週刊サッカーダイジェスト最新号に面白い記事があったので、ご紹介しょう。題して「ふたりの得点王を丸裸にする」。言うまでもなく、今期得点王を分け合った前田とケネディの比較であって、非常に読み応えがあった。一言で言えば「なるほど・ざ・2年連続得点王!」。
93年からJリーグが始まって18年で得点王延べ19人のうち、日本人得点王は延べ7人しかいない。また、外国籍選手を含めても2回取った人物は2人しかいない。98年、00年の中山雅史と、前田だけだ。こうして、日本人得点王延べ7回のうち、4回をこの2人で分け合っているということになる。また、この2人には密接な関係があって、前田のジュビロ磐田加入当時の大エースが中山。当然、前田は中山を見て育ったはずだ。不器用な中山と、器用すぎる前田。全く似ていないような2人だが実は、ストライカーとして最も大切な点が同じなのである。
なお、前田以前の最後の日本人得点王も、02年のジュビロ磐田・原直泰である。これも中山の影響か、はたまた、当時Jリーグ史上最高チームと言われたそのチーム力の結果なのか。
いずれにしてもこの前田の偉業! サッカーファンがもっともっと沸き立っても良いはずだと思う。彼を代表に据えたザッケローニ監督の目は、流石だという他はない。ここで何度も述べたことだが、Jリーグを見渡した後に、ザックはこんな事を語っている。
「日本は得点力が問題だと言われているらしいが、よいFWも見つけることが出来た。彼らが自分の能力に気付いていないのには驚くが」
個人への言及は控えるザックだから誰のことなのか明かされていないのだが、前田、岡崎がその筆頭であることは明白であろう。彼の目からは世界トップ水準に見える、それほどの能力なのだと思う。
さて、この記事の面白いところは、それぞれの計17得点のデータを以下のように4分類している点だ。
1 「左右の足、頭、どこで得点したか」」
2 「ゲームを15分ごとに分けて、どの時間帯で得点したか」
3 「ペナルティーエリア内外のどこで得点し、それぞれの決定率は?」
4 「クロス合わせ、こぼれ球押し込み、PK、ドリブルシュート、セットプレーなど、得点組織形態から見る」
シュート力、ヘッド得点などの比較
双方のシュート力を比べてみよう。
先ず総数が前田70本のケネディ87本。流石優勝チームのエース、ケネディと言ったところだが、これでゴール数が同じということは、決定率で前田に軍配が上がる。前田24.3%、ケネディ19.5%。同様に枠内シュート率も、52.9%と40.2%となり、断然前田の方が正確と言える。
例えばヘッド得点は、誰でもケネディの方が多いと思うだろう。194センチの彼に対して、前田は183センチなのだ。また、グランパスが「ケネディの頭狙い」をチーム戦術に採用しているのは有名な話でもある。が、前田9ゴール(前田の全ゴールのうち53%)、ケネディ8ゴール(ケネディの全ゴールのうち47%)なのだ。前田のヘッド技術が極めて高いということだろう。
左右両足比率は、前田が5:3、ケネディ2:7だ。これは、前田の器用さが示されていると言える。
こうして、ことシュート力ということに限っては、完全に前田が上だと言えよう。ただしこれは、チームへの総合的貢献力ということではないとお断わりしておかなければ、グランパスファンや玉田圭司からお小言が出るだろう。ケネディは闘莉王とならんで、グランパス優勝の立役者なのだから。
脅威の「ワンタッチゴーラー」
これだけシュート力が高い前田なのに、不思議な数字がある。ペナルティーエリア外でたまにシュートを打つと入る確率が高くなるケネディに対して、前田は外からの得点ゼロなのだ。中へ入り込んで得点する名手ということだろう。ケネディが1点の「こぼれ球」得点が、前田は4など、前田の17得点中13得点がワンタッチ得点なのである。ダイジェストの結びの言葉にこうあった。
『17ゴールのすべてをエリア内で決め、その内13ゴールをワンタッチで叩き込んだ。中山雅史を彷彿させる”ワンタッチゴーラー”として、ひとつのスタイルを確立させた』
ゴール時間帯では、最後30分の前田の得点力が光る。前田6点に対して、ケネディ3点である。大評判になっている「チーム1無尽蔵に走る前田」の面目躍如と言えよう。誰よりも最後までゴール周辺を走り回って同点または逆転に貢献してチームを救ってきた「大エース」ということでもあろう。
2人の証言
最後に前回も書いた、二つの証言をご紹介する。この証言も含めて、11月10日のこの連載第22回もまた前田遼一のことを書いているので、そちらをも参照されるなら幸いだ。
【 読んだものからいろいろ抜き出してみる。先ず初めは、本年ナビスコカップ決勝戦直前に、サンフレッチェ広島の敵将・ペトロビッチ監督が語ったこと。サッカーダイジェスト最新号からの転載である。
『前田を90分間、抑え切るのは難しい。むしろ、我々は3点取って、彼に2点取られても勝つ。それが広島のサッカーだし、ベストな回答だろう』
次に、同じこの決勝戦を終えた後の、磐田の柳下監督。出典は同じである。
『コーチ陣と一緒に驚いていた。前田は凄いなと。チームのためにもプレーをしてくれるストライカー。今日は90分を過ぎてから、また一段とあいつの凄さが出たのではないか。もしかしたら、まだできるのではないか。それぐらい今日の前田は本当に凄かった』 】
93年からJリーグが始まって18年で得点王延べ19人のうち、日本人得点王は延べ7人しかいない。また、外国籍選手を含めても2回取った人物は2人しかいない。98年、00年の中山雅史と、前田だけだ。こうして、日本人得点王延べ7回のうち、4回をこの2人で分け合っているということになる。また、この2人には密接な関係があって、前田のジュビロ磐田加入当時の大エースが中山。当然、前田は中山を見て育ったはずだ。不器用な中山と、器用すぎる前田。全く似ていないような2人だが実は、ストライカーとして最も大切な点が同じなのである。
なお、前田以前の最後の日本人得点王も、02年のジュビロ磐田・原直泰である。これも中山の影響か、はたまた、当時Jリーグ史上最高チームと言われたそのチーム力の結果なのか。
いずれにしてもこの前田の偉業! サッカーファンがもっともっと沸き立っても良いはずだと思う。彼を代表に据えたザッケローニ監督の目は、流石だという他はない。ここで何度も述べたことだが、Jリーグを見渡した後に、ザックはこんな事を語っている。
「日本は得点力が問題だと言われているらしいが、よいFWも見つけることが出来た。彼らが自分の能力に気付いていないのには驚くが」
個人への言及は控えるザックだから誰のことなのか明かされていないのだが、前田、岡崎がその筆頭であることは明白であろう。彼の目からは世界トップ水準に見える、それほどの能力なのだと思う。
さて、この記事の面白いところは、それぞれの計17得点のデータを以下のように4分類している点だ。
1 「左右の足、頭、どこで得点したか」」
2 「ゲームを15分ごとに分けて、どの時間帯で得点したか」
3 「ペナルティーエリア内外のどこで得点し、それぞれの決定率は?」
4 「クロス合わせ、こぼれ球押し込み、PK、ドリブルシュート、セットプレーなど、得点組織形態から見る」
シュート力、ヘッド得点などの比較
双方のシュート力を比べてみよう。
先ず総数が前田70本のケネディ87本。流石優勝チームのエース、ケネディと言ったところだが、これでゴール数が同じということは、決定率で前田に軍配が上がる。前田24.3%、ケネディ19.5%。同様に枠内シュート率も、52.9%と40.2%となり、断然前田の方が正確と言える。
例えばヘッド得点は、誰でもケネディの方が多いと思うだろう。194センチの彼に対して、前田は183センチなのだ。また、グランパスが「ケネディの頭狙い」をチーム戦術に採用しているのは有名な話でもある。が、前田9ゴール(前田の全ゴールのうち53%)、ケネディ8ゴール(ケネディの全ゴールのうち47%)なのだ。前田のヘッド技術が極めて高いということだろう。
左右両足比率は、前田が5:3、ケネディ2:7だ。これは、前田の器用さが示されていると言える。
こうして、ことシュート力ということに限っては、完全に前田が上だと言えよう。ただしこれは、チームへの総合的貢献力ということではないとお断わりしておかなければ、グランパスファンや玉田圭司からお小言が出るだろう。ケネディは闘莉王とならんで、グランパス優勝の立役者なのだから。
脅威の「ワンタッチゴーラー」
これだけシュート力が高い前田なのに、不思議な数字がある。ペナルティーエリア外でたまにシュートを打つと入る確率が高くなるケネディに対して、前田は外からの得点ゼロなのだ。中へ入り込んで得点する名手ということだろう。ケネディが1点の「こぼれ球」得点が、前田は4など、前田の17得点中13得点がワンタッチ得点なのである。ダイジェストの結びの言葉にこうあった。
『17ゴールのすべてをエリア内で決め、その内13ゴールをワンタッチで叩き込んだ。中山雅史を彷彿させる”ワンタッチゴーラー”として、ひとつのスタイルを確立させた』
ゴール時間帯では、最後30分の前田の得点力が光る。前田6点に対して、ケネディ3点である。大評判になっている「チーム1無尽蔵に走る前田」の面目躍如と言えよう。誰よりも最後までゴール周辺を走り回って同点または逆転に貢献してチームを救ってきた「大エース」ということでもあろう。
2人の証言
最後に前回も書いた、二つの証言をご紹介する。この証言も含めて、11月10日のこの連載第22回もまた前田遼一のことを書いているので、そちらをも参照されるなら幸いだ。
【 読んだものからいろいろ抜き出してみる。先ず初めは、本年ナビスコカップ決勝戦直前に、サンフレッチェ広島の敵将・ペトロビッチ監督が語ったこと。サッカーダイジェスト最新号からの転載である。
『前田を90分間、抑え切るのは難しい。むしろ、我々は3点取って、彼に2点取られても勝つ。それが広島のサッカーだし、ベストな回答だろう』
次に、同じこの決勝戦を終えた後の、磐田の柳下監督。出典は同じである。
『コーチ陣と一緒に驚いていた。前田は凄いなと。チームのためにもプレーをしてくれるストライカー。今日は90分を過ぎてから、また一段とあいつの凄さが出たのではないか。もしかしたら、まだできるのではないか。それぐらい今日の前田は本当に凄かった』 】