九条バトル !! (憲法問題のみならず、人間的なテーマならなんでも大歓迎!!)

憲法論議はいよいよ本番に。自由な掲示板です。憲法問題以外でも、人間的な話題なら何でも大歓迎。是非ひと言 !!!

「ウクライナ戦争をめぐる『が』について」 文科系文科系

2023年12月21日 10時55分10秒 | 歴史・戦争責任・戦争体験など
 これも旧稿再掲だが、大事なことだから、載せる。こういうミスは、学者としては致命的なもの。学者とはそう言うもので、過去論文から引用して自説を補強するというのも、学者としての積み重ねなのである。

『 小泉悠論文に一言  文科系
2023年09月16日 08時23分26秒 | #ウクライナ戦争#マウリポリ陥落#アゾフ大隊

 岩波の雑誌「世界10月号」に、ウクライナ問題で小泉悠の論文「ウクライナ戦争をめぐる『が』について」が載った。この雑誌に多い「ロシアの侵攻は大きすぎる罪だ『が』・・・」という内容の論文を意識して、この「が」を批判するものだと言って良い。「大罪だが・・」などと前置きしてあれこれと語るのは、ロシアの罪を軽減しているとの批判と言えよう。以下は、彼の論文の骨格に関わる部分に、アメリカの過去について重大過ぎる見落としがあると指摘したい。この見落としによって小泉の論議の骨子が、米ロ比較で冷戦後最大の戦争犯罪国、米の罪を減じたことによって、ロシアが冷戦後世界で唯一最大の誤りを犯した国になっている。
『アメリカという、時に残虐性を孕んだ戦争を行う大国との同盟に関して倫理的な忌避感はないではないが、少なくともアメリカは民間人を無差別に殺傷する戦争を過去半世紀にわたって行っておらず、まして占領地域の住民を選別キャンプに集めて拷問・レイプ・殺害するような行為にも(少なくとも冷戦後には)及んでいないという点では、現在のロシアと全く同列に論じるべき存在でもない』(同誌52ページ)
 この一文を読んだ時にすぐに大きな疑問が浮かんだ。この論文全体の論理の筋における骨格に当たる部分への疑問だから、この疑問は大きい。
 まず、アメリカによる民間人無差別殺傷だが、史上有名な例が存在する。ウイキリークスでこれをすっぱ抜いたからこそジュリアン・アサンジは米政府に執拗に追いかけられた末に、終生監獄の憂き目に遭うことになったのではなかったか。米ヘリコプターからのイラク人無差別射殺映像を世界に流したのだった。というほどに、アメリカは自らの民間人無差別虐殺を世界史から意図的計画的に隠してきたのである。
 また、キューバ・グァンタナモ基地における、中東の人々の監禁、拷問はつとに有名な話ではなかったか。
 この二つを無視して上のように語るのでは、小泉氏語るところの「が」への反論は、あまりにも弱いものになるというべきだろう。と、このように僕が述べたとしても、ロシアによる民間人無差別虐殺や選別キャンプ・拷問を許すものではないというのは、言うまでも無いことだ。ただし、「少なくとも冷戦後に」もしそれがあればの話だが、ウクライナ戦争でこのことが世界白日の下に証明されたということではない。ブチャの大虐殺なるものも、アメリカのイラク一般市民への機銃発砲・虐殺のような場面そのものが証明されたわけではないのである。ちなみに、自らの虐殺を上記のように組織的・大々的に隠してきたアメリカは、他国による虐殺などはいくらでも作り、宣伝してきたと覚えてきた。
 
 なお、上記「米ヘリコプターからのイラク人無差別射殺映像」には、このような証拠もある。2010年4月7日に出た「2007年米軍ヘリによるロイター記者とイラク市民銃撃映像」だ。その映像に付いた文章は、以下のようなものだった。
『米軍ブラボー2-16部隊の元隊員に聞きます。ウィキリークスが公開した軍所蔵ビデオにある、ロイター従業員2人を含む12人の死者を出した 2007年の米軍ヘリによるイラク民間人爆撃事件は、米軍部隊のブラボー2-16が起こしました。
この部隊に所属していた帰還兵ジョシュ・スティーバーは「このビデオの兵士たちを直ちに非難したり批判するのが自然なことでしょう。でも、彼らの行動を正当化するわけではありませんが、軍隊の立場からいえば、彼らは訓練された通りに行動したのです・・・もしこのビデオを見てショックを受けるのなら、より大きなシステムを問題にするべきです。なぜならば、兵士たちの行動は、このように行動せよと訓練されて行ったことだからです」
 
 



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旧稿の再掲「ウクライナ戦争」  文科系

2023年12月12日 06時08分40秒 | 歴史・戦争責任・戦争体験など
 ウクライナ戦争がやっと終結に向かい始めたように見える。そこで、今一度この戦争についての僕の見方を提示し直したいと思う。旧稿の再掲だが。・

「ウクライナ戦争の起こり方」総集編   文科系
2022年05月04日 12時58分50秒 | #ウクライナ戦争#マウリポリ陥落#アゾフ大隊

 ウクライナ戦争の起こり方について改めて総集編をまとめてみる。以下の歴史的経過は、アメリカ発ニュースで覆い尽くされている西欧、日本マスコミ社会ではほぼ無視されてきたものと言える。これらの経過の無視がどうして起こっているかを論じたものも併せて紹介する。これはちょうど嘘の理由で始まったイラク戦争に本当の理由が別に存在したのと表裏の関係になるだろう。と言っても、プーチンの世界史的戦争犯罪が軽減されるわけでは全くない。これはイラク戦争が国連(総長)によって真っ向から非難されていたのと同じ理由であるはずだ。
 
 二月二四日に始まったロシアのウクライナ侵攻は、人類戦争史を半世紀前に戻したような酷い蛮行と観る。アメリカは二一世紀に入ってもこの野蛮を繰り返しているが、それ以外の大国のこんなあからさまな戦争は近年珍しいからだ。それだけに、戦争嫌いの僕はこの戦争までの彼の地の紛争経過を知りたくなった。この地の紛争と言えばまず、二〇一四年ウクライナ東南部を巡るロ・ウの暴力応酬、戦闘にまで遡らねばならない。
『(二〇一三年から一四年にかけての反政府運動において)二〇一四年二月に突然、暴力革命の様相を帯びるに到り、ヤヌコビッチ(二〇一〇年の選挙でウクライナ南部、東部を基盤として選ばれた同国大統領)は国外逃亡に追い込まれます。その背後の事情は明らかではありませんが、整然たる市民運動のなかに過激な暴力を持ち込む極右勢力が紛れ込んだようであり、そのなかにはネオナチ的な人たちもいたようです。このような「マイダン運動」の暴力革命化は、ロシア語系住民の多いクリミアやドンパス二州の住民を刺激し、前者のロシアへの移行、後者における「人民共和国」樹立を引き起こしました。これは国家秩序の非立憲的な変更であり、諸外国から強く非難されました。もっとも、当事者たちからすれば、その前にキエフで非立憲的な暴力革命があったということが正当化根拠とされるわけです』(月刊誌「世界 五月号」の塩川伸明東大名誉教授「ウクライナ侵攻の歴史文脈と政治理論」)
 次いでこの時の状況を、岩波新書「アメリカの制裁外交」(杉田弘毅元共同通信論説委員長、現在国際ジャーナリスト著。二〇二〇年二月第一刷発行)から、紹介する。以下のこの事件によってロシアがここから追放され、G八がG七になったのである。
『(二〇一四年の)クリミア併合とその後の(ロシアへの)制裁は、ロシアと米国の関係を決定的に悪化させ、中ロを接近させた。その結果、北方領土返還の道筋も見えなくなった。地政学的に大きなインパクトを持つ対ロシア制裁とはどんなものなのだろうか。
 クリミア半島は帝政ロシア時代の一九世紀から保養地として知られ、ロシア系住民が六〇%を占め、ウクライナ人は二五%と少数派だった。黒海に突き出ている半島にはロシア黒海艦隊の基地があり、ロシア海軍が地中海に出る戦略的要衝である。(中略)
 ウクライナでは二〇一三年一一月から親ロシアのビクトル・ヤヌコビッチ政権への激しい市民デモが起こり、翌一四年二月には政権が崩壊。これを受けて親ロシア派の武装勢力がクリミア半島の議会や空港を占拠し現地の政治権力を奪取し、さらには半島全域で行われた住民投票で九六・七七%がロシアへの編入を支持し、欧米が猛反発する中、三月一八日プーチンはクリミアの編入を宣言した』
この後のことについては、この三月二四日の朝日新聞に、元国連難民高等弁務官事務所職員、千田悦子氏がこういう文章を寄せていた。
『一四年以降のドンパス地域は、ウクライナ政府の非制御地(NGCA)と制御地(GCA)との境界線を中心に戦闘が常態化し、人々が西へ逃げていた。親ロ派によるロケット弾発射や発砲、それを迎え撃つウクライナ軍の砲撃戦で、家や学校、病院、公共施設などが破壊されたそれらの修復を初めとするプロジェクトの進行調整を私は担当した。日中、砲弾の音を間近に聞きながら仕事をする日もあった・・・・ロシアの歴代大統領が恐れてきたNATO拡大についてロシアの言い分を聞きつつ、今後の緊張を緩和する方向性をNATO全体で探る必要があるのではないだろうか』
  この境界線戦闘によって以降一九年までに双方一万人を超える死者が出ているという資料もあったうえで、今年二月二四日のロシア侵攻である。ついてはこの侵攻直前まで、こういう事実があったと明記しておきたい。ウクライナの大統領はあくまでもNATOには加盟すると、それでも「ロシアは攻めて来ない。来るという人はその証拠を見せて欲しい」と表明し続けていた。なぜ、どういう根拠でこの表明があったのか。
BSフジ・『プライムニュース』三月二八日放送」のネット記事から、真田幸光 愛知淑徳大学教授の見解を以下に紹介してみよう。三菱UFJ銀行出身の国際金融学者である。
【 英米が真に狙うはロシアの先の中国叩きか。日本は慎重に様子見を
(前略)
新美有加キャスター 国際的な信用を落としてまでも各政策を行うプーチン政権。経済的にはどういう利益が出るものですか。
真田幸光 基本的にはない。むしろ、そこまでロシアが追い込まれ、貶められている。
反町理キャスター プーチンがそうするように仕向けていると。その主体は誰ですか?
真田 英米だと思います。今の覇権争いにおけるアメリカの一番の敵は中国。中国とロシアがくっつくことは極めて怖い。まず、ロシアの力である資源と軍事力を徹底的に落とす。最近の国際金融筋は、ウクライナ問題においてプーチンの力がかなり落ちていると見ている。そろそろ落としどころを探し、金融で中国の首を絞めることが始まるのでは。
反町 なるほど。ロシアに対して英米は、経済制裁や国際世論、武器供与も含めて追い込み、プーチン大統領が愚策を打たざるを得ないようにした。すると、武力をもってウクライナを救うつもりは最初からなく、ロシアを潰して中国を叩くことに向けたステップとしてウクライナ侵略を見ていたと聞こえるが?
真田 そう申し上げました。ウクライナが、そして大陸ヨーロッパが踊らされた部分が結構あるのでは。
反町 怖い話だ。畔蒜さんは?
畔蒜泰助 笹川平和財団主任研究員 これまでの米露の交渉を見ると、アメリカはロシアがウクライナに侵攻する危険性を相当感じていて、かなり警告をしたと思う。一方、私が知っているロシア人の専門家は皆、ウクライナへの侵攻などあまりにも愚策でやるはずがないと言っていた。今は当惑している。プーチンにはもっと別の手もあった。
反町 英米が本当に睨んでいるのがロシアの先の中国であるとすれば、日本はどのようについていけばよいのか。
真田 難しい。日本最大の同盟国はアメリカで、価値観の共有という意味できちんと合わせる必要があるが、先んじて対露制裁や中国への何らかの動きをし過ぎると、はしごを外される危険性がある。また場合によっては、世界の中でかなりの実体経済を握る中国の側が勝つ可能性もある。どう転ぶかわからず、とりあえず様子を見るのが生き延びる手だて】
  戦争嫌いの僕は例によって、この戦争を起こしたプーチン・ロシアを今でも、どれだけでも非難する。だからこそそれだけでは済まず、一般マスコミ物の他にもここまでの詳しい経過などをいろいろ読むことになった。そこで出会ったのが「プーチンもウクライナも英米によってこの『あまりにも愚策』へと追い込まれた」論なのである。すると、これを傍証するようなものをどうでも探したくなって、やっと一つ見つけた証拠が、これだ。
『「ヤツェニュクには政治と経済の経験がある。クリチコが入るとうまくいかないだろう。国際的に信頼されている人物を招いて一役買ってもらえるといいが・・・」
 政変のさなか、アメリカのヌーランド国務次官補とキエフ駐(ちゆう)箚(さつ)のパイアット大使のふたりが、この政変を支持し、暫定政権の人事について電話で話し合う様子がリークされたエピソード(BBC、二〇一四年二月七日)も、いまでは忘れられた感がある。
 果たしてその後、ふたりが描いた筋書きどおり、クリチコはキエフ市長になり(プロボクシングの元世界チャンピョンで、ロシア軍と戦う現キエフ市長である)、ヤツェニュクはマイダンで開かれた勝利集会で〝革命〟政権の暫定首相に指名される。』
 この文章の出典は、月刊誌「世界」四月臨時増刊号「続・誰にウクライナが救えるか」。二〇一四年マイダン革命当時のウクライナ政権人事をアメリカが握っていたと示されている。筆者はエコノミスト・西谷公明氏。早稲田の大学院を出て、長銀総合研究所、ウクライナ日本大使館専門調査員、その後トヨタロシア社長という経歴の東欧専門家である。


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ケネディ、アナン、習近平の国連「理論」   文科系

2023年10月29日 06時57分32秒 | 歴史・戦争責任・戦争体験など
 このウクライナ戦争でも、国連は大きな役割を二つ果たした。一つは、マリウポリ・アゾフスターリ製鉄所落城時の人道回路の成功。この時、実質人間の盾だった一般人の解放だけでなく、「ネオナチ」司令官らの解放もあって、彼らは最近捕虜として囚われていたロシアからトルコ経由でウクライナに帰還した。今一つは、二国の穀物輸出。今は頓挫しているが、制裁が原因で代金支払いがないロシアが「欺された」といって離脱したから。さらには、国連という場でこそ当事者が話し合いの場を持てていることは意外に重要なことだ。


 さて、ここに多く訪れた右の方々と話していて、つくづく感じたのがこのこと。国連を語らない、国連が20世紀人類に初めて生まれた世界平和目的の組織だということさえ知らない。その上で国防を語るから、国防論も9条(改定)問題も、未来に向かうほど大穴開いた議論になる。これに反論してこちらが国連を語ると、相手の応えはこうだ。
「無力すぎて話題にもできない」
「常任理事国に拒否権があって、何も決まらないではないか!」
 例えばこのたび国連に出席したゼレンスキーも同じように「(ロシアの)拒否権」を嘲笑う演説をしたが、この拒否権の果たす大きな意味も、考えたことがないのだろう。何よりも、第二次大戦は日独が当時の国際連盟を飛び出す事態になって初めて起こったもの。「対話の決裂に到ってさえ、あくまでも同席の集団外交討論場を重視する」ことが大事なのだ。

 何よりも先ず、米ケネディ大統領の61年国連総会演説を思い出すべきだ。
『戦争にとって代わる唯一の方法は国連を発展させることです。……国連はこのあと発展し、われわれの時代の課題に応えることになるかもしれないし、あるいは、影響力も実力も尊敬も失い、風と共に消えるかもしれない。だが、もし国連を死なせることになったら──その活力を弱め、力をそぎ落とすことになったら──われわれ自身の未来から一切の希望を奪うに等しいのであります』


 次いで、イラク戦争勃発時のアナン事務総長の演説。ウクライナ戦争を今改めて考えるためにも、この演説内容は重要だ。2003年9月23日第58回国連総会開会日における、アナン事務総長の冒頭演説からの抜粋だ。
「私たちはいまや大きな岐路に立たされています。国連が創設された1945年にまさるとも劣らない、決定的な瞬間かも知れないのです」
「今日に至るまで、国際の平和と安全に対する幅広い脅威と戦い、自衛を超えた武力行使をすると決める際には、唯一国連だけが与えることの出来る正当性を得なければならないという理解でやってきました」
「いかに不完全であれ、過去58年間、世界の平和と安定のために頼りにされてきた大原則に根底から挑戦する、単独主義的で無法な武力行使の先例を作ってしまうものなのです」

 次いで、中国がいかに国連を重視しているかというその思想。15年9月28日の習近平国連演説から、その末尾を抜粋する。
『ここに、私は以下の点を宣言いたします。中国は期間10年、総額10億ドルの中国・国連平和発展基金を創設し、国連の取り組みを支援し、多国間協力事業を促進し、世界平和と発展のために新たな貢献を行う旨を決定しました。中国は新たな国連平和維持力待機メカニズムに加わり、そのために常設編成平和維持警備隊を設置し、8000人規模の平和維持待機部隊を組織することを決定しました。また、中国は今後5年間に、アフリカ連合に対し総額1億ドルの無償軍事援助を提供し、アフリカ常備軍と危機緊急対応部隊の設置を支援することを決定しました。
議長とご列席の皆様
国連が次なる10年を迎えるに当たって、私たちはいっそう緊密に団結し、手を携えて協力・ウインウインの新パートナーを作り、心を一つにして人類運命共同体を築こうではありませんか。「剣を溶かして鋤と為し」、二度と戦争を起こさないという理念を深く人々の心に植えつけ、発展と繁栄、公平と正義の理念が広く実行されるようにしていきましょう!
ご清聴ありがとうございました。』

 こう言うとここの右の人々は笑い出すのだが、僕は真面目に述べてきた。日本の戦国時代は、徳川幕府の(警察権の)日本統一で終わり、以降300年の平和が明治以降の日本発展の礎となったが、世界も同じ事。今米中が国連警察軍一本で結集できれば、地球から戦争はなくせるのだ。ケネディとアナン、習近平というここまで三者の国連構想もそういうものだったと確信している。


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日本右人士の盲点・国連  文科系

2023年10月01日 09時17分33秒 | 歴史・戦争責任・戦争体験など
 このウクライナ戦争でも、国連は大きな役割を二つ果たした。一つは、マリウポリ・アゾフスターリ製鉄所落城時の人道回路の成功。この時、実質人間の盾だった一般人の解放だけでなく、「ネオナチ」司令官らの解放もあって、彼らは最近捕虜として囚われていたロシアからトルコ経由でウクライナに帰還した。今一つは、二国の穀物輸出。今は頓挫しているが、制裁が原因で代金支払いがないロシアが「欺された」といって離脱したから。さらには、国連という場でこそ当事者が話し合いの場を持てていることは意外に重要なことだ。


 さて、ここに多く訪れた右の方々と話していて、つくづく感じたのがこのこと。国連を語らない、国連が20世紀人類に初めて生まれた世界平和目的の組織だということさえ知らない。その上で国防を語るから、国防論も9条(改定)問題も、未来に向かうほど大穴開いた議論になる。これに反論してこちらが国連を語ると、相手の応えはこうだ。
「無力すぎて話題にもできない」
「常任理事国に拒否権があって、何も決まらないではないか!」
 例えばこのたび国連に出席したゼレンスキーも同じように「(ロシアの)拒否権」を嘲笑う演説をしたが、この拒否権の果たす大きな意味も、考えたことがないのだろう。何よりも、第二次大戦は日独が当時の国際連盟を飛び出す事態になって初めて起こったもの。「対話の決裂に到ってさえ、あくまでも同席の集団外交討論場を重視する」ことが大事なのだ。

 何よりも先ず、米ケネディ大統領の61年国連総会演説を思い出すべきだ。
『戦争にとって代わる唯一の方法は国連を発展させることです。……国連はこのあと発展し、われわれの時代の課題に応えることになるかもしれないし、あるいは、影響力も実力も尊敬も失い、風と共に消えるかもしれない。だが、もし国連を死なせることになったら──その活力を弱め、力をそぎ落とすことになったら──われわれ自身の未来から一切の希望を奪うに等しいのであります』


 次いで、イラク戦争勃発時のアナン事務総長の演説。ウクライナ戦争を今改めて考えるためにも、この演説内容は重要だ。2003年9月23日第58回国連総会開会日における、アナン事務総長の冒頭演説からの抜粋だ。
「私たちはいまや大きな岐路に立たされています。国連が創設された1945年にまさるとも劣らない、決定的な瞬間かも知れないのです」
「今日に至るまで、国際の平和と安全に対する幅広い脅威と戦い、自衛を超えた武力行使をすると決める際には、唯一国連だけが与えることの出来る正当性を得なければならないという理解でやってきました」
「いかに不完全であれ、過去58年間、世界の平和と安定のために頼りにされてきた大原則に根底から挑戦する、単独主義的で無法な武力行使の先例を作ってしまうものなのです」

 次いで、中国がいかに国連を重視しているかというその思想。15年9月28日の習近平国連演説から、その末尾を抜粋する。
『ここに、私は以下の点を宣言いたします。中国は期間10年、総額10億ドルの中国・国連平和発展基金を創設し、国連の取り組みを支援し、多国間協力事業を促進し、世界平和と発展のために新たな貢献を行う旨を決定しました。中国は新たな国連平和維持力待機メカニズムに加わり、そのために常設編成平和維持警備隊を設置し、8000人規模の平和維持待機部隊を組織することを決定しました。また、中国は今後5年間に、アフリカ連合に対し総額1億ドルの無償軍事援助を提供し、アフリカ常備軍と危機緊急対応部隊の設置を支援することを決定しました。
議長とご列席の皆様
国連が次なる10年を迎えるに当たって、私たちはいっそう緊密に団結し、手を携えて協力・ウインウインの新パートナーを作り、心を一つにして人類運命共同体を築こうではありませんか。「剣を溶かして鋤と為し」、二度と戦争を起こさないという理念を深く人々の心に植えつけ、発展と繁栄、公平と正義の理念が広く実行されるようにしていきましょう!
ご清聴ありがとうございました。』

 こう言うとここの右の人々は笑い出すのだが、僕は真面目に述べてきた。日本の戦国時代は、徳川幕府の(警察権の)日本統一で終わり、以降300年の平和が明治以降の日本発展の礎となったが、世界も同じ事。今米中が国連警察軍一本で結集できれば、地球から戦争はなくせるのだ。ケネディとアナン、習近平というここまで三者の国連構想もそういうものだったと確信している。


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何度目かの「慰安婦、当時政府の2文書」   文科系

2023年09月27日 01時03分01秒 | 歴史・戦争責任・戦争体験など

 以下も、このブログで定期的に載せている報告、歴史文書の紹介。14年9月22日に当ブログ初出以来、続けて来たことだ。長い安倍政権の下で歴史修正主義が押し出され、過去の悪行を帳消しにしようとの企みが絶えなかったからだ。「第二の戦前」などと一部で言われている昨今、当時を思い出すことは必要になるばかりと考えて・・・。

 『 以下二つは「日本軍の慰安所政策について」(2003年発表)という論文の中に、著者の永井 和(京都大学文学研究科教授)が紹介されていたものです。一つは、1937年12月21日付で在上海日本総領事館警察署から発された「皇軍将兵慰安婦女渡来ニツキ便宜供与方依頼ノ件」。今ひとつは、この文書を受けて1938年3月4日に出された陸軍省副官発で、北支那方面軍及中支派遣軍参謀長宛通牒、陸支密第745号「軍慰安所従業婦等募集ニ関スル件」です。後者には、前に永井氏の説明をそのまま付けておきました。日付や文書名、誰が誰に出したかも、この説明の中に書いてあるからです。

「 皇軍将兵慰安婦女渡来ニツキ便宜供与方依頼ノ件
 本件ニ関シ前線各地ニ於ケル皇軍ノ進展ニ伴ヒ之カ将兵ノ慰安方ニ付関係諸機関ニ於テ考究中処頃日来当館陸軍武官室憲兵隊合議ノ結果施設ノ一端トシテ前線各地ニ軍慰安所(事実上ノ貸座敷)ヲ左記要領ニ依リ設置スルコトトナレリ
        記
領事館
 (イ)営業願出者ニ対スル許否ノ決定
 (ロ)慰安婦女ノ身許及斯業ニ対スル一般契約手続
 (ハ)渡航上ニ関スル便宜供与
 (ニ)営業主並婦女ノ身元其他ニ関シ関係諸官署間ノ照会並回答
 (ホ)着滬ト同時ニ当地ニ滞在セシメサルヲ原則トシテ許否決定ノ上直チニ憲兵隊ニ引継クモトス
憲兵隊
 (イ)領事館ヨリ引継ヲ受ケタル営業主並婦女ノ就業地輸送手続
 (ロ)営業者並稼業婦女ニ対スル保護取締
武官室
 (イ)就業場所及家屋等ノ準備
 (ロ)一般保険並検黴ニ関スル件
 
右要領ニヨリ施設ヲ急キ居ル処既ニ稼業婦女(酌婦)募集ノ為本邦内地並ニ朝鮮方面ニ旅行中ノモノアリ今後モ同様要務ニテ旅行スルモノアル筈ナルカ之等ノモノニ対シテハ当館発給ノ身分証明書中ニ事由ヲ記入シ本人ニ携帯セシメ居ルニ付乗船其他ニ付便宜供与方御取計相成度尚着滬後直ニ就業地ニ赴ク関係上募集者抱主又ハ其ノ代理者等ニハ夫々斯業ニ必要ナル書類(左記雛形)ヲ交付シ予メ書類ノ完備方指示シ置キタルモ整備ヲ缺クモノ多カルヘキヲ予想サルルト共ニ着滬後煩雑ナル手続ヲ繰返スコトナキ様致度ニ付一応携帯書類御査閲ノ上御援助相煩度此段御依頼ス
(中略)
昭和十二年十二月二十一日
         在上海日本総領事館警察署  」


「  本報告では、1996年末に新たに発掘された警察資料を用いて、この「従軍慰安婦論争」で、その解釈が争点のひとつとなった陸軍の一文書、すなわち陸軍省副官発北支那方面軍及中支派遣軍参謀長宛通牒、陸支密第745号「軍慰安所従業婦等募集ニ関スル件」 (1938年3月4日付-以後副官通牒と略す)の意味を再検討する。

まず問題の文書全文を以下に引用する(引用にあたっては、原史料に忠実であることを心がけたが、漢字は通行の字体を用いた)。

支那事変地ニ於ケル慰安所設置ノ為内地ニ於テ之カ従業婦等ヲ募集スルニ当リ、故サラニ軍部諒解等ノ名儀ヲ利用シ為ニ軍ノ威信ヲ傷ツケ且ツ一般民ノ誤解ヲ招ク虞アルモノ或ハ従軍記者、慰問者等ヲ介シテ不統制ニ募集シ社会問題ヲ惹起スル虞アルモノ或ハ募集ニ任スル者ノ人選適切ヲ欠キ為ニ募集ノ方法、誘拐ニ類シ警察当局ニ検挙取調ヲ受クルモノアル等注意ヲ要スルモノ少ナカラサルニ就テハ将来是等ノ募集等ニ当リテハ派遣軍ニ於イテ統制シ之ニ任スル人物ノ選定ヲ周到適切ニシ其実地ニ当リテハ関係地方ノ憲兵及警察当局トノ連携ヲ密ニシ次テ軍ノ威信保持上並ニ社会問題上遺漏ナキ様配慮相成度依命通牒ス 」

 さて、これを皆さんはどう読まれるでしょうか。なお、この文書関係当時の北支関連国内分募集人員については、ある女衒業者の取り調べ資料から16~30歳で3000名とありました。内地ではこうだったという公的資料の一部です。最初に日本各地の警察から、この個々の募集行動(事件)への疑惑が持ち上がって来て、それがこの文書の発端になったという所が、大きな意味を持つように僕は読みました。 』
 
 
 存在した歴史事実をない事にするとか、それが難しいと分かると、こう応える。「当時はどの国でもあったこと。合法だったのだ」。過去に目をつぶるものは、また同じような過ちを繰り返すようになっていくものだ、何度でもそう強調したい。「過ちを繰り返す」というのも、例えば或る有力者がすべてを意図してやったとかいうのではなく、「集団による成り行きでそうなっていった」という人間疎外現象の方が多いものなのだろうが。
 
 
 
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何度目かの随筆  右の人々の戦争哲学  文科系

2023年09月26日 09時55分12秒 | 歴史・戦争責任・戦争体験など
 
『平和を願い、母国を愛する一未成年から反論させていただきたい。・・・以上、反論があれば随時丁重にお返しさせていただく故、フェアに品のある議論を望む』
 これは「平成の侍」と名乗られたお方がこの八月十九日に僕の文章に寄せてきた長文コメントの前後だが、たった一回僕が出した回答に対して、もうお返事が何もなかった。僕の文章内容が彼が考えたこともないようなものだったから再回答のしようがなかったのであろうが、はてこれは「フェアに品のある議論」であったのかどうか、難しいところだ。

 こんなふうに知識も思考力も様々な方々を相手にしたこの十年、実に多領域の勉強をさせられたし、いろいろ考えさせられつつ今日まで来た。慰安婦問題は明治維新以降百年の日朝関係史学習にまで拡がっていったし、南京虐殺や「連合国史観」は「アジア・太平洋戦争史」の復習に繋がった。こちらが学んでいくごとに「これだけ稚拙な知識しかない相手が、どうしてこれだけ自信ありげに頑張れるのだろうか」と気付き始めた。その度に訝り、考え込んで来たのがこのこと。これだけ確信ありげに語るのは、世界も狭いからというだけではなく、自分を納得させ、確信させる信念を何か持っているからだろうが、それって何なんだろうかと。
 これらすべてにおいて、同じ人間という生き物に、どうしてこれだけ見解の相違が生じるのだろうかと、そんな哲学的問題意識をも温めつつ、相手の言い分を観察してきた。
 そこで最近になってようやく気付いたのが、これだ。

 米国は実体経済がIT産業ぐらいしかない。サービス業ばかりで、相対的貧困者と格差が大問題になっている先進国である。サブプライムバブルや九年にも及ぶ紙幣大増刷・官製バブルなどなどマネーゲームで儲けて、日本やBRICS諸国相手の現物貿易収支大赤字をその分カバーしている。がこの国、戦争が流行ればその苦手な現物経済もなかなかの物なのである。兵器産業でいえば世界ダントツの実力があるからだ。貧乏な国、地域には、本来廃棄すべき多量の中古品などの廃棄料が収入に転化する。日本や石油成金国などには第一級の高価な最新兵器などなど。世界のどこかで戦乱が起こるほどにこの商売はいつも大繁盛だ。
 ところで、戦争は無くならないと語る人は当然、こう語る。「国が滅びないように、国土防衛が国として最大の仕事」。こういう人々が世界に増えるほど、貿易大赤字国の米国は助かる。いや、助かるという地点を越えて、今の米国は「テロとの戦い」とか、以前なら「共産主義との戦い」などなどを世界戦略としているからこそ、地球の裏側まで出かけていったりして、あちこちで戦争を起こしているのである。まるで、人間永遠に闘う存在だという世界観を広める如くに。失礼を承知で言うが、「人間必ず死ぬ。貴方も間もなく死ぬ」と大いに叫べば、葬式屋さんが儲かるようなものではないか。


 さて、戦争違法化が、二十世紀になって世界史上初めてその国際組織と法が生まれたりして着手されたが、地上から戦争はなくせるのだろうか。この問題で極めて簡単な正しい理屈が一つある。戦争はずっとなくならないと語る人は「その方向」で動いていると言えるのだし、なくせると思う人はそういう方向に「参加していく」のである。つまり、戦争が未来になくなるか否かという問題とは、人間にとって何か宿命的に決まっているようなものではなく、今及び将来の人間たちがこれをどうしようと考え、振る舞うだろうかという実践的な問題なのである。世界の政治課題というものは、人間が決めるものだと言い換えても良いだろう。ところが、人間が決めるものだというこの真理を意識せずして否定する以下のような「理論」に最も多く出会えたのだと理解してから、僕の頭はすっきりした。
 社会ダーウィニズムという今は誤りだとされた社会理論がある。その現代版亜流の世界観が存在するようだ。「動物は争うもの、人間もその国家も同じだろう。そうやって、生物は己自身を進化させてきたのであるから」。この理論で言えば夫婦ゲンカも国同士の戦争も同じ(本質の)ものになる。そして、夫婦ゲンカは永遠になくならないから、戦争もそうだろうと、大威張りで確信できるわけだ。
『動物の争いは永遠になくならないのだから、人間も永遠に争うものである』
『人間は争うものだから、国家の戦争も無くならない』
 これが、ネット右翼諸氏の世界と政治を観る無意識の出発点なのである。最近、そう気付いた。対案はこういうものだ。「このような闘争本能戦争論は誤りである
」「戦争をめぐって存在するものは戦争の歴史しかない」「戦争史では戦争はどんどん減ってきたばかりではなく、二十世紀には人類史上初めて戦争違法化に向けた国際法、国際組織も生まれた」などの歴史的事実と戦争はなくせるという世界観とを広めていくこと。その実を例え少しずつでも、粘り強く作り広げていくこと。

 以上ありふれて見えるようなことを書いたが、正面からは案外批判されてこなかった誤った戦争に関わる信念が巷に溢れていると言いたい。この日本には特に広く。集団主義ムラ社会の中で激しい競争を演じてきた団塊世代以降では、自然に持つ世界観なのかも知れない。


(2016年1月の同人誌に初出)
 
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何度目かの 「南京虐殺の史実」  文科系

2023年09月25日 19時38分06秒 | 歴史・戦争責任・戦争体験など
 
「あんたも無知丸出しかい? 南京市民より死者が多い三十万人などというヨタ話を、ほんとに信じるの?」
 今度の相手も上から目線でこちらを頭から押さえ込んで来た。いつも同様、僕のブログの過去文章を読んでいないことも丸分かり。丁寧に反論する。

 ①虐殺直前に、日本軍がしかけた上海上陸攻防の大激戦が三か月続いた。そこの中国軍三〇万が揚子江すぐ上流の首都・南京城めがけて潰走し、日本軍がこれを我先にと追撃して出来上がったのが南京城包囲である。城の外、付近の住民も首都軍の庇護を求めて逃げ込んだし、膨大な人数に増えていて当たり前なのである。

 ②次いで、「あんな短期間にそんなにたくさん殺せる訳がない。日本軍はスーパー・サイヤ人か?」とのご批判。これには、こうお応えする。南京城壁は高さ一八メートルで分厚く、一方は揚子江。この城の限られた城門から全軍脱出が敢行されたのが一九三七年一二月一二日の夜から一三日朝にかけて。作戦は完全な失敗。揚子江を渡れた兵はごく少なく、膨大な数の捕虜はその後どうなったか。以降の日本軍中国南下作戦を考えれば、生かして放つはずがない。以降七年半の占領下早い内に、収容施設へ連れて行くように見せかけて秘密裏に殺したと考えるの普通だろう。三一年の満州事変の無法行為で国連を脱退したことを巡る国際的批判と、国内の戦意高揚とのためにも、秘密裏にということが大事だった。

 ③と、僕が返した反論には間髪を入れず、こんなご批判。「それだけ死んだら、死者名簿は? 慰霊祭は? なぜ家族の猛抗議はなかったのか? これらがいまだにないのは嘘である証拠! せいぜい二万人がイーところだな!」。まるで鬼の首でも取ったように勝ち誇って来る。これもネトウヨ本の鸚鵡返しであって、勝ち誇ったこの態度も「自信」の顕れなのである。ただし僕は、一一年ここで闘ってきた勤勉な古参兵。こんなひょろひょろ弾に倒れる訳がない。
 当時の中国政府は、戸籍がないに等しく、兵士は浮浪者が多かった。それも、あの広大な全土から集められた人々。浮浪者が多く、戸籍がないなら、どうやって名簿を創り、家族に知らせるのか。しかも、以降一二年の中国は戦乱と、さらには国共戦争と政権分裂。日本の習慣で思い付いた訳知り顔の屁理屈に過ぎない。現に、中支派遣軍事前教育教科書にこんな記述がある。
『三三年に陸軍歩兵学校が頒布した「対支那軍戦闘法の研究」中の「捕虜の取扱」の項には、(中略)「支那人は戸籍法完全ならざるのみならず、特に兵員は浮浪者」が多いので、「仮にこれを殺害又は他の地方に放つも世間的に問題となること無し」と書かれていた(藤原彰『戦死した英霊たち』)』
(岩波新書「シリーズ日本近現代史全10巻」の第5巻『満州事変から日中戦争へ』加藤陽子・東京大学大学院人文社会系研究科教授、220ページ)

 ④すると今度はまた、こう返ってきた。「どんな理屈を語ろうと、死者数二万という学者の有力説もある。三〇万ははっきり嘘として、数をはっきりさせろよな!」。古参兵はこの数字弾のひょろひょろぶりもよく知っているから、こう反論するだけだ。
 確か小泉内閣の時に日中の学者が集まって虐殺数を検討する会議を持った。日本からも一〇名ほどが出たが、北岡伸一など政府系の学者らが多い日本側の結論は、二~二〇万というもの。なぜこんなに開きが出るのか。「虐殺犠牲者」の定義とか虐殺期間・地域などで一致できなかったからだ。特に虐殺に兵士を含むか否か。兵士の戦死は当たり前、虐殺の数には入らないと。が、これにも反論は容易だ。日本は中国に最後まで宣戦を布告をせず、地中あちこちから折り重なって出てきた膨大な若者人骨は捕虜を虐殺した証拠にもなる。以上から、日本の(政府系)学者らさえ二〇万人の含みを否定できなかったのである。


 さて、以下の内容がまた、以上すべてを裏付けるものである。

【 南京大虐殺、一師団長の日記から  文科系 2017年03月09日

「教育図書出版 第一学習社」発行の「詳録新日本史資料集成 1995年改訂第8版」という高校日本史学習資料集がある。これをぱらぱらと見ていて、南京大虐殺の資料を新たに一つ発見したので、ご紹介したい。408頁に南京攻略軍指揮官の中島今朝吾(けさご)第16師団長日記というのが載っていた。そこの全文を書いてみる。

大体捕虜ハセヌ方針ナレバ、片端ヨリ之ヲ片付クルコトトナシタレドモ、千、五千、一万ノ群集トナレバ之ガ武装ヲ解除スルコトスラ出来ズ、唯彼等ガゾロゾロツイテ来ルカラ安全ナルモノノ、之ガ一旦騒擾セバ始末ニ困ルノデ、部隊ヲトラックニテ増派シテ監視ト誘導ニ任ジ、十三日夕ハトラックノ大活動ヲ要シタリ。シカシナガラ戦勝直後ノコトナレバナカナカ実行ハ敏速ニハ出来ズ。カカル処置ハ当初ヨリ予想ダニセザリシ処ナレバ、参謀部ハ大多忙ヲ極メタリ。
一、後ニ至リテ知ル処ニ依リテ佐々木部隊ダケニテ処理セシモノ約一万五千、大平門ニ於ケル守備ノ一中隊長ガ処理セシモノ約一三〇〇、其仙鶴門付近ニ集結シタルモノ約七、八千人あり。ナオ続々投降シ来ル。
一、コノ七、八千人、之ヲ片付クルニハ相当大ナル壕ヲ要シ、中々見当ラズ。一案トシテ百、二百ニ分割シタル後、適当ノカ処ニ誘キテ処理スル予定ナリ。』

 高さ18メートルもある分厚い南京城壁の限られた門から一夜にして日本軍包囲網を脱出しようとした中国軍兵は、その多くが捕虜になった事が示されている。どうせ逃げられないから、捕虜になって助かろうという態度にさえ見えるのである。ところが、これを最初からの方針として、全部殺してしまった。あちこちに分けて連れて行って殺し、埋めたということなのである。そもそも冒頭のこの部分が僕がこのブログで強調してきた要注意か所と言える。

「大体捕虜ハセヌ方針ナレバ、片端ヨリ之ヲ片付クルコトトナシタレドモ」

 最初から捕虜は殺す方針であったことが明確に述べられている。酷いもんだ。こんな資料があるのに、ネトウヨ諸君の種本論客達は、兵士虐殺を否定してきたのである。一師団長が聞いただけで彼等がよく語る「せいぜい2万人」などは、優に超えている。すべて世界に向けては、いや南京攻略兵にすら秘密の仕業であった。なんせ、上の手記にあるように師団長すら虐殺の全貌は知らないのだから。少し前にあった満州事変に対する国連非難囂々に懲りていたのだろう。また、国民の戦意高揚のためにも、敵への残虐行為は極力秘密にするものだ。実に卑怯、姑息な日本軍である。もっとも命令を出した奴らが卑怯、非道なのであるが・・・。】
 

 

 

 

 

 

 

 

 

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ウ戦争が続けられない諸様相  文科系

2023年09月22日 00時03分33秒 | 歴史・戦争責任・戦争体験など

  ウクライナ戦争の終わりがなぜか急に、見えてきたのではないか。いくつかの理由から、そう思う。

・第一は、9月上旬にあったG20インド会議の共同宣言にウクライナ問題が扱われなかったこと。これに関連して、G20国の中から、BRICSにサウジとアルゼンチンが新たに加盟したこと。そのBRICSから、ブラジルと南アなどグローバルサウス代表が以下のように述べて、停戦交渉に前のめりになっていること。

・ゼレンスキーが初めて実際に出席しておこなった国連総会演説に、世界が意外に冷めていたこと。これは上記を踏まえてのものだと思う。新聞はこんな情報も伝えた。
『「和平を達成することの難しさを過小評価するつもりはない。だが、対話に基づかない解決策はいつまでも続かない」。グローバルサウスの代表格であるブラジルのルラ大統領は演説で、和平交渉の開始の必要性を強調し、米欧による軍事支援を念頭に「大金が開発にはほとんど使われない」と不満も示した。ロシアとの関係が深い南アフリカのラマポーザ大統領も、紛争や開発などアフリカ大陸が抱える課題に演説時間の多くを割いた。』(毎日新聞)

・世界から支援を受けているウクライナにおいて、その支援自身に関わって大変な不祥事が生じている。先に、各省の徴兵責任者が全員解任された上に、この度6人いる国防次官が全員解任されたこと。これではゼレンスキーの国連総会演説にもかかわらず、ほとんど彼だけが丸裸で戦っているも同じではないか。

アメリカ国民の55%がウクライナ戦争支援予算に対して不承認という調査結果も出てきた。これに加えて、来年の米大統領選挙は、新春に両党の候補者選び各州選挙が始まり、夏には両党の候補者選び全国大会があるのだ。


 最後に、「1か月後には雨期に入るから、それまでに東南部戦線で決着を」というアメリカの猛烈すぎる発破に対して、ウクライナ軍部がこんな応答しかできないことが付け加わる。
『ウクライナ国防省のブダノフ情報総局長はイギリスの「エコノミスト」誌のインタビューでロシアとクリミア半島をつなぐ陸上の補給路を遮断する作戦が冬の前に実現するかもしれないと語りました』
「作戦が冬の前に実現するかも知れない」? 

 これから、ウクライナ(南東部戦線)で人が死んでいく程に、兵器を送り込んでいるNATOが批判されることになっていくだろう。ウクライナの戦死者について西欧で何の発表もないのも意図したものと思われてならない。このままでは、来年の米大統領選挙における共和党からの民主党攻撃に政権が耐えられないと考えるのが普通ではないか。異論を排してまで「ウクライナ正義」一色だった日本マスコミも、これから急に変わっていくのではないか。

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”ウ戦争のオカシサ”、解禁   文科系

2023年09月07日 12時27分30秒 | 歴史・戦争責任・戦争体験など

 外務省の元国際情報局長・孫崎享氏の「つぶやき」に、最近「この戦争の本質を疑う」世界ニュースが多くなった。ウクライナ戦争についての日本の情報はアメリカ以上に「賛美」ばかりだったのが、変わって行く雲行きに。こんな今は、この戦争の最初のころに台中戦争に結びつけられて日本軍備が急に進んだことをも思い出している。あきらかに「こういう世論操作」をする一大勢力が存在していたのである。NHKも含めてのことに、僕には思える。他方で、少数だが、この戦争をアメリカが人為的に創出したと疑う識者も多かった。佐藤優や鈴木宗男を含めて、東欧情勢に通じている人々の中に「ロシアがアメリカに引っ張り出された」と。

『 日本にもとうとうこういう報道が出始めたか。「ウクライナ支援に反対が過半数 揺れる米の“潮目”(TBS NEWS)“ウクライナを支援する予算を承認すべきでない”。これに米国民の55%が賛成したのだ。民主党支持者でも38%。共和党支持者71%がウクライナ支援に消極的  2023-09-07 06:405 』

『 ウクライナ国防相を交代。後任のウメロフ氏はタタール系、元投資銀行家。ロシアとの穀物交渉に従事。戦争の真最中、非軍人の国防相就任は通常は不可思議。主要理由は汚職関連。米国で対ウ軍事援助制限の動き。その論拠がウ軍汚職、米国先週汚職撲滅に向けウ高官3人と会談。2023-09-05 07:29 』

 ちなみに、ノルトストリーム2の完成寸前における爆破によって西欧にロシア石油が無期限に来なくなったり、対ロシア制裁、円安などで、アメリカの「石油=ドル」体制は莫大な利益を上げている。さらに因みに、イラク戦争の時は「アメリカへの制裁」などは全く問題にもならなかったはずだ。アメリカだけは戦争をしても例外なのであると証明されているわけだ。ということが分かっているから、G7以外のグローバルサウスが国連ロシア非難決議に賛成しないのであろう。世界各国におけるアメリカの信用こそ、これからもっと地に落ちていくのではないか。

 戦車対策や制空権含めて、準備期間を十分に使った万全の防御体制を整えて来た塹壕に突っ込んで、突破の見込みなど最初からなかったのである。ウクライナの若者をこれからさらに何十万人殺していくのか? こんな戦争を導いておいて、自国はどんどん保護貿易主義を取っているアメリカ。株主・株価資本主義の終末として、この本質が暴露された戦争なのだと僕は考えている。

 

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「敵」の側から観たウ戦況  文科系

2023年09月04日 00時08分19秒 | 歴史・戦争責任・戦争体験など
 いったん戦争勃発なら、両軍、両国が大本営発表になるのは自明。が、代理戦争の主・英米側ニュースも「その良い所だけ採り」が流れる日本では、これを信じる人々は間違いなく欺されている。そこで、アメリカが「ロシアサイド・ニュースだけ」と語るそのネットの記事をご紹介するのも、大切。「マスコミに載らない海外記事」サイトの9月2日掲載「ニュー・イースタン・アウトルック」からの記事とある「ウクライナ反攻失敗」と題されたものを、長くなるが全文そのままお伝えする。


『 ウクライナ反攻失敗 2023年8月31日 タウト・バトー New Eastern Outlook

 ウクライナでの軍事紛争は、それ以前の多くのものと同様、メディア、特に欧米メディアと容赦なく結びついている。ウクライナ支持をかき立てるため、または少なくとも状況を混乱させるために欧米が考え出して広める偽情報の量は恐ろしいほどだ。CNNからガーディアン、BBCからフォーリン・アフェアーズまで、英米が支配するメディアの隅々まで、主に物語の片方しか伝えない。マスコミはロシアを絶えず揶揄し、損失を膨らませると同時に、ウクライナ軍を英雄、勝利者として描いている。この一面的報道は、イラク戦争、シリア内戦、最近の中台間緊張で、アメリカと同盟諸国が天使のように宣伝され、反対勢力は悪魔的だと宣伝される他の無数の例でも明らかだ。

 ウクライナでの代理戦争は現在ロシアが勝利している消耗戦争なのが真実だ。ゆっくり確実に、ロシア軍はウクライナの抵抗を出血させ、NATOがウクライナに提供する膨大な弾薬、戦車、兵器を破壊している。ロシアがいかなる損失や挫折も経験していないというわけではないが欧米マスコミが彼らについて描く残酷な図柄は真実と乖離している。

 現在の反攻はウクライナにとって最悪だった。民間軍事会社に捕らえられ、ウクライナ人の死傷者を多く出したバフムトの屈辱後、切望された今の反攻に対しウクライナは過度に楽観的でだった。しかしウクライナにとってニュースは良くない。アメリカ陸軍中佐ダニエル・デイビスなどの専門家は「今日のロシアとウクライナ間戦争における冷たく厳しい真実は、ウクライナの最後のあがき反攻は失敗し、どんなに歪曲しても結果は変わらない」と書いている。欧米/NATOの兵器やNATOの「高度な訓練」が戦争の流れを変えると長い間メディアは報じてきたが、「ウクライナが数週間や数ヶ月の訓練とNATO装備の寄せ集めで自身を変革するのはほぼ不可能だった。」

 湾岸戦争で活躍したもう一人のアメリカ人大佐ダグラス・マクレガーは最近彼のYouTubeで「戦争は終わった、ロシアが勝った」という題名の映像を公開した。マクレガーは何カ月間もワシントンのウソを暴露し、戦場の現実を暴いている。約300,000万人から350,000万人のウクライナ人が亡くなったと彼は述べている。ブライアン・バーレティックなどの他の評論家も欧米の欺瞞を解明している。ウクライナ軍は現在疲れ果てており「この攻撃でひどく打ちのめされたこれら旅団は再構成できず、次の攻撃をする場合、NATOでさえ新たな軍隊構築に大いに苦労するだろう」と彼は述べている。

 実際、一部欧米マスコミさえ自分たちの偽報道が受け入れられないのを自覚するようになっている。したがって面目を保つため、多くの人がウクライナ反攻が失敗している理由を報じ始めている。たとえば最近Voxは、欧米の装備にもかかわらず「キーウと新しく訓練された軍隊は大規模諸兵科連合作戦を実施してロシア防衛を突破するのにほとんど失敗した」と述べる記事を発表した。そうしようとしたことで、ウクライナは多くの死傷者と装備の喪失に悩まされている。ウクライナが反攻最初の数週間で武器と鎧の約20%を失ったとニューヨーク・タイムズは書いている。一部地域ではロシアの堅固な防御のため反攻は停止している。

 別のNYタイムズ記事は、反攻最初の数週間で多くの兵士を失ったと言い、上官だけでなくNATOを非難するウクライナ兵の発言まで引用している。同じ記事は「最前線の兵士は新兵を戦闘に追いやったかどで指揮官たちを非難した...他の人々は、様々なNATO諸国での数週間の基礎訓練の不十分さを批判した。欧米車両のいくつかは任務に不適切だと不満を言う人もいた。」現在CNNも、NATOが支援する反攻は領土を奪還できないと報じている。ある欧米の上級外交官はCNNに次のように語った。彼ら[ウクライナ]がこの紛争のバランスを変えるような前進をすることは殆どありそうもないと思う。」地雷と巨大塹壕ネットワークでいっぱいのロシアの多層防御はこれまでのところ突破できず、ウクライナは最初の防衛線にさえ到達できないと報じられている。アメリカは「文字通り数千台の装甲車両、数百万発の砲弾、ミサイル、爆弾、訓練や諜報支援、その他数十億ドルの援助を提供した。しかし、その助けもウクライナの勝利をもたらさなかった」

 今でも「ロシアが勝っている Russia is winning」とグーグル検索すると、それに言及する記事を見つけるのに苦労するはずだ。実際は逆のことが起きている。スカイニュース、BBC、ランド、ニューヨーカーその他多くの記事が「プーチンの戦争は失敗したのか、ウクライナからロシアは何を望んでいるのか?」や「ロシアは既に負けた。来年ウクライナが勝てるかどうか決まるだろう」だ。したがって、この紛争の報道という点で、客観性は非常に不足している。

 時が経てば、アフガニスタン戦争でそうだったように、そして今ウクライナでゆっくりそうなっているように、現実が落ち着けば、欧米プロパガンダ逆流機構は、おそらく再び歴史の間違った側に立っているのに気づくだろう。しかし同時に、石油、武器、ブラックロックなどの企業が紛争を通じて利益を上げているため、この戦争が衰えることなく続くのを欧米がどれほど熱望しているかを軽視すべきではない。したがって差し迫ったウクライナの敗北に直面して、ポーランドや他のNATO諸国が戦闘に加わり、これがロシアとNATO間の遙かに大きな戦争、おそらく第三次世界大戦の始まりに変わるのも驚くべきことではない。うまくいけば西側はこれを危険にさらすほど愚かではないだろう。』


 この記事とは違って、『地雷と巨大塹壕ネットワークでいっぱいのロシアの多層防御』の「その最前線ラインだけ1~2箇所」がやっと破られたとこの1、2日に報道されている。ただこの遅さに米英が大いに不満を述べていると記事にもあるとおりのことから、堪りかねたウクライナのクレバ外相がこう混ぜっ返したのも当然のことだろう。「自分らが最前線に立ってみよ!」。
 米英は、ウクライナの若者らに、どれだけ死ねと実質命じ続けるのだろう。


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日本国家の品性下劣  文科系

2023年09月01日 08時47分05秒 | 歴史・戦争責任・戦争体験など
 今日は関東大震災の日。1923年のこの日の朝鮮人虐殺問題をめぐって、昨日、松野官房長官が記者会見でこう述べたとのこと。
「(過去の政府の会議が報告書で虐殺を認定していることについて、その報告書は)有識者が執筆したものであり、政府の見解を示したものではない」
「政府内で事実関係を確認できる記録が見当たらない」
 松野氏はさらに、この事件の事実関係を調査することも否定的だと報道された。歴代内閣が調査もしていないのをよいことに記録がないと言い続けるのは、否定できない事実からただ逃げ回っているだけ。相手を人として馬鹿にした卑劣な外交と言えて、恥ずかしい限りだ。

 この問題については、当ブログのこの24日にも、国家公安委員長の同じ答弁をご紹介した。一体どういうことなのだろう。自国の見栄えだけのために、殺された人々、その国のことを全く考慮しないという意味で、人の仕業としてあまりにも品格がない態度だと言いたい。自民党政府がよくやって来たように、今でもこういう言葉、考えを押し通して、開き直っているような。

「震災当時においては、植民地は合法。当時の合法を現在の観点で裁くことはできない」

 この言葉、考えに基づくような開き直りが内々に存在しているからこそ、韓国がよく怒ることになるのではないか。歴史的現在の観点からこそ、他国への言動を決めるべきなのだ。それが普通の人の道、それに沿った外交というものだろう。こと植民地問題が関わる外交言動については特に、日本国家は品性下劣である。

 ちなみに、サッカー関連その他のネットに韓国を貶めつつ日本を持ち上げる品性下劣ニュースが多いのも、こういう政府姿勢に迎合したものではないか。新自由主義経済全盛以降の日本国家は、何かやたらに国家間競争、闘争意識が強くなりすぎているように思われてならない。こういう感性が政治・外交を覆う時、関係他国に対してのみならず、自国の民主主義にとっても悪いことにしかならないと思う。戦前日本をまともに反省していない姿でもあるのだから。
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「ブチャ虐殺」は幻・・・  文科系

2023年08月31日 06時46分49秒 | 歴史・戦争責任・戦争体験など
 外務省の本職としてロシアウオッチャーをずっと務めていた佐藤優が現代ビジネスにおいて、ウクライナ戦争でブチャ虐殺が果たした重要役割をこう解説している。

『(前略) 軍事侵攻から1ヵ月余りが経過した昨年3月29日、トルコのイスタンブールで両国の和平交渉が開かれます。ロシアとウクライナの代表団が対面で停戦協議のテーブルにつき、対立はいったん解決しかけました。
 ところが、ロシア軍がウクライナの首都キーウ周辺から軍隊を引き揚げると、キーウ近郊のブチャで民間人を含む大量虐殺を行っていた事件が報じられました。この「ブチャ事件」が停戦の可能性を御破算にしてしまいます。
 ウクライナ側は「こんな蛮行に手を染めるような連中とは交渉できない」と激怒して交渉のテーブルから離れ、以後一度も和平交渉ができなくなってしまいます。

変局する戦争の大義名分
 さらにアメリカをはじめとするNATO(北大西洋条約機構)諸国、西側諸国がウクライナに送る兵器の物量が一気に10倍以上に増えました。ブチャ事件をトリガーとして、西側諸国がこの戦争を ”価値観戦争” に変えたのです。
 「民主主義VS.独裁」の争いに変わった価値観戦争を、どうすれば終わらせることができるのでしょう。相手の政権を殲滅するか、あるいは屈服させるか。相手が自分の価値観を放棄しない限り、戦争は終わらなくなってしまいました。
 西側諸国が兵器をどんどん送りこむ中、昨年4月以降のウクライナとロシアは「地域紛争」という枠組みで戦闘を継続します。(後略)』


 戦争の初期において起こった停戦への動きに関わって、この「停戦の可能性を御破算」にしたというブチャ虐殺だが、その証拠はたったこれだけのはずだ。僕もこれを観たのだが、ロシア軍が引き揚げる前と直後との同じ道路上の写真比較。後者には死体が点々と散らばっていたというもの。これだけでロシアがやったということになっているが、こんな場面は爆撃、砲撃など戦争の巻き添え死体さえ準備できていれば真夜中の2~3時間で創れるものだろう。だから、もし国際裁判が開かれれば、これだけでは「ロシア告発」などはけっして成立しないはずだ。

 最近の「黒海穀物輸送の頓挫は、ロシアの仕業」という印象操作もそうだが、ウクライナ戦争では「悪人ロシア(工作)報道」が日本などでも特に多すぎるように思う。そして、こういう報道は、世界に憎しみあいを深化拡大していくもの。つまり、次の戦争工作をやりやすくするというような。ちなみに、ウクライナ戦争を佐藤優が述べたように「価値観戦争」などと拡大すれば、「独裁中国」も近く相手にできるようになるわけだ。

 ベトナム戦争のトンキン湾事件、イラク戦争の「大量破壊兵器」、シリア内乱介入の原因「化学兵器の使用」・・・アメリカは最近まで多くの「巨大な戦争原因」を捏造してきた。そして今、その米世界覇権がG7もろとも傾き始めている時、アメリカの戦争工作はさらに執拗になっていく情勢だと思う。「独裁体制国家への戦争工作」には、よくよく注意が必要になっている。


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ウ戦争に朗報、ちょっと  文科系

2023年08月17日 23時05分59秒 | 歴史・戦争責任・戦争体験など
 良い国際情報提供者として尊敬さえしている元硬骨官僚・孫崎享が書いている「つぶやき」で、こんな情報を知った。

『 ウ:継戦争or和平、NATO事務総長の首席補佐官討論会で、キエフはNATO加盟と引き換えにロシア領土に対する領有権を放棄可能と示唆、スイスのノイエ・ツルヒャー・ツァイトゥングは2月CIA長官が露に「ウクライナ領土の20%」を露が維持し和平と提言と報道 』

 ここで何度も書いてきたように、ウクライナ東部・ドンパス地域はロシア人が圧倒的多数の土地。だからこそ、親露ウクライナ政権が武力革命によって潰れた2014年以来戦争前までに、この地の独立をめぐって政権との武力紛争が続き、15,000人だかの死者が出ていると国連でも言われてきた。そして、そのウクライナ側の主力部隊が、アゾフ大隊という日本外務省も当時ネオ・ナチと呼んでいたロシア人敵視の右翼民族主義私兵集団であった。ロシアの侵攻・開戦が悪いというのは世界万民の認めるべきことだが、ドネツク、ルガンスクがそういう特殊な戦争状態が続いていた土地であったのは、事実である。

 今回の提案(CIA長官提案で、ウクライナ政権も示唆したもの?)は、現在ロシアが占領維持しているこの土地の一部をロシアに渡すかわりに、ウクライナのNATO加盟を認めるというもののようだ。そのように、国連の会議でウクライナ政権が示唆したということだが、やっとウクライナ政権から和平への動きが出てきたようで、今後期待して見守りたい。

 ただ、この提案が正式に出ても、ロシアが同意はしないだろう。「ウクライナがNATOに入れば、その後に改めてドンパス武力併合に乗り出す」と考える事もありうるし、そもそも、そういう見通しも見込んで、NATOがウクライナ加盟を認めないだろう。

 ただ、いずれにしても和平提案が出始めたことは、嬉しい。このままでは、ドンパス地域西部に張り巡らされたロシア軍塹壕をめぐってずっと戦争が続き、どんどん人が死んでいくのだから。

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願望報道ばかりの戦争ニュース  文科系

2023年07月03日 11時09分43秒 | 歴史・戦争責任・戦争体験など
 日本のネットのウクライナ戦争報道は、ウクライナ側の未来に向けての願望ばかりを報知してきた。大事なニュースが、ほとんど願望(報道)なのである。最近の先ず第一が、4月から叫んでいた「反転攻勢」

 4月から1か月以上叫び続けてきたウクライナ側の「反転攻勢」はいつ始まるのか?と観ていたらゼレンスキーがこんなことを言い出したそうだ(これは6月初めの話である)。
『ゼレンスキー氏は本格的な大規模反攻の着手について、「準備はできている」と語った。一方で、現在の装備で反転攻勢に出ることになれば、「多くの兵士が死ぬだろう」と述べた』(読売新聞)
 4月から言い続けた「反転攻勢」は「装備も足りない単なる願望」と認めたことになる。こんな願望発表ばかりの間に生じた重要事態は発表なしで隠し続けたままにして。東部の要害、バフムートが5月に陥落したのである。現地からの退避要請にゼレンスキーが「死守せよ」と命じ返した要害だったが陥落したのである。戦争でこんな敗退を隠し、願望ばかりを書くのを「大本営発表」と言う。

 この反転攻勢が大々的戦意高揚宣伝に過ぎなかったと分かった今、次に現れた「願望」がこれだ。期待した米独戦車も多数失ったりして、反転攻勢は思ったように進まなかったなどと弁解した上で。
『年内に停戦交渉に入る。ただし、東南部の失地回復を果たした後で』
 これも単なる願望である。それも「反転攻勢」よりもはるかにスパンが長い半年も先に向かった願望。つまり、「失地回復できねば停戦交渉もなし」という発表なのである。ゼレンスキーは元々停戦交渉条件としてそう語っていたはずだから、それをこう言い直しただけ? 

 世界のマスコミは一体、こんな願望ばかりを語ってどうしようというのか? こういう報道の実際の結末は、「こういう希望がある。ウクライナ人よ、もう少し頑張れ」という大本営発表にしかならないだろう。全く、大量の武器を提供しているアメリカ好みのニュースなのである。

 戦争を始めたロシアがいくら悪いにしても、この戦争についてはウクライナ側にたって大本営発表でも何でも書いてやれということにはならないだろう。停戦に向かう世界の努力というニュースをこの半分でも観たいものである。停戦への動き、努力が実際に世界のあちこちに見られるのだから。


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「世界のニュース」に、ある偏り  文科系

2023年06月21日 11時37分49秒 | 歴史・戦争責任・戦争体験など
『中国、キューバに軍事訓練施設を計画』
 こんな報道、情報がニュースになるほど世界の報道機関の脳味噌が歪んでいるのだと、改めて驚いていた。

 アメリカはこんなことを世界中でやってるじゃないか。こちらは、やりすぎているという意味で当たり前のことだから、ニュースにはならない?

 アメリカの「軍事訓練施設」など、韓国や日本にいくらでも存在する。さらには、中国近辺では軍事演習さえバカバカやっている。それも日韓などと合同で。とすれば、中国のキューバ軍事訓練施設建設どころか、アメリカ近海での中国・キューバ合同訓練さえバカバカやっても抗議などできないはずだ。キューバは現に米国支援の軍隊まで密かに上陸・派遣された歴史があるのだから、最近の日本流儀で言えば、いともまっとうな安全保障策である。
    
 アメリカがやってきたことには、これ以上にひどいのもある。「敵視国」イランのすぐお隣のイラクに置いた米軍大要塞は、イラク国会で撤去要求が通った時でも、これを無視して居座っていた。つい最近のイラクが国賓として招いたイラン・スレイマニ司令官暗殺事件の時のことである。この事件自身も、後の軍隊撤去要求無視も、戦争行為になるはずのことだ。そして、こんなに酷い戦争行為でさえも、世界的には完全に無視されていて、ニュースになどならなかったのである。

 世界のニュース作り手は偏りすぎているから、もう少し公正になるべきだろう。アメリカや米中(比較)論については特に。世界のマスコミも頭を挿げ替えねばならない。中国に対する10分の1ていどでも、アメリカ非難「観点」を持つべきである。

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