で、3か月後に1ドル25バーツでドルを大量に買う先物予約をしておく。その上で、バーツを一挙に、どんどん売り始める。そこには、予め同業者などから大量に借りる契約がしてあったバーツなども大量に含まれている。自分が所有していない債券、商品などを売る行為を空売りと呼ぶが、これらの結果、3か月後1ドル30バーツになって起こることを、例示してみよう。1億ドルで30億と安くなったバーツを普通に買ってから、先述の先物予約を行使してこのバーツでドルを買えば1億2千万ドルに換えられる。また、普通は不安になるこんな「大商いへの確信」も、世界大金融には比較的容易なものだ。動かせるバーツとタイ政府の「防御体制(金額)」とを比較でき、そこから勝利の目処となる投入金額に目算も立つからである。

 上記毛利良一氏はこう続けている。
『投機で儲けるグループの対極には、損失を被った多数の投資家や通貨当局が存在する。
 投機を仕掛けたのは、ヘッジファンドのほか、日本の銀行を含む世界の主要な金融機関と、・・・・機関投資家であった。また、1999年2月にスイスのジュネーブで開かれたヘッジファンドの世界大会に出席した投資家は、「世界中を見渡せば、過大評価されている市場がどこかにあります。そこが私たちのおもちゃになるのです」と、インタビューで語っている』

 なおこのアジア通貨危機理解に関わって、「内因説」「外因説」が存在する。後者は、世界経済フォーラム(ダボス会議)に対抗して開かれた世界社会フォーラムの主張が代表的だと、そう述べるのは前掲書「金融危機は再びやってくる」。またこのことについて、後にリーマンショックにかかわった「国連のスティグリッツ(を代表とした)報告」を出したこのノーベル経済学賞受賞者は、世界認識をちょっと変えている。初めは、単にこうだった。「バブルが自然にできて、それが自然に破れた」。それが後にはこうなった。「あの出来事は、自然なバブルが無くても起こった。国際資本寄りの世界機関対応が起こしたものだ」と。つまり、80年代に「ジャパン・アズ・ナンバーワン」を筆頭とした日本とともに世界で経済的に最も栄えたNICSの金が、タイ、韓国、台湾などを中心として、計画的に略奪されたのである。スティグリッツは、そう観直したわけである。こういうかってないような壮大な歴史的事件については、こう言い直した方がよいかも知れない。「結果としては、計画通りに」と。】
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空売りの仕組、アジア通貨危機震源地タイの場合  文科系  

2021年03月25日 10時19分55秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)

 いつもいつも、このエントリーの必要性を新たに感じるのです。また、何度目かの転載になりますが。

 

【 世界経済史の今を観る(6)通貨危機の仕組・タイの例  文科系  2013年3月29日

 
 24日の拙稿『随筆「頽廃極まる政治」』を連れ合いに読んでみたら、この部分をもっと分かりやすく知りたいと言う。
『「投機家はタイに自己実現的通貨投機をしかけた。一ドル二五バーツに事実上固定していたタイ・バーツが貿易収支の悪化から下落すると予想し、三ヶ月後に二五バーツでバーツを売りドルを時価で買う先物予約をすると同時に、直物でバーツを売り浴びせた。タイ中央銀行は外貨準備二五〇億ドルのほとんどすべてを動員して通貨防衛を試みたが力尽きた。」(東洋経済「現代世界経済をとらえる VER5」二〇一〇年。一二一頁)』

 今日はタイのこの問題に最も詳しい専門家による解説をご紹介したい。なんせ通貨危機というのは、「1970年から2007年まで世界208カ国で起こり」、各国恐怖の対象とされてきたもの(岩波ブックレット12年刊 伊藤正直「金融危機は再びやってくる」P3)。世界金融資本の最大暗躍手段・場所の一つであって、世界各国から「通貨戦争」とも呼ばれている。なお、このタイ通貨危機は、97年の東アジア通貨危機の発端・震源地になった事件として非常に重要なものである。
 毛利良一著「グローバリゼーションとIMF・世界銀行」(大月書店2002年刊)243~244頁から抜粋する。

『通貨危機の震源地となったタイについて、背景と投機の仕組みを少しみておこう。タイでは、すでに述べたように経常取引と資本取引の自由化、金融市場の開放が進んでいた。主要産業の参入障壁の撤廃は未曾有の設備投資競争をもたらし、石油化学、鉄鋼、自動車などで日米欧間の企業間競争がタイに持ち込まれた。バンコク・オフショアセンターは、46銀行に営業を認可し、国内金融セクターが外貨建て短期資金を取り入れる重要経路となり、邦銀を中心に銀行間の貸し込み競争を激化させて不動産・株式市場への資金流入を促進し、バブルを醸成した。
 このようにして流入した巨額の国際短期資本は、経常収支赤字の増大や大型倒産など何かきっかけがあれば、高リターンを求めて現地通貨を売って流出する。投機筋は、まずタイ・バーツに仕掛け、つぎつぎとアセアン諸国の通貨管理を破綻させ、競争的切り下げに追い込み、巨大な利益を上げたのだが、その手口はこうだ。
 (中略)1ドル25バーツから30バーツへの下落というバーツ安のシナリオを予想し、3ヶ月や半年後の決済時点に1ドル25バーツ近傍でバーツを売り、ドルを買う先物予約をする。バーツ売りを開始すると市場は投機家の思惑に左右され、その思惑が新たな市場トレンドを形成していく。決算時点で30バーツに下落したバーツを現物市場で調達し、安いバーツとドルを交換すれば、莫大な為替収益が得られる。96年末から始まったバーツ売りに防戦するため、タイ中央銀行は1997年2月には外貨準備250億ドルしかないのに230億ドルのドル売りバーツ買いの先物為替契約をしていたという。短期資本が流出し、タイ中央銀行は5月14日の1日だけで100億ドルのドル売り介入で防戦したが、外貨準備が払底すると固定相場は維持できなくなり、投機筋が想定したとおりの、自己実現的な為替下落となる。通貨、債券、株式価値の下落にさいして投機で儲けるグループの対極には、損失を被った多数の投資家や通貨当局が存在する。
 投機を仕掛けたのは、ヘッジファンドのほか、日本の銀行を含む世界の主要な金融機関と、大手のミューチュアル・ファンドをはじめとする機関投資家であった。また、1999年2月にスイスのジュネーブで開かれたヘッジファンドの世界大会に出席した投資家は、「世界中を見渡せば、過大評価されている市場がどこかにあります。そこが私たちのおもちゃになるのです」と、インタビューで語っている。

 以上につき僕の感想のようなことを一言。一昨年11月15日の拙稿に書いたことだが、日本の銀行協会の会長さんがこんなことを語っていた。「不景気で、どこに投資しても儲からないし、良い貸出先もない。だから必然、国債売買に走ることになる。今はこれで繋いでいくしかない状況である」。ギリシャやキプロスの危機を作っているのは、普通の銀行なのである。こんな状況で円安・金融緩和に走っても実体経済や求人関連にはほとんど何の影響もなく、株バブルや上記タイのような(通貨、株、国債などの)バブルつぶしに使われるだけという気がする。要は、それ以外の投資先そのものがないのだ。そこを何とかしなければ何も進まないと思うのだが。つまり、供給側をいくら刺激してもだめ、ケインズやマルクスが指摘したように、需要創造が問題だと言うしかないではないか。リーマンショックが起こった時に、心ある経済学者のほとんどから「ケインズ、マルクスの時代か」と言われたのは、そういう意味だったと思う。】

 

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随筆紹介  森じいさんの言語録   文科系

2021年03月25日 08時45分43秒 | 文芸作品

   森じいさんの言語録    H・Sさんの作品です                                               
                                     

「女性がたくさん入っている理事会の会議は時間がかかる・・・」この発言で女性蔑視だと国民から非難を受けた森喜朗じいさん。この発言を聞いた時(またやったかー。じいさん。こりないなあ)と言うのが私の素直な思いだった。その瞬間、私がすぐ思いつくだけでも国民蔑視、女性蔑視発言を六つも並べることが出来る。
一、IT革命を、「イット革命」。二、「無党派層は選挙に関心がないといって寝てしまってくれればいい」。三、えひめ丸事件。水産高校の実習船がアメリカの原子力潜水艦に衝突され沈没。高校生九名が犠牲になった日、ゴルフ場にいて知らせを聞いた後もプレイを続け「私が官邸に行かないことで何が遅れたのか」。四、「女の人だなあ、やっぱり視野が狭いなあと思った」。五、「子供を一人も作らない女性が好き勝手に自由を謳歌して楽しんで、年をとって税金で面倒を見なさいと言うのは、ほんとうはおかしい」。六、「あの子(浅田真央選手)、大事な時には必ず転ぶんですね」。この発言には「私は別に何とも思っていないですけど、森さんが今少し後悔しているのではないかな」と、練習の結果が出せなくて一番悔しく辛い思いをしていたはずの真央ちゃんが言い返した。いくつもの仰天発言に対して一矢報いたのは真央ちゃんだけ、これらの発言に新聞への投書は見かけたが、真正面から異議を唱えた人はいない。今回は、前述の発言で話が長いと標的にされた女性が、「私の事です」と、本名で名乗り出た。これも世論を動かしたようだ。一応、文化国家と見られている日本国だ。この様な国の在り方は、女性蔑視発言に始まり、国民蔑視の発言を許容してきた社会、政治構造に問題があると世界はこの国を見たことだろう。この放言で国際的な批判の嵐が起こり、やむなく辞任に至った。と言うのが森じいさんの本音だろう。

 去り際もいじましかった。じいさんは、「辞める」といえば引き止めてくれるのは、誰なのか見定めた様子だ。予測通り多くの委員がじいさんの留任を認め、居直りを許した。世論は、国際的非難を支持。じいさんに味方する人はいなかった。二転、三転。辞任が決定。後任の会長職を自分の息のかかった人に渡したく、ご指名。指名された本人もやる気だったが、さすがに周りの批判状況を見て、これはまずいと思ったのか急ぎ辞退に至った。

 森じいさんが率いたスポーツ業界は、誰もじいさんに逆らえないのだ。「物言えば唇寒し秋の風」の萎縮ムードを日本のスポーツ界に感じていると、記者が綴っていた。本人が「辞める」と言った時がチャンス。頼み込んで居座りを許してしまう。何とも解せない不思議な国だ。こういうやり方が世界に知れ渡る。恥ずかしいことだ。怪我の功名で女性役員を増やして体制を立て直してオリンピックに臨むのだと言う。コロナ禍が終わりもしないうちにオリンピックの予定日が来てしまう。これでいいのか? 国が疲弊するぞー。
「オリンピックなんかやめてしまえー」。私は毎日そう叫んでいる。

 

(文科系の所属同人誌、月例冊子3月号から)

 

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随筆紹介  婆孝行   文科系

2021年03月25日 08時41分58秒 | 文芸作品

  婆孝行       K・Kさんの作品です                                                                 

 ひょんなことから、中学一年の孫娘と古希の私との夢のコラボが実現した。孫娘は中学でソフトテニス部に入ったが、コロナ禍で練習もほとんど出来ない。
 そこで、土曜日に私が地元で楽しんでいる、ソフトテニスクラブの練習日に孫娘を誘ってみた。意外にも「行ってみようかな」と応えた。思春期で祖母と一緒のテニスは嫌がると思ったのだが。

 六〇歳代の仲間たちと、フォア、バックの一本打ちからボレー、スマッシュ、サーブ、レシーブのメニューに見よう見まねで何とかついてくる。練習試合になると「お孫さんとペアで組んだら? 孫と組むなんて夢のコラボだね」と仲間たちが勧める。
 孫娘はまだサーブの練習を始めたばかりで試合形式も初めてのこと。ルールもしっかり分からないがとりあえずスタート。一五〇センチの私が後衛で走り回り、一六五センチの孫娘は前衛で立つ。たまたまボールに反応してポイントをとると笑顔でハイタッチ。

 ママさんになってから始めたソフトテニスも三〇年。この頃は体力が衰えていつ辞めようかと考えていた。だが、孫娘と一緒に楽しめる時が来るとは思ってもみなかった。続けていて良かった。「何時でも遊びに来てね」、仲間たちの言葉に感謝だ。

 

(文科系の所属同人誌、月例冊子3月号に掲載。)

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五輪強行は、失政の尻拭い  文科系

2021年03月24日 08時57分44秒 | 国内政治・経済・社会問題

 政府とその周辺はなぜこれほどに、「なにがなんでも五輪開催」なのか。誰が考えても無理押しなのに。作春から僕は以下に紹介する過去ログのように述べてきた。

 何年たっても最大目標「物価2%」が実現できなかったアベノミクスは、これの「実現手段?」として日銀を屈服させて円刷り、官製バブルをとことん膨らませて来てしまった。経済実績の無いこんな株高はこの30年の世界では常に、アメリカ金融による空売りに狙われてきた。経済政策を失敗したが、海外資産や預金現金だけはある日本に(空)売りをかけてその金を奪う絶好のチャンスこそ五輪中止というその時だったのである。産業斜陽続きで現金預金も無いアメリカにとっては、日本の金を奪う絶好のチャンスになるわけだ。チャンスどころか、昨年春の五輪延期決定時に既にもう日本GPIFはかってない大損をしているのである。これでもし「五輪中止」となったら、この何倍の大損を被るのだろう。五輪強行開催もこうして、安倍長期政権の失政尻拭いなのである。日銀を屈服させてまで株価だけつり上げ続けた政策のツケのための五輪強行。日本国民は今、アベノミクスの悲惨な結末と、老人の命を懸けた五輪強行という二重の苛政を押しつけられているわけだ。アメリカ識者の声を想像してみよう。
「日本国民って我慢強くて、政府は得だなー。アメリカは今やっと、経済空洞化が白人労働者らから猛抗議されてきたが、空洞化って日本では20世紀にもう大々的に起こっていたことだろう」

 以下を改めて是非お読み願いたい。そもそも、日本のマスコミは、昨春の莫大な政府損失を国民にどれだけ知らせ、解説していたか? この点では、政府も、電通マスコミも、ほとんど共犯関係なのではなかったか。

【 安倍政権に、前門のコロナ、後門の「日本売り」 文科系 2020年04月14日

 安倍政府の無能、無策は、五輪未練に執着して、コロナ沈静を2重に遅らせ、心ならずも国民を恐怖に陥れてしまった。
 一つは、感染者数を世界に向けて少なく見せるべく、中韓がやった希望者全員検査をせずにクラスター発見に特化した対策を採ったこと。感染経路不明の孤立患者には病院たらい回しを強いる結果となって、国中の病院という病院に院内感染の恐怖をばらまいたのである。
 そして今ひとつは、3月最後の貴重な3連休にさらに深く「孤立感染者野放し」をやったのも、ぎりぎりまで五輪開催の道を探っていたからだ。

 安倍はなぜこれほどまでに五輪に拘ったのか。思い出すのは、ここでも再三書いてきたこのことだ。
 原理的に達成できるはずもなかったアベノミクスの焦点・2%目標に執着し続けて来た結末として官製バブルを作ってしまい、このバブルを弾けさせられる日本売りを引き延ばすべく五輪景気をそれほどに渇望していたからである。それも、「この日本売りは、むしろその五輪後が怖い」と語られてきたのだから、五輪が無ければ泣き面に蜂だったのであろう。

 ところでさて、この「日本官製バブル弾け、日本売り」は既にもう始まっている。この1~3月にGPIFが17兆円という四半期としては過去最大の赤字を出して、19年度全体でも遂に8兆円ほどの赤字という悲劇が起こった。これがまた、18年度秋の第3四半期に被った15兆円の赤字に続く大穴なのである。

 こういう事態を引き起こした歴史的事件として、ここで是非、以下にも言及しておく。この日本売り恐怖の原因を作ったのも、安倍自身である。その次第は以下の拙エントリーに詳しい。

『日本沈没開始事件「安倍が日銀を屈服」2020年01月31日』
 この「日銀・白川総裁を屈服させた」場面において、株価さえ上げれば好景気という「景気」目指して官製バブルを作る道を作ってしまったのが、他ならぬ安倍晋三首相ご自身。このことが必ず問題になるとは、最後まで安倍に抵抗した白川方明日銀総裁の予言であった。現世界のバブルとは、必ず弾けさせられて大損を被るのである。こうして再三述べてきた18年度の第3四半期にはGPIF15兆円の損失、そしてこの度2019年度の第4四半期には過去最高の17兆円の損失。この損失はまだまだ続いていく。これ全て、アメリカの口車に乗ってしまった「アベノミクス、2%インフレターゲット政策」の大変な付け、失政なのである。

 こうして、今の安倍は『前門のコロナ、後門の「日本売り」』と、出口がどこにも無い大きすぎる恐怖に駆られているはずだ。それは、コロナに必要な金さえも使えないというほどに。この両門いずれも、身から出た錆。トランプと同じで、器でもない者が幸運に恵まれて長く偉そうな顔だけを作ってきた、その厚化粧の結末というべきだろう。赤木さんご夫妻やコロナで死んでいった人々を筆頭に、我々国民が可哀想すぎる。】

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